BIRDREAMER ドラマ

バードリーマー。 戦前に一世を風靡したヒーローだ。 現在はイグルヴ戦争のための軍事支援を行い大富豪となったという。 過去に栄光を掴み現在も莫大な富を得た男。 それでも彼は、未だ空を見上げていた。
甲斐てつろう 20 0 0 09/02
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第一稿

【登場人物】
山本大地(35):元ヒーローの軍事協力者
山本千尋(30):大地の妻
山本翼(7):大地と千尋の長男
山本美空(2):大地と千尋の長女
山本茂樹(享年63) ...続きを読む
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【登場人物】
山本大地(35):元ヒーローの軍事協力者
山本千尋(30):大地の妻
山本翼(7):大地と千尋の長男
山本美空(2):大地と千尋の長女
山本茂樹(享年63):大地の父
山本良子(70):大地の母
結城統(65):千尋の父で日本軍の元帥
吉良光流(29):元ヒーローのオペレーター
香川侑(33):元ヒーローのメカニック
坂本莉子(34):元ヒーローの救護担当
西山玄徳(43):元ヒーローのプロデューサー
川島恵(23):かつて大地が助けた少女
ウスマン・イスム(38):イグルヴ軍の首領

その他



【本編】
○ニュース映像 (回想)
  バードリーマーと呼ばれるヒーローがポーズを決めて
  飛び立つ。
ナレーター「空を駆け、人々を救う希望の象徴バードリー
 マー!」
  映像ではバードリーマーが火事の現場から人々を救う
  様子が。
  バードリーマー、救われた子供たちの頭を撫で握手を
  交わす。
ナレーター「今日も明日も何処へでも! バードリーマー
 はあなたの夢を守ります!」
  映像には日本だけでなく海外の子供たちの様子も映
  る。

○首相官邸 (回想)
  バードリーマー、首相と握手を交わす。
  その首には勲章が掛けられていた。
首相「素晴らしい活躍だよ、その羽の提供を拒んだ軍には
 お叱りを入れないとね」
バードリーマー「いえ、ありがとうございます。それで話
 とは?」
首相「そうそう、おり言ってお願いがあってね」
  首相、可憐な女性を紹介する。
  女性、頬を赤らめながらバードリーマーと握手。
首相「ウチの娘だ、もし良ければ貰ってやってくれない
 か?」
バードリーマー「え、私がですか?」
首相「君こそ相応しいと思ったんだよ、どうだい?」
  バードリーマー、娘を見つめる。
  結城千尋(当時23)、震えた声で言う。
千尋「あの、千尋です……っ、活躍は存じております。そ
 んな方と結婚できたら私も幸せです……っ」
首相「いやぁ、娘は君のファンでね。何だっけ、ガチ恋?
 だったっけな」
千尋「ちょっとお父さんっ!」
  千尋と首相、楽しそうにする。
  バードリーマー、その様子を見つめる。
首相「それでどうかな? なかなか綺麗に育ったと思う
 が」
  バードリーマー、少し間を空けて答えた。
バードリーマー「……はい、是非お願いします」
  首相と千尋、表情が明るくなる。
首相「その答えを待ってたよ、これから息子としてもよろ
 しく頼むよ」
バードリーマー「はいっ!」
  × × ×
  バードリーマーと首相、千尋や他の要人に囲まれなが
 ら握手。
  その様子を写真に撮られた。

○ダイジェスト
  結婚式。
  大勢の政府要人が参列していた。
  強盗から人質を救うバードリーマー。
  救われた人達から感謝状をもらう。
  子供たちとイベントで握手するバードリーマー。
  そしてニュース映像でテロによる爆撃が。
  画面には『イグルヴによる宣戦布告』と表示。
  司令室で揉めるバードリーマーチーム。
  戦場でバードリーマーと同じ翼を装備した部隊が爆
  撃。
  渋谷のスクランブル交差点でデモ隊が行進。
  バードリーマーチームの集合写真が撮られ回想終了。

○メインタイトル
【BIRDREAMER】

○高級住宅地 山本家 寝室 (現在)
  バードリーマーチームの集合写真が色褪せて尚飾られ
  ており、隣には同じく色褪せた様々な勲章や子供たち
  からの手紙や写真、そして自身の結婚写真も飾られて
  いた。
  山本大地(35)、多くの段ボールに囲まれ荷解きをして
  いる。
  妻の山本千尋(30)、寝室に入る。
  飾られた写真たちを見た。
千尋「ちょっとこれ、ここに飾るの?」
大地「いいだろ別に、他に飾る場所ないしさ」
  千尋、結婚写真を手に取る。
千尋「まぁ良いけど、これの隣にあるの何かなぁ」
  大地、立ち上がり結婚写真を千尋から優しく取り元に
  戻す。
大地「全部俺の人生だよ、起きる度に思い出すんだ」
千尋「そう……」
  すると廊下の方からドタドタと足音が聞こえる。
  千尋、振り返った。
千尋「翼! 静かにしなさい!」
  千尋、寝室から出る。

○高級住宅地 山本家 居間
  息子の山本翼(7)、走り回る。
  千尋、それを注意する。
千尋「まだ段ボールあるから危ないでしょ!」
  翼、無視して走り回る。
  すると娘の山本美空(2)、泣き出す。
美空「ママぁ〜!」
千尋「どうしたの美空?」
  千尋、美空を抱き上げ慰める。
  すると翼が段ボールにぶつかり転んだ。
  翼も泣き出してしまう。
翼「ひうっ、ぐすっ……」
千尋「だから言ったじゃん……」
  千尋、美空を抱いたまま翼に駆け寄る。
  すると大地、居間にやってきてソファに座りTVを点
  ける。
千尋「ちょっと、どっちか手伝ってよ」
  千尋、美空と翼を指した。
大地「あ、ごめん……」
  大地、美空を抱き上げようと手を伸ばす。
  するとニュース番組が始まる。
  ニュース番組では戦争の様子が映されている。
  大地、ニュースに目を奪われ手を止める。
  そのままソファに座ってテレビを見つめた。
  千尋、溜息を吐いた。
  以下、画面上
  × × ×
キャスター『第一次イグルヴ戦争の続報です。飛行兵部隊
 が敵国の第4基地を撃滅した模様。残る拠点は3つとな
 ります。それに対しイグルヴのウスマン・イスム首領は
 ある映像を公開』
  画面はイグルヴ首領ウスマン・イスム(38)が公開した
  映像へ。
  字幕つきで放送される。
ウスマン『このまま進軍を続けてみろ、人質となった慈善
 団体を処刑する。彼らの命はお前らにかかっている』
  映像には多くの日本人の人質が映されていた。
キャスター『それに対し結城防衛大臣はこう答えていま
 す』
  続いて防衛大臣の回答が映される。
  結城統(65)、マスコミのインタビューに答える。
結城『攻撃を止めるつもりはありません。テロリストには
 屈しない!』
  × × ×
  大地、暗い表情を浮かべる。
  千尋、美空を抱いたままソファの隣に座った。
千尋「あ、お爺ちゃんが映ってるよ」
  画面に映る結城防衛大臣を指し美空に言う。
  間が空いた後、大地に言う。
千尋「後悔してるならさ、売らなきゃ良かったのに」
大地「いや、売らなきゃもっと悲惨な事になってたかも」
  千尋、家の中を見渡す。
千尋「この家もさ、人殺しのお金で買ったでしょ……」
大地「やめろよ、そんなこと言うな……」
  すると翼、千尋を呼ぶ。
翼「ママー、まだ痛いよ」
  千尋、翼の所へ行く。
千尋「強い子なんでしょ? 泣かないの」
  大地、死んだ目でニュースを見続けた。

○日本軍基地 会議室 (回想)
  大地、結城や軍人たちと座る。
  大地、重い表情を浮かべながら資料を見ている。
結城「君の技術があれば我が軍は大幅に戦力強化される、
 これだけの金が入れば家族も安泰だろう?」
  大地、明細をジッと見つめ黙っている。
結城「頼む、奴らの軍事力も侮れないんだ。君が直接戦う
 訳じゃない、技術提供さえしてくれれば良いんだよ」
  大地、苦しそうに顔を上げる。
結城「それにホラ、このご時世じゃヒーロー活動も出来な
 いだろ? 千尋からも生活が苦しくなりつつあると聞い
 た、もうすぐ子供も産まれるだろ? 一人の父親として
 も頼む」
  大地、もう一度明細を見た。

○バードリーマー基地 司令室 (回想)
  大地、明細や資料を机に置き座る。
  吉良光流(当時22)、香川侑(当時24)、坂本莉子(当時
  27)、西山玄徳(当時36)、机を囲み立つ。
吉良「まさか売らないっすよね……?」
大地「当然だよ、売るつもりはない」
吉良「良かった……」
大地「君らの生活もかかってるだろ、俺一人に決められな
 い」
西山「チッ、軍も俺たちを何だと思ってやがる……人助け
 の象徴を人殺しにだなんて」
香川「そうですよ、生活とか以前に私たちの誇りなんで
 す。だから言ってるじゃないですか、戦場での救助活動
 を始めれば良いって!」
坂本「それは難しいって言ったじゃない。ただでさえ銃弾
 が飛び交う中でまともに救助なんか出来ると思う? 今
 までの敵は少なくとも火事とか地震でしょ? 話が変わ
 ってくる」
香川「じゃあ莉子さんは売る事に賛成なんですか?」
坂本「そこまでは言ってないでしょ……ただ私は今のまま
 じゃマズいって話をしてるだけ。大地さんももうすぐ子
 供生まれるのに今の収入じゃマズいでしょ?」
大地「それはそうなんだけど……今の俺たちに何が出来
 る?」
坂本「何か戦争の役に立てる事はやった方が良いと思う、
 親を亡くした子供たちのケアとかはやってるけど……そ
 れだけじゃ苦しいのは事実……」
  一同、黙り込む。
西山「おいおい、何か売る空気になってないか? 俺は断
 固として反対だぞ?」
香川「当然っすよ、まだ少なからず仕事はありますから。
 いずれ本土が戦地になった時とかに救助は出来ますよ、
 ね?」
  大地、黙ったまま。
香川「今までずっと希望を与えて来たでしょ? 人殺しに
 使うなんて絶対ダメですっ……!」
  すると大地のスマホに着信が。
  画面には千尋と書かれていた。
  大地、慌てて応答する。
大地「もしもし、どうした?」
  千尋、電話越しに苦しんでいる。
千尋『うぅっ、早く来て……産まれる……』
大地「分かった、救急車呼んどくから。俺も病院に向か
 う」
  大地、電話を切り救急車を呼ぼうとする。
  すると周囲の視線が気になった。
西山「行ってあげな、この話はまた今度だ」
大地「すみません……」
  大地、電話で救急車を呼びながら出ていく。

○バードリーマー基地 駐車場 車 (回想)
  バードリーマーのグッズが多く置かれた車内。
  大地、車に乗り込みエンジンをかける。
  すると音楽が流れた。
  バードリーマーのテーマソングだ。
  相対してナビのモニターには戦争のニュースが。
  戦場に向かった夫や父を亡くした者たちの様子が映さ
  れている。
大地「くっ……」
  大地、歯を食いしばり車を走らせる。
  回想終了。

○都内 道路 車内 (現在)
  大地、バードリーマーのグッズが全く無くなった車を
  運転。
  後部座席にはチャイルドシートに美空、その隣に母で
  ある山本良子(70)が座っている。
良子「遠くなったねぇ、本当に引っ越す必要あったの?」
大地「翼の小学校が近いんだよ、前の家だと遠かったから
 さ」
良子「わざわざ私立にねぇ、いつの間にそんなお金持ちに
 なったんだか」
大地「その話はやめてくれよ……」
良子「本当はアレじゃないの? いづらくなったとか」
大地「だから違うって……」
良子「でも千尋さん言ってたよ? コソコソ話してるの聞
 こえたって」
大地「その話終わり! せっかく親父に会うってのに」
  大地、車を走らせた。

○都内 霊園 山本家の墓
  大地、墓石に水をかけて洗う。
  良子、美空と手を繋ぎながら缶ビールを供える。
  大地、線香に火をつけて手を合わせた。
  良子も手を合わせ、美空も真似て手を合わせる。
美空「じいじ」
  黙祷。
  黙祷を終え良子、口を開く。
良子「孫に会わせてあげたかった」
大地「俺もだ」
良子「茂樹も楽しみにしてたんだよ?」
大地「知ってる……」

○都内 某ファミレス テーブル席
  大地と美空、並んで座る。
  良子、向かいに座る。
  注文を終えた。
  沈黙。
  大地、口を開く。
大地「あのさ、そっちの暮らしはどうなの? 良い所だ
 ろ?」
  良子、視線を合わせない。
良子「良い所だよ、部屋も広いし食事も豪華だし」
大地「……何か足りないものある? 送るよ」
良子「お金で何とかなるものじゃないよ」
大地「そっか……」
良子「あのね? 息子が成功してお金もあって高い老人ホ
 ームに住ませてもらっててもさ……お金の出所がアレで
 しょ? ニュース見るたびにしんどいのよ……」
大地「いや、俺が売ったお陰で戦死者は減ってる。現にそ
 の家族からの感謝だって来てるんだよ……」
良子「そりゃ直接戦場に出る人の家族はね? でも今は殆
 どが戦争と関係なく生きてる。その人達からすれば私た
 ちは人殺しの家族よ」
大地「でもこっちが攻め続けてるから敵は反撃できずに守
 ってる、そのお陰で日本が戦場にならずに済んでるんだ
 よ。俺が売るまではさ、結構攻められてたじゃん? 俺
 の兵器に守られてるんだよ、皆んなそれを分かってな
 い……」
良子「じゃあこれは?」
  良子、スマホを弄りSNSの動画を見せる。
  それは大地が売った兵器を身に付けた兵士が楽しそう
  に笑いながら敵地を蹂躙する映像だった。
  民間人も容赦なく殺している。
  大地、歯を食いしばる。
良子「これが本当に皆んなを守ってる人達? 世界中から
 バッシングされてる、あなたの事も名指しで批判されて
 る」
  良子、次の動画を見せる。
  それはアメリカでバードリーマーの人形を吊し首にし
  燃やしているデモ隊の動画だった。
  動画に添えられた一文には『Wings broken by
  fear(恐怖に折れた翼)』と書かれていた。
  良子、目に涙を浮かべる。
良子「こんな事のために茂樹は死んだの……?」
大地「っ……父さんは……」
良子「もう良いから、こんな事して稼いだお金なら私いら
 ない」
  良子、そのまま立ち上がり去る。
大地「え、どこ行くんだよ?」
良子「帰る、バスあるから」
  良子、ファミレスから出た。
  大地、顔を落とす。
美空「パパー?」
  大地、美空を強く抱きしめた。

○都内 道路 車内
  大地、運転中。
  美空、後部のチャイルドシートに座る。
  大地、ラジオでニュースを聞いている。
ラジオ『飛行部隊の在り方について日々問題視する声が相
 次いでいます。これを受け結城防衛大臣はこう答えてい
 ます』
結城『兵たちの問題行動は承知しています。しかし私は結
 果を見て欲しい。この行動がテロリストを撃滅し戦争を
 終わらせると信じています』
  美空、反応する。
美空「おじいちゃんの声ー」
大地「あぁ……」
  すると大地のスマホに着信が。
  大地、慌てて応答しスピーカーに切り替える。
大地「はい山本です」
  相手は翼の担任教師だった。
教師『お忙しい所すみません、翼くんの件で……』

○都内 私立小学校 保健室
  大地、美空を抱きながら扉を開ける。
  翼、養護教員に顔に絆創膏を貼られていた。
  大地、静かに近づき隣に座る。
  養護教員に会釈した。
大地「……先生から聞いてる」
  翼、黙っている。
大地「黙ってろって言った意味わかったか?」
翼「……うん」
  大地、立ち上がり養護教員を見る。
大地「すみません、連れて帰ります」
養護教員「お疲れ様です……」

○都内 私立小学校 廊下
  大地、美空を抱きながら翼と歩く。
  すると翼の同級生がやってきた。
同級生「あ! ねぇ空飛んでよ」
  大地、無視する。
同級生「ねぇ本当なら見せてよ、バードリーマーなんでし
 ょ?」
  大地、周囲の児童や教師たちの顔を見る。
大地「ごめん、無理だ」
同級生「やっぱ嘘じゃーん!」
  翼、歯を食いしばる。
  大地、翼の肩を叩く。
  そのまま無言で歩き去った。

○都内 道路 車内
  大地、運転中。
  翼、後部座席に座り美空はチャイルドシート。
翼「何で嘘ついたの」
  大地、溜息を吐く。
大地「前もバレて引っ越す事になったろ、お前もイジメら
 れたのに何で懲りないんだ……」
  翼、窓から飛ぶ鳥を見つめる。
翼「俺も見た事ないんだもん」
  大地、言葉を詰まらせる。
大地「……そうだったな」
  大地、運転を続ける。

◯高級住宅街 山本家 廊下
  大地、翼を連れ廊下にある扉の前に立つ。
翼「地下?」
大地「あぁ、見せてやる」
  大地、パスワードを入力し扉を開ける。
  その先には地下へ続く階段が。

◯高級住宅街 山本家 地下室
  大地、明かりをつける。
  そこにはSFチックなガレージが広がっていた。
  翼、目を見開く。
翼「すげー秘密基地だ!」
  翼、走り出す。
  保管されたいくつものバードリーマーの装備が並んでいる。
  翼、じっくり眺める。
翼「本当だったんだ……」
  大地、翼の肩に手を置く。
大地「あぁ、パパはバードリーマーだったんだよ」
  翼、装備の次は限定グッズが並ぶのを見る。
翼「じゃあさ、何で辞めちゃったの?」
  大地、リモコンを操作し大きなモニターをつける。
  そこには軍の飛行部隊のPR動画が映されていた。
  敵国を制圧する様子、敵国の市民が並んで連れて行かれる様子。
  そして痩せこけた捕虜の前で酒を片手にピースする飛行部隊員の姿。
  翼、真剣な目で映像を見る。
大地「この力はな、今はもう人殺しの力なんだ。そんなのに助けられたって嬉しくないだろ?」
  翼、モニターを見つめたまま。
翼「ふう君のお父さん、これで飛んでたって言ってた」
大地「喧嘩した子か……?」
翼「それで死んじゃったんだって」
大地「……そうか」
  大地、リモコンでモニターを消す。
大地「よしお仕舞いだ、上戻るぞ」

◯高級住宅街 山本家 廊下
  大地と翼、地下から上がる。
  翼、扉の開いた寝室を覗いた。
翼「ねぇ、アレもそうなの?」
大地「え?」
  翼、寝室にある勲章と古い写真を指す。
翼「アレも人殺しでもらったの?」
  沈黙。
大地「アレは違うけど……結局人殺しに便利な力だったよ」
翼「パパがわかんない」
  翼、駆けて行く。
  大地、その場に立ち尽くした。

◯高級住宅街 山本家 地下室
  大地、壁にパスワードを打ち込む。
  すると壁が回転し中からバードリーマーのスーツと古い飛行ユニットが出てきた。
  大地、それらを見つめる。

◯河川敷 (回想)
  大地(当時9歳)、空を見上げ群れで飛ぶ鳥を見る。
  汚い服にボロボロの靴を履いていた。
  ふと下を見ると同世代の子供たちがサッカーをしていた。
  良子(当時44歳)、買い物袋を持ち現れる。
良子「大地、ここにいた」
大地「母さん」
  良子、大地の隣に座る。
  サッカーをする子供たちを見た。
良子「一緒に遊ばないの?」
大地「汚いから嫌だって。一緒だと思われたくないって」
良子「じゃあ帰ろっか。ご飯作るから手伝ってくれる?」
大地「うん」
  大地と良子、手を繋ぎ歩く。
  大地、上を見て飛ぶ鳥を指す。
大地「俺も皆んなと一緒だったら仲良く出来るかな?」
  良子、大地を抱きしめる。
良子「ごめんね、ごめんね……」

◯アパート 山本家 外観 (夕)
  大地と良子、古いアパートに帰る。

◯アパート 山本家 台所 (夕)
  大地、良子の料理を手伝う。

◯アパート 山本家 食卓 (夜)
  大地、良子、父の山本茂樹(当時44歳)、食事。
茂樹「大地、今日はどうだった?」
大地「鳥みてた」
茂樹「鳥?」
大地「みんな同じに飛んでるんだ。誰も変なヤツがいない」
茂樹「ほう」
大地「俺も鳥に生まれたかったなぁ」
  大地、食べ終え食器を片付け去る。
  襖の向こうに入っていった。
  良子、泣き出す。
良子「あの子友達いないのよ、ウチが貧乏だから誰も仲間に入れてくれなくて……」
茂樹「そうか……」

◯アパート 山本家 居間 (夜)
  大地、茂樹とTVを見る。
  以下、画面上。
  × × ×
リポーター「今日は東京科学大学にある研究所に来ています。ここでは一体何を研究しているのでしょうか?」
教授「はい。人間が空を飛ぶための研究をしています」
  画面には様々な飛行ユニットが映されている。
  教授、その一つを使い飛んでみせた。
  しかし失敗、すぐ地面に激突。
  × × ×
茂樹「うわ、痛そぉ……」
  大地、食い入るように画面を見る。
大地「父さん、人も鳥になれるの?」
茂樹「さぁ? でもこの人たちは鳥になるために頑張ってるみたいだぞ」
  大地、茂樹の隣に座る。
大地「俺ここ行きたい」
  台所で皿洗いしていた良子の手が止まる。
茂樹「マジ? 勉強大変だぞ?」
大地「頑張る」
  茂樹、大地と目を合わす。
茂樹「……そうか、なら応援する」
  × × ×
  大地、布団で寝ている。
  茂樹と良子、ソファに座る。
良子「あの子本気よ? ウチに大学行かせるお金あるの?」
茂樹「そこは俺が頑張るさ。勉強頑張るって言うんだからこっちも頑張らないと」
良子「でも……」
茂樹「アイツが初めて頑張るって言ったんだ。貧乏を理由に諦めさせられない」

◯小学校 教室 (数日後)
  大地、真剣に授業を受ける。
  授業が終われば先生に質問をした。

◯会社 オフィス (数日後)
  茂樹、汗を流しながらPC画面に向き合う。
同僚「今度の飲み会どうする? 行くなら参加料……」
  茂樹、遮り仕事を続ける。
茂樹「ごめんパス」
同僚「どうしたんだよそんなに張り切って?」
茂樹「お金貯めなきゃなんないんだ」

◯スーパーマーケット (数日後)
  良子、安売りの惣菜を少しだけカゴに入れた。

◯高校 教室 (数年後)
  大地(当時18歳)、先生に質問。
大地「奨学金の事なんですけど……」
先生「うん、この成績なら十分だと思うよ」
大地「そうですか、やった……」

◯アパート 山本家 外観 (夕)
  大地、帰宅。

◯アパート 山本家 居間 (夕)
  大地、居間に入る。
  茂樹、ソファで寝ており良子が看病している。
大地「え、どうした父さん?」
茂樹「ちょっと具合悪くてな……早退してきた」
良子「昇進してから仕事増えて大変でね、ちょっと休んだ方がいいって言ってたのに」
茂樹「いやいや、もっと昇進して金貯めなきゃだろ……」
良子「でも……」
  大地、茂樹の前に座る。
茂樹「いいか? 俺の事は気にするな。んで奨学金は?」
大地「うん、行けるって」
茂樹「よかった……」
  茂樹、大地の肩に手を置く。
茂樹「お前はやりたい事をやれ」
  大地、頷いた。

◯東京科学大学 研究室 (数年後)
  大地(当時21歳)、自作の翼を背負い飛ぶ。
  しかし地面に落ちる。
大地「次だ次!」
  × × ×
  大地、設計図やPCを見続け作り続けていく。
大地「パワーが足りないっ」
  何度も地面に落ち続けた。
大地「安定しないな……」

◯東京科学大学 広場 (1年後)
  大地、新たな翼を背負い台に立つ。
  香川侑(当時19)、下で大地を見る。
香川「じゃあ卒業前最後のフライト、行きますよ!」
  大地、飛び上がる。
  すると華麗に空を舞った。
大地「お、おぉ……! 飛んでるぞ!」
  香川も地面で喜ぶ。
  大地、空から手を振った。

◯アパート 山本家 居間
  大地、帰宅。
  慌てて茂樹と良子に駆け寄る。
大地「出来た! 空飛んだぞ!」
  茂樹、飛び跳ねる。
茂樹「おぉーマジかやったぁ!」
  茂樹、大地に抱きつく。
大地「いてて、離して」
  茂樹、大地を離して向き合う。
大地「これで売り出せれば奨学金も返せると思うからさ、父さんも苦労しなくて済むよ」
茂樹「あぁ、よくやった!」
  良子、不安そうに見ている。

◯東京科学大学 広場 (数日後)
  多くの企業の者や軍人が集まる。
  大地、台に立ち飛行ユニットを背負った。
  香川、マイクで話す。
香川『ご参加ありがとうございます。この山本大地の研究の成果、ここで発表させていただきます!』
  大地、飛行ユニットで空を飛ぶ。
  「おぉ」という声が聞こえた。
香川『救助や運送運搬、軍事でも役立つ技術と思われます。いかがでしょうか?』
  大地、降りてくる。
  香川と共に頭を下げた。

◯東京科学大学 研究室
  大地と香川、椅子に座る。
  大地、資料を見ていた。
香川「もうっ、何で一つも買い手がつかないわけ!?」
大地「さぁ……でもこのままじゃマズい……」
香川「どうするんすか? これじゃあ奨学金、またお父さんに苦労させちゃうんでしょ?」
大地「わからない……」
  大地、去る。

◯アパート 山本家 居間 (夜)
  大地、やつれた茂樹と話す。
茂樹「そっかー売れなかったかぁ」
大地「ごめん、売れるまでまた苦労させちゃう……」
茂樹「いいって。もうすぐ家を救ってくれるものだろ?」
大地「そうだよね、救う……」
  大地、顔を上げる。
大地「そうだ、俺が自分で証明すればいいんだ!」
  大地、立ち上がり家を出る。

◯マンション 香川の部屋 (夜)
  香川、彼氏と口付け。
  すると電話が。
香川「待って電話……」
彼氏「えぇ?」
  画面には大地の名前。
  香川、電話に出る。
香川「もしもし? なんすかこんな時間に?」
大地『いい方法思いついた! 研究室来れるか!?』
香川「今からっすか!?」
  香川、彼氏の顔を見る。

◯東京科学大学 研究室 (夜)
  大地と香川、ノートにイラストを描いていく。
  香川、完成したイラストを見せる。
香川「こんなんどうっすか?」
大地「うーんダサいな……」
香川「だってデザインとか専門じゃないっすもん」
大地「とりあえずそれっぽい服着てマスクつけるか……?」
  × × ×
  大地と香川、ドン・キホーテの袋から衣装とペストマスクを取り出す。
  大地、身につけ飛行ユニットを背負った。
香川「うわダサ……」
大地「でも俺だって分かんないだろ?」
香川「まぁコンセプトには合ってるか……」
  大地、軽く飛んでみる。
大地「うん、しっくり来る」
香川「そりゃよかったっすねー」
  大地、降りる。
大地「じゃあヒーロー名だな」
香川「もっとダサくなりそう……」

◯都内某所ビル 火災現場 (数日後夜)
  高層ビルの上層階で火事。
  下には消防隊が集まっている。
母親「ウチの子がまだ中にいるんです!」
消防隊「危ないですよ!」
  泣き叫ぶ母親を消防隊が押さえる。
  すると空高くから何かが飛んできた。
  それは窓ガラスを突き破り火事現場に入る。
  数秒の沈黙。
  すると何かが飛び出してきた。
  大きな翼を広げ両手には少女を抱えている。
母親「あぁ! 恵!」
  焦げて所々裂けたドン・キホーテのスーツとペストマスクを身に着けた大地、助けた少女、恵を抱えて降りる。
大地「もう大丈夫」
  母親と恵、抱き合う。
母親「よかった……!」
恵「ママぁ」
  大地、微笑んだ後、去ろうと振り返る。
  消防隊が訪ねた。
消防隊「待って! 貴方は一体……?」
  大地、振り向き答えた。
大地「バードリーマー。覚えといて下さい」
  大地、そのまま飛び去る。
  恵、手を振った。
恵「ありがとうバードリーマー!」
  大地、夜の闇に消えていった。

○都内 上空 (夜)
  大地、空を飛ぶ。
  香川から無線が入る。
香川『大丈夫っすか⁈ 思いっきし火に突っ込んできましたけど⁈』
大地「ちょっと熱い……っ」
香川『無理はしないで下さいよ? せっかくの成果が壊れたりするかもだし、先輩だって……』
大地「大丈夫っ、これなら続けられるよ」

○都内 各所 (数日後)
  大地、バードリーマーとして様々な救助活動を行う。
  ニュース番組で特集が組まれた。
  以下、画面上
  × × ×
キャスター『突如現れた謎の空飛ぶヒーロー、バードリーマーとは何者なのでしょうか?』
  続いてインタビュー画面が。
女性『本当に感謝してます!』
男性『こんなヒーローを待ってましたよ!』
子供『ありがとうバードリーマー!』
  × × ×

〇東京科学大学 研究室 (数日後)
  大地と香川、西山玄徳(当時30歳)と政府要人2名を案内。
  西山、研究室を見て回る。
西山「こんな素晴らしい発明を軍は買わなかったのか……」
  西山、大地を見る。
西山「よし。私共にプロデュースさせて下さい、バードリーマー」
大地「本当ですか!?」
西山「何故争いは無くならないのか、人の心がバラバラだからだと思うんです。だから象徴が必要だ」
大地「え……?」
西山「現に貴方はヒーローとして救った者たちの心を一つにした。我々のバックアップがあれば更に活動範囲を広げられる」
大地「俺が象徴ですか……」
西山「そう! これから貴方は我々と共に世界の平和の象徴になるんです!」
  西山、手を差し出す。
  大地、数秒手を見つめてから握手した。

〇アメリカ デトロイト州 上空 (数年後)
  バードリーマーの専用機、マイグラトリーが飛ぶ。
  吉良光流(当時21歳)、中でコンピュータを操作。
吉良「現場上空に到着、テロリストを捕捉しました!」
  西山、無線で応答。
西山『よし、周囲の状況を確認し降下させろ』
吉良「了解。頼みますよ大地さん!」
  大地、新型のスーツとマスクと飛行ユニットを背負い振り返る。
  吉良と香川、そして坂本莉子(当時26歳)がマイグラトリーの席で大地を見る。
大地「……行ってきます」
  大地、ハッチを開け飛び降りた。
  鉄の翼を広げ滑空する。
  マスクのゴーグルに搭載された特殊機能で現場を分析する。
  テロリスト5名と人質にされている子供が8名、大人が1名。
  大地、スピードを上げる。
  回想終了。

○高級住宅街 山本家 外観 (現在夜)
  タクシー、家の前に停まる。
  大地と千尋、玄関から出て来る。
  タクシーから吉良光流(29)、ワインを持って降りる。
吉良「お久しぶりでーす」
大地「おう」
  大地、吉良を家に招き入れる。

○高級住宅街 山本家 食卓 (夜)
  吉良、大地と千尋のグラスにワインを注ぐ。
大地「こんな高そうなの良いのか? よければ出すよ」
吉良「いいんすよ、俺が飲みたかっただけだし」
  吉良、自分のグラスにもワインを注ぐ。
  3人、乾杯した。
  それぞれグラスに口をつける。
吉良「うん、なかなか」
大地「ごめんあんま俺わかんねぇや、美味いのは美味い」
  大地、千尋を見る。
千尋「うん、いいセンスしてると思うよ」
吉良「マジっすか。首相のご令嬢に合ったなら良かったっすわ」
  大地、つまみを食べる。
大地「てか本当に良いのか? タクシー代は出すよ」
吉良「だから良いですって、お金貯めて来たんで」
大地「心配だよ、お前の部署そんな給料よくないだろ」
吉良「まぁ殆ど飛行部隊に取られちゃってますからね」
  大地、横目に千尋を見る。
  千尋、グラスを持ち固まっている。
千尋「ごめんなさい、2人で飲んで」
  千尋、グラスを置き席を立つ。
  大地、千尋を追い席を立つ。
大地「待てよ……」

○高級住宅街 山本家 居間 (夜)
  千尋、美空をベビーチェアに座らせる。
  翼、ソファに座る。
大地「千尋……」
千尋「待って、子供たちのご飯用意するから」
  千尋、キッチンに向かう。
  大地、追いかける。

○高級住宅街 山本家 キッチン (夜)
  千尋、冷蔵庫から料理を取り出しレンジで温める。
大地「なぁどうした、こっち来てから変だぞ……」
  千尋、大地の目を見る。
千尋「違う、貴方が変わったの。軍に売ってから明らかにおかしい、ずっと戦争の話ばっかして家族の事なんて二の次。今日も吉良くんは楽しく飲みたいだけなのにこんな暗い話……!」
大地「そんな事……」
千尋「誇りと一緒に優しさも捨てたの? そんな貴方見たくなかった。ずっとここじゃないどこか見てる、まず私たちを見てよ……っ」
大地「違うっ、俺は皆んなを想って……!」
千尋「そう思い込んで何とか自分を保とうとしてるんでしょ? バレバレだよ」
  レンジが温め完了を告げる。
  千尋、料理を取り出す。
千尋「これ運んで。少しはためになる事してよ」
大地「あぁ……」
  千尋、次の料理をレンジへ。
  大地、熱がりながら運んだ。

◯高級住宅街 山本家 寝室 (夜)
  翼と美空、ベッドで眠る。

◯高級住宅街 山本家 庭 (夜)
  吉良、庭の椅子に座りワインを飲む。
  大地、そこへやってきて隣に座る。
大地「ふう、やっと寝た……」
吉良「パパは大変っすね」
大地「あぁ……」
  吉良、大地のグラスにワインを注ぐ。
  大地、飲む。
  吉良、煙草を取り出す。
吉良「良いっすか?」
大地「あぁ。ってか吸ってたっけ?」
  吉良、煙草に火をつける。
吉良「最近っすね、どうもストレス多くて」
大地「そうだよな、やっぱり……」
吉良「あ、気に病む必要ないっすからね。戦争のせいなんで」
大地「うん、分かってる。でもな……」
吉良「他の皆んなが心配っすか?」
大地「そうだな……」
  大地、ワインを飲み干し2杯目を注ぐ。
大地「チームの皆んなしんどいんだろ?」
吉良「まぁそうっすね。俺は若かったから比較的楽に新しい職に就けたけど西山さんとかバードリーマーに注ぎ込んでたから」
大地「香川は? 同じ陸軍だろ?」
吉良「飛行部隊の整備やってますよ。めっちゃ屈辱でしょうけどね、凄い誇ってたから」
大地「……会ったりするのか?」
吉良「いや、すれ違ったりする事はありますけどお互い避けちゃいますね」
大地「そうか……」
吉良「莉子さんは上手くやってるみたいっすけど。メンターとして」
  大地、ワインを飲む手が止まる。
大地「ごめん、俺が裏切ったから……」
  吉良、煙草の火を消す。
吉良「後悔してもしゃーないじゃないっすか今更。だから家族もちゃんと見てやれないんじゃないっすか?」
大地「……そうだな」
吉良「もうあの時の世界じゃないんすよ。家族のために翼売ったんならそっち大事にして下さい、中途半端っすよ今の大地さん」
大地「……家族ちゃんと大事にしないと申し訳つかないもんな」
吉良「そういう事っす。吸います?」
  吉良、大地に煙草を一本差し出す。
大地「やめたんだけど……」
吉良「落ち着きますよ?」
  大地、沈黙の後、煙草を受け取り火をつけた。

○都内 商業施設 駐車場 (回想)
  大地、バードリーマーとして子供向けのイベントへ。
  並ぶ子供たちと1人ずつ握手していくが列は短かった。
大地「ありがとうー」
  するとデモ隊が現れる。
  拡声器を持ち声をあげた。
デモ隊『早く技術提供しろー! 必要ない犠牲が出ている! これ以上増やす気かー!』
  子供たち、逃げる。
  大地、デモ隊を見ながら舞台裏に逃げた。

◯都内 産婦人科 病室
  大地、泣く翼(当時0歳)を抱いている。
  千尋、ミルクの準備をしている。
  すると机に置かれた大地のスマホに着信が。
大地「千尋、電話でてくれない?」
千尋「待って今ミルクやってるから」
  千尋、ミルクの入った哺乳瓶を持ち大地のスマホを取る。
  大地、スマホと翼を交換。
  電話に応答。
大地「もしもし……はい、まだ結論が出てなくて。チームは賛成してないです……はい、急いで結論出しますんでっ」
  大地、電話を切る。
  千尋、翼にミルクを与えながら大地を見る。
千尋「早く決めてよ、この子が家に来るまでにさ」
大地「あぁ……退院日いつだっけ?」
千尋「さっき話したじゃん、明後日!」
大地「そうだ明後日だ……」
  大地、頭を抱える。
  するとスマホに通知が。
  大地、確認する。
  以下、画面上
  × × ×
  西山からのメッセージ。
西山『また急げって電話きたぞ。売らないからな、さっさと伝えてくれ』
  × × ×
  大地、部屋を歩き回る。
千尋「ちょっと、寝たから静かにしてっ」
  翼、千尋の腕の中で眠る。
大地「ごめん……」
  大地、椅子に座り溜息を吐いた。
千尋「せっかくこの子が生まれてくれたのに全然幸せそうじゃないね」
大地「違うよ、生まれたからだって。家族と仲間どっちかしか選べないから悩んでんだよ……」
千尋「何でこんな事になっちゃったんだろうね……」
大地「戦争だよ……」
  千尋、翼をベッドにそっと寝かす。
千尋「ねぇ聞いて。私別にいいから。売らなくていいよ」
大地「何で……」
千尋「お金は何とでもなるよ、けどこんな悩む貴方と一緒にいたくない。だってバードリーマーとして人助けする所が好きになったんだもん……」
  大地、千尋の背中をさする。
大地「俺たちの希望の象徴だよ。戦争なんかに使わせたくない。だって人を助けるための力だから」
千尋「うん、うん……」
大地「でも不安なんだよ、この状況じゃ俺には何も出来ないんだ……」
  大地、千尋を抱きしめた。

◯都内 住宅街 山本家 居間
  大地、一人でベビー用品の入った段ボールを開封する。
  そこには茂樹からの手紙が。
  以下、手紙
  × × ×
茂樹『父親おめでとう! 千尋さんにもお疲れとありがとうを伝えて。お金は心配しないで、仕送り送ったから。じゃあ仕事に一区切りついたら初孫に会いにいくよ、楽しみにしてる』
  × × ×
  一方つけられたTVでは戦争のニュースが。
  以下、画面上
  × × ×
キャスター『イグルヴ首領ウスマン・イスムが捕虜の公開処刑を行いました。それにより日本兵が200人殺害されました』
  × × ×
  大地、壁に飾ってある助けた子供たちとの写真を見る。
  すると着信が。
  画面には『母さん』と書かれている。
  大地、応答。
大地「もしもし、荷物届いたよ……え、どうした!?」

◯都内 道 車内
  大地、バードリーマーのグッズが飾られた車を運転。
  後部座席にはチャイルドシートが。

◯都内 総合病院 病室
  大地、病室に入る。
  すると良子が蹲っており医師や看護婦もいる。
  大地、ゆっくり歩みを進める。
  ベッドには顔に白い布をかけられた遺体があった。
  大地、震える手で布を取る。
  そこには真っ白になった茂樹の顔が。
  大地、布を戻す。
  大地、良子を見た。
大地「何で……」
  良子、蹲ったまま答える。
良子「過労、だってさ」
大地「え……?」
良子「ずっと貴方のために働いてた。最近も子供生まれるのに稼げないって言うから仕送りのために沢山働いてたの」
  大地、全身が震える。
  良子、顔を上げた。
  その顔は涙でぐしゃぐしゃだった。
良子「貴方のために茂樹は苦労してっ……」
  大地、呼吸が荒くなる。
良子「貴方の翼がっ……殺したのっ」
  大地、床にへたり込む。

◯バードリーマー基地 司令室
  大地、口を開いた。
  西山、大地の胸ぐらを掴む。
  香川、首を横に振る。
  吉良、俯く。
  坂本、椅子に座る。
  西山、大地の顔面を殴った。
  大地、吹っ飛び床に座る。
西山「何だと思ってんだよ俺達の翼を! ずっと人を助けて来たじゃねぇかよ……」
  大地、口から出る血を拭く。
大地「そんなもんじゃなかった……」
西山「あぁ!?」
大地「最初から犠牲で作られた力だったんだよ……」
  回想終了。

○高級住宅街 山本家 居間 (現在)
  棚に茂樹の遺影が飾られている。

○高級住宅街 山本家 外観 (夜)
  大地と千尋、タクシーに乗る吉良を見る。
大地「じゃあ、今日はありがとな」
吉良「いえいえ、こちらこそ楽しかったっすよ」
  吉良が乗った後、タクシーの扉が閉まる。
  吉良、シートベルトをし窓を開けた。
吉良「デカい事ばっか気にしててもダメっすよ、地に足つけないと。まぁデカい事やってきたからかも知れないっすけど」
  タクシー、動き出し去る。
  大地、見えなくなるまで見続けた。
  大地、家に戻ろうと玄関の扉に手をかける。
  すると千尋、話しかける。
千尋「子供たち寝た後、何話してたの?」
  大地、手が止まる。
大地「……ちゃんと家族のこと大切にしなきゃって」
千尋「そう……」
大地「俺さ、見栄張ってんのかも知れない。母さんにも翼の学校のために引っ越したって嘘ついた」
  千尋、大地を見ている。
  大地、ドアノブを握る手を見ている。
大地「本当は自分が居づらくなったからなのに……色々巻き込んでごめん」
  千尋、大地の手の上からドアノブを握る。
千尋「いいよ、覚悟して結婚したんだもん」
  千尋、扉を開けた。
大地「……そうだよね」
  大地と千尋、家に入る。

○都内 道路 車内 (日変わり朝)
  大地、車を運転する。
  後部座席にはランドセルを持った翼が。
大地「ちゃんと謝れるか?」
翼「うん……」

○都内 私立小学校 外観 (朝)
  大地、小学校の前に車を停め降りる。
  翼も車から降りランドセルを背負う。
  視線の先には喧嘩した同級生。
  大地、翼の頭を撫でる。
大地「よし、行くか」
翼「待って」
大地「どうした?」
翼「1人で出来るから、来なくていいよ」
  翼、校門をくぐる。
  大地、翼の様子を見つめる。
  翼、同級生に声をかける。
  俯く翼の口が動く。
  沈黙の後、同級生は頷き翼と握手した。
  大地、微笑み車に乗る。

○高級住宅街 山本家 居間 (朝)
  千尋、ソファに座り美空に朝ごはんを食べさせる。
  すると玄関から音が聞こえ大地が帰って来た。
大地「ただいま」
  大地、居間に入る。
千尋「おかえり、どうだった?」
大地「凄いよ、自分から謝りに行ってた。しかも俺には来なくていいだってさ」
  大地、ソファに座る。
千尋「そう、心配する必要なかったね」
大地「うん……」
  大地、美空と目が合う。
  美空、大地に笑顔を見せる。
大地「美空、TV見るか?」
  千尋、目を見開く。
千尋「え、ニュースの時間だけど……?」
大地「子供との交流も大事にしなきゃって思ってさ」
  大地、TVをつけるとニュース番組がやっていた。
  すぐにチャンネルを変え子供番組をつける。
  ダンスのコーナーが始まった。
  大地、美空を抱き上げ椅子から下ろす。
大地「ほらよ」
  美空、TVの前で踊る。
  大地と千尋、それを見て微笑む。
大地「どうせなら撮るか?」
千尋「うん」
  大地、スマホを取り出し動画を撮影。
  するとスマホに通知が。
  吉良からだ。
  以下、画面上
  × × ×
吉良『ニュース見ました⁈ 人質の件やってます!』
  × × ×
  大地、表情が暗くなる。
  千尋を見た。
千尋「え……?」
  大地、撮影を止めスマホでニュースを調べる。
  ブラウザの検索バーに『イグルヴ 人質』と打った。
  以下、画面上
  × × ×
記事『処刑控えるイグルヴ人質の日本人女性 バードリーマーの影響を受けたか』
  記事を開く大地。
  そこには人質となっている慈善団体のリーダーの写真と名前が。
『フェザー基金代表・川島恵さん』
  × × ×
  大地、顔が青ざめていった。

○高級住宅街 山本家 書斎 (朝)
  大地、PCで調べる。
  YouTubeで『川島恵』と検索した。
  すると彼女による演説の様子が映された動画を見つける。
  大地、その動画を開く。
  以下、画面上
  × × ×
  川島恵(23)、質疑応答を行う。
記者『イグルヴ本国に向かうとの事ですが理由は?』
恵『イグルヴにはテロリスト以上に多くの支援を求める市
 民がいます。彼らも我々と同じようにテロリストに苦し
 められる被害者です、そんな人々を救う必要があると感
 じました』
記者『しかし貴女方のような若者が行く必要はあるのでし
 ょうか? 以前から募金活動など行われていたようです
 がそれで十分なのでは?』
恵『確かに出来る限りの事はこれまでもやって来ました。
 しかしそれだけでは不十分なんです』
記者『何故ですか?』
恵『まだ出来る事を思い付いてしまったんです。出来る事
 を思い付く限りやり続けなければ十分と言えません』
記者『それが実際に現場に赴く事なのでしょうか?』
恵『はい。私はかつてあるヒーローに命を救われました。
 彼は助けるだけでなく人々と交流し身近な存在として希
 望を与えて行ったんです。救うだけじゃない、その後の
 ケアもする事で更に救われた者は前に進めるのだと実感
 しました』
  × × ×
  大地、口を押さえる。
  恵の姿を見てフラッシュバック。
  バードリーマーとして初めて救った少女を思い出し
  た。
恵(回想)『ありがとうバードリーマー!』
  大地、PCの電源を消して部屋を出る。

○高級住宅街 山本家 庭
  大地、椅子に座り電話している。
  相手は吉良だ。
大地「軍の方針はどうだ?」
吉良『相変わらずです、人質が処刑されるなら尚更攻める
 チャンスだって……』
大地「人質も巻き添えか……」
吉良『犠牲が少なく済むならって話ですね』
  沈黙。
吉良『正直キツいです、昔助けた人達を巻き込む側にいる
 のが』
大地「俺もだ、攻撃は飛行部隊がやるんだろ?」
吉良『はい……』
大地「救われた力で殺されるなんてそんなの……」
吉良『あの、大地さん……』
大地「何だ……?」
吉良『こんな時バードリーマーのチームが残ってたらどう
 したと思います……?』
大地「……さぁ、今はもう分からない」
  沈黙。
吉良『俺、攻撃が始まる前に辞めようと思います。まだ捨
 て切れないんすよ誇り。それが傷付くくらいなら……』
大地「あぁ、いいと思う……」
吉良『大地さんは辛くないです? 俺と違って今更辞めれ
 る感じじゃないし……』
大地「……俺はどうしたら良いんだろうな」

○高級住宅街 山本家 居間 (夜)
  大地、暗い居間でTVを見る。
  ニュース番組が流れていた。
  以下、画面上
  × × ×
  デモ隊の映像が映されている。
デモ隊『フェザー基金は正しい事をした! そんな彼女ら
 ごと飛行部隊で殲滅するなんて冒涜以外の何物でもな
 い! 今の日本軍が腐っている証拠だ!』
  デモ隊、結城防衛大臣の顔にバツ印を書いた看板を持
  つ。
デモ隊『彼女らを救った翼で殺すなどこんな救われない事
 があるだろうか!』
  × × ×
  大地、画面を見つめる。
  千尋、目を擦り現れた。
千尋「まだ起きてるの……?」
大地「ごめん、音デカかった?」
  大地、リモコンでTVの音量を下げる。
千尋「あ、別にいいの」
  千尋、大地の隣に座る。
千尋「ねぇ、何考えてるの?」
大地「さぁ、分かんない。ただ見ずにいられなくて」
千尋「……バードリーマーならどうするか考えてた?」
大地「え……っ」
千尋「分かるよ本当は後悔してる事くらい。貴方変わった
 って言ったけど根っこは多分変わってない」
大地「そうかな……」
千尋「思い付いてるんでしょ? 出来る事」
大地「でも今更……それに防衛大臣が許可してくれる
 か……」
千尋「それで立ち止まって満足なの?」
  するとTVで恵の映像が流れた。
  以下、画面上
  × × ×
  大地がYouTubeで見た映像と同じものが流れる。
恵『まだ出来る事を思い付いてしまったんです。出来る事
 を思い付く限りやり続けなければ十分と言えません』
  × × ×
  千尋、大地を見る。
千尋「どう?」
  沈黙。
大地「……今度話してみるよ、お義父さんに」
千尋「うん、提案だけでもしてみな」

○高級フレンチ テーブル席 (数日後夜)
  大地と千尋、結城防衛大臣と食事をする。
千尋「ありがとう時間作ってくれて」
結城「これから忙しくなるからな、最後のチャンスだった
 よ」
大地「やっぱり攻め込むんですね……」
結城「あぁ、これが恐らく最後の戦いになる。この戦争も
 ようやく大詰めだ」
  結城、ワインを飲み肉料理にナイフを入れる。
  口に入れたタイミングで大地、話しかける。
大地「あの、俺に何か出来る事あります?」
結城「君は今まで通り技術提供者としてやってくれれば良
 い。あ、もしかして終戦後の心配してるのか? 大丈
 夫、技術者として軍が招き入れてくれるはずだ」
大地「まぁ、その後の心配もありますけど……」
結城「何だ? 勿体ぶらずに言ってみなさい」
  大地、息を呑む。
大地「人質、助けられませんか……?」
  結城、手が止まる。
結城「何だって……?」
大地「もし余裕がないなら俺がもう一度バードリーマーとして現地に行って……」
結城「何を言ってる、戦場で一人飛ぶのは無理だと結論が出たろう。それに今更国家間の問題に古いヒーローを入れ込むなんて出来ない」
大地「でも助けを求めてる人がいるんです……」
結城「いいか大地くん。もっと大きな括りでモノを見るんだ。これは国対国の戦いだ、個人の感情を入れ込む隙はない。そんな事をしてしまえば大きな隙が生まれより大勢を巻き込む事態になるぞ?」
大地「まぁ、そうですけど……」
結城「国家の問題に関わりたいなら個人は捨てなさい。君は十分貢献してくれたんだから気負わなくて良いんだよ」
  結城、大地の肩に手を置く。
大地「はい……」
  大地、俯く。
  千尋、大地を見つめた。

◯高級住宅街 山本家 寝室 (夜)
  大地と千尋、同じベッドで寝ている。
千尋「納得いかない?」
大地「……うん」
  大地、外側を向いて枕を握る。
大地「昔は皆んなが俺に助けを求めてた。それに応えると嬉しかったんだ、なんか報われた気がして」
千尋「うん」
大地「でもさ、その人達の顔、覚えてないんだ。人質の人も調べてやっと思い出したし……」
千尋「そっか……」
大地「それって本当にヒーローだったのかな? 自己満だった気がして」
  千尋、大地の背中にそっと手を回す。
千尋「私はカッコいいと思ったよ。助けてもらった人達もそう、だからイグルヴの人達を助けようとしてるでしょ」
大地「うん……」
  沈黙。
千尋「……納得したいの?」
大地「そうだね……」
  大地、千尋の腕を握る。
  目に涙が浮かんだ。
大地「元々友達が欲しくて飛んだんだ、それでたまたま上手く行ったから調子乗って……人助けしてたら認めてもらってる気がしただけ……心から助けたいなんて思ってなかったのかも」
千尋「うん……」
大地「助けた人達の方が立派だった、恥ずかしいよ」
  大地、千尋の方へ寝返り。
  千尋、大地の顔を両手で触る。
千尋「いいのそれで。気持ちとか関係ない、周りの人達は本当に救われたんだから」
大地「でも父さんの犠牲で出来た力だ……」
千尋「私が言ってるのは力の話じゃないの。皆んな貴方に影響されて人を救おうとしてる、気持ちの話だよ」
大地「うん……」
千尋「それで? その人達を見て助けたいって思ったんでしょ? ならそれでいいじゃん」
  大地、千尋の目を見つめる。
大地「いいのかな、こんなヤツが助けて」
千尋「大歓迎でしょ。今の気持ちが大事」
  大地と千尋、見つめ合い口付け。
  そのまま激しく求め合った。

◯都内 日本軍駐屯地 外観 (数日後)
  大地、門の前に立つ。
  吉良、門の向こうからやってくる。
吉良「どうも、お疲れ様です」
  大地、会釈して入る。

◯都内 日本軍駐屯地 内部
  大地と吉良、歩く。
大地「ごめんなわざわざ」
吉良「いいんすよどうせ辞めるし」
  沈黙。
吉良「それよりなんかワクワクしてます、緊張もありますけど」
  大地と吉良、メディカルセンターへ。

◯都内 日本軍駐屯地 メディカルセンター 廊下
  大地と吉良、歩く。
  道中、患者たちが病んだ視線を向ける。
  発作を起こした患者を医師たちが宥める。
患者「うううううっ!」
医師「大丈夫ですよ、ここは安全ですから!」
  大地、その様子を見つめる。
  吉良に案内され相談室の扉の前に立つ。

◯都内 日本軍駐屯地 メディカルセンター 相談室
  坂本莉子(34)、窓際の花瓶の水を変える。
  扉がノックされた。
坂本「はーい」
  扉が開き大地と吉良が入ってくる。
  坂本、顔が引きつる。
吉良「お久しぶりです」
大地「久しぶり……」
  坂本、椅子を指す。
坂本「座って」
  大地と吉良、座る。
  坂本、コーヒーマシンでコーヒーを入れる。
坂本「……本当に久しぶりね、吉良くんからアポ取られた時は驚いたわ。それで何の用?」
  沈黙の後、大地が口を開く。
大地「……向き合おうと思って」
  坂本、2人分のカップを持ち差し出して自分も座る。
坂本「何に?」
大地「一人ひとりに」
坂本「じゃあ他のメンバーの所にも行くの?」
大地「あぁ、これから」
坂本「そう……」
  坂本、大地から目を逸らす。
坂本「でも何か頼み事でもあるんでしょ? じゃないとわざわざアポ取ってまで来ないじゃない」
大地「まぁそうだね、お願いがあって……」
坂本「何?」
大地「バードリーマーチーム、復活させたくて」
  大地、下を向く。
  ゆっくり顔を上げ坂本の顔を見た。
坂本「どうせそんな事だろうと思った。何? バッシングされてるからイメージ払拭したいの?」
大地「そう思われても仕方ないけど、そうじゃないんだ。そこは分かって欲しい」
坂本「はぁ、今更復活させて何するつもり?」
大地「日本軍が最終攻撃する前に人質を助けたい」
坂本「……え? 本気で言ってるの?」
大地「あぁ」
坂本「うーん、現役時代も言ってたけどさ。戦場での飛行は向いてないよ。それ以前に軍が許してくれるとは思えないし」
大地「もう断られたよ。だから独断でやろうと思って」
坂本「えぇ? それ普通に重罪だよ? 吉良くんはその辺分かってる?」
吉良「いや俺はまだ決めた訳じゃなくて、ただアポ取り手伝っただけで……」
坂本「……私たちを巻き込むつもり?」
大地「そうなっちゃうけど……本当にチームの皆んなが必要なんだよ」
坂本「……私にも捨てられないものがあるの」
大地「何……?」
坂本「ここにいる人達。戦場でPTSDになってもう何年も出られない人もいる。多分すぐに技術提供してたら少なく済んだかも。でも私たちが誇りだの何だの言ってたからここの人達は苦しんでる。罪滅ぼししてる最中なの、なのに今更復活なんてしたら意味なくなっちゃう、ごめんだけど無理……」
  沈黙。
大地「そっか、こっちこそごめん……」
  大地、立ち上がる。
  吉良も合わせて立ち上がった。
  2人は扉を開け部屋を出る。
  大地、振り返り言う。
大地「ただ一個だけ分かって欲しい。俺もあれから考えて気付いた事がある、だから来たって事」
  大地と吉良、出て扉を閉めた。
  坂本、口を付けられていないコーヒーカップを見つめた。

◯都内 日本軍駐屯地 格納庫 外観
  大地と吉良、格納庫に向かって歩く。
  吉良、入口の警備員にIDを見せた。
  中に入ろうとするが大地が立ち止まる。
吉良「どうしました?」
  大地、下を向く。
大地「……いや良いんだ、行こう」
  大地と吉良、中に入る。

◯都内 日本軍駐屯地 格納庫
  格納庫内部、沢山の飛行ユニットがある。
  大地、それらを眺めて進む。
大地「アポ取ってないんだろ? 今大丈夫?」
吉良「ここのスケジュールとか調べたんで、今なら多分行けます」
  大地と吉良、進む。
  飛行ユニットの整備をする技術者たちの姿が見えた。
  香川侑(33)、エナジードリンクを飲んでいる。
  香川と技術者たち、大地と吉良を見た。
香川「はぁ……」
  大地と吉良、香川に近付く。
  香川、立ち上がり背を向けた。
香川「何すか、断ったはずですけど」
大地「ごめん、どうしても話だけしたくて」
  香川、振り向く。
香川「今更何話す事あるんですか。私忙しいんで、戦争も大詰めだし」
大地「だからだよ。人質を助けたいんだ」
香川「……はぁ? マジで言ってんすか?」
大地「このままだと飛行ユニットで人質を殺す事になる、せっかく飛行ユニットで助けた人をだよ」
香川「知ってんすね人質の事。ニュースとか見るんだ」
大地「見ない日はないよ、ずっとモヤモヤしてたから」
  香川、眉間にシワを寄せる。
香川「自分で売ってモヤモヤっすか? チームのこと捨てといて、豪遊されてた方がまだ納得っすよ!」
大地「うん……」
香川「あれから私どうしたと思います? 戦争真っ只中で再就職なんて出来なかった、だから人殺しのために技術使うしかなかったんです。やっと終わらせて解放されるって時に何で出てくんすか……!」
  他の技術者たち、大地と香川を見ている。
大地「……ごめん」
香川「何で謝るんすか……そっちから裏切っておいて……」
  沈黙。
大地「さっきさ、坂本に会った」
香川「だから何すか」
大地「俺ずっとどうすれば良かったのか考えてた。そしたら坂本がさ、売らなかった事で傷ついた人のケアしてたんだ。それで思ったよ、どの道誰かが傷ついちゃったんだって」
香川「言い訳にしか聞こえないです」
大地「ずっと昔の選択ばっか気にしてさ、やっとそんなの意味ないって分かったんだ」
  香川、大地を睨む。
大地「だからせめて今からでも遅くない事があるならやりたいって思ったよ、多分納得する方法はそれしかないんだ……」
香川「それでやる事がバードリーマー復活っすか? 無理でしょ。整備とかどうすんすか、技術もあれから進化してるしあの時のままじゃ現実的に無理っすよ」
大地「だから来たんだ、香川の技術が欲しくて」
香川「反逆にスカウトとか、結局反省してないじゃん」
大地「うん、俺のエゴだよ……」
  大地、香川の目を見つめた。
大地「ごめん、話せてよかった」

◯都内 バードリーマー博物館 外観
  博物館の入口前にデモ隊が。
  警備員が2人、対処している。
  西山玄徳(43)、入口から出てくる。
  デモ隊に向かっていく。
西山「落ち着いて下さい! 警察呼びますよ!」
  西山、飛んできた石に命中する。
  頭から血を流して倒れた。
  大地、西山に手を差し伸べる。
大地「大丈夫ですか?」
  西山、手を取り立ち上がる。
  大地の顔を見て固まった。
西山「は? 何で……」
大地「とりあえず中入りましょう」
  大地、西山の手を引き中へ入る。

◯都内 バードリーマー博物館 休憩室
  吉良、西山の頭に包帯を巻く。
西山「俺は断ったぞ? なぁ吉良?」
吉良「すみません、どうしてもって事で……」
西山「チッ、何なんだよ……」
  大地、棚に飾られているバードリーマーチームの集合写真を手に取る。
大地「これ、まだ大事にしてくれてるんですね」
西山「俺にはそれしかねぇんだよ、お前と違って」
  大地、写真を戻し西山の向かいに座る。
大地「あの、今日はお願いがあって」
西山「聞いてるよ、マイグラトリー借りたいんだろ?」
大地「はい、あれ飛ばせないかなって」
西山「ダメだ、あれはここのメインだぞ」
大地「でも現地に向かうために必要なんです」
  西山、溜息を吐く。
西山「今更ヒーローのアイテムになれると思うか? もうバードリーマーは過去のものなんだよ、今は人殺しの兵器だ」
大地「だから変えなきゃいけないんです、今からでも人質を助けて彼らの希望になれば……」
西山「くどいぞ、最初から象徴なんかじゃなかったっつったのはお前だろうが……」
  沈黙。
大地「……確かに父さんの犠牲で作られたものだと思ってましたよ俺は。でもそうじゃないって思ってくれた人達がいたんです」
西山「そんなヤツいるかよ、外見たろ? バードリーマーは戦争に加担した害悪だっつうのが世界の総意だ」
大地「人質の人がまさにそうなんです」
西山「……はぁ?」
大地「フェザー基金は俺に影響受けて設立されたって……」
西山「それくらいは知ってる。だからダメだったんだ、こんなヤツの影響なんて受けやがるから」
大地「……本当にそうなのかなって思いまして」
西山「そうだろ。俺は平和の象徴としてプロデュースしたんだぞ、世界が一つになればいいって。でも結局何にもなんなかった、戦争は起こるし象徴は人殺しに使われるし……余計バラバラにした」
  大地、俯く。
西山「俺のプロデュースがカスだったんだ、だからこんな中途半端な結果に終わったんだ……!」
  沈黙。
西山「ごめんな、俺が巻き込んだせいだ……」
  大地、顔を上げる。
大地「いや、まだ終わってないです」
西山「何言ってやがる、終わったんだよ……!」
大地「少なくともフェザー基金の人達はそう思ってなかったからあそこまでしたんだと思います」
西山「何が言いたい?」
大地「俺達は正しくなかったかも知れない、でも影響受けてくれた人達が正しく在ろうとしてるんです。つまり……臭い言い方になりますけど俺達が諦めようが始めた事は終わってないんです」
西山「はっ、臭すぎるな。一端にヒーロー気取ってるつもりか?」
大地「いえ、それはもうやめます」
西山「えぇ……?」
大地「気付いたんですよ、俺ずっと仕事みたいな気持ちでヒーローやってました。今まで助けた人達の事ちゃんと覚えてなかったんです。でもヒーローだからって思って気負ってました」
西山「あぁ……」
大地「うん。俺たち多分、気負い過ぎてたんですよ。象徴として自分たちでやんなきゃいけないって」
  西山、表情が少し柔らかくなる。
大地「だから今回はヒーローとしてじゃなく自分としてやりたい事やります」
  大地、立ち上がり歩く。
西山「どこ行くんだ……?」
大地「帰ります。何か思うことありましたら連絡下さい。準備してる間ならこっちいるんで」
  大地と吉良、扉から去る。
  西山、しばらくして立ち上がった。

◯都内 バードリーマー博物館 展示室 (夜)
  西山、飾られたマイグラトリーを眺める。
  警備員、ライトで西山を照らした。
警備員「館長、まだいたんですか。何してるんです?」
  西山、去ろうと歩く。
西山「ちょっと悔い改めてた」
  西山、去った。

○高級住宅街 山本家 地下室 (日変わり)
  大地と吉良、それぞれ椅子に座る。
  大地、PCを弄る吉良に問う。
大地「軍の攻撃開始は?」
吉良「5日後ですね、今はそれに備えて補給とかやってる感じです」
大地「マイグラトリー無しで5日……間に合うかな?」
  大地、立ち上がり吉良の隣へ。
大地「そんでお前は協力してくれるって事?」
吉良「はい、どの道ここまでやってんだから終わりです。後は同じでしょ」
大地「……ありがとう」
吉良「いえいえ、普通に嬉しいっすから」
大地「何が?」
吉良「バードリーマーが復活……いや、また始まるって感じで」
大地「……そうだな、新しく始まる感じだ」
  すると大地のスマホに着信が。
  画面を見ると『西山P』と書かれていた。
  大地、応答。
大地「もしもし? ……え、今からですか? はい、行けますけど」
  大地、電話を切る。
吉良「何て?」
大地「なんか今から博物館に来いって……」

○都内 バードリーマー博物館 外観 (夜)
  大地と吉良、CLOSEと書かれた扉の前に立つ。
  すると西山、現れる。
西山「おう、来たか。入れよ」
  西山、裏口を指す。
  大地と吉良、着いて行く。

○都内 バードリーマー博物館 展示室 (夜)
  大地と吉良、誰もいない暗い展示室を西山に着いて歩く。
  マイグラトリーが見えて来た。
  そこには香川と坂本の姿も。
大地「え、何で……」
  西山、香川と坂本の隣に立つ。
西山「コイツらから連絡あった」
大地「え?」
西山「俺は悩んだぞ? でも連絡きたからさ……」
香川「その言い方やめて下さいよ、私たち別に賛同した訳じゃないから!」
  香川、顔を赤くする。
香川「大地さん装備もちゃんとしてなかったら行った所で絶対死ぬから、それは胸糞悪いし……」
  坂本、香川の頭をくしゃくしゃと撫でる。
坂本「つまり貴方に死んでほしくないって事」
香川「うわぁやめてっ」
  大地、目に涙を浮かべる。
大地「じゃあ来てくれるって事ですか……?」
  西山、大地の肩を軽くパンチ。
西山「図に乗るな。ただお前が死なない程度にやるってだけだ」
  西山、大地の肩に手を置く。
西山「お前は人質を助けたい、俺らはお前を死なせたくない。それでいいだろ?」
大地「はいっ、十分ですっ!」
  西山、手を叩いた。
西山「じゃあ急ぐぞー! 時間ねぇんだ、さっさと整備しちまおう!」
  香川、床に置かれた工具を手に取りマイグラトリーへ向かう。
  吉良、大地に言う。
吉良「良かったですね」
  大地、微笑んだ。
大地「うん」
  × × ×
  大地、マイグラトリーを整備する香川を手伝う。
大地「どう? 感触は」
香川「全然変わってないっすわ、あんま弄られてないっすね。多分すぐ飛べますよ」
大地「だね」
  沈黙。
大地「……ありがとね来てくれて」
香川「これで私も立派な反逆者ですわー」
  すると坂本、器具を持って来て床に置く。
坂道「はいこれ」
香川「どもっす」
  香川、作業を続ける。
大地「あの、坂本さんは何で来てくれたんですか?」
坂本「私? んー何だろうな、もちろん君が死んだら何か嫌ってのはあるし」
大地「何かって……」
坂本「正直西山さんから連絡くるまでは行くつもり無かったよ。ただね、電話で西山さんが言ってたの」
大地「何て?」
坂本「世界を一つに変える象徴を作ったつもりだった、でも本当は一人一人に選択肢を与えて自分で変える力を与えたんだ。ってね」
大地「そんなこと言ってたんですね……」
坂本「だから私も自分で考える事にした。バードリーマーチームにいたせいで傷付けちゃったとか悔やんでても仕方ないってね」
大地「そうですか……」
  大地、微笑み香川の作業を手伝った。

○高級住宅街 山本家 寝室 (日変わり朝)
  千尋、ベッドで眠っている。
  大地、千尋の額に口付けした。
大地「じゃあ行って来ます」
  大地、寝室を後にする。

○高級住宅街 山本家 外観 (朝)
  大地と西山と吉良、飛行ユニットとスーツを運んで玄関から出て来る。
  そして軽トラの荷台に積んだ。
  吉良、荷台にスーツを置く際大きな音を立てた。
西山「おい静かにっ! 子供たち起きるかもだろ?」
吉良「すみませんっ……!」
  すると大地、玄関の方を見る。
  そこには寝巻き姿の千尋が立っていた。
大地「千尋……」
  千尋、目を擦りサンダルを履いて近付く。
千尋「これどういう事……?」
大地「ごめん、攻撃始まるからそれまでに行かなきゃと思って……」
  千尋、大地の頬を両手で包む。
  大地、千尋の顔を見た。
千尋「じゃあさ……」
大地「うん……」
千尋「帰って来て、人質と一緒に」
大地「え……」
  千尋、手を離す。
千尋「そしたら私、前のバードリーマーも好きだったからもっとファンになっちゃう」
  千尋、目に涙を浮かべる。
大地「……でも君のお父さんはやめろって」
千尋「大丈夫。いい事したのに悪者扱いしたらそんな父親絶交だから!」
  千尋、大地に一瞬だけ口付けする。
  大地、微笑んだ。
大地「じゃあ行ってきます」
千尋「いってらっしゃい……!」
  大地、軽トラに乗り込む。
  軽トラ、西山の運転で発進。
  大地、サイドミラーに写る千尋を見えなくなるまで見つめた。

○都内 バードリーマー博物館 裏 (朝)
  展示室から出されたマイグラトリーが停められている。

○マイグラトリー内部 (朝)
  吉良と香川、操縦席に座りチェック。
香川「よし、オールグリーン。いつでも飛べます」
  西山と坂本、操縦席の後ろに立つ。
西山「あとはアイツの準備だ」
  すると背後から大地の声。
大地「お待たせ」
  一同、振り返る。
  そこにはバードリーマーのスーツを纏った大地。
吉良「おぉ」
西山「懐かしいな、でもちょっと老けたな」
大地「ギリギリ着れました、もうちょい太ってたらヤバかったですね」
西山「はは、俺たちは皆んな痩せたってのにお前だけ肥えやがって」
  西山、大地の腹を軽く叩く。
西山「……じゃあ行くか」
  一同、席に座る。
  香川、エンジンを点火した。
香川「エンジン点火完了」
西山「うし、じゃあせっかくだから我らがヒーローに激励でもしてもらおうかな」
  西山、大地を見る。
大地「俺ですか?」
西山「他に誰がいるんだ? ホラ」
  大地、頭を掻く。
  そして咳払いした。
大地「えっとじゃあ……」
  一同、大地を見つめる。
大地「俺たちはあくまで一人一人の選択を尊重します。その結果苦しめられてる人がいるならそれを助けるのが俺たちの選択です」
  大地、チーム一人一人の顔を見る。
大地「素晴らしい選択をしたフェザー基金の人達にそれが間違いじゃなかったって伝えてあげましょう!」
  一同、頷くが西山だけ目を見開いていた。
西山「坂本、話したのか?」
坂本「さぁ?」
  坂本、目を逸らしている。
  香川、ハンドルを押した。

○都内 バードリーマー博物館 裏 (朝)
  警備員、マイグラトリーが動き出すのを見る。
  慌てて駆け寄ろうとした。
警備員「え、え……? おいおい何やってんだ!」
  大地、窓を開ける。
警備員「何してるんだー⁈」
大地「ちょっとヒーローになって来ます!」
  大地、窓を閉める。
  マイグラトリー、勢いよく飛び立った。
  警備員の帽子、爆風で飛ばされる。

○マイグラトリー内部 (朝)
  吉良、操縦席の窓から外を見る。
吉良「うわぁマジで飛んでますよ」
香川「そりゃ私の整備だからね」
  西山、吉良に言う。
西山「なぁ、なんか景気付けに音楽でも流してくれよ」
吉良「いいっすね、じゃあこれかな?」
  吉良、音楽プレーヤーを操作。
  館内に古いアメリカンポップが流れた。
  一同、それぞれノリながらマイグラトリーは飛行した。

◯日本軍基地 司令室
  兵士が1人、司令室に入る。
  結城、椅子に座る。
兵士「失礼します!」
結城「どうした?」
兵士「バードリーマー博物館から展示中のマイグラトリーが盗まれ無断で発射したとの報告が……!」
  結城、固定電話を取る。
  千尋、応答した。
結城「千尋か? 大地くんに変わってくれ」
千尋『急にどうしたの? 彼ならいないけど……』
  沈黙。
  結城、電話を切る。
結城「マズいな、奴らバードリーマーを復活させ人質を独断で救出するつもりだ」
兵士「えぇ?! そんな事したら……」
結城「仕方ない、攻撃を早めるぞ」
  結城、PCを弄る。

◯マイグラトリー内部
  吉良、モニターで地図を見ている。
  地図のある地点を指した。
吉良「イグルヴ領に入りました。中心街ヤハヲムまで5分で着きます」
西山「よぉし、早速交渉だ。気合い入れろよ」
大地「場合によっては……てか殆どの確率で攻撃されると思います。その時は俺が飛びますんでマイグラトリーでのサポートお願いします」
吉良「任せて下さい」
西山「香川、エンジン吹かせ……」
  すると突然、ミサイルが飛んでくる。
香川「うわぁっ⁈」
  香川、操縦桿を急速に切る。
  一同の体、大きく揺れる。
  マイグラトリー、ミサイルを避けるが次々と弾丸が飛んできた。
香川「やばい攻撃されてますっ!」
西山「こんないきなりかっ⁈」
  香川、操縦桿を強く握りマイグラトリーに細かい動きをさせ避けて行く。
  しかし一発だけ当たってしまった。
  マイグラトリー、火を吹く。
香川「左翼エンジンに被弾!」
  吉良、地図を見る。
吉良「一旦不時着しましょう! ここに小さい浜があります!」
  吉良、地図のある地点を指す。
  香川、地図を確認。
香川「みんな掴まってて下さいっ!」
  香川、操縦桿を操作。

〇イグルヴ領 浜辺
  マイグラトリー、森林の側の小さい浜に不時着。
  一同、降りる。
西山「うわぁ死ぬかと思った……!」
坂本「周りに敵いない……⁈」
  吉良、周囲を見渡す。
吉良「とりあえず追っては来てないです、穴場みたいですね……」
  坂本、マイグラトリーに手で寄りかかる。
坂本「はぁぁ本当に……っ」
  吉良、ノートPCで地図を開く。
  香川、大地の装備を整える。
  西山、森林の入り口を見る。
西山「うわぁこりゃしんどいぞ……」
  坂本、西山の隣へ。
坂本「道が全くない……」
  大地、飛行ユニットの動作をチェックしながら前に出る。
大地「ここからヤヲグルまでどんくらいかかる?」
  吉良、ノートPC画面の地図を見せる。
吉良「大分離れたんで……10kmくらいですね。大体2〜3時間だと思いますけど……」
  吉良、森林を見る。
吉良「これじゃあ半日くらい掛かりそうですね……」
  大地、歩き出す。
香川「えぇ、行くんすか⁈」
大地「どうせマイグラトリーは飛ばせない、それなら行くしかない」
香川「でも絶対マイグラトリーは使いますって!」
大地「だから香川にはここで整備を頼みたい。なるべく時間は取ろう、半日もかかるなら途中で休む事にはなるから」
香川「まぁこれくらいの損傷なら半日とちょっとあれば直せますけど……」
大地「だから頼む。もし俺らが攻撃された場合、引き付けとくからその間に飛んで来て欲しい」
香川「……わかりました」
  香川、マイグラトリーの損傷を確認する。
大地「念のため吉良もここに残ってくれ、ひとまず俺たち3人で向かう」
吉良「了解です」
  吉良、香川の方へ。
西山「んじゃ足腰の悪い年長組は歩きますかー」
坂本「西山さんだけでしょそれ」
西山「あぁ?」
  大地、西山、坂本の3人。
  森林の中へ入って行った。

○イグルヴ領 森林
  大地、西山、坂本の3人、ぬかるんだ道を歩く。
  大地、無線機を操作している。
西山「こんなの想定してねぇよ、それ用のブーツ履いて来るんだった」
大地「お、繋がった。ここでも無線は大丈夫です」
西山「流石は高性能だな」
  すると茂みからガサガサと音が聞こえる。
  一同、歩みを止める。
坂本「え、聞こえました……?」
西山「あぁ、敵か?」
  大地、ゴーグルを身につけ周囲を調べる。
  ゴーグルには周囲の反応がレーダーのように映った。
大地「1人だけいます……! これは、子供……?」
  すると突然、茂みから現地の子供が飛び出し西山に飛び掛かる。
西山「うぉぉぉっ⁈」
  子供、西山に馬乗りになり叩く。
子供「عدو! سأقتلك!」
  大地、子供を引きはがす。
  子供、ジタバタ暴れる。
子供「اتركني!」
  西山、起き上がる。
  子供に手を伸ばした。
西山「انتظر!」
  子供、目を見開く。
  子供、動きが止まる。
  大地、子供を離した。
西山「انتظر، انتظر! نحن لسنا أعداء. هل تفهم؟」
  子供、深呼吸。
西山「لا نريد مهاجمتكم.」
  大地、西山と子供を交互に見る。
西山「هل فهمت؟」
子供「نعم」
  子供、頷く。
西山「حسنًا」
  西山、頷く。
  ゆっくりと子供に近付く。
西山「من أين أتيتم؟」
子供「أتينا من سلاي.」
  西山、子供の肩に手を置く。
西山「هل يمكنك أن تدلّنا على الطريق إلى هناك؟」
  沈黙。
  子供、立ち上がり歩き出す。
  振り返り手招きした。
子供「هنا!」
  西山、子供に着いて歩き出す。
西山「ホラ、交渉なら任せとけ」
  大地と坂本も歩き出した。

○イグルヴ領 スライ 市街地
  大地、西山、坂本の3人、子供に着いて歩く。
大地「大丈夫なんですか行っても?」
西山「敵じゃないって伝えといた、近くの街まで案内してくれるってよ」
  スライの街は人は多いが誰にも笑顔は無かった。
  至る所で怪我人の治療がされている。
  坂本、医療器具を見て目を開いた。
  市民、大地たちを見てヒソヒソ話す。
坂本「流石に歓迎されてないね……」
西山「俺はぶん殴られてもおかしくないと思うが」
  子供、ボロボロの家の前で手招き。
子供「!تعال هنا! تكلّم مع أمي」
  大地、西山を見る。
大地「何て?」
西山「家に招いてくれてる。ママと話せだとよ」
  子供、家に入る。
  大地たちも続いて入る。

○イグルヴ領 スライ 民家
  母親、調理をしている。
  子供たち、入って来る。
子供「!رجعت」
母親「!الحمد لله عالسلامة… إيه؟」
  母親、大地たちを見て固まる。
  西山、前に出る。
西山「.آسف لأننا أخفناكِ، نحن لسنا أعداء」
  母親、子供を引き寄せ西山を睨む。
  大地の背負う飛行ユニットを指した。
母親「?طيب، شو هالأجنحة」
  大地、西山の顔を見る。
西山「敵じゃないって説明したが……飛行ユニットを警戒してる」
大地「じゃあ俺の言葉を訳して欲しいです」
  大地、西山に耳打ち。
大地「私は国の裏切り者です」
西山「.أنا خائن لبلدي」
大地「囚われの人質を救いに来ました」
西山「.جئت لإنقاذ الرهائن المحتجزين」
大地「攻撃の意思はありません」
西山「.ليس لدينا أي نية للهجوم」
大地「軍に交渉し人質解放を求めます」
西山「.سنتفاوض مع الجيش ونطلب إطلاق سراح الرهائن」
  母親、子供と共に椅子に座る。
母親「?بتفكر إن الجيش رح يوافق يتفاوض معكم」
  西山、大地に訳す。
西山「軍が交渉に応じるかってよ」
  大地、向かいに座る。
大地「でもそれしか方法が無いんです。人質が解放されれば投降するしか無くなってここも被害が出なくなります」
  西山、慌てて訳す。
西山「.لكن لا توجد طريقة أخرى. إذا أُطلق سراح الرهائن، فلن يكون أمامهم خيار سوى الاستسلام، ولن تتعرض هذه المنطقة لمزيد من الضرر」
  母親、顔を顰める。
母親「?شو يعني؟ أي ضرر هون」
  西山、頭を掻く。
西山「.الجيش الياباني سيشن هجومًا شاملًا قريبًا. نحن نريد أن نجعل هذا الهجوم غير ضروري」
  大地、西山を見る。
大地「何て?」
西山「日本軍の総攻撃の話だ。それを止めたいって話した」
  大地、母親に向き直る。
大地「そうです。人質さえ解放されれば戦う必要はなくなります。貴女方も巻き込まれずに済む」
  西山、訳す。
西山「.نعم. إذا أُطلق سراح الرهائن، فلن تكون هناك حاجة للقتال. ولن تضطروا أنتم أيضًا إلى التورط في هذا」
大地「会いたいんです、ウスマン・イスムに」
  西山、訳す。
西山「.أريد أن أقابل عثمان إسم شخصيًا」
  母親、目を背ける。
母親「.طيب، روح لحالك」
  西山、訳す。
西山「勝手に行けだとよ」
坂本「でもまだマイグラトリーが……」
大地「うん、整備が終わるまでは行けない」
  すると西山、母親に向かう。
西山「?هل يمكن أن نَبقى في هذه البلدة قليلًا」
  母親、窓から外を見る。
母親「.اسأل أهل البلدة」
  大地たち、窓の外を見る。
  市民たちが集まり覗いていた。

○イグルヴ領 スライ 市街地
  大地たち、家から出て来る。
  群衆、大地たちを取り囲む。
  大地、西山に問う。
大地「さっき何て言ったんです?」
西山「少し滞在して良いか聞いたら皆んなに聞けって言われた」
  西山、見渡して言う。
西山「?فينا نبقى هون شوي」
  群衆の男性、言う。
男性「!لا تمزح معي」
  群衆、一斉に罵声を浴びせる。
  靴を投げ付ける者もいた。
西山「!نحنا مو أعداء」
男性「!ورّيني الدليل」
  西山、顔を顰める。
  大地、問う。
大地「何て言ってます?」
西山「敵じゃないなら証拠みせろって」
  大地、上を向く。
  数秒後、前に出た。
  群衆、後退り。
  大地、装備を外して行く。
  飛行ユニットを外しスーツのポケットの中を見せた。
大地「武器はありません!」
  西山、訳す。
西山「!ما معنا سلاح」
  西山もポケットを見せる。
  坂本は救急セットを出した。
坂本「最新の医療器具があります! 治療なら手伝えます!」
  坂本、怪我人たちを見た。
  西山、訳す。
西山「!لدينا أحدث المعدات الطبية! أستطيع المساعدة في العلاج」
  医療班の男、恐る恐る近付く。
  坂本に手を伸ばした。
医療班「.ورّيني」
  坂本、西山を見る。
  西山、訳す。
西山「それ見せろだとよ」
  坂本、医療器具を手渡す。
  医療班の男、受け取って見る。
医療班「.إي، إي」
  医療班の男、坂本に器具を返す。
  後ろを見て群衆に伝える。
医療班「.معك معدات منيحة」
  群衆、腕を組む。
  医療班の男、坂本に言う。
医療班「?فيني أستخدم هالمعدات」
  坂本、西山を見る。
  西山、訳す。
西山「使っていいか? って」
  坂本、強く頷く。
坂本「オーケーオーケー」
  医療班の男、手招きして歩き出す。
  坂本、救急セットを持ち着いて行く。
  大地と西山も着いて行った。

○イグルヴ領 スライ 医療棟
  坂本を先頭に入る。
  酷い怪我をした兵士たちが担架に寝ている。
  大地たち、絶句。
  医療班の男、坂本に問う。
医療班「?كيف أستخدمه」
西山「どう使うんだって」
  坂本、医療器具を持つ。
  医療班の男、案内する。
  坂本たち、着いて行く。
  医療班の男、1番酷い怪我の兵士の前に立つ。
  兵士、悶絶していた。
兵士「آخ! بيوجع! بيوجع!」
  医療班の男、兵士を指し坂本に言う。
医療班「?فينيكِ تخفّفي ألمه」
西山「コイツの痛み何とか出来ないかって」
  坂本、頷く。
  鎮痛剤を取り出し注射器に入れた。
  西山、医療班の男に解説。
西山「.هذا مُسكِّن للألم」
  医療班の男、頷く。
  坂本、兵士に鎮痛剤を注射。
  坂本、兵士の胸を押さえる。
坂本「深呼吸してー」
  坂本、ジェスチャーで深呼吸を見せる。
  兵士、深呼吸する。
  兵士、少しずつ落ち着き眠りについた。
  坂本、医療班の男を見て頷く。
医療班「.منيح، ساعدي الباقيين كمان」
西山「他も診てくれって」
  坂本、頷いた。
坂本「はい」
  × × ×
  坂本、怪我人たちを治療していく。
  医療班の男、腕を組み頷いた。
  西山に告げる。
医療班「.شكراً إلكِ」
西山「.مبسوط إنك فهمت」
  大地、西山を見る。
西山「感謝してくれてる」
大地「じゃあ……!」
西山「少なくともこの人らの誤解は解けたな」
  すると市民たちがやって来る。
  それぞれ担架に寝ている兵士たちに駆け寄った。
  そのまま兵士を抱きしめる女性、肩に手を置く男性などが現れる。
  大地と西山、目を合わす。
  兵士を抱きしめる女性、坂本に駆け寄り泣きながら手を握る。
女性「!جوزي كان عم يتألّم طول هالوقت… شكراً إلكِ」
  坂本、少し戸惑う。
坂本「あ、はは……よかった」

○イグルヴ領 スライ 市街地 (ダイジェスト)
  大地、飛行ユニットで低空で飛びながら子供たちにお菓子をばら撒く。
  子供たち、大地を追いかけ落ちたお菓子を拾う。
  × × ×
  大地、子供を1人ずつ抱えながら順番に飛行する。
  西山、その様子を見ながら男性たちと酒を飲む。
  笑い合っていた。
  坂本、並ぶ子供たちに1人ずつ健康診断。
  聴診器で胸の音を聞き喉の調子も確認する。
  大地、空を飛び続けた。
  その場の全員、笑顔だった。

◯イグルヴ領 スライ 市街地 (夜)
  子供たち、家で寝ている。
  西山、市民の男たちと酒を飲む。
  大地、スーツを脱いでやってくる。
大地「ふー、お疲れ様です」
西山「久々にふれあいショー出来たな」
大地「懐かしいですけど疲れましたっ」
  大地、西山の隣に座る。
  男、大地に笑顔で瓶ビールを渡す。
大地「良いんですか?」
男1「يلا، اشرب اشرب!」
大地「どうも」
  大地、受け取り開栓して飲む。
大地「ぷはっ、うまっ」
  男たち、笑っている。
  大地、西山を見る。
大地「で、何の話してたんですか?」
西山「ザッと言うとイグルヴ軍の悪口だ」
大地「あぁ、悪口で盛り上がるのは万国共通ですね」
  男、西山と大地を指す。
男2「احكيله كمان.」
大地「え?」
西山「お前にも聞いて欲しいんだとよ」
大地「じゃあ訳して下さい」
西山「あいよ」
  西山、大地へ向く。
西山「正直に言うと日本軍より自軍の方が恐ろしいらしい、独裁国家みたいなんだってよ」
大地「逆らうとダメみたいな?」
西山「あぁ、そうとも言ってた」
大地「へぇ……」
西山「兵士も市民から無理やり徴兵で集めてるって。拒むと家族もろとも処刑だ」
大地「うわぁ……」
西山「しかもただの処刑じゃねぇ。男は即殺、女は性奴隷にされて飽きたら処分されるんだってよ」
大地「酷い……」
西山「だからヤツらをぶっ倒してくれるなら大歓迎だと。巻き込まねぇなら敵でもな」
  大地、何か言いかけて吃る。
  西山、大地の肩に手を置いた。
西山「おいおい暗くなるなよ、せっかくの飲みの席だぜ?
 彼らだって楽しそうに話してくれたんだからよ」
  大地、顔を上げる。
大地「そうですよね……!」
  大地、残ったビールを一気飲み。
  西山と男達、手を叩いて笑う。
西山「いいねいいねぇ!」
  すると近付いて来る影が3つ。
  大地の背後で立ち止まった。
  西山と男達、顔色が変わる。
  大地、振り向くとイグルヴ兵が3人立っていた。
  大地と目を合わせ沈黙。
イグルヴ兵1「رصدنا جسماً طائراً اخترق منطقتنا. هل كنتَ أنتَ من على متنه」
大地「え……?」
  大地、血相を変え西山を見る。
  西山、訳す。
西山「この区域に侵入する飛行物体に乗ってたのはお前か? って……」
  大地、兵士の顔を再度見る。
  市民の男、割って入る。
男1「!هدول مو أعداء」
  兵士の1人、男を取り押さえる。
イグルヴ兵2「!اسكت」
  大地、立ち上がる。
  イグルヴ兵、大地に拳銃を向ける。
  大地、両手を上げた。
  周囲の市民たち、心配そうに見ている。
  兵士、もう1人を見て言う。
イグルヴ兵1「!قيّدوه وخذوه معكم」
イグルヴ兵3「!أمرك」
  兵士、大地の後頭部を殴り跪かせ、腕を後ろで組ませ手錠をはめる。
  西山にも同様。
西山「クッソ……!」
  大地と西山、立たされ連行される。
兵士1「!إذا في غيرهم، سلّموهم حالاً」
  市民たち、お互いの顔を見て沈黙。
兵士1「.طيب، ماشي」
  兵士、大地と西山を連れて去る。
  その際、無線で連絡を入れた。
兵士1「أرسلوا تعزيزات، وفتّشوا المنطقة بالكامل!」
  坂本、家に隠れながら眺めている。
  市民たち、兵士がいなくなってから騒ぎ出す。
  女性、坂本に言う。
女性「اهربي بسرعة! خدي هالأجنحة معكِ!」
  坂本、目を見開く。
坂本「え、え?」
  女性、坂本を裏から外へ出す。
女性「عم يدوروا عليكي كمان! التفتيش رح يبلّش قريب!」
  坂本、外に出ると子供たちがバードリーマーの飛行ユニットとスーツを持って待っており手渡した。
子供1「اهربي بسرعة!」
子供2「بالغابة ما رح يلاقوكي!」
  坂本、飛行ユニットとスーツを抱える。
坂本「ありがとう……!」
  坂本、森の方へ走り出した。

◯イグルヴ領 森林 (夜)
  坂本、飛行ユニットとスーツを抱えて走る。
  片手で無線を入れた。
坂本「香川ちゃん吉良くん! 聞こえる?!」
  吉良、応答。
吉良『どうしました?!』
坂本「大地くんと西山さんが軍に捕まった、私はそっち向かってる!」
  香川、応答。
香川『坂本さんの状況は?』
坂本「飛行ユニットとスーツを持ってる! ヤツら脱いで丸腰の所を捕らえた!」
香川『了解、移動してないのでそのまま来て下さい!』
  坂本、無線を切り走り続けた。

◯イグルヴ領 ヤヲグル 本部 牢獄 (翌朝)
  大地、牢獄で目を覚ます。
  オレンジ色の囚人服を着せられていた。
大地「はっ、西山さんっ」
  大地、周囲を見渡す。
  数ある牢獄には大勢の日本人が囚われていた。
  大地の牢獄も同様。
西山「こっちだ」
  西山、隣の牢獄に同じ囚人服を着て座っている。
大地「よかった無事で……」
西山「あぁ、速攻処刑じゃなくてよかったな」
  沈黙。
  すると日本人の1人、女性が声を掛ける。
恵「あの、日本軍の方ですか……?」
  大地、恵を見て目を開く。
大地「え、川島恵さん……?」
  川島恵(23)、大地を見つめる。
恵「え、知ってるんですか……?」
大地「だって俺達は君らを助けに来たから……」
  恵と日本人たち、「おぉ」と声をあげる。
  涙を流す者もいた。
恵「本当ですか? 良かった、このまま見捨てられると思ってたから……」
大地「あぁ、助けに来ました。でもこのザマじゃ……」
西山「まだ諦めるのは早い。坂本は捕まってねぇしスーツも飛行ユニットも盗られてねぇ」
大地「ですよね、何とか届けてくれれば……」
  恵、割って入る。
恵「え? スーツと飛行ユニットって言いました……?」
大地「あ、あぁ……」
恵「もしかしてバードリーマーですか?!」
  恵、前のめりに。
大地「そ、そうです」
  恵、涙を流す。
恵「来てくれたんですね……! 信じて良かった!」
  大地、恵の頭に震えた手を置く。
  西山、大地に向かって首を横に振った。
  大地、恵の頭をゆっくり撫でる。
大地「大丈夫、必ず何とかするから」
恵「はいっ、はい……!」
  西山、溜息を吐く。
  大地、西山を見た。
大地「それで多分、俺たち尋問されますよね」
西山「あぁ、それで生かされてる」
  すると扉が開き兵士が2人入ってくる。
西山「噂をすればだ」
  兵士たち、大地と西山の牢屋を開ける。
  大地と西山を立たせた。
兵士1「اطلع. القائد بدّه يقابلك.」
  西山、目を見開く。
西山「え?」
大地「何ですって?」
西山「首領が俺達に会いたいだとさ……」
  大地も目を見開く。
  大地と西山、兵士に連れて行かれた。

◯イグルヴ領 ヤヲグル 本部 首領室 (朝)
  ウスマン・イスム(38)、椅子に座っている。
  扉をノックされ応答。
ウスマン「ادخل.」
  兵士、扉を開ける。
  大地と西山の背中を押して入室させた。
ウスマン「إنهم ضيوفنا. عاملهم باحترام.」
  兵士、姿勢を正す。
兵士1「أعتذر، سيدي.」
  大地、西山を見る。
  西山、小声で訳す。
西山「丁寧に扱えってよ……」
  大地、ウスマンを見る。
  ウスマン、笑顔でアラビア訛りの英語を話した。
ウスマン「Birdreamer! I’ve been waiting for you!(バードリーマー! 待っていたよ!)」
  大地も英語で応答。
大地「Why would the leader himself...?(何故わざわざ首領本人が?)」
ウスマン「So, you do speak English.(英語は喋れるんだな)」
  ウスマン、立ち上がり大地の前へ。
ウスマン「Actually, I’m a fan of yours.(実は君のファンでね)」
  ウスマン、大地を指し片言の日本語を言う。
ウスマン「ワタシ、ファンです」
  ウスマン、室内をゆっくり歩く。
大地「Then... please listen to me.(なら聞いてほしい)」
  大地、ウスマンを目で追う。
大地「The Japanese army will attack soon. You will lose anyway. Before more people get involved... please release the hostages.(もうすぐ日本軍の攻撃が始まる、君たちは負けるだろう。巻き込まれる前に人質を解放してくれ)」
  ウスマン、立ち止まり大地を見る。
ウスマン「لا أستطيع.」
大地「え……?」
  大地、西山を見る。
ウスマン「Oh... you don’t speak our language?(我々の言語は喋れないのか)」
  ウスマン、大地に顔を近づける。
ウスマン「I. Said. I. Can’t.(出来ないと言ったんだ)」
大地「Why...?(何で?)」
  ウスマン、顔を離す。
ウスマン「Because we are fighting to make a statement. Winning or losing, in the formal sense, doesn’t matter.(我々は示すために戦っているからだ。形式上の勝敗は問題ではない)」
大地「You’re okay with dying?(死んでもいいのか?)」
ウスマン「If that’s what it takes to make our point.(それで我々の意思を示せるなら)」
大地「What... what is that point?(その示したい事って何だ?)」
  ウスマン、椅子に座る。
ウスマン「Let me tell you a little story from the past. I especially want you to hear it.(少し昔話をしよう。君には是非聞いてもらいたい)」
  ウスマン、語りだす。
ウスマン「Once upon a time, there was a boy who lived in a war-torn land.(昔々、紛争地域に男の子がいました)」
  ウスマン、続ける。
ウスマン「He was very poor, and with each passing day, he grew thinner and weaker. 
Then one day, he heard a rumor.(とても貧しく日に日にやせ細っていきます。そんな時ある噂を聞きました)」
  ウスマン、続ける。
ウスマン「There was a hero who flew all over the world, saving people.(世界中を飛び回り人々を救うヒーローがいると)」
  ウスマン、続ける。
ウスマン「The boy believed that someday, that hero would come for him too. So he fought desperately to stay alive.(男の子はいつかそのヒーローが来てくれると信じて必死に生き抜きました)」
  ウスマン、続ける。
ウスマン「He became a soldier. He fought. He lost friends. And still, he kept waiting for that hero. But the hero never came.(兵士として戦い友を失いながらもそのヒーローを待ち続けたのです。しかしヒーローはやって来ませんでした)」
  ウスマン、続ける。
ウスマン「Then, when the boy rose through the ranks of the military, he finally learned the truth about the world.(そして男の子は軍の中でも偉くなった時、世界の真相を知るのです)」
  ウスマン、続ける。
ウスマン「The hero only saved people who were convenient for him to save. He traveled from one prosperous city to another, while countless people who truly needed saving were left behind.(ヒーローは自分に都合のいい人しか救わず既に栄えた都市ばかりを巡っていました。本当に救うべき者は大勢いるのに)」
  ウスマン、続ける。
ウスマン「And that was when the boy realized something.(その時男の子は思いました)」
  ウスマン、続ける。
ウスマン「He must never rely on a hero. If he wanted to be saved, he would have to save himself.(ヒーローなんて頼ってはいけない、自分は自分で救わなければならないと)」
  ウスマン、続ける。
ウスマン「From that day on, the boy swore that he would build an independent nation—a country where his people could survive on their own.(それから男の子は自分たちだけで生きられるように独立して国を立ち上げる事を誓います)」
  ウスマン、続ける。
ウスマン「So that they would never have to depend on a hero again.(もうヒーローなんかに頼らなくていいように)」
  ウスマン、ニヤリと笑う。
ウスマン「To be continued.(つづく)」
  大地、絶句。
ウスマン「I did wonder what you could possibly do by coming here now.(今更来たところで、君に何が出来るんだろうと思ったさ)」
大地「……っ」
ウスマン「But I’m glad you came. At last, I was able to show you who I am... you, of all people. The one person I wanted to understand me more than anyone.(でも来てくれて良かったよ。私はようやく自分を示せた。誰よりも知って欲しかった君にね)」
  その時、ウスマンのデスクの電話が鳴る。
  ウスマン、応答。
ウスマン「نعم، فهمت. تصدّوا لهم. لقد حققنا هدفنا أيضًا.」
  ウスマン、受話器を置き大地を見た。
  西山、震えている。
ウスマン「Your friends are here. Looks like your father-in-law has abandoned you.(君たちのお仲間が来たよ。義父に見捨てられたな)」
  遠くから爆発音が聞こえた。

◯イグルヴ領 ヤヲグル 本部 外観 (朝)
  日本軍の輸送機、上空を飛ぶ。
  中の日本兵、爆弾を投下。
  大爆発が起こりイグルヴ兵たちが吹き飛ぶ。
操縦士「降下ポイントを確保」
飛行部隊「了解、降下を開始します」
  飛行部隊、一斉に輸送機から降りる。
  飛行ユニットで滑空しながら地上のイグルヴ兵をマシンガンで銃撃。
  イグルヴ兵、蹂躙される。

◯イグルヴ領 ヤヲグル 本部 牢獄 (朝)
  大地と西山、兵士に牢獄へ投げ入れられる。
  恵、大地に駆け寄った。
  兵士、駆けて出ていく。
恵「大丈夫ですか! この音は、揺れは……?」
  大地、ゆっくり起き上がる。
大地「攻撃が……」
  次の瞬間、轟音と共に牢獄ごと本部は崩れた。

◯イグルヴ領 ヤヲグル 本部跡 (朝)
  大地、耳鳴りの中で目を覚ます。
  周囲を見渡すと瓦礫の山だった。
恵「たす、けて……」
  恵、瓦礫に足を挟まれていた。
  大地、駆け寄る。
大地「大丈夫?!」
  大地、折れた柱を拾いてこの原理で瓦礫をどかす。
  恵、這い出て大地の足にしがみついた。
恵「ありがとうございます……!」
  すると西山の声が。
西山「おーい大地、無事か……?」
  大地、振り返る。
  土煙の先に西山。
  西山、怪我をした人質に肩を貸していた。
  大地と西山、合流。
  周囲を見渡した。
  飛行部隊が空から銃撃、イグルヴの歩兵を蹂躙。
  イグルヴの戦車が現れ砲撃。
  爆発で飛行部隊も数名戦死。
  全方向で轟音が響く。
大地「一旦離れましょう」
西山「つったってどこに!」
大地「それを探すのが俺等の仕事です、ひとまず殿任せます!」
西山「わかったよ……!」
  大地、先頭へ。
  西山、最後尾へ。
  その間に人質を整列させて歩き出した。
大地「絶対離れないで、手ぇ繋ぎましょう!」
  人質、手を繋ぐ。
  大地、周囲を見渡し壁沿いを進む。
大地「兵士には近づかないで、巻き込まれます!」
  時折背後を見て手招きしながら進む。
  曲がり角から顔を出し兵士がいたのでその道は避ける。
  壁沿いを進み続ける。
  道中、何度も周囲で爆発が起こった。
飛行部隊「がはぁっ!」
  大地の目の前の壁に血まみれの飛行部隊員が吹っ飛び打ち付けられる。
  人質たち、後退り。
恵「きゃあっ」
  大地、飛行部隊員を見つめる。
  飛行部隊員、大地に震えた手を伸ばす。
  大地、飛行部隊員を起こし肩を貸した。
西山「おい何やってる!」
大地「このまま行きましょう!」
  大地、飛行部隊員を支え歩き出す。
  人質たち、着いて行った。
西山「あぁもうっ」
  西山も着いて歩く。
  大地、本部を囲う塀を見る。
  塀を指さした。
大地「あそこ! あそこまで行けば出口があるはずです!」
  大地、飛行部隊員を支えながら速度を上げて歩く。
  人質たちと西山も速度を上げた。
  すると大地の目の前に軌道が逸れたロケット弾が落ちてくる。
大地「くっ……」
  大地、飛行部隊員に覆いかぶさる。
  人質たち、散らばる。
  西山、散らばる人質たちを見て手招きした。
  ロケット弾、着弾し爆発。
  爆風と細かい地面の破片が舞う。
大地「はぁ……っ」
  大地、飛行部隊員の無事を確認し顔を上げる。
  塀までの距離は近かった。
恵「あっ、はぁっ……!」
西山「ぐ……」
  大地、後ろを振り向く。
  恵が出血する西山の腹部を押さえていた。
大地「西山さん!」
  大地、西山へ駆け寄る。
  腹部の傷を見た。
大地「あぁっ、破片が……」
西山「おい何してるっ、早く行けっ……」
大地「何言ってんすか!」
  服の一部を破り布を傷口に当てようとする大地。
  西山、その手を払った。
西山「ヒーローならさっさと人助けしろってんだ! 俺もその一員なんだよ……」
  大地、無理やり西山を押さえ傷口に布を当てる。
大地「決めたんですよ俺。もう組織とか所属とかで一括りにしません……!」
西山「お前……」
  轟音が近付いて来る。
西山「このままだと全員死ぬんだって! おいっ、やめろ!」
  轟音、直ぐ側まで来た。
  上空から巨大な影が覆う。
  西山、その正体を見た。
西山「……マジかよ」
  大地、西山の目を見てその方向である上空を見る。
  そこにはマイグラトリーが。
  スピーカーから香川の声が。
香川『無事ですかー?!』
  大地、微笑んだ。

◯イグルヴ領 ヤヲグル マイグラトリー内部 (朝)
  着陸したマイグラトリーに入る大地。
  支えていた飛行部隊員を坂本に引き渡す。
大地「頼みます……!」
坂本「うんっ」
  恵と吉良、西山を横にして運び乗せる。
  人質たち次々と乗って来た。
  香川、全員が乗り込むまで見ている。
香川「よし全員乗りましたね、飛びますよ!」
  マイグラトリー、飛び立つ。
  そのまま戦場とは逆方向に進んだ。

◯マイグラトリー内部 (朝)
  坂本、飛行部隊員を担架に寝かせ西山の止血をする。
西山「よかった、逃げ延びて……」
坂本「スライの人達のお陰ですよ……」
  大地、操縦する香川に問う。
大地「どのルートで脱出する?」
  香川、レーダーを見て言う。
香川「どこもドンパチやってますからね、1番規模が小さいとこ通って行きます」
  大地もレーダーを見て指さす。
大地「それだとここか?」
香川「はい、スライって街の上空を通りましょう」
  大地、沈黙。
  そのまま機体の後方へ歩いて行った。
  × × ×
  大地、後方に乱雑に置かれたスーツと飛行ユニットを見る。
  坂本、声を掛けた。
坂本「気になる?」
大地「坂本さん! 西山さんと飛行部隊の人は……?」
坂本「応急処置は済んだ。後は医療機関に着くまで安静にしてれば大丈夫」
大地「よかった……」
  坂本、スーツらを見る。
坂本「これね、スライの子供たちが渡してくれたの」
大地「そうなんですか……?」
坂本「凄い必死にね。その意味、分かる?」
  大地、坂本を見て微笑んだ。
  × × ×
  マイグラトリー、スライ上空を飛ぶ。
  吉良、窓から下を見た。
  激しい戦闘が行われており轟音がこちらまで聞こえる。
  その中で市民、逃げ惑っている。
吉良「これで規模小さい方なんですか……」
香川「最後の決戦になるだろうからね、どっちも総力上げてんでしょ」
  吉良、歯を食いしばる。
  すると背後から大地の声が。
大地「みんな聞いて欲しい」
  香川と吉良、振り返り目を見開く。
  大地、スーツと装備を身に付け飛行ユニットを背負っている。
吉良「大地さん、それ……」
大地「俺ちょっと行って来ます。このまま脱出して下さい、でも一応オペレーターとしてサポートはして欲しくて」
  香川、下の戦場を指す。
香川「まさか乗り込むんすか?! この中に?!」
  大地、香川を見て言う。
大地「思いついちゃったんだよ、出来る事」
  恵、顔を上げる。
  大地、ハッチに向かって歩く。
  一同、目で追っていた。
香川「大地さん死にますって! この中で1人で……!」
  大地、香川を見る。
大地「スライの人達を助けるんだ。彼らが助かるって事は俺も助かるって事だろ?」
香川「暴論ですよ……!」
  大地、ハッチの前に立つ。
大地「掴まってて下さい」
  一同、手すりや椅子に掴まる。
  大地、ハッチを開けると突風が吹いた。
  大地、開けられたハッチから下の戦場を見下ろす。
  西山、上半身を起こした。
西山「おーい大地……」
  大地、振り向いた。
  西山、手を振る。
西山「終戦後に迎えに行くから、みんなと仲良くなぁ」
  大地、頷いた。
大地「行ってきます!」
  大地、ハッチから飛び降りた。
  そして飛行ユニットの翼を広げスライの街へ飛んで行った。

◯イグルヴ領 スライ 市街地 (朝)
  日本軍の飛行部隊とイグルヴ軍の陸上部隊が戦闘。
  逃げ惑う市民の中に倒れた母に呼びかける子供が。
子供「يمّا! قومي!」
  母親、起きない。
  子供、涙を流す。
  すると飛行ユニットの音が。
  子供、母の体に顔を埋め蹲る。
大地「やぁ」
  子供、顔を上げる。
  そこには太陽に照らされた大地が立っていた。
  大地、子供に「待って」とジェスチャー。
  膝立ちになり倒れた母の首を触り脈を確認。
  大地、子供にサムズアップ。
大地「大丈夫、生きてるよ」
  子供、涙を流す。
  大地、母の体を持ち上げ片手で抱える。
  もう片方の手で子供の手も握った。
大地「掴まってて!」
  大地、翼を広げ飛び立つ。
  そのまま森林へ入り子供と母を降ろした。
大地「ここなら安全」
  大地、サムズアップして再度翼を広げ飛び立つ。
  スライの街へ戻って行った。
  × × ×
  市民、逃げ惑う。
  ふと上空を見上げるとバードリーマーが怪我人を抱えながら森林へ飛んでいくのが見えた。
  市民、バードリーマーへ着いて走った。

◯イグルヴ領 森林
  大地、怪我人を降ろす。
  そこに多くの市民が集まって来た。
  市民たち、大地に泣きながら群がる。
市民1「شكراً! شكراً!」
市民2「إنتَ منقذنا!」
市民3「رائع!」
  その中の1人の女性。
  初めてスライに来た時に家に招いてくれた子供の母、泣きながら街を指さす。
母親「ابني لِسّه هناك!」
  母親の側に子供はいなかった。
  大地、頷いて飛び立つ。

◯イグルヴ領 スライ 市街地
  大地、銃弾と爆発が飛び交う中を華麗に飛んでいく。
  大地、下を見た。
  大地たちを招いた子供、崩れかけの壁に寄りかかり震えていた。
  大地、軌道を変え降りる。
  震える子供の前に降り立った。
  子供、ビクッと身を震わせる。
  大地、翼を畳み目線を合わせる。
  子供、手を振り回し抵抗。
子供「تركني! روح من هون!」
  大地、ゴーグルを外し素顔を見せた。
大地「大丈夫、俺だよ」
  子供、大地の顔を見て落ち着く。
  大地の手を取りゆっくり立ち上がる。
大地「よぉし良い子だ」
  大地、ゴーグルを装着し周囲の情報を調べる。
大地「待ってよ、まだ敵がいる」
  ゴーグルに表示された敵の動きを見つめた。
  そして敵が居なくなった瞬間、子供を抱えて飛び上がった。
大地「おぉぉっ!」
  飛び交う銃弾を避けながら飛ぶ。
  そして森林へ入った。

イグルヴ領 森林
  大地、子供を降ろす。
  子供と母、泣いて抱き合う。
  母、子供を抱いたまま大地に頭を下げた。
母親「!شكراً إلك! شكراً」
  大地、微笑みまた飛んだ。

イグルヴ領 スライ 市街地 (ダイジェスト)
  大地、銃弾が飛び交う中で次々と市民を救助していく。
  イグルヴ兵も救っていた。
  日本軍の飛行部隊、大地を見た。
飛行部隊1「何だアイツ⁈」
飛行部隊2「敵を抱えてる、裏切り者か⁈」
飛行部隊1「撃ちます!」
飛行部隊2「待てっ、まだ断定は……!」
  飛行部隊員、機関銃を大地に向け連射した。
大地「おわっ……」
  大地、軌道を変え避けるが足に一発被弾してしまう。
大地「ぐっ……」
  大地、そのまま森林へ飛んで行った。

イグルヴ領 森林
  大地、着陸してイグルヴ兵を降ろす。
  膝をついて撃たれた足を押さえた。
  市民たち、駆け寄る。
  大地、まだ飛ぼうとする。
  市民、大地を押さえた。
市民1「!خلص! بكفّي」
  大地、振り解いて立ち上がる。
大地「まだ……いるんですっ」
  大地、再度翼を広げ飛び上がった。

○イグルヴ領 スライ 市街地
  大地、森林を出た瞬間に森林へ向かう飛行部隊を見る。
大地「マズいっ!」
  飛行部隊、大地に射撃。
  その弾丸は外れた。
  大地、避け森林から遠ざかる。
  飛行部隊も大地を追い森林から遠ざかった。
  飛行部隊員、大地に無線を飛ばす。
飛行部隊2『裏切りか? 次は当てるぞ』
  大地、応答。
大地「違う、部隊の者じゃない! 怪我人を救助している!」
飛行部隊2『まさか長官の言っていたバードリーマーか?』
大地「そうだ! 独断で人質と市民を救いに来た! 人質は船に乗せて脱出に向かっている!」
飛行部隊2『その船なんだがな……』

○マイグラトリー内部
  香川、レーダーを見る。
香川「やばいミサイルが!」
  香川、操縦桿を曲げ急旋回。
  しかしミサイル、マイグラトリーの左翼に直撃。
  マイグラトリー、降下していく。
  機内、大パニック。
吉良「香川さんっ!」
香川「不時着してみせるっ!」
  香川、操縦桿を全力で握る。
  マイグラトリー、地面を滑り不時着。
  一同、衝撃に襲われる。
  香川、頭から血を流して叫ぶ。
香川「爆発する! 早く出て!」
  一同、マイグラトリーから出た。

○イグルヴ領 平地
  一同、マイグラトリーから脱出。
  離れた所でマイグラトリー、大爆発を起こし大破。
  香川、先頭に立つ。
香川「早く離れないと! 増援が来ます!」
  一同、怪我人を支えながらゆっくり進む。
  そこへ日本軍の部隊が現れ一同を取り囲み銃口を向けた。
日本兵「反逆者を捕捉、投降しろ!」
吉良「くそッ!」
  一同、立ち止まり両手を上げる。

○イグルヴ領 スライ 市街地
  大地、無線で飛行部隊員と話す。
飛行部隊2『撃墜されたと報告が入った。大人しく投降しろ』
  大地、歯を食いしばり飛び続ける。
  飛行部隊員、無線を切り舌打ち。
飛行部隊2「チッ、往生際の悪い……!」
  大地、飛びながらゴーグルで周囲を調べる。
  イグルヴ兵は多く倒れており日本軍の増援が次々とやってきた。
  その中でとあるイグルヴ兵が前に出る。
  大地、それを見る。
  イグルヴ兵、軍服のボタンを開ける。
  インナーには大量の爆弾が括り付けられていた。
  大地、口を大きく開ける。
  次の瞬間、とてつもない大爆発が周囲を包んだ。
  大地の意識、そこで途絶える。

○イグルヴ領 スライ 日本軍テント (夕)
  大地、目を覚ます。
  柱に縛られ拘束されていた。
  周囲では多くの日本兵が怪我人の治療や報告のために走り回っていた。
  治療を受ける怪我人の中にはスライの市民の姿もちらほら。
  ある日本兵、大地の前で立ち止まる。
日本兵1「反逆者が目を覚ましました!」
  そこへ軍曹がやってくる。
  大地、軍曹を見上げて問う。
大地「街の……人達は……?」
軍曹「お前が救助した者たちの事か? それなら無事だ。森林にいる所を保護した。アラビア語で何か訴えかけてるようだがいかんせん分かる奴が居なくてな、それまで待機させてる」
  大地、力なく息を吐いた。
軍曹「あとお前の仲間だがそちらも別の部隊が拘束した。ソイツらとお前の処遇は上が話し合って決める」
  軍曹、去る。
  大地、担架で治療を受けるスライの市民を見つめた。

◯イグルヴ領 スライ 日本軍陣地 (夜)
  大地、手錠をはめられ日本兵に銃口を突きつけられながら歩く。
  椅子に座る軍曹の前で立ち止まった。
  そこにはスライの市民である母と子供が。
  子供、大地を見てすぐに駆け寄り抱きついた。
  軍曹、子供を見る。
軍曹「やっと意味が分かった。みんなお前の安否が気になってたんだ」
大地「そう、ですか……」
  大地、両手を動かすが手錠が邪魔をした。
軍曹「確かにお前はヒーローだ、功績も大きい。だが規律を乱した罰は受けてもらう」
大地「はい、覚悟は出来てます」
軍曹「上の決定はこうだ。数日後に人質を帰すための飛行機を来させるが反逆者であるお前たちは乗せないと」
大地「わかりました」

◯イグルヴ領 スライ 市街地 (数日後)
  大地、包帯を巻いた姿で市民たちの復興を手伝う。
  木材を運び、調理などを行った。
  大地、遠くの市民に呼びかける。
大地「الأكل جاهز للكل!(みんなの分のご飯できましたー!)」
  市民、手を上げる。
市民「تمام!(わかったー!)」
  みんなで食事をした。
  大地、笑顔だった。
  そこへ日本軍の軍曹が。
軍曹「今からウスマン・イスムの処刑が行われる事になった」
  大地、動きが止まった。

◯イグルヴ領 ヤヲグル 処刑台
  大地、日本軍に連れられ簡易的に建てられた処刑台の前へ。
  ウスマン、俯きながら日本兵に手錠を引かれ歩く。
  大地の前を通った。
大地「هي!(おい!)」
  ウスマン、立ち止まる。
大地「وأنا كمان فرجيتك.(俺も示したよ)」
  ウスマン、ゆっくりと大地を見る。
  弱々しく微笑んで言った。
ウスマン「……オソイヨ」
  ウスマン、日本兵に手錠を引かれ歩き出す。
  大地、ずっと目で追った。
  × × ×
  大地、苔に腰掛ける。
  背後では簡易処刑台が解体されていた。
  そこへ西山、やってくる。
西山「おう」
  大地、西山を見た。
  ゆっくり立ち上がり抱き合う。
西山「よくやった」
大地「そっちも無事で良かったです」
  大地、西山の背後に吉良、香川、坂本がいるのを見る。
  西山との抱擁を解きそちらへ歩いた。
  大地たち、目を合わせ無言で頷いた。

◯イグルヴ領 平地 (日変わり)
  飛行機、着陸。
  中から結城が降りて来た。
  軍人たちが整列し前には恵を始めとする元人質たちが。
  多くの報道陣もおり生中継している。
  日本では千尋と良子がお互いの手を握り家のTVで見守っていた。
  結城、恵と握手。
  次々に元人質たち全員と握手した。
  大地たち、離れた所で軍人たちに監視されながら並び見ている。
西山「これで俺らの役目は終わりだな」
吉良「これからどうします? 多分自力で帰っても入国拒否されるでしょ」
坂本「それだけの事したからねぇ」
香川「ま、受け入れるしかないっすよ」
  西山、大地を見る。
  大地、恵たちを見つめていた。
結城「よくぞ無事でいてくれました。帰りましょう、日本に」
  結城、飛行機へ手招き。
  しかし恵たち、動かない。
結城「どうしました?」
  恵、顔を上げる。
恵「あの、バードリーマー達は……?」
  結城、表情が険しくなる。
結城「彼らはヒーローだ、あなた方を救った最大の功労者である事に変わりはない。しかしそれと同時に反逆者なんだ。本来なら処刑される所を功績に免じて見逃してやった。最大限できる事はやった結果なんだよ、受け入れて欲しい」
  恵、拳を強く握る。
  元人質たち、お互いの顔を見合い頷いた。
恵「それなら私たちにもまだ出来る事があります」
結城「何でしょう?」
  恵、震えながら言う。
恵「彼らが帰らないなら我々も帰りません!」
  騒がしくなる。
  日本で生中継を見ていた千尋と良子、涙を流す。
  結城、目を見開いていた。
結城「な、何故……?」
恵「彼らは危険を侵してまで我々を助けてくれました。そんな人達を犠牲にしてまで帰る事なんて出来ません……!」
  結城、スマホを取り出し電話をかける。
結城「もしもし……はい、どうしますか……?」
  大地、遠くから恵を見た。
  静かに涙を流した。
  その時、遠くから見る恵と目が合った。

◯飛行機 客席 (夕)
  元人質たち、席に座る。
  奥の席には大地たちバードリーマーチームも座る。
  結城も席に座り電話している。
  大地、窓の外を見た。
  そこには一斉に手を振るスライの市民たちの姿が。
  大地、小さく手を振り返す。
  そして飛行機、飛び立った。
  × × ×
  大地、スマホでビデオ通話をする。
  画面には千尋と良子、そして翼と美空が映っていた。
  千尋、目が赤く腫れている。
千尋『おつかれさま』
大地「あぁ、本当疲れたよ」
  翼、花丸が書かれた作文を見せる。
翼『パパのこと書いたら花丸もらえた!』
大地「おぉ、凄いじゃん」
  美空、静かに手を振る。
  大地、笑顔で手を振り返した。
  良子、俯いて沈黙。
  大地、良子を見る。
大地「母さん」
  良子、顔を上げる。
大地「今までごめん。でもようやっと父さんも報われたと思うから。帰ったらまた墓参り行こう」
  良子、涙を流す。
  千尋、良子の背中を摩る。
良子「ごめんねっ、ありがとう……」
  大地、微笑む。
千尋「じゃあ待ってるから、じゃあね」
大地「あぁ」
  大地、ビデオ通話を切る。
  飛行機内を見渡した。
  恵も母とビデオ通話をしている。
  西山と坂本は談笑、香川と吉良も同様。
  元人質たちは眠っている。
  大地、ふと窓から外を見る。
  そこには夕焼けに照らされて飛ぶ渡り鳥の列が。
  飛行機と並んで飛んでいた。
  大地、その渡り鳥たちを見つめた。

  (了)

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