それでも僕たちは ドラマ

ブラック企業で働く信二は、彼女の陽香との交際記念日をすっかり忘れ、口論となった。信二が隠している秘密は何なのか、信二は彼女のことどう思っているのか。また、陽香は信二が本当に好きなのか。互いが互いに大切だからこそ不器用になってしまう二人の純愛ストーリー前編
奈々瀬りん@脚本家志望 12 0 0 08/11
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第一稿

〇(10年前)病院・診察室・中
絵里「心疾患?」
  愕然とした表情の北川絵里(39)。
  その隣でキョトンとしている北川信二(10)。
医者「まだ詳しく調べてみないこと ...続きを読む
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〇(10年前)病院・診察室・中
絵里「心疾患?」
  愕然とした表情の北川絵里(39)。
  その隣でキョトンとしている北川信二(10)。
医者「まだ詳しく調べてみないことにはわからないのですがその可能性があります」
絵里「まだ10歳ですよ」
医者「未来があるお子様だからこそ、検査の必要があるんです」

〇(8年前)高校・中庭
  向かい合っている信二(17)と沢口陽香(17)。
信二「なんて言ったらいいかよくわからないけど」
陽香「何よ。呼び出したのあんたじゃん」
信二「あのさ…俺お前とずっと一緒にいたい」
  目を見開く陽香。
陽香「何で私?」
信二「え?」
陽香「いや、ほかにかわいい女の子なんていっぱいいるだろうし。私男の人から好かれるかというとそこまでじゃないし。つーか信二とは友達すぎてマジで対象外」
信二・N「そうかもしれない」
  中庭で固まる信二。
  周囲には楽しそうな学生の声。
  ×  ×  ×
医者の声「君は後悔のないように生きるべきだ」
  ×  ×  ×
信二・N「俺の『後悔しない』はどこにあるんだろう」
  瞳を閉じる信二。
陽香「…あの」
  信二、目を開ける。
陽香「…大丈夫?」
信二「大丈夫」
陽香「返事だけど、一度待ってほしい」
信二「わかった!」
  おおきくうなずく信二。
  苦笑いする陽香。

〇工場・中
  ライン工場で作業している信二(25)。
  近づいてくる蛯原忍(35)。
蛯原「今日のノルマ達成できてないじゃんかよ」
信二「…工場長」
蛯原「丁寧なのはいいけどさ、もっと早くやらないと」
信二「…」
  顔をしかめる信二。
蛯原「勘違いするなよ。俺はお前のために行ってんだぞ」
信二「(不機嫌そうに)…わかってます」

〇北川家・リビング・中
  鼻歌を歌いながら料理を作っている沢口陽香(25)。
  陽香、ふと手を止める。
  カレンダーには交際記念日!と記しのついた日付。
陽香「…今日は早く帰ってきてくれるかなぁ」

〇駅前・ロータリー
信二「すみません。ミスしました」
  電話口に話している信二。
信二「ええ…ええ。それで工数が増えてしまって。すみません。よろしくお願いいたします」
  電話を切ってため息をつく信二。
信二「(電話を切って)…なんか忘れてる気がする」
  何となく癖で胸を押さえる信二。

〇北川家・リビング・中
  中に入ってくる信二。
  テーブルに並んだいつもより豪華な食事。
  部屋の隅で丸くなってうずくまっている陽香。
信二「陽香…?どうした?具合悪いのか」
陽香「…遅かったね。仕事?」
信二「ああ…出向先の」
陽香「へえ…最近夜遅いんだね」
信二「仕事忙しくて…」
陽香「ほんとに?」
信二「ほかに何かあるのかよ」
陽香「別に彼女いたりして…」
信二「ば…そんなわけないじゃん」
陽香「…そっか。でも今日ぐらい早く帰ってきてほしかったな。だって今日は交際記念日だったんだよ」
信二「…」
陽香「信二?」
信二「あのさそれ意味ある?」
陽香「それ?」
  メビウスライトのパッケージからタバコを取り出し、火をつけようとする信二。
  だが、すぐにやめる。
信二「何とか記念日とかっていうやつ。女の子好きみたいだけど基本的に俺興味ない」
陽香「別に意味なんてないよ。でも、あったほうが楽しいじゃん」
信二「『楽しい』か…」
  陽香を見つめる信二。
陽香「何」
信二「…お前ってさ。そんな女子っぽいこと言うやつだっけ」
陽香「どういうこと」
信二「なんかイメージとしてさばさばしてそういうのに興味なさそうなイメージだったから」
  固まる陽香。
陽香「…」
信二「なんかごめん。気にしないで」
陽香「…別に。でも最近、忙しそうじゃんいつも。最近ちっともまともにしゃべってないし」
信二「働いてんだから当たり前じゃん」
陽香「ノリで同棲なんてしてるけどこんなんで付き合ってるなんて言えるのかな私たち」
信二「…」
陽香「…」
信二「そんなこと言うやつだっけお前って」
陽香「そうじゃなくてさ…」
信二「ごめん。俺疲れてるんだ」
  そのまま部屋を飛び出していく信二。

〇家の前・バス停
  パス停の前を歩いている信二。
  信二、向い側から歩いてくる八戸美香(25)とすれ違う。
  信二とすれ違った瞬間、驚いて振り向く美香。
美香「…今の人泣いてた?」
  肩を落として去っていく信二。

〇北川家・玄関・前
  インターホンを鳴らす美香。
部屋からのっそり出てくる陽香。
美香「…元気、じゃないみたいね」
  血の気のないぐったりとした陽香の顔に若干顔を引きつらせる美香。
陽香「やっちゃった…」

〇電車・中
  椅子に座っている信二。
信二・N「俺…恋人失格だなぁ」
  うなだれる信二。
  スマホには陽香からのメッセージは一切ない。

〇コンビニ・中
  アイスを選んでいる陽香。
陽香・N「あの人がいなくなったのに何事もなかったかのようにアイスを選んでいる私」
美香「陽香、決まった?」
  陽香のかごをのぞき込んでくる美香。
陽香「あ、うん」
  スイカバーを見せる陽香。
陽香「私これにする」

〇同・外
  コンビニから出てくる美香と陽香。
美香「で、何があったの。そんなものまで買って」
  陽香の手にはメビウスライトの煙草の箱。
陽香「…これ、あいつが吸ってたやつ」
美香「あいつ?」
陽香「何でいなくなっちゃうかなあ」
  煙草の箱を握り締める陽香。
陽香「まだ何にも聞けてないっての…」

〇北川家・ベランダ・中
  ベランダに出てくる陽香。
  その手にはマグカップ。
信二の声「陽香の陽は太陽の陽」
陽香「…何も知らないくせに」
  タバコを取り出し火をつける陽香。
陽香「(むせて)…にが」
  タバコをマグカップに落とす陽香。
陽香「無理…」
  手すりに寄りかかり空を見上げる陽香。
陽香「どこで間違えたんだろう」

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