ミルク or ブラック 恋愛

パティシエ・大野重郷が働いている店に大野の高校時代の好きな人、高遠琴実がやって来るが、記憶喪失になっていた。記憶を取り戻す手伝いをする大野に恋をする高遠。しかし大野の好きな人は「記憶をなくす前の自分」である事が苦しく…。
えんのし 6 0 0 11/15
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第一稿

ミルク or ブラック?
第一稿

企画 モノクロプログラム
脚本 珠瑠璃 彩虹

登場人物
高遠琴実 女 法律学科の大学生。
大野重郷(しげさと) 男 琴実の高 ...続きを読む
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ミルク or ブラック?
第一稿

企画 モノクロプログラム
脚本 珠瑠璃 彩虹

登場人物
高遠琴実 女 法律学科の大学生。
大野重郷(しげさと) 男 琴実の高校の同窓生。
瑠香舞人 男 「パティスリー マイ」の店長
女子高生 3人
男子高校生 2人
琴実の両親
親戚
琴実の義母、義父、義姉

 〇琴実の幼少期。琴実の実家

琴実の母「琴実、ごはんできたわよー」
子供の琴実「はーい!」
琴実の母「お野菜も残さず食べるのよ」
子供の琴実「はぁーい」

 〇食べる琴実

琴実の父「琴実はいい子だもんなー」

 〇コップをひっくり返す子供の琴実。

子供の琴実「えーーーーえん」
琴実の母「大丈夫よ、大丈夫ー」

 〇子供の琴実を抱き上げる琴実の母。

琴実の母「うまくできなくても、みーんなあなたのことが大好きよ、琴実…」

 〇琴実の部屋(アパート)

琴実(朝目が覚めたら、見知らぬ部屋に寝ていた。)
琴実「ここ…どこ? え? 大人になってる…? あたしって…今幾つだっけ? (カレンダーを見て) 令和…? 夢じゃなさそう…」
琴実(断片的には覚えてる。ずっと逃げ続けてきたこと…それから…確か高熱を出して寝込んでたこと…)
琴実「熱は下がってるみたいだけど…」

 〇法律学科の参考書が山積みになっている部屋を見渡す。パラパラとめくるが、全く理解できない。

琴実「何これ? あたしが勉強してたの? 怖っ…」
琴実(学生みたいだけど、毎日どこに通ってるかも分からないし、ここがどこなのかも分からない。まずやるべきことは…)
琴実「お金…銀行の暗証番号も分からないし…両親がどこにいるかも分からない…とにかくアルバイトを始めよう! 最初に目についたチラシに応募するわ!」

 〇パティスリー マイの前に「アルバイト募集中!」のチラシ。

琴実(ケーキか…滅多に買ってくれなかったからほとんど知らないけど…行けるかな?)

 〇パティスリーマイの中に入る琴実。

★大野「いらっしゃいませ!」
★琴実「あの…アルバイトの応募をしたいのですが」
★大野「えっ? は、はい。あの…高遠さん…だよね?」
★琴実「え?」
★大野「オレ、彌勒高校の大野だよ!」
★琴実「あ…ああ~」
★大野「偶然だね! あっ、チョコレート平気?」
★琴実「いや、チョコレートはちょっと…」
琴実(苦いから苦手なんだよね)
★大野「あ、そ、そうだよね~…じゃあこれあげるよ、ストロベリーのマカロン! 俺が作ったんだ」
★琴実「あ、ありがとう」
★大野「待ってて今店長呼んでくるから」

 〇中に入る大野。

琴実(いきなり高校の同級生に会えるのは…ラッキー…なのかな? 昔の私のこと、知ってるかも。でも記憶喪失のことは隠しておかなきゃ。雇ってくれないかもしれないし…)

 〇後日、パティスリーマイ

舞人「僕がパティスリーマイの店長、瑠香 舞人です。大野君の強い推薦もあって採用しました。高校では主席だったんだって?」
琴実「えっ!? は、はい…?」
舞人「そんな優秀な人材が入ってくれるなら大歓迎だけど、学業に支障はないのかな?」
琴実「いえ、あの…学校は…辞めたって言うか」
舞人「? …高遠さん。失礼だけどもしかして結婚してる?」
琴実「へっ!? い、いえいえとんでもない!!」
舞人「そっか。いや、大野が気にしてたから。まぁ良いか、じゃあ仕事の説明をしていくよ」

 〇場面転換 休憩室

 〇舞人が入ってくる

大野「あっ店長、高遠さんどうですか」
舞人「どうもこうもお前…恋は盲目って言うからなぁ…」
大野「へっ!? な、なんでそんな話に」
舞人「彼女はハッキリ言って、あんまり使えないぞ。遅刻はするし、手順は覚えない、元気もないし、どっちが客か分からん有様だ」
大野「ええ? そんな、待ってください高遠さんは…」
舞人「雇った手前しばらくは働かせるが…もういい。で、どうだ。ソメットのアイデアは」
大野「はい。形にはなってきてます」
舞人「そうか。期待しているぞ」
大野「はいっ」
舞人「あと彼女、結婚はしてないそうだ。せいぜい頑張れよ」
大野「えっ…だ、だから店長そんなんじゃないですって」
大野(でも、あの高遠さんにしては変だな…やっぱり妊娠してる…?)

 〇琴実、重い荷物を運ばされている。躓く琴実。

琴実「きゃっ」
大野「おっと」

 〇段ボールを受け止める大野。

大野「店長も人使い荒いなぁ」
琴実「お、大野君…ごめんなさい」
大野「いやいや。こっちこそ、最近彼女にフラれてピリピリしてんだ、店長。コンペも近くてさー」
琴実「そんな時に来てしまって…ゴメンね、大野君。私、期待に応えられそうにないみたい。せっかく推薦してくれたのに…。」
大野「気にすることないよ。調子が悪いときは誰にだってあるっしょ」
琴実「ねぇ私、高校生の時、大野くんとは仲良かったのかな」
大野「えっ? い、いや…なんで?」
琴実「…高校生の頃の私って、どんな子だったのかな。」
大野「え? どういう事?」
琴実「大野君、こんなお願いして悪いのだけど、話したい事があるの…」

 〇帰りにお祭りに寄る高遠と大野。

大野「つまり…子供の頃以降の記憶が…熱で飛んでった?」
琴実「大野君には申し訳ないけど、私は高校の頃の高遠琴美じゃないんです。でも、店長には内緒にしてほしいの。バレたら今度こそ絶対クビになっちゃう」
大野「そうだったのか…」
琴実「私、これからどうしたら良いんだろう…勉強もやり直さなきゃいけないのかな…(涙目) …? どうしたの?」
大野「い、いや。高遠さんがそうやって悩んでる姿って初めて見たから…ってごめん。昔の高遠さんと比べるようなことして。でもつい…ね。あっでも今ならまだ間に合うんじゃない? 俺と話してたら記憶戻るかも。」
琴実「あっ、ありがとう…大野君だって忙しいのに…」
大野「いやぁ~まぁ…実を言うとさ、俺、高遠さんの事いいなって思ってたんだ」
琴実「何の話?」
大野「つまり、好きってこと…記憶ないから言えるけど…だからちょっと嬉しくてさ…」
琴実「あの、えっと…ご、ごめんなさい。私大野君のこと何も知らないし…そもそもまだ子供だし…そういう余裕は」
大野「いや分かってるって。まぁ、過去形だから。あっ、あのりんご飴美味しそう。りんご飴ってさ、どうやって作るか知ってる? あっ、りんご飴って知ってる?」
琴実「知ってるよ。基本的な常識は覚えてるみたい」
大野「どんな味か気になるなぁ…買ってきていい?」
琴実「いいよ」

 〇買ってきたりんご飴を渡す大野。

大野「悪いね。コンペも近いし…何かのネタになるかもって」
琴実「大野君は、どうしてパティシエになろうと思ったの?」
大野「小さい頃からお菓子作りが好きで…最初はただの趣味だったんだけど…おっ、美味いじゃん」
琴実「ほんとだ、美味しい! 普通の砂糖と違うね」

 〇初めて笑顔になる琴実。

大野「あっ、思い出した。高遠さんの事」
琴実「え、大野君が?」
大野「高遠さん、俺の作ったお菓子にアドバイスくれた事があったんだ。そん時のアドバイスがすごく的確だったんだよ。もしかして、お菓子作りの才能あるんじゃないかな…俺明日店長に相談してみるよ! あっごめん。勝手に…あの…高遠さんが良ければだけど」
琴実「わ、私が…お菓子作り?」

 〇幼少期、お菓子を食べる自分を思い出す琴実。

琴実(思い出した…親に隠れて、よく買って食べてたんだっけ)
琴実「大野君さえ良ければ…お願いします」
大野「分かった。じゃ、俺はこれで…」
琴実「あ、あの…も、もう少し一緒にいてくれない?」
大野「え」
琴実「一人になるとすごく不安になっちゃって…」
大野「へへっ…いいよ!」
琴実「ありがとう…ほんとは迷惑掛けたくないのに…」
大野「いいって。そういう高遠さん、レアだから」
琴実「お、面白がってるでしょ!?」
大野「ゴメンて。そう言えばチョコレートは、食べられないの?」
琴実「そう、苦くて苦手なの」
大野「苦くて苦手。お子様じゃん」
琴実「だから、記憶が子供なんだってばー」

 〇パティスリーマイ

舞人「…事情は分かった。期限は3日だ。その間は店の材料を使っていい。それまでに俺を満足させられるお菓子を作らせてみろ。でなければ、高遠君の雇用契約は終わりにする」
大野「えぇ!? 3日で一人前になるなんてどう考えても無理ですよ!」
舞人「こっちだって慈善事業でやってる訳じゃない。その子がパティシエになりたいなら、然るべき学校に行ってから応募してきてもらいたいもんだ。それに、俺はお前のキューピッドでもないしな」
大野「だからそれは、高遠さんの記憶が…」

 〇琴実、遅刻してくる。

琴実「ご、ごめんなさい遅刻しました…」
舞人「そっちの都合など知らん。期限はソメット・レ・モンターニュと同じ、3日だ。良いな。二人とも、三日後に俺に提出するように」

 〇去る舞人。

大野「…ちぇー」
琴実「ご、ごめんなさい。私…」
大野「見てろよ店長の奴。ビックリさせてやる。なっ高遠さん」
琴実「大野君、やっぱり私、バイト辞めます」
大野「えっ、ど、どうして…」
琴実「大野君が私に付き合ってくれるのは、昔の私を知ってるからなんだよね…これ以上迷惑掛けられないし…今の私には多分無理だよ」
大野「…そんな事ない。高遠さんは誰より努力家なんだ。できない事なんか…」
琴実「でも…」
大野「あ、ご、ごめん。今の高遠さんに言っても仕方ないよね…。けど、オレを信じてもう少しやってみてよ」
琴実「大野君…あ、ありがとう…」
大野(そうだ。高遠さんはあのとき、泡が少なすぎるって言った。あれはマカロナージュのしすぎって意味だったんだ。その通り、マカロナージュを減らしたらもっと美味しくなった。他の皆は言ってくれなかった…)

〇過去回想。高校 新学期の春

女子生徒「大野くーん、ねー、今日もあるー?」
大野「おうっ、あるぜー」

 〇ケーキを取り出す大野。

女子生徒「キャーッ」
女子生徒2「かわいーっ」
女子生徒3「ほんとにタダでもらっていいの?」
大野「おう、シュミだしなー」
女子生徒「ありがとう!」

 〇去っていく女子生徒たち。

男子生徒「んじゃ俺ら食堂行くわ」
大野「おっ。じゃーなー」
男子生徒「慈善活動も大概にしろよな」
大野「良いだろ、好きでやってんだから」
男子生徒2「キャ~大野君ステキ~恋しちゃ~う」
大野「茶化すなよ!」

 〇去っていく男子生徒たち。昼休みに誰もいなくなる教室。琴実が入ってくる。

大野「あ…」
大野(高遠さんだ。誰とも馴れ合わないって噂だけど…)
★大野「高遠さん、昼飯食わないの?」
★琴実「…模試が近いから」
★大野「あっそう…あそだ、オレの作ったマカロン食べる?」
大野(まぁ、高遠さんがお菓子なんて食べるわけ…)
★琴実「マカロン…? いいの?」

 〇ぱあっと顔が明るくなる高遠。

★大野「う、あ、ああ、趣味で作ってんだ。お菓子好きでさ。今日も材料買ってたら昼飯代なくなっちゃってさー」

 〇マカロンを箱から取って食べる高遠。

大野(あ…指、長いな…あの主席の高遠さんが、オレの作ったお菓子を食べている…これって物凄くレアなのでは?)
★琴実「…プロを目指してるの?」
★大野「え? いや、趣味だけど」
★琴実「プロになるつもりがないのに、やる意味なんてあるの?」
★大野「え?」
★琴実「これ、お金。」
★大野「えっそんな」
★琴実「(お金を押し付ける琴実)借りは作らない主義だから。私はもう少しふっくらしてるほうが好き。泡が少なすぎって感じだったわ。やっぱり図書室で勉強する。じゃあね」

 〇口に付いたクリームを指で取りながら去る琴実。

大野「…ふっくらしてる方が…好き」
大野(俺が真剣に将来のことを考え出したのは、それがきっかけだったんだ。)

 〇琴実がパティスリーマイに来た日のこと。

★大野「いらっしゃいませー」(★は前の収録の生かし)
大野(え、あれって…高遠さん…だよな?)
★琴実「あの…アルバイトの応募をしたいのですが」
★大野「えっ? は、はい。あの…高遠さんだよね?」
★琴実「え?」
★大野「オレ、彌勒高校の大野だよ!」
★琴実「あ…ああ~」
大野(高遠さん、普通に考えてまだ大学生だよな…? あ、掛け持ち…? さすが高遠さん、偉いなぁ…)
★大野「あっ、チョコレート平気?」
★琴実「いや、チョコレートはちょっと…」
大野(チョコレートが食べられない…? 妊娠中の女性は胎児に悪影響を及ぼすためカフェインを取ってはならないと言う…バイト…結婚…まさか…)
★大野「あ、そ、そうだよね~…じゃあこれあげるよ、ストロベリーのマカロン! 俺が作ったんだ」
★琴実「あ、ありがとう」
★大野「待ってて今店長呼んでくるから」

 〇厨房に行く大野。ケーキを作っている舞人。

大野「…店長~」
舞人「何だ、何かあったか」
大野「知りたくなかった…高遠さんが結婚したなんて…」
舞人「は?」
大野「あの…店長、高遠さんはすごい頭が良いんすよ、雇って損はないですよ!」
舞人「は?」

 〇回想終わり

大野(高遠さんが結婚してなくてちょっと安心したけど、まさか記憶喪失なんて…)
琴実「…野君。大野君」
大野「あっごめん考え事してて…何?」
琴実「大丈夫? 私、迷惑になってるんじゃ…」
大野「いや~大丈夫。楽しいから」
琴実「あの…ホイップクリームがうまく泡立たないの」
大野「ボウルに水が一滴でも付いていると、泡立ちにくくなるよ」
琴実「そうなんだ。これからは気を付けて見てみるね」

 〇真剣に泡立てる高遠。

大野「…なんか、前の高遠さんに少し似てきたね」
琴実「え? 本当に?」
大野「遅刻もしなくなったし…なんか、目つきがさ、しっかりしてきたって言うか」
琴実「そうなんだ」
大野「高遠さんはさ、凄い努力家なんだよね。噂では親がいないから、悟ってるんだとか言われててさ…やっぱり俺たちとは覚悟が違くて…高遠さん?」
琴実「親がいないって、どういうこと? 私の両親…死んでるの?」
大野「あっ…えっと…うん…そう聞いてたけど…」
琴実「………」
大野「…あの…大丈夫?」
琴実「…ごめんなさい、思い出せない…」
大野「あ、そっか。無理に思い出さない方がいいのかな。そっそれに噂話で聞いただけだったからほら、分かんないし…」
琴実「私、誰に育てられてたんだろう。よっぽど思い出したくないことなのかな」
大野「あの頃の高遠さんはピリピリしてたから…けっこう辛かったんじゃないの?」
琴実「そっか…じゃあ私、今の方が幸せなのかも。大野君が助けてくれたし…」
大野「そっか…そいつは良かった! でも俺は、前の高遠さんも好きだけど」
琴実「えっ?」
大野「クールビューティー? みたいな」
琴実「そ、そうなんだ…。じゃあもう少し頑張ってみるね、思い出すの」
大野「無理すんなよ。記憶喪失用の福祉制度とかもあるし? 多分…いや、ないか…」
琴実「もし記憶が戻ったら、両親のお墓参りに行かなくちゃ…」
大野「…そん時は俺も行くよ。不安だろ?」
琴実「え? 一人で行けるわよ」
大野「あ、なんか今の…昔の高遠さんっぽかった!」
琴実「ほ、ほんと?」
大野「ありがとう高遠さん、オレもなんかやる気出てきた。二人で明日の試験、合格しよう!」
琴実「あっ、うん…」

 〇翌日。

舞人「約束の日だが…準備は出来ているか?」
大野「はい、店長」
舞人「手加減はしないからな。俺の舌にかなわなければ今回の出品は延期、高遠君は辞めてもらう」
琴実「は、はい」
大野「まず、俺のからです。りんごのドゥーブルフロマージュです」
舞人「ふむ…酒を使った大人の味に仕上げているな。ブランデーと…リキュールも入ってる。使っている砂糖が独特だな。和三盆か。なるほど。では次は高遠君か」
琴実「は、はい。店長。私にこんなチャンスを与えていただいて、本当にありがとうございました。私なんかが…」
舞人「良い。さっさと出しなさい」
琴実「う…こちらが…オペラです」
舞人「オペラか。チョコレートの扱いは上級者向けだがな…ふむ、よく混ざっている。焼き加減も悪くない」
琴実「!」
舞人「まあ当然、店に出せるものではないがな」
琴実「あ…そうですよね…。」
舞人「さて…高遠君」
琴実「はい」
舞人「君に一つ聞きたいことがある」
琴実「はい」
舞人「お菓子は好きか?」
琴実「…はい、大好きです」
舞人「うむ…高遠君。このお菓子には君の気持ちが籠っている。俺には分かる。正直、この短期間でここまで仕上げてくるとは驚いた。認めよう。」
大野「え、それって…」
舞人「二人ともな。大野はソメット・レ・モンターニュへの出品を認めよう」
大野「よ、ヨッシャーーーー!」
琴実(不思議な感覚だ…今までずっと自分の人生が他人事のような感覚だったのに…今私は自分の人生を歩んでいる。今までずっと…? あっ)

 〇過去回想。葬式

親戚「ほら見なさい、あなたの両親よ」

 〇両親の死体を見る琴実。

琴実(私はその時気付いた。人は簡単に死ぬってこと。それまでに生きた証を残さなきゃいけないってこと)

 〇テストを見せる琴実。

義姉「何着飾ってるの? ブスのくせに」
義父「ふん、また90点か。残りの10点が何故取れない?」
義母「またこんなもの買ってきて。あなた、お金がないの分かってるんでしょうね? あんたを大学に行かせるだけでどれだけお金が掛かると思ってんの?」
琴実「お金には困ってないはずじゃ…」
義母「はいかいいえで答えなさい! あんたの両親は落ちこぼれだったんだから。そんな子を引き取った私たちがみっともないと思わないの」
琴実(この世は、みんな冷たいってこと。)

 〇学校

女子生徒「高遠さん、今日空いてる? カラオケ行かない?」
琴実「ふん、せいぜい遊ぶといいわ。そうしているうちにどんどん落ちこぼれて、将来後悔するのも知らないで」

 〇去る高遠。

女子生徒「何アイツ。キモッ」
女子生徒2「もう行こ」
琴実(そうよ私には時間がないの…勉強して…生きていかなくちゃいけない…この厳しい世の中で…遊んでる暇なんかないのよ)

 〇教室に入る琴実。

★大野「高遠さん、昼飯食わないの?」
★琴実「…模試が近いから」
★大野「あっそう…あそだ、オレの作ったマカロン食べる?」
★琴実「マカロン…? いいの?」
琴実(はっ…い、いけない。お菓子なんて無駄な食べ物に浮かれて…)
★大野「ああ、趣味で作ってんだ。お菓子好きでさ。」
琴実(お、おいしそう…いいなぁ…)
琴実「いただきます…」

 〇食べる琴実。

琴実(美味しい…大野君はお菓子が好きなのね…さぞ幸せでしょうね、こんな仕事に就けたら…)
★琴実「…プロを目指してるの?」
★大野「え? いや、趣味だけど」
琴実(は?)
★琴実「プロになるつもりがないのに、やる意味なんてあるの?」
★大野「え?」
琴実(いけない、また子供に暴言を…私と彼らは違うのに)
★琴実「これ、お金。」
★大野「えっそんな」
★琴実「借りは作らない主義だから。私はもう少しふっくらしてるほうが好き。泡が少なすぎって感じだったわ。やっぱり図書室で勉強する。じゃあね」

 〇口に付いたクリームを指で取りながら去る琴実。

琴実(大野重郷…あんなに幸せそうに笑って…いい気なもんだわ! 好きなことができてさぞ幸せでしょうね。あんたと違って、あたしはいい子なのよ。そう、あたしはいい子…あたしのほうがずっといい子なのに…どうして涙が出るの?)

 〇大学に進学する琴実。勉強している

琴実「次は法規試験ね…」
琴実(大野重郷のことも…全部見なかったことにして…私は勉強をしなくちゃいけないの…就職しなくちゃいけないの! それで…就職したら…そうしたら…好きなだけお菓子が食べたい…)

 〇歩いている琴実。

大学の同級生「琴実、大丈夫? 無理し過ぎなんじゃない?」
琴実「大丈夫…。頑張らないと…」
大学の同級生「ちょ、ちょっと琴実」
琴実「私もう、帰るね…」

 〇部屋

琴実「はぁ…はぁ…」
琴実(熱、下がらないなぁ…私、何してんだろ。何の為に生きてるの? 私の生まれてきた意味って何…?)

 〇回想終了

琴実「大野…大野重郷君?」
大野「…そだけど」
琴実「…プロに…なったんだね」
大野「え? まさか…、覚えててくれたの?」
琴実「(顔真っ赤にして)こんな醜態を見せてしまって…忘れて頂戴…」
大野「…いや、俺も君がいなかったらパティシエになってなかったかもしんないし。記憶戻ったんだね」
琴実「店長、今までご迷惑をお掛けして大変申し訳ございませんでした。これからは今までの分も取り返して誠心誠意働きます。」
舞人「うん、いい顔になってきたな」
大野「…それじゃやっぱり、大学には戻るのか…?」
琴実「戻るわけない! 私…お菓子が好きなの! この世界で生きていく!」
大野「…そっか! …あっ! じゃ、じゃああれは忘れて! あの…お祭りん時言ったやつ。あれは昔の話だから」
琴実「あら…そうなの…残念だな…」
大野「いぇ!? そ、それって…」
琴実「ふふっ、冗談よ」
大野「く、くっ…」
舞人「リア充よ…爆発しろ…」
大野「あ、て、店長まだ居たんすか」
舞人「やっぱりクビだ!」
大野「そりゃないでしょ!」

<終わり>

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