王を恨んだ妃④(1話分回想シーン、まだ考察中につき抜かしてあります。) 歴史・時代

『王を恨んだ妃』続編。 7年後、結婚の適齢期となった燦は、謝那として煌の妃として迎え入れられる。当日の夜に現国王、李龍と世子煌の暗殺を実行に移す。龍の暗殺は成功に終わるが、斬に姿を見られ、逃げ帰るように戻ってきたが煌の暗殺は失敗、性別詐称も暴かれてしまう。
石ノ森椿@ノベルバ♯ 14 1 0 01/15
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第一稿

―邪悪な世と不審な王室―
15. 劉家の前 (朝)
燦(17)、輿に座る。
権、輿に近づく。
権 「謝那様。」
燦、顔を上げて微笑む。
燦 「父上、私は綺麗ですか ...続きを読む
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―邪悪な世と不審な王室―
15. 劉家の前 (朝)
燦(17)、輿に座る。
権、輿に近づく。
権 「謝那様。」
燦、顔を上げて微笑む。
燦 「父上、私は綺麗ですか?」
権 「えぇ、王様もさぞ見惚れることでしょう。」
燦、入口の扉を閉める。
輿、持ち上げられる。
輿従者歩き始める。
燦、輿の扉を開ける。
燦 「燕。」
燦、燕に手招き。
燕、輿に近づく。
燕 「いかがいたしましたか?」
燦 「お前は死ぬなよ。」
燕 「善処します。」
暗転

16. 王宮 (昼)
輿、王宮前に下ろされる。
下女 「謝那様、ご案内いたします。」
燦、燕、王宮に一礼する。
下女、王宮の中に向かう。
燦、燕、下女についていく。
龍(33)、明慈(39)、王宮殿の壇上に座っている。
煌(16)、王宮殿の前に立っている。
燦、煌の前に立ち、一礼をする。
煌、燦、客席に向き一礼する。
煌、燦、壇上の脇に座る。
M:軽やかな演舞に合う曲。
踊り子が演舞を始める。
4人、踊り子の演舞を見る。
暗転

17. 徳恕宮 (夜)
下女 「こちらがお部屋になります。」
燦 「えぇ、ありがとう。」
燦、部屋に入る。
燦、燕座って扉を見つめる。
下女、部屋から下がる。
燕 「謝那様。」
燦 「えぇ。」
燦、髪から千本通しを引き抜く。
燕 「謝那様、どうかご無事で。」
燦、燕の肩に手を置く。
燦、自分の部屋を出る。

18. 王宮殿(夜)
燦、王宮殿の前に来る。
燦 「お取次ぎを。」
下女 「下の者が見えませんが?」
燦 「父上の元に遣いを出しています。」
下女 「はぁ。」
下女、怪しむ。
燦 「お取次ぎを(ちょっと凄む)。」
下女、顔を引きつらせる。
下女 「王様、謝那妃のお越しです!」
龍 「通せ。」
龍、奥に座っている。
燦、王の部屋に入る。
龍 「おお、煌の妃ではないか。」
燦 「今日はお招きいただきありがとうございます。」
下女、茶を持ってくる。
龍 「うむ。さぁ、少し茶でもどうだ?」
燦 「ありがとうございます。今日はささやかですが、花を持って参りました。」
龍 「花など見受けられないが?」
燦、懐から紙包みから飾り花を取り出し、龍と自分の茶の器に入れる。
龍 「おぉ、花が開いた。これは素晴らしい。」
燦 「飲んだ後の香りも素晴らしい代物です。ぜひ披露させて頂きたく。」
燦、茶さじで龍と自分の茶を軽くかき回す。
龍 「ふむ、では頂くとしよう。」
龍、器に口をつける。
燦、にっこり微笑む。
龍、茶を飲んだ直後苦しみだす。
龍 「世子妃、そなた、何をした?」
燦、微笑みを袖で隠す。
燦 「いいえ、何も。」
龍、床に倒れこむ。
燦 「ただ、あなたの運がここで尽きた、それだけです。」
燦、龍と自分の器から飾り花を取り、懐にしまう。
燦、王宮殿を出る。
燦、足早に徳恕宮に向かう途中、斬とぶつかる。
燦、睨み上げる。
斬、燦の顔を見て驚く。
斬 「あなたは!」
燦、斬から目を逸らし、足早に立ち去る。
斬、軽く追う。(2、3歩)
暗転

19. 徳恕宮 (夜)
燕、徳恕宮の前に立っている。
煌、徳恕宮に来る。
煌 「取り次げ。」
燕 「申し訳ありませんが、ただいま謝那様は不在でございます。」
煌、眉間にしわを寄せる。
煌 「何?入ってそうそう放浪しているというのか。」
燕 「夜風に当たっておられます。中でお待ちいただくように仰せつかっております。」
煌 「分かった。」
燕、扉を開ける。
煌、部屋に入る。

数秒の間。

燦、徳恕殿に来る。
燕 「お戻りですか、世子妃様。」
燦 「えぇ、世子様は?」
燕 「中に。」
燕、扉を開ける。
燦、部屋に入る。

庭、消灯(ぼかし)

煌、寝床にあおむけで眠っている。
燦、煌と机を一瞥する。
燦 「煌、今日がお前の命日になる。」
燦、袖から千枚通しを引き出し、深呼吸をする。
燦、煌に跨り千枚通しを煌の体に思いっきり振り落とす。
煌、片手で燦の腕を止める。
煌 「やはりお前であったか。」
燦、煌の腕を払おうと抵抗する。
煌、燦の腕を掴み、布巾で縛り上げる。
燦 「離せ!」
煌 「世子の命を狙っておいて『離せ』だと?愚民ごときが笑わせる。」
燦 「何だと!?」
燦、煌を睨む。
煌、燦の服の帯に手をかける。
燦、驚く。
煌 「何を驚いている?今日は初夜だ。何をされるか分かっているだろう?」
燦、固まる。
煌、帯を解く。
燦、抵抗する。
燦 「や、やめ……、嫌だッ!!」
煌、燦の服を荒々しくはだける。
煌 「なんだ、男ではないか。通りで貧相な体つきだとは思ったが。」
燦 「殺す、貴様を殺してやる!!」
煌 「この状態で何をしようというのか。」
燦、煌を睨む。
煌 「やれるものならやればいい。しかし俺に傷一つつけられても、お前には死を迎える運命のみだ。」
燦、鼻で笑う。
燦 「煌様こそお戯れが過ぎます。」
煌 「戯れだと?そなた俺を愚弄するつもりか。」
燦 「王室の者も、愚民と同じ赤い血が流れる身のくせに、下の者の命の価値を愚弄するとは。」
煌 「そなた……。」
燦 「その愚かな考えが妹を亡きものにしたと思うと虫唾が走ります。」
燦、煌、睨み合う。
煌、舌打ちをして部屋を出る。
庭、点灯。
燕、煌の姿を見て驚く。
煌、燕を一瞥して徳恕殿から出ていく。
燕、中部屋に飛び込む。
燕 「謝那様!!ご無事ですか?」
燦 「燕、少し手を貸してくれぬか?」
燕、部屋に入る。
内官たち、部屋に鍵をかける。
燕 「謝那様……なんと酷い。」
燕、燦の手首の布巾を解く。
燕 「腕に跡が……。」
燦 「あぁ。こんなの平気だ。」
燕 「燦様。」
燦 「その名はもう呼ぶな!」
燕 「お許しを。」
燦、飾り花を燕に渡す。
燦 「飾り花を処分なさい。」
燕 「ない、して王は?」
燦 「発作で亡くなった。」
燕 「かしこまりました。」
燦、髪飾りを外す。
燕、荷物を背負う。
燦、燕、裏の扉を引く。
燦 「燕、表を確認して。」
燕、表の扉を引く。
燕 「謝那様。」
燦、裏の扉の前で崩れ落ちる。
燕、燦の体を支える。
燕 「申し訳ありません。謝那様。」
燦 「お前は悪くない。俺が……俺が煌を潰していればッ。」
燕 「燦様。」
燦、燕を見る。
燦、燕を抱きしめる。

20. 徳恕殿 (朝)
下女、煌、徳恕殿の前に来る。
下女 「あさげをお持ち致しました。」
燦、燕、体をこわばらせる。
燦 「入れ。」
内官、扉を開ける。
女官、煌に膳を渡して下がる。
煌、徳恕殿内に入る。
煌 「何を情けのない面構えをしている。」
燦、燕、顔を上げ驚く。
燦 「煌ッ、なぜこちらに。」
内官、扉を閉める。
煌 「そなたがやけに早く果てた故、俺がわざわざ持って来てやったまでだ!」
燦、燕、固まる。
煌 「どうした?これが聞こえればお前の行いはすべてなかったことになろう。」
燦、煌を睨む。
燦 「御慈悲でも与えて頂いたおつもりですか?白々しい。」
燕 「謝那様。」
燕、燦を抑えようとする。
煌 「ほう、側付は状況がよくわかるようだな。」
燦 「状況ですと?所詮死ぬ運命……これ以上何を理解しろというのですか?」
煌 「なんだ、理解はしていたのか。雄猿ではなく人間だったのだな。」
燦、怒りで言葉を失う。
煌、膳を燦の前に置く。
煌 「食え。」
燦 「死ぬ前に食わすなど勿体ないとは思いませんか?」
煌 「お前の生き死には俺が決めることだ。お前ごときに権限などやってない。」
SE:燦の腹が鳴る音
燦、顔をしかめる。
煌 「腹が減ってはこれからに耐えられんだろう。今のうちに食らっておけ。」
燦、膳から顔を逸らす。
煌 「餌付けされたいか?」
煌、膳の前に座り飯を救う。
燦 「結構です。」
煌、燦の口に飯を突っ込む。
煌、笑いながら徳恕殿を出る。
燕 「謝那様だけでもお食べになってください。」
燦、食事を始める。
燦 「すまぬ、燕。すまぬ、妹よ。」
燕 「謝那様。」
燦、悔し泣きをする。

21. 徳恕殿 (朝)
燦、燕、徳恕殿にこもっている。
燕 「謝那様。」
燦 「今はとにかくここから出なくては。」
燕 「そうは言ってもどうやって?」
燦、考え込む。
女官、徳恕殿に来る。
女官 「世子妃様、伝言に伺いました。」
燦 「入れ。」
女官、部屋に入る。
燦 「何事だ?」
女官 「王様が……、王様がお亡くなりになりました。」
燦 「何ですって?」
燦、燕、徳恕殿を飛び出す。

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