悪党たちの夜 ミステリー

銀行の地下金庫に悪い奴が集まってしまう話。
村上 遙 168 0 0 07/24
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第一稿

人物
 泥棒① 
 泥棒② 
 怪盗
 警官
 頭取

〇銀行の地下金庫の内部
    蛍光灯で照らされた金庫内部。無機質な金属製の棚が両壁沿いに並び、
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人物
 泥棒① 
 泥棒② 
 怪盗
 警官
 頭取

〇銀行の地下金庫の内部
    蛍光灯で照らされた金庫内部。無機質な金属製の棚が両壁沿いに並び、
    そこへ金属製のケースやファイルが詰め込んである。
    奥の突き当りの壁の上部に格子の填った通気口がある。
    通気口の格子が外れて落ちる。開いた通気口から、泥棒①が侵入する。
    泥棒①は金庫の様子を見まわすと、通気口を振り向く。
泥棒①「おい、大丈夫だ」
    通気口から泥棒②が侵入する。その肩には鞄を二つ提げている。
    泥棒②は棚に駆け寄る。
泥棒②「これ、みんな金ですか?」
泥棒①「確かめてみるか?」
    泥棒①はにやりと笑って、金属製のケースを棚から一つ引きずり出すと床に置く。
    泥棒②が座り込んでケースをじっと見る中で、泥棒①もしゃがんでケースを開ける。
    中には札束が隙間なく詰まっている。
泥棒②「金だ!」
泥棒①「来る前にそう言っただろうが」
泥棒②「いや、そうですけど、実際見るとやっぱり違うんですよ」
    泥棒②、札束を手に取って掲げる。
泥棒②「さよならブラック企業! バックれてワイキキ行ってやる!」
    泥棒①、泥棒②の頭を叩く。泥棒②、札束を取り落とす。
泥棒①「馬鹿、泥棒やってすぐそんなことする奴があるか。大金が手に入りました、って宣伝するようなもんだぞ」
泥棒②「そう言われればそうですけど、でも」
泥棒①「なんだよ」
泥棒②「先輩だって限界でしょ。俺、見てましたよ。課長が駄目になった商談を先輩に押し付けて帰るとこ。結局あの日、先輩、帰れなかったじゃないですか」
    泥棒①、気まずそうに顔を逸らす。
泥棒①「それはまあ、そうだ」
泥棒②「でしょ? そこでワイキキですよ。想像してください、青い空、青い海、白い砂浜に水着のお姉さん!」
    泥棒①、思わずにんまりと笑ってしまう。泥棒②がそれを覗き込む。
泥棒②「ほらあ! 行きましょうよワイキキ!」
泥棒①「うるせえ!」
    泥棒①、口元を手で隠すと咳払いをする。
泥棒①「とにかく今は金詰めるんだよ。鞄寄越せ」
泥棒②「はあい」
    泥棒②、肩に掛けていた鞄を一つ泥棒①に渡す。
    泥棒①はケースの中の札束をわしづかみにして鞄へ詰めていく。
    泥棒②はそれを感心した様子で見ている。泥棒①がそれに気が付く。
泥棒①「ぼさっとすんな!」
泥棒②「えっ、あ、はい!」
    泥棒②、立ち上がり、手近な棚から金属製のケースを急いで引きずり出そうとするが、
    棚にケースが引っ掛かる。
    泥棒②が力任せにケースを引き、棚が揺れて、ケースが棚から出る。
    同時に、ファイルが一冊、棚から飛び出て床に落ちる。
泥棒②「わっ?」
    泥棒①が振り返り、落ちたものが金ではなくファイルであることを視認する。
泥棒①「ったくトロいな、ほっとけよそんなもん」
泥棒②「すいません、急ぎます」
    泥棒②、頭を軽く下げる。泥棒①は金を詰める作業に戻る。
    泥棒②は取り出したケースを床に置いて開ける。肩に掛けていた鞄を床におろし、ケースの中の金を手に取って詰めはじめる。
    金庫の扉が開く。泥棒①と泥棒②が驚いて顔を上げると、そこに警察の変装をして腰に手錠を下げた怪盗①が、銃を構えて立っている。
怪盗  「動くな!」
    泥棒①と泥棒②は声もなく硬直している。怪盗は銃を構えたまま、金庫の中へゆっくりと歩み入る。
怪盗  「ここで何をしている?」
    怪盗が銃口を泥棒②の方へ向ける。泥棒②は怯えた様子で何度も首を横に振る。
泥棒②「迷子、迷子になったんです!」
泥棒①「おい、やめとけ」
    泥棒①が泥棒②と怪盗の間に片腕を割り込ませて庇う。
怪盗  「あははは、迷子ねえ。通気口から入り込む迷子なんているのかな?」
泥棒①「なんで知ってる」
怪盗  「金庫に繋がっているダクトの入り口が銀行の裏手にあったとして、堅実な銀行家たちが監視をつけないと思うかい?」
泥棒①「最初から見てたのか」
    怪盗は笑顔のまま、さあ?というように首を傾げてみせる。
怪盗  「さて、おとなしくしていれば撃たないよ。手を上げなよ」
    泥棒①が手を上げる。泥棒②はそれを見て手を上げる。怪盗は泥棒①に手錠をかける。
    怪盗は泥棒①の肩を軽く突き飛ばして膝を地面に着かせる。
泥棒②「先輩」
泥棒①「大丈夫だ。捕まったって死にゃしねえよ」
    怪盗が泥棒②の方を振り返り、銃で威嚇しながら、床に落ちているファイルへ近寄る。
    怪盗がファイルを拾い、腕の内側に乗せて開く。内容に真剣な顔で目を走らせる怪盗。
    泥棒①はその様子に怪訝そうに眉を顰める。
泥棒①「おい、あんた一人で来たのか?」
怪盗  「(ファイルの中身を数枚捲りながら)ちょっと静かにしてくれないかなあ。言語野をぶち抜いてやろうか?」
    怪盗はファイルの中に何かを見つけた様子でにっこりと笑い、ファイルを閉じると、棚の金属のケースが引き出されて空いたスペースに置く。
怪盗 「さあ、君たちは僕の仕事の邪魔だ」
泥棒①「そうだろうな。さっさと連行すればいい」
怪盗  「それがそうもいかないんだ」
    怪盗、銃を向けたままで泥棒②に近付く。
泥棒②「(怯えた様子で)なんですか? なんでこっちくるの?」
怪盗  「あははは、怖くないよ、大丈夫。死にはしないよ。君の先輩が言った通りね」
    怪盗が泥棒②の口をこじ開け銃口を差し込むと引き金を引く。
    泥棒①が咄嗟に片足で泥棒②を突き飛ばす。
    銃声は鳴らず、銃口からは煙のようなものが噴き出すが、間一髪、泥棒①と泥棒②はそれぞれ態勢を崩して床に倒れる。
怪盗 「あーあ、何するのさ。麻酔だってタダじゃないんだよ?」
泥棒②「もういやだあ」
    泥棒②が体を丸めて泣き出す。泥棒①、上半身を起こす。
泥棒①「警察じゃねえな」
怪盗  「今更気が付いた? 三流だなあ」
泥棒①「てめえは一流だってか?」
怪盗  「そうだよ」
    怪盗がしゃがみ込むと、泥棒①の頭を掴んで目を合わせる。
怪盗  「僕はね、世の中の薄汚い金持ちから盗むんだ。ここにあるのは裏で色々と嗜んでいる連中が預けた金だよ。それを僕がセキュリティシステムを華麗にすり抜けて盗む。埃の積もったダクトの中を這いずるなんて間抜けな方法じゃなくてね」
泥棒①「金があるところからカッコ良く盗めば一流か?」
怪盗  「君って馬鹿だねえ。そうじゃない。自分の為に盗むわけじゃないからさ」
    怪盗は泥棒①の頭から手を離して立ち上がる。泥棒①、怪盗を睨みつける。
    怪盗は両腕を大きく広げる。泥棒②、何事かと体を起こし、怪盗を見る。
怪盗  「これだけの金があれば、パンのない家にデザートまで用意してやれる。僕は肥え太った奴らから、本当に必要な所へ富を再分配しているんだよ」
泥棒①「それで良いことしてるつもりかよ」
怪盗  「勿論。君たちよりはね」
    怪盗が再び銃を構えようとする。泥棒②が猛然と立ち上がる。
泥棒② 「(怪盗に向かって突進しながら)うああああああああああああ!」
    泥棒②が怪盗に体当たりする。怪盗と泥棒②はもつれあって床に倒れる。
    怪盗の手から銃が転げ落ちる。
    泥棒②は怪盗に馬乗りになり、怪盗の襟首を掴んで、怪盗の頭を床に何度も打ち付ける。泥棒①、唖然としてそれを見る。
泥棒②「お前っ、お前が! お前が俺たちの人生の責任取れんのかよ! 俺たちが線路に飛び込むの止めてくれんのかよ!」
泥棒①「(はっとして)おい、やめろよ」
    怪盗、銃を手探りで拾い、しっかりと握る。
泥棒②「俺たちだって幸せになりてえよ!」
泥棒①「やめろって、死ぬぞ!」
    泥棒①が肩で押すようにして泥棒②を怪盗から引きはがそうとする。
    怪盗が銃の尻で泥棒②のこめかみを殴ろうとするが、狙いが逸れ、銃が泥棒①の身体に当たる。
    銃は勢い余って飛んでいき、棚に当たって、天井に向かって煙状の麻酔をまき散らす。
  火災報知器が反応し、警報が鳴り始める。
    泥棒②、驚いて動きを止め、怪盗から手を離して呆然とする。
    怪盗は起き上がろうとして体をよじる。泥棒①は項垂れる。
    金庫の扉が開き、銃を構えた警官とその部下が立っている。
警官  「警察だ!手を上げろ!」
    泥棒①、項垂れたまま、手錠のかかった手を掲げる。怪盗も力なく手を上げる。
    泥棒②は呆然としたまま警察たちを見ている。
警官  「連れて行け」
    警官の部下たちが金庫の中へ駆け込み、泥棒②と怪盗に手錠をかける。
    泥棒たちと怪盗が金庫の外へ連れて行かれる。頭取が金庫の中へ入ってくる。
頭取  「どうもご苦労様でした。お陰様で何も盗まれずに済んだようで」
警官  「ええ。しかし、念のため状態を確認しましょう(金庫の中を見回す)」
頭取  「でしたら、責任者として立ち会わせていただきたいのですが」
警官  「(金庫の奥へ向かって、頭取に背中を向けて歩きながら)勿論です。目録のようなものがあればお持ちいただきたい」
    警官、ふと棚の空いた所に置かれたファイルに気が付いて手に取る。
頭取  「どうされました?」
警官  「これもそうでしょう?」
    警官が頭取を振り返り、ファイルを掲げて見せる。頭取が目を見開いてそれを見る。
警官  「何かあるのですか?」
頭取  「いえ、しかし」
    警官はファイルを開き目を走らせると、にやりと笑う。
警官  「このご時世に珍しい。全て手書きの証書ですか」
頭取  「そうでないと信用なさらないお客様もいるのですよ」
警官  「そうは言っても、これでは、証書を書いたあとデータに残して、と二度手間でしょう?」
頭取  「いや、うちの職員は優秀ですから、そのくらいは」
警官  「そうですか? それは素晴らしい」
    警官はファイルを頭取の方へ向けて見えるように広げる。
警官  「ところで、この名前には見覚えがありますよ。我々が睨んでいる組織のトップと同じ名前です。ご存じで?」
頭取  「さあ。私どもの顧客は善良な市民の方々ですよ」
警官  「そうですか。では、いち市民にこれだけの資産があるということですね。景気の良いことだ」
頭取  「結構なことではありませんか?」
警官  「そうですね。非合法な活動に手を染めている組織ですら、最近は地味な生活をしているのに、一体どうやって貯めたのやら。余程の切れ者なんでしょうね」
頭取  「それは私どもの存じ上げないところで」
警官  「そうでしょうとも。態々、取引の痕跡を隠しておられるようですから」
    頭取は俯く。警官はいかにも楽しそうににやにやと笑いながら、頭取の顔を覗き込む。
警官  「一体、何を受け取ったんです?」
頭取  「申し上げかねます」
警官  「取調室でならお話しいただけますか? それとも新聞記者の前なら?」
頭取  「…なんとかご内密に願えませんでしょうか」
    警官が頭取の背後へ回り込み、肩に手をかける。
警官  「もちろんですとも」
頭取  「本当ですか」
    頭取が顔を上げて警官の顔を見る。
    警官は頭取から目を逸らさずににやにやと笑っている。
警官  「ええ。当然、善意だけでとは行きませんが」
    頭取は数秒黙り込む。
頭取  「わかりました。別の部屋でお伺いします」
警官  「それで結構ですよ」
    警官が頭取の肩から手を離す。
    頭取が金庫の入り口に向かって踵を返し、歩き出す。その後ろを、警官がついて行く。
警官  「私達のような善良な市民は、話し合いで解決を図るものですからね、ははは」
    頭取と警官は金庫を出る。フェードアウト。

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