ちょうどいい配置 ドラマ

地元での結婚式を控えて、実家に帰省中の宮崎佳奈(25歳)。 買い物帰りに、なんとなく入りこんだ雑木林の中で、彫像のように静止する家族の姿を見つける。
保子 翔 7 0 0 07/20
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第一稿

◯宮崎家・中(夕方)
   
宮崎美世子(母・40代後半)台所でカレーの入った鍋をかき混ぜる。おたまで鍋のルーを少しすくい口に含む。
宮崎信之(父・40台後半)リビングでグラ ...続きを読む
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◯宮崎家・中(夕方)
   
宮崎美世子(母・40代後半)台所でカレーの入った鍋をかき混ぜる。おたまで鍋のルーを少しすくい口に含む。
宮崎信之(父・40台後半)リビングでグラスに入ったビールを飲みながらテレビを観る。
信之の隣に座りスマートフォンを操作する宮崎里香(妹・19歳)。
食卓椅子に座り結婚情報誌を読みながら、ノートパソコンを操作している宮崎佳奈(25 歳)。
テーブルのスマートフォンのロック画面に男と寄り添う佳奈。
佳奈の後ろの棚の上に家族写真と一眼レフのカメラ。    
母、佳奈の方を向いて。

母「里香、悪いんだけどカレーのルー足りなかったから買ってきてくれない?」

里香「えー」

佳奈「私、買ってこようか?他に買ってくるものあるし」

父、台所に移動し、冷蔵庫から缶ビールを取り出す。

母「いいの、ありがとう」

母、財布から小銭を取り出し佳奈に渡す。

母「残ったお釣りはあげる」

佳奈、席を立ち出て行こうとする。
妹、半身を乗り出し佳奈の方を向く。   

妹「待ってお姉ちゃん、買い物行くならついでに豆乳も買ってきてよ」

父、リビングに戻る。

佳奈「聞こえなーい、お父さん何かいる?」

父「いや、大丈夫だよ」

佳奈「わかった」

妹「ねぇ、お姉ちゃん」

佳奈「聞こえなーい」




◯住宅街(夕方)

佳奈、カレーのルーと豆乳の入ったスーパーの袋を片手にアイスキャンデーを舐めながら歩いている。
佳奈の目の前に雑木林がある。雑木林から人が出てくる。佳奈がいる方に歩いてくる。
佳奈とすれちがう。
佳奈、雑木林の人が出てきた場所を通り過ぎ、立ち止まる。もう一度戻って人が出て来た場所を覗き込む。雑木林に入る。




◯雑木林(夕方)
    
佳奈、雑木林の中を進んで行く。
周りが草木で囲まれた、少し開けた場所に出る。
佳奈、静止した人が三体、立っているのに気付く。
佳奈、立ち止まり静かに様子を伺う。
佳奈、ゆっくりと静止した人の一人の方へ近づいて行く。
佳奈、近づいて行く途中で静止している一体が妹の里香だと気づく。

佳奈「えっ里香?」
   
佳奈、小走りで静止する妹に近づき、立ち止まる。
佳奈、不思議そうに静止する妹を見る。静止する妹の顔の前で手を振り、その周りをゆっくり回りながら里香を見る。
佳奈、静止する妹の肩に触る。
佳奈、静止する妹から離れ、もう一人の方へ近づいて行く。静止する人が父だと気づく。 

佳奈「お父さん?」
    
佳奈、静止する父を見る。父の顔の前で手を振る。佳奈少し笑う。

佳奈「すごい、なにこれ‥‥」
    
佳奈、静止する父から離れ、残りの一人に近づいて行く。

佳奈「じゃあ、これはお母さんか」
   
佳奈、静止する母の後ろから顔を覗き込む。
静止する母の憎悪に満ちた顔。
佳奈、食べかけのアイスを落とす。

佳奈「‥‥お母さん」
    
佳奈、立ち尽くす。
佳奈のスマートフォンが鳴る。
佳奈、あわてて電話に出る。

佳奈「もしもし」

母(声)「もしもし、佳奈。遅いけど何してるの?」

佳奈「え、ごめん今帰ってるとこ。」

母(声)「ならいいけど、寄り道しないで早く帰って来なさい」

佳奈「うん、わかった」
    
佳奈、足早にその場を去る。




◯宮崎家・中(夜)
    
妹、リビングでスマートフォンを操作しながら座っている。
佳奈、お茶の入ったコップ片手に妹の後ろから近づく。

佳奈「ねぇ、今日さぁ‥」

妹、スマートフォンから目を離さず返事する。

妹「なーにー?」

佳奈「あそこの雑木林ってさ?‥‥‥いや、やっぱいい」

妹「えー、なにそれー?そこまで言ってやめんのー?」

佳奈「‥お風呂、先に入っていいの?」

妹「うん、別にいいよー」

    佳奈、コップのお茶飲み干す。




◯雑木林(昼)
    
佳奈歩く。
静止した家族がいる広場に出る。
静止した母が錆びた包丁を静止した父に向けている。
佳奈、足早に静止した母に近づく。

佳奈「ウソ、何で?何でこうなってんの‥‥」
    
佳奈立ち尽くす。
佳奈、静止した母を運んで静止した父から遠ざける。
   



◯宮崎家・中(夜)
   
母、食卓でリンゴの皮を包丁で剥いている。
佳奈、母の向かいに座り、フォークでリンゴを食べながら、ぼんやりテレビを見ている。

佳奈「ねぇ、今までに誰かを殺したいと思ったことある?」

母、少し笑う。

母「いきなり、何てこと聞くのよ、どうしたの?」

佳奈「いや、何となく聞いただけ」

母「ないわよ、そんなこと。あるわけないじゃない」

佳奈「そう」

母「まさか何か悩みでもあるの?」

佳奈「いや違うって、本当にただ聞いてみただけ」

妹、風呂上がりで頭をバスタオルで拭きながら食卓に近づいてくる。
母、妹の方を見る。

母「里香、リンゴ食べるでしょ」

妹「うん、食べる」

妹、佳奈の向かいに座り、リンゴを食べる。
母、剥いたリンゴの皮と包丁を持って立ち上がり台所へ。




◯雑木林(朝)

佳奈、静止した家族のいる広場にいる。
静止した母が静止した父の、すぐ後ろで静止した父に錆びた包丁を向けている。
佳奈、静止した母を静止した父から離す。
 



◯宮崎家・中(朝)

佳奈、クローゼットから物を出して散らかしている。
妹、寝癖についた頭で佳奈の方に来る。

妹「何してんの?お姉ちゃん」

佳奈、妹を見ずに

佳奈「まぁ、ちょっとね」

妹「何でもいいけど、後でちゃんと片付けてよー」

佳奈、クローゼットから物を出す。




◯雑木林(昼)

佳奈、静止した母の周りに家から持って来た物でバリケードを作る。静止した母が持っている包丁を手から抜いて代わりに花を持たせる。静止した妹を静止した母と父の間に移動させてヘルメットを被せて小さなスケートボードを盾の様に持たせる。



◯宮崎家・中・玄関(夕方)

佳奈、玄関のドアを開けて入ってくる。
妹、玄関で靴を履いている。

佳奈「あれ、出かけるの?」

妹「そう」

佳奈、妹を避けて靴を脱ぎ、家に上がる。

佳奈「お母さんは?」

妹「おばさんの所に行くから遅くなるって、メール見てないの?」

佳奈、玄関から食卓に移動する。食卓にラップされたおかずが置いてある。

妹(音声)「じゃあ、いってきまーす」

佳奈、玄関の方を向いて。

佳奈「あっ、いってらっしゃーい」
 
(音声)玄関のドアが閉まる音
佳奈、薄暗い食卓の前で一人立つ。




◯住宅街(昼)

佳奈、雑木林の前で立つ。
佳奈、大きく息を吸い込む。
佳奈、雑木林に入っていく。



◯雑木林(昼)

佳奈、静止した家族がいる広場に立っている。
バリケードは倒されて、静止した妹はヘルメットやスケボーを外して、少し離れたところに移動している。
静止した母が、静止した父に錆びた包丁を突きつけている。
佳奈、立ち尽くす。



◯宮崎家・中(夜)

食卓で佳奈、母、妹、父の四人で食事をしている。
食卓には揚げ物の下にサラダ、ご飯をよそったお茶碗、冷奴、それぞれ四つづつ。漬物と
醤油差とソースの容器。父の前にはウィスキー水割り。
父と妹はテレビを見ながら笑っている。
母、少し笑いながら

母「里香、見てばかりないでちゃんと食べなさい」

里香、笑いながら生返事。
佳奈、ご飯を食べながら、母の様子をチラチラ見る。

母「佳奈、ごめん、お醤油取ってくれる?」

佳奈「えっ、うん」

佳奈、椅子からお尻を上げて父の手前にある醤油差しを取り母に渡す。

母「ありがと」
   
父、少なくなった水割りのグラスを持って台所に行く。
母、自分の冷奴に醤油垂らす。
(音声)父と妹の笑い声。




◯宮崎家・中(夜)

父、リビングで一眼レフカメラのレンズのホコリを取っている。
佳奈、少し周りに目をやり横から父に近づく。

佳奈「ねぇ、お父さん」
    
父、カメラの整備を続けながら

父「んー、どうした?」

佳奈「最近、お母さん少し変わったと思わない?」

父「えー、どこが?」

佳奈「どこがっていうわけじゃないけど」

父「それじゃあ、ちょっと分かんないなー」
    
父、カメラのシャッターを押し、モニター見る。
    
佳奈、父の正面に周る。

佳奈「じゃあ、お父さんは何も変わったと思わないの?」
    
父、レンズのホコリを取りながら

父「え、うん、まぁそうだなー、一体急にどうしたんだ?」

佳奈、沈黙。
父、カメラを覗き込んで佳奈に向けてシャッターを押す。




◯住宅街(夜)

佳奈、バット片手に歩いてる。
佳奈とすれ違った通行人のカップル、振り返り佳奈を見る。



◯雑木林(夜)

バットを片手に持った佳奈、静止する父に近づいていく。近づきながら両手でバットを持つ。静止する父の前で止まる。
静止する父の手に家族4人の写った写真。
佳奈、静止する父と静止する包丁を持った母を見る。



◯宮崎家・中(昼)

佳奈、寝間着に寝癖の頭で食卓に近づいてくる。
母、食卓でボウルに入ったホットケーキの素を混ぜてる。

母「もう、お昼過ぎてるわよ、いつまで寝てるの?」

佳奈、生返事しながら、お茶をコップに入れて席に着く。

母「お腹空いてるの?」

佳奈、お茶を飲み

佳奈「うん」

母「じゃあ、これ混ぜて」

母、ボウルを佳奈の前に置き、台所に移動する。
佳奈、ゆっくり混ぜ始める。

母「あとお母さん、来週からしばらくパートに出ることになったから」

佳奈混ぜながら              

佳奈「えっ、そうなの?」

母「だから、ちゃんと朝自分で起きる様にしなさいよ」

佳奈「うん、わかった」

母、佳奈の方に近づいて

母、「ちゃんと、混ざった?ダマになってない?」

    佳奈、ボウルから泡立て器を上げて母に見せる。




◯雑木林(昼)

佳奈、静止する母、父、妹を眺めて立っている。
佳奈、静止する母、父、妹を背中合わせで小さな輪を作る位置に動かす。
佳奈、静止する母、父、妹を眺める。
佳奈、静止する母、父、妹の輪に入る位置に移動し背中合わせになるように立つ。
(音声)何処からか間の抜けたテレビゲームで聞こえるような効果音が鳴る
佳奈、空を見上げて、周りを見渡す。
佳奈、少し吹き出す。




◯住宅街(昼)

佳奈、雑木林から出てくる。
妹がスーパーの袋を片手に通りかかる。

妹「お姉ちゃん、そんなとこで何してんの?」

佳奈「あー、通り抜けられると思って、でも行き止まり」

妹「何それ」
    
佳奈と妹、二人で歩き出す。
通行人の男性が雑木林の前を通り過ぎる。そして戻る。雑木林を覗き込む。         

   

   

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