恋路狂わしき大将 恋愛

伊織恭平(30)の仕事は、人の恋路を邪魔すること!! ある日彼は、日本甘党の大物政治家の妻、津山雪江の依頼を受けるのだが……??
アズマカケル 17 0 0 08/01
本棚のご利用には ログイン が必要です。

第一稿

登場人物表

比江島彩夏(22)……早智大学の学生
伊織恭平(30)……失恋屋の社長
津山沙衣(16)(21)……早智大学の学生
林田誠司(21)……早智大学の学生
...続きを読む
この脚本を購入・交渉したいなら
buyするには会員登録・ログインが必要です。
※ ライターにメールを送ります。
※ buyしても購入確定ではありません。
 

登場人物表

比江島彩夏(22)……早智大学の学生
伊織恭平(30)……失恋屋の社長
津山沙衣(16)(21)……早智大学の学生
林田誠司(21)……早智大学の学生
津山雪江(55)……沙衣の母親
軽山安男(24)……沙衣のセフレ
斎藤淳(23)……沙衣のセフレ
青山亮(16)……沙衣の元カレ

司会者(結婚式)
彩夏の友人A、B
司会者(テレビ日東)
雪江に雇われている外国人A、B、C
AD(テレビ日東)
亮とキスする女
男子A、B、C






○結婚式場
ビデオカメラに映っている比江島彩夏(
22)の姿。
彩夏、結婚式のスピーチをしている。
彩夏「2人は本当にお似合いの夫婦だと思い
ます! 私が2人の恋のキューピッドにな
れて、本当に嬉しいです! 2人がこうし
てここにいるのは、様々なことがあるので
すが!……そうですね、この場では、割愛
させていただこうと思います」
『え~』という会場の声。
笑顔の彩夏。
静止するビデオカメラ内の彩夏。

○彩夏の家(夜)
ワンルームにしては広めの家で、彩夏、
友人A、友人Bがテレビを見ている。
友人Bは画面に集中せず、スマホをいじ
っている。
彩夏「(涙目で)……」
友人A「……彩夏」
彩夏「……何?」
友人A「彩夏これ、泣くような奴じゃないよ」
テレビ画面には、国民的人気キャラクタ
ー『なあなあ』のアニメの映像。子供番
組っぽくのほほんとした雰囲気。
彩夏「私思うの。なあなあ君って、辛い人を
励まして、人を笑顔にする。その笑顔って
とっても素敵じゃない? 私もなあなあ君
みたいに、他人を幸せにしてあげられるよ
うになりたいなあって」
友人A「……変わってるよね、彩夏は」
友人B「(スマホを見ながら)彩夏ってバイ
ト探してるんだっけ? そういえば」
彩夏「そうなの~。前の居酒屋潰れちゃって」
友人B「これ彩夏やりたそうじゃない?」
友人B、彩夏にスマホを見せる。
彩夏、友人A、友人Bのスマホを見る。
スマホ画面の求人サイトには『株式会社
恋のキューピッド』と書かれている。
彩夏「……(目を輝かせ)やる!」

○失恋屋・前~メインルーム(日替わり)
彩夏、深呼吸し、ビルの一室にノック。
恭平の声「はい」
彩夏「本日面接の予約を––」
恭平の声「ああどうぞどうぞ入って入ってー」
彩夏「……失礼します(入る)」
室内には、席についている伊織恭平(3
0)。
彩夏「宜しくお願いします!」
恭平「面接ね。ちょっとこっち来て」
彩夏、恭平の机辺りに行く。
机上にはプッチンプリン1つと皿1枚。
恭平「今から面接を始めます、このプッチン
プリンを、皿にプッチンしてください」
彩夏「……え?」
恭平「いいから」
彩夏「……」
彩夏、プッチンプリンを皿に出す。キャ
ラメルを余すことなく、綺麗。
恭平「(プリンを見て)……これは……18
年に、1人だ」
彩夏「18年?」
恭平「18年に1人の素晴らしい出来だ。合
格!」
彩夏「え……私……受かったんですか?!」
恭平、契約書を彩夏に出す。
恭平「わが社に入ってくれるかな?」
彩夏「(感極まり)……はい」
彩夏、契約書にサインする。
恭平「その契約書、あっちに俺のデスクある
から置いといてくれ」
彩夏「はい!」
彩夏、パーテンションで区切られたスペ
ース(社長室)に入る。

○同・社長室
彩夏、入ると壁に『失恋万歳』と書かれ
た掛札があるのを見る。
彩夏「(見て)失恋万歳……」
雪江の声「ここかしら? 失恋屋さん」
彩夏「……失恋?」
恭平の声「えー、と」
雪江の声「津山よ。津山雪江。ごめんなさい
ね。ちょっと早く来ちゃったかしら?」
パーテンションの隙間から、恭平、津山
雪江(55)を見る彩夏。
×   ×   ×
恭平「いえ構いません、津山さんですね。依
頼はおおよそメールで確認させていただき
ました。えー貴方の娘さんは彼氏がいて、
その2人を別れさせてほしいとの事ですね」
彩夏「(社長室から出て)……どういうこと
ですか?」
恭平「(彩夏の元へ駆け)いいから」
と社長室に押し込もうとする。
彩夏「え、でも」
恭平「黙れ、クビにするぞ、そこにいろ」
彩夏、渋々社長室へ戻り、パーテーショ
ンの隙間から恭平と雪江を見る。
×   ×   ×
雪江「沙衣ったらそのせいで、ドイツへの留
学渋ってるの」
恭平「ドイツ?」
雪江「ドイツで政治を学ばせて、夫の政党で
立候補させるの、良いでしょう?」
恭平「素晴らしいです」
×   ×   ×
彩夏「(不満そう)……」
×   ×   ×
恭平「ではその……男の特徴などは……」
雪江「知らないわ、2人で新宿にいるところ
の目撃情報が、あっただけだもの」
恭平「それは果たして彼氏だと言い切れるの
でしょうか?」
雪江「手をつないでいたそうよ」
恭平「……分かりました。では次に、沙衣さ
んの特徴について教えていただきたいので
すが」
雪江「そうね……どうでもいいのかもしれな
いけど、あの子あんまり、男性の免疫がな
いのよ」
恭平「免疫」
雪江「ずっと女子校だったから」
恭平「そうですか……」
雪江「そういう場合ってその……なんという
か、純粋じゃない? 別れさせることは難
しいのかしら?……一応、お礼はこのくら
いにしようと思ってるんだけど」
雪江、小切手をバックから取り出し恭平
に見せる。
恭平「(小切手を見て)私の手にかかれば容
易いことです。いや政治家の奥様ともなる
と懐が深くていらっしゃる!」
×   ×   ×
彩夏「(小声で)……最低」
×   ×   ×
雪江「(微笑み)では宜しく頼みますわ」
雪江、去る、とすぐに、
彩夏「(出てきて)どういうことですか?!」
恭平「こういうことだ」
彩夏「恋のキューピッドと逆じゃないですか
?!」
恭平「そうだ! この会社は失恋屋。人の恋
路の邪魔をして、収入を得る」
彩夏「でも応募サイトには……!」
恭平「失恋屋じゃ誰一人面接来なかったんだ
よ!」
彩夏「……最低! 私、人の幸せのために働
きたかったのに……」
恭平「(大きく笑い)人の幸せ!」
彩夏「なんですか」
恭平「そういう事言う奴は何にもできない無
能と相場は決まってる。自分の事だけ考え
るこれが利口、だ」
彩夏「自分が幸せじゃなくても、他の人が笑
顔になれば私は……」
恭平「自己犠牲の精神なんて少年漫画の中だ
けの話だぞ、(彩夏に)ベジータ」
彩夏「……こんな会社、辞めます」
恭平、彩夏の手から契約書を取る。
恭平「この契約書には、今日から1か月以内
に退職する場合違約金として1000万円
が発生すると書かれている。俺の業務命令
に違反したときも同様だ確認しなかった方
が悪い」
彩夏「……」
恭平「1000万の借金背負ったら家族も不
幸になるかなあ?」
彩夏「……最低!」
恭平「では業務の説明をしよう、基本的にハ
ニートラップの仕掛人となりカップルを破
局に導く。これが1つ。もう1つは俺が食
べるプッチンプリンをプッチンすること」
彩夏「どっちも嫌です!」
恭平「物は慣れようだ。今回の依頼から行く
ぞ?」
彩夏「……(嫌そう)人の恋路の、邪魔……」
恭平「そうだ報酬は弾むぞ~なんせ依頼人は
日本甘党の党首、津山賢一の妻だからな!」
回転するいすに座り回転している恭平。
彩夏「……最低」
恭平「そればっか言ってるな」
彩夏「だって……」
恭平「ま、これからよろしく。新、人」
彩夏「新人じゃなくて比江島彩夏です!……
そういえば、お名前は……」
恭平「(椅子を止め)……恋路狂わし2年半
! 俺の名前は!……伊織! 恭平!」

○メインタイトル『恋路狂わしき大将』

○津山家・リビング(夜)
豪邸である。
座っている津山沙衣(21)、雪江。
机上には1枚の『留学申請書』
雪江「沙衣の将来の為に私は言ってるのよ」
沙衣「……有難うございます。でも、私……」
雪江「でも? でも何?」
沙衣「……いえ……」

○失恋屋・メインルーム(日替わり)
いるのは恭平と彩夏。PCを見ている。
恭平「津山沙衣はSNSを利用していなかっ
た。しかし!」
PC画面に映るのは、ツイッター上の写
真。橋の上での林田誠司(21)と沙衣
の2ショット。
恭平「(コメントを読み)初デート! 東京
の橋の上で汽笛の音が聞けました!」
沙衣「……この男性のアカウントですか?」
恭平「早智大4年野球部林田誠司」
沙衣「早智?! 私と同じ」
恭平「だから新人、お前がこいつにハニート
ラップを仕掛ける。浮気から破局に持って
いくぞ」
沙衣「……嫌ですよ!」
恭平、契約書をバッと彩夏に見せる。
彩夏「(イライラして)……」

○早智大学・大教室(日替わり)
授業中だが学生は騒がしい。
誠司の席の隣に彩夏、来る。
彩夏「……あの……教科書を忘れてしまって
……見せていただいてもいいですか」
誠司「はい! 勿論」
彩夏、誠司の隣に座る。
彩夏、視線を感じ、後ろを見ると、恭平
がプッチンプリンを食べながら後ろから
彩夏と誠司を見張っている。

○失恋屋・メインルーム(日替わり)(回想)
いるのは恭平と彩夏。
恭平、一冊の分厚い本を開いて置く。
恭平「『ハニートラップの王道』って本だ。
written by俺。ステップ1『まずは食事に
誘うべし』からステップ223『好きな戦
国時代の武将は長曾我部元親と答えよ』ま
で全部載っている。これを見ながらやれば
いい」
彩夏「(呆れて)……」
彩夏、その本を閉じると、表紙は『武士
道』となっている。
彩夏「武士道……?」
恭平「表紙が『ハニートラップ大全』なんて
相手に見られたらダメだろ馬鹿かお前」
彩夏「(ムカつき)……じゃあ私武士じゃな
いんでもっと可愛いのにしてください」
×   ×   ×
表紙が『昆虫図鑑』になっている。
彩夏「虫無理です!」
恭平「(ショック)可愛いのに……」
×   ×   ×
表紙が『ぐりとぐら』になっている。
彩夏「ぶ厚っ! ぐりとぐらぶ厚っ!」
恭平「(呆れて)じゃあ何がいいんだ~!」
彩夏「もっと、こう……ポピュラーなの!」
(回想終わり)

○早智大学・大教室(日替わり)
彩夏の机上に置かれた、表紙が『ドラゴ
ンボール』の本(ハニートラップ大全)。

○失恋屋・メインルーム(日替わり)(回想)
いるのは彩夏、恭平。
彩夏「そもそも伊織さんが、沙衣さんに近づ
けばいいじゃないですか」
恭平「政治家の娘なんていうお嬢様は、一途
だと相場は決まてる」
彩夏「……そうかもしれないですけど」
恭平「それに野球サッカーバスケテニスをし
ている男子大学生なんて、女を性欲を晴ら
す道具程度にしか思っていないと相場は決
まってる」
彩夏「偏見ですよそんなの!」
恭平「ウェイウェイウェイウェイ言ってるば
かりだと相場は決まってる!」
彩夏「決まってません!」
恭平「……まあいい。林田誠司を頼んだぞ」
彩夏「……でも私、男子と上手く喋れないか
も……」
恭平「は?」
彩夏「中学生の頃、クラスの男子にいじめら
れてたことあって、それ以来、年上とかな
らいいんですけど、彼みたいな同い年の子
……苦手になっちゃって……」
(回想終わり)

○早智大学・大教室(日替わり)
彩夏、誠司、後ろに恭平がいる。
誠司「本当ですか?!」
彩夏「本当です!」
誠司「やっぱりいいですよねー!」
彩夏「いいです! すっごくいいです! い
るもんですねー、なあなあ、好きな人」
恭平「(小声で)めちゃめちゃ話してるじゃ
ないか」
彩夏と誠司の視線の先にはマスコットキ
ャラクター『なあなあ』のストラップ型
の小さい人形がある。
誠司「なあなあTVってあるじゃないですか」
彩夏「はいありますよね」
誠司「実は俺……あの番組で着ぐるみのバイ
トやってるんです」
彩夏「……(驚き)本当ですか?!」
彩夏、後ろから恭平の視線を感じる。
彩夏「……あのー、良かったら今日、お昼一
緒に行きませんか……?」
誠司「……すいませんそれはダメです!」
彩夏・恭平「え?」
誠司「俺彼女いるんで、女性と2人はダメな
んです! すいません!」
恭平、プッチンプリンを食べながら、
恭平「(小声で)まだステップ1だぞ……」
彩夏、『ドラゴンボール』(ハニートラ
ップ大全)をカバンに突っ込み、
彩夏「(嬉しそう)ですよね! 良かった~」
誠司「良かったんですか?」
彩夏「あ、いえ、まあちょっと……」
誠司「……実は沙衣も、あ、彼女なんですけ
ど、沙衣も、なあなあが好きで……」
彩夏「そうなんですね! バイトの事、知っ
てるんですか?」
誠司「(照れて)いや~ちょっと俺が着ぐる
みって恥ずかしくて」
彩夏「(微笑み)なんかいいですねそういう
の」
誠司「……こういうの、初めてなんです」
彩夏「?」
誠司「……俺、ずっと野球しかやってこなく
て、恋愛とかぶっちゃけ、興味ありません
でした。でも去年、一目ぼれしちゃって」

○早智大学・カフェテリア(日替わり)(回
想)
いるのは沙衣と誠司。
誠司「僕と……付き合って下さい」
沙衣「……ごめんなさい」

○同・キャンパス前(日替わり)(回想)
いるのは沙衣と誠司。
誠司「沙衣さんの事が好きなんです! 僕と
付き合ってください!」
沙衣「……ごめんなさい」

○同・教室(日替わり)(回想)
いるのは沙衣と誠司のみ。
誠司「沙衣さんの事がほんとにほんとにほー
んとに大好きなんです! これで最後にし
ます! でももし良かったら! 僕とお付
き合いしていただけないでしょうか?!」
沙衣「……はい」
誠司「(小声で)ですよね……えっ?!」
沙衣「(笑顔で)宜しくお願いします」
(回想終わり)

○早智大学・大教室(日替わり)
彩夏、誠司、後ろに恭平がいる。
誠司「だから、ようやく……って感じで。ま
だ付き合って、1か月も経ってないんです
けど」
彩夏「とっても素敵じゃないですか!」
恭平、舌打ちを何回もしている。

○テレビ日東・スタジオ(夕)
誠司、ピンマイクを付け、『あー』と喋
ると、なあなあの声に変わっている。
誠司、なあなあの着ぐるみをスタッフに
着せてもらっている。

○津山家・リビング(夕)
家の猫に餌をやる沙衣。
沙衣、テレビをつけると、テレビ番組『
なあなあTV』が放送されている。
沙衣「(それを見て)……なあなあ……じゃ、
ダメだよね」
沙衣、スマホを手に取り電話を掛ける。
沙衣「(通話)あ、安男君?……うん、あの
さー今度空いている日ある~? え?……
ほんと? 嬉しい~!」

○失恋屋・メインルーム(夕)
いるのは恭平と彩夏。
彩夏、小さいなあなあの人形を持ち、腹
の部分のボタンを押す。
なあなあ「ぜーんぶうやむやにしよーよー」
恭平「喋っ、た……」
彩夏、もう一回押す。
なあなあ「大体でいいよ大体で~」
恭平「なあなあって、そういう事か」
彩夏「今大人気なんです! TV番組も、日
本中の子供が見てるんです!」
彩夏、テレビをつけると、なあなあTV
が放送中。画面には着ぐるみのなあなあ
(誠司)と司会者。
×   ×   ×
司会者「さあ次は なあなあに相談してみよ
う! のコーナーです。では早速お電話繋
がっているそうです」
ゲストAの声「……もしもし、あの、俺……
実はその……ま、麻薬がやめられなくて…
…それで妻にも逃げられて、警察にも追わ
れてて……(泣きながら)俺の人生! ど
うすれば!……」
電話越しの、インターフォンの音。
×   ×   ×
恭平「ほんとに子供番組かこれ」
×   ×   ×
ゲストAの声「は? 警察?! 何にもやっ
てねえよ! おい!……やめろぉぉ!」
物音の後、電話、ブツッと切れる。
司会者「どうしたらいい? なあなあ」
なあなあ「困ったときは寝ちゃおうよ~」
×   ×   ×
恭平「意味が分からない!」
恭平、TVを消す。
彩夏「でもいいですよねーカップルで同じ趣
味があるって」
恭平「……新人、良かったな、今回の仕事は
断る」
彩夏「え?!」
恭平「今日の林田誠司を見るに、破局は難し
いと判断した。いろいろ面倒になる前に身
を引いておく」
彩夏「……嘘……(目を輝かせ)やったー!」
恭平「(彩夏に)だからプリンを用意しろ」
彩夏「はーい!」
彩夏、冷蔵庫へ。
社長室から電話の音が聞こえる。
恭平、社長室に入る。
冷蔵庫の中身、プッチンプリンだらけ。
彩夏「(それを見て)……うわぁ」

○同・社長室(夕)
恭平、鳴っている電話を取る。
失恋屋にいる恭平と自宅にいる雪江との
通話。
恭平「はいもしもし……あ、津山さんお世話
になっておりますー今丁度こちらから  」
×   ×   ×
雪江「1つ、伝え忘れていたことがあったわ」
×   ×   ×
恭平「……はい、何でしょう」
×   ×   ×
雪江「まさかとは思うけど、一度引き受けた
仕事を断る、なんてことは、ないわよね?」
×   ×   ×
恭平「……えーと、それは、どういう……」
×   ×   ×
雪江「今は沙衣の将来に、大きく関わる時期
なの」
×   ×   ×
恭平「はいそれは重々承知しております……」
×   ×   ×
雪江「私くらいにもなるとね、危ない仕事を
引き受けてくれる人を沢山知ってるのよ」
×   ×   ×
恭平「……いやいやいやいやご冗談を」
×   ×   ×
雪江「外を御覧なさい?」
×   ×   ×
恭平、窓を見ると、外には怪しい武装を
した外人が3人、失恋屋の方を、中指を
立て、睨んでいるのが見える。
恭平「(3人を見て)……」
×   ×   ×
雪江「あなたまだお若いわよね? 私も将来
がある方を傷つけたくはないの」
×   ×   ×
恭平「(焦り)は……は、は……へい!」
×   ×   ×
雪江「感謝するわ。後この電話のことも、勿
論秘密よ。健闘を祈るわ」
×   ×   ×
電話が切れる。
『失恋万歳』の掛札が片側だけ外れる。
彩夏、皿に乗ったプッチンプリンを持ち、
彩夏「失礼しまーす(入る)」
恭平、彩夏から皿を受け取るも、手が震
えている。
彩夏「……?」
恭平「(手が震え)死にたくない、俺は死に
たくない……」
彩夏「(恭平の震える手を見て)……も、も
しかして……麻薬やってるんですか?! 
奥さんに逃げられたんですか?!……け、
警察が来るんですか?! わんさかわんさ
か来るんですか?!」
恭平「あの2人を……絶対に別れさせる!」
彩夏「……は?」
恭平「そして俺は生きる!」
彩夏「は?」

○同・メインルーム(深夜)
暗い部屋の中、1人でパソコンをいじっ
ている恭平。
恭平、手を止め、机上のなあなあの小さ
い人形を見る。
恭平「(見て)……あ」
恭平、また手を動かす。先程よりも速い。
少しすると恭平、また手を止め、画面を
見て、ニヤリと笑う。

○早智大学・キャンパス内(日替わり)
を出ていこうとする誠司と沙衣。
2人を尾行している恭平。
そんな3人を見かける彩夏。
彩夏「……なんだろ?」
彩夏、恭平を尾行し始める。

○映画館・館内
スクリーンに映るのは、感動的だが安っ
ぽい雰囲気の漂う男女のキスシーン。
沙衣の手に、慎重に手を伸ばす誠司。
2人の1つ後ろの席、誠司のそんな姿を
見て笑いをこらえている恭平。
そのまた1つ後ろの席、映画を見て号泣
している彩夏。

○駅前(夕)
にいる誠司、沙衣。
2人を尾行中の恭平。
恭平を尾行中の彩夏。
誠司「じゃあ……行こっか」
沙衣「うん」
誠司「……そういえば(袋を差し出し)これ、
あげるよ。この前欲しいって言ってたやつ」
沙衣「(受け取り)……ありがとう」
誠司「帰ったら開けてみて」
沙衣「うん」
誠司「沙衣……好きだよ」
沙衣「……私も」
恭平、吹き出しそうになる。
誠司、ぎこちなく沙衣と別れ、改札へ。

○レストラン・外(夜)
レストランへ歩く沙衣。
沙衣を尾行中の恭平。
恭平を尾行中の彩夏。
沙衣、軽山安男(24)と会う。
沙衣、安男、仲良さげな雰囲気。
恭平「ビンゴだ」
安男「沙衣~久しぶり~」
恭平、カメラで安男と沙衣をひたすら連
写している。
彩夏「嘘……!」
恭平、声が聞こえ、後ろを見ると、彩夏
を発見。

○失恋屋・メインルーム(夜)
いるのは恭平、彩夏。
PC画面に映るツイッターの画面。
アカウント名は『NANAーE』、アイ
コン画像はなあなあ。
恭平「津山沙衣の裏アカウントだ。なあなあ
の画像検索から見つけた」
彩夏、ツイートを見ると、『あのババア
まじうぜえ』『モテないアピールしてる
女くそうざい死ね』等、悪口がずらり。
恭平「見てみろ、『純愛なんて正直キモイ』
とか『セフレって割といいかもww』って
ツイートしてるぞ」
彩夏「……何でこんな……」
恭平「ストレス吐き出す場がないんだろ」
恭平、他のアカウントを見る。アカウン
ト名は『YASUO』。アイコン画像は
本人の顔写真。
彩夏「(見て)これ昨日の男……!」
恭平「(笑い)これだけじゃないかもな」
彩夏「……どういうことですか?」
恭平「もっと男がいるかもしれないだろ普通
に考えて」
彩夏「……」
恭平「今日撮った写真、明日林田誠司に渡せ」
彩夏「何でですか?!」
恭平「当たり前だろ、カップルを破局へ導く
のが俺たちの仕事だ」
彩夏「……」
恭平、満面の笑みで契約書をバッと彩夏
に見せる。
彩夏「……でも……誠司君が、可哀そう」
恭平「(笑い)可哀そう!」
彩夏「だって」
恭平「じゃあ林田誠司があんな女狐に騙され
たままでお前は満足するのか」
彩夏「……」
恭平、回転する椅子に座り、回転しなが
ら、
恭平「神様ありがとー! お金をくれてあり
がとー! お金ばんざ~い! 失恋ばんざ
ーい!」

○津山家・リビング(夜)
いるのは沙衣、雪江。
雪江「いい? 沙衣はドイツに行って国際政
治学を学ぶの。政治家になったら、日本甘
党の津山派として大活躍。大臣も夢じゃな
いわ!」
沙衣「……はい」
雪江「ならこれ、書いて頂戴」
机上の留学申請書。
沙衣「……」
沙衣、留学申請書を持って、部屋に行く。
雪江「沙衣?! ちょっと沙衣?!」

○同・沙衣の部屋(夜)
ベッドの上、先程誠司から受け取った紙
袋と、なあなあの小さいストラップ型の
人形がある。それは誠司のと同じである。
沙衣、部屋に入り、ベッドに横たわり、
なあなあと数秒見つめあう。
沙衣、なあなあのボタンを押す。
なあなあ「白黒つけなくていいよ~」
沙衣「……」
沙衣、携帯を取り出し、電話する。
沙衣「(通話)……もしもしー淳君?!……
そうあの突然なんだけどさ、明日とかって、
空いてる?……ほんと!……良かったー…
…うん、じゃあ家行くね!……いや泊りは
無理だよ~うち厳しいし!……うんじゃあ
ね、はーい」

○早智大学・大教室(日替わり)
休み時間。
誠司、席に荷物を置き、トイレへ行く。
封筒を1つ持った彩夏、誠司の席に行き、
彩夏「……」
彩夏、封筒を誠司のリュックの上に置く。

○失恋屋・メインルーム
恭平、鼻歌を歌い、プッチンプリンを食
べながら、車のカタログを見ている。
カタログの車、どれも高級車。

○早智大学・大教室
誠司、封筒に気付く。
授業が始まる。
誠司、封筒を開くと、淳と沙衣が写って
いる写真が3枚。
誠司、それを見て、呆然とする。
誠司、封筒内に手紙があるのに気づく。
誠司、それを読む。
誠司「(読みながら)……」
恭平の声「津山沙衣は、お前の思っている様
な女じゃない」

○早智大学・キャンパス
友人達と一緒にいる沙衣。
恭平の声「そこの写真の通りだ。尾行でも何
でもして、自分で確かめてみればいい」
沙衣を尾行している誠司。
友人達と別れ、キャンパスを出る沙衣。

○公園~マンション前(夕)
公園の草むらに隠れている誠司、そこか
ら沙衣を見ている。
沙衣、マンションの前まで行くと、マン
ションから斎藤淳(23)が出てくる。
誠司「……」
淳、沙衣の頭をなでたり、キスしたりと、
とても馴れ馴れしい。
誠司「沙衣……」
誠司、公園を出て、マンションから遠ざ
かる。足取りは重い。
その状況を陰から見ている恭平。
恭平「(小声で)チェックメイトだ……!」
仲良さげな沙衣と淳。
沙衣のリュックについているなあなあの
小さい人形型のストラップ。誠司のと同
じである。

○電車・車内(夜)
乗客全員座れるくらいには空いている。
座っている誠司、立っている恭平。
誠司、少しずつ泣き出し、ついには号泣
する。
周りの乗客、誠司を気にする。
恭平、誠司にプッチンプリンを渡す。
恭平「辛い時には、甘い物を食べなさい」
誠司「(受け取り)……有難う、ございます」
恭平「こちらこそ」
電車が止まる。
誠司「……え?」
誠司、恭平の方を見ると、恭平はもう電
車を降りていて、いない。

○早智大学・カフェテリア(日替わり)
学食を食べている誠司、沙衣。
×   ×   ×
その2人とは違う席に座っている、彩夏、
恭平。
×   ×   ×
誠司、箸の手を止める。
沙衣「……?」
×   ×   ×
恭平、スマホで動画の撮影をスタート。
×   ×   ×
沙衣「誠司君、今日元気ないね?」
恭平「……なくすよ……そりゃあ」
沙衣「辛いことでも、あったの?」
恭平、カバンから安男と沙衣の写真を取
り出し、机に置く。
沙衣「(それを見て)……」
×   ×   ×
動画を撮っている恭平。
彩夏「(うつむき)……」
×   ×   ×
誠司「これだけじゃないよ。昨日だって……」
沙衣「?!……」
誠司「三股って俺、映画の中だけだと思って
たわ……」
沙衣、音を立てて立ち上がる。
周りの学生、沙衣に注目。
沙衣「ごめんなさい……今まで有難う」
誠司「え」
沙衣、カフェテリアを急いで出る。
周りの学生、沙衣や誠司に注目してざわ
つく。
誠司「……」
誠司、自分と沙衣のお盆を下げに行く。
×   ×   ×
動画の撮影を終える恭平。
彩夏「……それ撮って、どうするんですか」
恭平「(ニコニコして)証拠として依頼人に
送る~」
彩夏「そんなに人の不幸が楽しいんですか?」
恭平「不幸? 大体な、恋が終わることを不
幸と決めつけるのは浅はかにも程がある」
彩夏「浅はかじゃないですよ」
恭平「現に俺の両親は、離婚してからの方が
それぞれ幸せに暮らしているし、俺自身両
親の言い争いを聞かなくて済んだ。全員幸
せ」
彩夏「……」
恭平「人の幸不幸なんて、起こる事象で決ま
るはずがない」
彩夏「……じゃあ何で決めるんですか?」
恭平「知るか」

○なあなあTVの映像(夕)
いるのは司会者となあなあの着ぐるみを
着た誠司。
ゲストBの声「僕は……どうすればいいんで
しょうか……」
司会者「どうしたらいい? なあなあ」
なあなあ「……」
司会者「……なあなあ?」
なあなあ「……もう、どうでもいい」

○津山家・リビング(夜)
食事中の沙衣。ソファに座っている雪江。
雪江、イヤホンを付けながら、昼の早智
大カフェテリアでの動画を見る。
動画では、編集されて、沙衣が立ち上が
るところからしか映っていない。
雪江、沙衣(実物の方)を見て、笑顔。
沙衣「ごちそうさまでした」
沙衣、自分の部屋へ。

○彩夏の家(夜)
ベッドに横になりスマホを見ている彩夏。
彩夏「(ため息)……」
彩夏、何かに目が留まる。
彩夏「(スマホを見て)……何?……これ」

○津山家・沙衣の部屋(夜)
部屋は暗く、ベッドで寝ている沙衣。
沙衣のすすり泣く声。

○失恋屋・メインルーム(日替わり)
恭平、オンラインの銀行のホームページ
にログインする。
恭平、『残高照会』の所をクリック。
恭平、画面を見て、笑いだす。

○津山家・沙衣の部屋
机上の留学申請書。沙衣のサインがして
ある。
沙衣、それをカバンに入れ、部屋を出る。

○テレビ日東・スタジオ(夕)
なあなあの着ぐるみを着せてもらってい
る誠司。
AD「林田君今日はしっかり頼むよー」
誠司(なあなあの声)「……はい」

○カフェ(夕)
に入る安男。
彩夏「軽山さん!」
安男、彩夏に気付く。
安男「ウィーっす」
安男、彩夏の向かいに座る。
彩夏「突然呼び出してしまい、申し訳ござい
ません」
安男「あ~全然全然! カワイー女の子とお
茶飲めるし?」
彩夏「今日は……津山沙衣さんの事を、伺い
たくて」
安男「お! 聞いて聞いて! 俺、沙衣の事
は割と知ってると思うわ」

○繁華街(夕)
を歩く沙衣。
沙衣、なあなあTVのオープニングが流
れているのを電気屋のテレビで見る。
沙衣「(それを見て)……」

○カフェ(夕)
机上の彩夏のスマホ。
画面は『YASUO』のツイート『さえ
がもう終わりにしようだって(泣)誰かイ
イ女の子紹介して!』というツイート。
彩夏「これはどういう事ですか?」
安男「こーゆーことじゃね?」

○船音橋(夕)
川を見ている沙衣、電話をかける。

○テレビ日東・スタジオ(夕)
生放送中。
いるのはなあなあ(誠司)と司会者。
司会者「さあ次は なあなあに相談してみよ
う! のコーナーです。ではただいま、お
電話繋がりました」
沙衣の声「……あの……私……私は……」
誠司M「……この声……」
沙衣の声「私は……女子高でしたが……高1
の頃、初めて恋をして……」

○ゲームセンター(夕)(回想)
制服を着た津山沙衣(16)、青山亮(
16)、プリクラを撮っている。
沙衣の声「初めて彼氏が、できました」

○小さめの公園・前(夜)(回想)
を通る沙衣。
沙衣の声「でも」
沙衣、公園のベンチで誰か2人が濃厚な
キスをしているのに気がづく。
それは亮と、沙衣ではない女。
沙衣「……!」
キスする2人は沙衣に気付いていない。
沙衣「……」

○津山家・紗江の部屋(日替わり)(回想)
ごみ箱に捨てられた沙衣と亮のプリクラ
写真。
沙衣の声「ダメでした。その時のショックは、
忘れられません……多分、それから」
(回想終わり)

○カフェ(夕)(日替わり)
いるのは彩夏、安男。
安男「(前シーンの沙衣に重ねて)それから
じゃなかったっけ? あいつ、ちゃーんと
した恋愛に興味なくなったの」
彩夏「軽山さんは……」
安男「俺はあれっしょ? セフレ? みたい
な? (笑い)とゆーかそーだわ。割り切
ってたからこーゆーこと話しやすかったん
じゃね? あーでも俺以外にもいるっつっ
てたけど」

○失恋屋・メインルーム(夕)
なあなあTVを見ている恭平。
沙衣の声「親には勿論、そんなこと言えなく
て」
恭平「(貧乏揺すりして)……」

○船音橋(夕)
電話している沙衣。
沙衣「でもずっと、私なんかの事を、何度も
好きって言ってくれた人がいて」

○早智大学・教室(日替わり)(回想)
いるのは沙衣と誠司のみ。
誠司「沙衣さんの事がほんとにほんとにほー
んとに大好きなんです! これで最後にし
ます! でももし良かったら! 僕とお付
き合いしていただけないでしょうか?!」
沙衣「……はい」
沙衣の声「そんな風に言われるのは初めてで」

○映画館・館内(日替わり)(回想)
スクリーンに映るのは、感動的だが安っ
ぽい雰囲気の漂う男女のキスシーン。
沙衣の手に、慎重に手を伸ばす誠司。
誠司の手、止まる。
沙衣、誠司の手を握る。
沙衣の声「気づいたら、本気になってる、自
分がいました」
誠司、焦っている。
(回想終わり)

○カフェ(夕)(日替わり)
いるのは彩夏と安男。
安男「だからそん時から、ちょっと俺とかに
会うのはまずいっつって、体だけ? の男
達に、もう会わないって言ってたらしいよ
? まあ、俺も言われたんだけどねこの前
会った時に」
彩夏「……やっぱり、誠司君の事……」

○テレビ日東・スタジオ(夕)
いるのはなあなあと司会者。
沙衣の声「でも、自業自得というのは本当の
事で、一番知られたくない人に、全ての事
を、知られてしまいました」

○失恋屋・メインルーム(夕)
なあなあTVを見ている恭平。
画面に映っている司会者となあなあ。
沙衣の声「留学を、しようと思います。母か
ら勧められていたのですが、もう断る理由
がありません。申請書を、出しに行きます」

○船音橋(夕)
から見える川には汽笛を鳴らす船がある。
電話している沙衣。
沙衣の声「……相談でも何でもなかったです
よね。ごめんなさい、切ります」
沙衣、電話を切り、歩くが、すぐに止ま
り、川を眺め、汽笛の音を聞く。

○テレビ日東・スタジオ(夕)
いるのはなあなあと司会者。
司会者「……え~切れちゃいましたがなあな
あ、どうしたらいい?」
なあなあの、顔。
司会者「なあなあ?」
なあなあ「……申請書……」
司会者「どうしたの?」
なあなあ「出しちゃだめだ!」
なあなあ、突然走り出す。
司会者「なあなあ?!」

○同・エレベーター(夕)
に、扉が閉まる瞬間に入るなあなあ。
なあなあを追うスタッフ達はギリギリ入
れない。
エレベーター内にはなあなあ1人のみ。
なあなあ、背中のファスナーを外そうと
するが、手が届かず。

○カフェ(夕)
いるのは彩夏と安男。
彩夏に着信が入る。恭平から。
彩夏「ちょっとすいません」
彩夏、応答する。
カフェにいる彩夏と失恋屋にいる恭平と
の通話。
彩夏「…‥はいー……え?!……なあなあが
?!」
×   ×   ×
恭平「そうだ! だからお前はなあなあを捕
まえろ! 俺もやる!」
×   ×   ×
彩夏、電話を切る。
彩夏「……」
安男「……何か……あった  」
彩夏「車で来られたんですよね?」
安男「……車っつーか、親父の軽トラ?」
彩夏「貸してください」

○繁華街(夕)
を走るなあなあ。着ぐるみの割には足が
速い。多くの人に写真を撮られている。

○恭平の車内(夕)
恭平、運転しながら、スマホでツイッタ
ー見ている。
スマホ画面にはなあなあの目撃情報(写
真)が沢山。
恭平「……こっちか」
恭平、右折する。

○大きい公園(夕)
を走るなあなあ。足は速い。
入口に車が止まり、中から恭平が出てき
て、なあなあの前に立ちはだかる。
恭平「お前をここで止める! そして俺は生
きる!」
風に乗って砂が舞う。
なあなあ「……(ボソッと)知らない人だけ
ど……」
恭平「……はあ、そうか……俺に、名乗れと」
なあなあ、恭平に向かって走り始める。
恭平「いいだろう、恋路狂わし2年半! 俺
の名前は! 伊織!」
なあなあ「(恭平にラリアットをして)ごめ
んなさい!」
恭平「(喰らい)きょぉぉぉ!」
恭平、倒れる。
公園の入り口に窓が開いた軽トラに乗っ
た彩夏がいる。
彩夏「誠司くん!」
なあなあ「(走りながら)……何で」
彩夏「説明は後! 乗って!」
なあなあ、軽トラに乗ろうとするが、図
体が大きく、乗れない。
恭平「違約金1000万だぞベジータァ!」
彩夏「……それでも私は! 人のために生き
たい! 2人にとっての幸せだって! き
っと結ばれることです!」
恭平が軽トラの方へ走ってくる。
彩夏「(荷台を指し)こっち!」
なあなあ、荷台に乗る。
恭平が追いつく寸前に軽トラが走り出す。
恭平「待てぇー!」

○道路(夕)
を走る軽トラ。運転は彩夏。荷台にはな
あなあ。
彩夏「あの子に会いに行きたいのは分かるけ
ど! 場所は?!」
なあなあ「船音橋!」
彩夏「絶対そこ?!」
なあなあ「電話から聞こえたんだ、汽笛の音
! 最初のデートで行ったんだ!」
彩夏「分かった! 飛ばすよ!」
彩夏、飛ばすが、赤信号で止まる。
なあなあ「……飛ばしてよ!」
彩夏「規則は守らないと!」

○船音橋(夕)
川を見つめている沙衣。

○道路(夕)
を走る軽トラ。運転は彩夏。荷台にはな
あなあ。
突然、歩道から恭平が荷台に飛び乗る。
彩夏「あ!」
なあなあ「だからあなた誰?!」
恭平「もう名乗らないぞ!」
恭平、なあなあを荷台から落とそうとす
るが、なあなあも抵抗する。2人の力は
拮抗している。
彩夏「伊織さん! 何でそこまで!」
恭平「(格闘中)俺はまだ死にたくないんだ
! あんなよく分からない外人に! 銃で
撃たれたくない!」
彩夏「意味が分かりません!」
恭平「(格闘中)言えない事もあるんだよ!」
なあなあ「(格闘中)あなたの事は知らない
けど! 俺は沙衣と一緒にいるんだ!」
歩道にいる小学生男子3人、なあなあを
見つける。
男子A「なあなあだ!」
男子B「ねえなんか言ってよー!」
男子C「ゆるーく励ましてよー!」
なあなあ「(格闘中)……じゃあ……聞いて
くれ!……男には……なあなあにしちゃい
けない時があるんだ!」
男子3人「(唖然として)……」
恭平「(格闘中)それは今じゃなくていい!」
なあなあ「(格闘中)俺は……俺は今なんだ
よ!」
恭平「(格闘中)俺は安西先生じゃなーい!」
彩夏、船音橋が見えてくる。
彩夏「誠司君着くよ!」
船音橋の入り口近くで軽トラが止まり、
なあなあ、荷台から飛び降りる。
恭平も降りてなあなあを追おうとするも、
軽トラを降りた彩夏に取り押さえられる。

○船音橋(夕)
に立ち、留学申請書を見ている沙衣。
沙衣「(申請書を見て)……」
なあなあの声「沙衣!」
沙衣、声の方を見ると、なあなあが、自
分の方へ走って来るのが見える。
沙衣、何が何だか分からず、逃げる。
なあなあ「違う! 沙衣!」
沙衣、構わず逃げる。
なあなあ「(追いかけ)俺だ! 林田誠司だ
!」
沙衣「(足を止め)……え」
なあなあ「……(足を止め)俺だよ」
×   ×   ×
なあなあと沙衣を見る彩夏と恭平。恭平
は彩夏に押さえられたまま。
×   ×   ×
沙衣「……その恰好……」
なあなあ「……なあなあTVのなあなあは俺
だ。沙衣には、黙ってたけど」
沙衣「……じゃあ……!」
なあなあ「そう。全部聞いた」
沙衣「……」
なあなあ「沙衣、ごめん、俺、勝手にいろい
ろ決めつけて……」
沙衣「それは、私の言う事……」
なあなあ「……言いたいこと、あるんだ。自
分の声で」
×   ×   ×
恭平、声を発しようとするが、口を彩夏
に抑えられ、モゴモゴ言っている。
×   ×   ×
沙衣「……」
なあなあ、沙衣に近づくと、いきなり背
を向ける。
沙衣「……え?」
なあなあ「ファスナーあるから、ちょっと」
沙衣「……ああ、うん」
沙衣、ファスナーを探し、引く。
なあなあを脱ぎマイクも取る誠司。
誠司「……」
沙衣「……」
誠司「……じゃあ、言います」
×   ×   ×
彩夏、頷く。
恭平、先ほどよりも強く抵抗しているが、
彩夏に押さえられたまま。
×   ×   ×
沙衣「……」
誠司「僕と……」
沙衣「……」
誠司「……(跪き手を差し伸べ)結婚してく
ださい!」
×   ×   ×
彩夏「(思わず恭平を離し)え?」
×   ×   ×
沙衣「……はい!」
×   ×   ×
恭平「え?」
×   ×   ×
沙衣に抱き着く誠司。
×   ×   ×
彩夏・恭平「(見合い)……(叫び)いきな
り~?!」

○結婚式場(日替わり)
T『半年後』
新郎新婦の席には誠司と沙衣。
客席には政治家の面々、誠司の家族、不
満げな雪江等。
司会者「それでは素晴らしいスピーチをして
くださった比江島彩夏さんに今一度、盛大
な拍手をお願いします!」
会場、彩夏に拍手。
お辞儀をする彩夏。
彩夏、自分にカメラを向ける男性(恭平)
が気になる。
彩夏「(その男を見て)……」
×   ×   ×
各々食事をとる出席者。
彩夏、恭平の元へ行く。
彩夏「伊織……さん、ですよね……? え、
何してるんですか?」
恭平「お前は……いつかの新人」
彩夏「というか今まで何してたんですか? 
あれから連絡ないじゃないですか?!」
恭平「いや……まあ……」

○失恋屋・メインルーム(夜)(日替わり)
(回想)
急いで物をリュックに詰めている恭平。
スーツケースとリュックを持ち、急いで
出ようと扉を開ける。
外には怪しげな武装をした外人3人。
思わず後退する恭平。
外人3人、外国語で恭平を怒鳴りつける。
恭平「ヒィィィ!」
外人3人、さらに恭平に詰め寄る。
恭平、スーツケースを開き、
恭平「これで! これで許してくれ!」
外人3人、構わず外国語で怒鳴りながら
恭平を連行する。
恭平「(連れられながら)まだキャビアも食
べてないのに! 死ぬまでに見たい絶景1
0選、1つも見てないのに!」
開かれたスーツケースの中、大量のプッ
チンプリン。

○日本甘党事務所(夜)(回想)
外人3人に連れられ、椅子に座らせられ
る恭平。
雪江、入る。
外人A「あ、こんな感じでいいっすか?」
恭平「え」
雪江「いいわよ。ご苦労様」
外人B「お疲れーっす!」
外人C「(方言っぽく)お先失礼致します~」
外人3人、外へ。
恭平「(外人3人を見て)……」
雪江「伊織さん?」
恭平「(雪江の方を見て)はいっ!」
(回想終わり)

○結婚式場(日替わり)
隣同士立っている彩夏、恭平。
彩夏「伊織さん?!」
恭平「……まあ……あれだ。津山雪江のもと
で働いてる」

彩夏「……どうやって」
恭平「政治家のスキャンダルを作るんだ。日
本甘党津山派の敵を潰す」
彩夏「……最低」
恭平「お前は本当それしか言えないな」
彩夏、少し遠くのテーブルに、何かが見
える。
彩夏「(その何かを指し)あれ!」
恭平「(その何かを見て)……邪魔したらぶ
っ殺すぞ」
彩夏「こんな仕事!……」
恭平「文句の続きは違約金の1000万完済
したら言え!」
彩夏「最低!」
恭平「最低って言った方が最低~!」
彩夏「最低って言った方が最低って言った方
が最低!」
恭平「最低って言った方が最低って言った方
が最低って言った方が最低!」
彩夏「最低って言った方が最低って言った方
が最低って……最低……って……あれ?」
彩夏、恭平を見ると、恭平、変顔で彩夏
を挑発している。
彩夏「(ムカつき)……最低!」
先程彩夏が目をやったテーブルには若い
女と50歳ほどのおじさんがいる。
その女の近くのテーブル上にある、1冊
の本。
その本の表紙は……『武士道』。
                 終

閉じる
この脚本を購入・交渉したいなら
buyするには会員登録・ログインが必要です。
※ ライターにメールを送ります。
※ buyしても購入確定ではありません。
本棚のご利用には ログイン が必要です。

コメント

  • まだコメントが投稿されていません。
コメントをするには会員登録・ログインが必要です。