雨に溺れる ドラマ

雨の日にしか現れない彼女。 そこには、切なくさみしい理由があった。
関谷 恵 7 1 0 12/01
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第一稿

今日は雨だ。

僕は朝起きて、いつもどおり不健康的なファストフードを買いに家から約10分程度の場所を目指して歩いていた。
車もあるけれど、距離も近いし。
何より、今日は“そ ...続きを読む
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今日は雨だ。

僕は朝起きて、いつもどおり不健康的なファストフードを買いに家から約10分程度の場所を目指して歩いていた。
車もあるけれど、距離も近いし。
何より、今日は“そんな気分”だった。

安物の傘をさして歩く。
スーツを身に纏った人たちが行き交う中、僕は私服でその中を通り過ぎる。

だいたい家から3分ほど歩いたところで
ふと、家の近くの神社が目にとまった。
〈氷川神社〉ここは小さな神社だけれど古くからある神社で、縁結びの神様が祀られているらしい。
歩くスピードに合わせ、視線は神社の中へとシフトする。

そこには一際目立つ、赤い傘をさした女性がいた。
黒いスカートに白いシャツ。
お参りをしているから後姿しかわからないが、若そうだ。

こんな雨の日に、よくやるなあと思う。
僕はさっさと目的のものを買って、さっと家に帰りたい。


しばらく歩き
デパートに入ると、一角にあるファストフード店へとまっすぐ進む。
カウンターでいつも頼むバーガーセットを注文する。
「不摂生でいつか倒れるわよ」と母親に口うるさく言われるが、懲りずに通い続けている。
仕方がない。美味いものは美味いのだ。

注文したものを受け取ると家へと帰路を辿る。
ふと、先ほどの神社のことを思い出し、たまにはお参りも悪くないと帰りに寄ってみることにした。
さすがにもうあの女性はいないだろう。


冬に入りかけの朝の寒さに手をこすりながら神社へ足を運ぶ。
と、それまで順調に進んでいた僕の足は動きを止める。

(まじかよ・・・)

赤い傘の女性が、まだいたのだ。
さっき見かけてからまあまあの時間は経ったはずだ。
何かそんなにお願いしたいことでもあるのだろうか。

僕は少しの不気味さと不思議さを覚えながらも
決めた予定を変更するのが嫌な性分故に、その人の後ろへと並ぶことにした。

ザッザッと少し大きい音を立てて歩く。
気付いてどいてもらえるように。
なんというか、僕は結構、嫌な奴かもしれない。

案の定、僕が女性まであと2mくらいのところで
女性はこちらに気付いて横にずれた。
それに一礼して、先ほどまで女性が立っていた場所に立つ。

神社に来たからとてたいそうな願いはない。
そもそもぼくは無神論者だ。
2礼2拍1礼をして

(仕事がうまくいきますよーに)

と、ありがちなお願い事を唱える。
未だ隣にいる女性が気にはなるが、用事は済んだし帰ろうと
踵を返した、そのとき。

「あ、あのっ」

少しハスキーな透明感のある声が僕を引きとめた。
びっくりして間抜けな顔をしながらも振り向く。

「あの、これ、あなたのですか…?」
女性の差し出された手にはライターがあった。
ぼくは自分のポケットを確認し、いつもタバコとセットなはずのライターがないことに気付く。

「あ、それ僕のです。…すみません、ありがとうございます。」
女性の手からライターを受け取る。
僕はそのとき初めて女性の顔をみた。

少し凛々しいきれいめな顔立ち、背丈は僕と同じくらいだろうか、少し高い。
人見知りな僕は目をすぐにそらすとお礼を言って立ち去った。


これが、僕と彼女の
初めてで、初めてではない出会いだった。

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