イレブンナイトツアー 第2話 ミステリー

深夜に旅立つミステリーツアー 第2話。 屋上から転落死した女子高生である立花早苗。学校からの報告で事故と断定されていた。 しかし、その陰に隠された訳は、…… 淡い初恋の果てに訪れる悲しい結末。 立花早苗に隠された謎の死に迫る異次元ミステリーツアー。
水田 悦夫 36 0 0 07/19
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第一稿

○道路・(夜)
   道路脇に止められた黒塗りの霊柩車。
   街路灯に照らされた霊柩車は、ハザードランプが点滅している。
   霊柩車の運転席ドアの前に立つ運転手。
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○道路・(夜)
   道路脇に止められた黒塗りの霊柩車。
   街路灯に照らされた霊柩車は、ハザードランプが点滅している。
   霊柩車の運転席ドアの前に立つ運転手。
   運転手は、黒いスーツに制帽、白い手袋で立っている。
ナレーション「このツアーは、真実を浮かび上がらせる闇夜の異次元世界へ案内する旅行社の企画。深夜午後11:00に四谷4丁目から出発する。今回の行き先は、女子中学生からの要望で、先日亡くなった姉の死の真相を探る旅」

○道路・歩道(夜)
   学生服姿の立花留美(15)が霊柩車に向かって歩いている。
   留美が運転手の前で立ち止まる。
留美「あのー、この車ってもしかしてナイトツアーの車ですか?」
運転手「立花留美様でございますね。お待ち申し上げておりました。どうぞこちらへ」
   留美、車を見回して、
留美「これって霊柩車ですよね?」
運転手「ツアー用に仕立てた、お車でございます」
   運転手が後部ドアを開け、いざなう。
留美「やっだー、怖い」
   留美、車に乗り込む。
   運転手がドアを閉める。

○霊柩車・中(夜)
   暗い車の助手席に座る深山過代(65)が乗り込む留美を見ている。
   後部座席裏には、棺が積まれている。
   留美、棺を見て驚く。
   留美が席に就きながら、
留美「こわいー、棺桶があるー、怖いんですけど。この棺桶は、中身入ってんの?」
深山「案じ召されるでない。その棺の中に骸は、おらぬ」
留美「むくろ?」
深山「ご遺体の事じゃ。その棺は、あの世の霊魂と現世を結ぶ結界じゃ」
   運転手がドアを開け中に入ってくる。
深山「我は、今宵、其方を霊界旅路にいざなう霊媒師、深山過代と申す」
留美「深山さんが霊媒師…… (見回)少し怖いんですけど」
深山「心配には、及ばぬ。今宵は、満月じゃ。霊魂降臨に剴切な夜じゃ」
留美「がいせつな夜? 意味わかんない?」
深山「霊との交信に相応しい夜と言う意味じゃ。我、疑うことなかれ。深い疑念は、その真贋を惑わせる。見える物も見えなくなるであろう」
留美「はあ? だって難しい事ばっかり言うから、ほぼ解んない……」
   深山、横目で留美を見る。
留美「ごめんなさい」
深山「では、亡くなった者の名と年齢を述べよ」
留美「立花早苗、18歳です。私の姉です。おととい学校の屋上から転落して……」
   留美、目が潤んでいる。
留美「あの日、姉は、いつも通りだったわ。学校では、自殺だって、絶対信じられない。姉は、自分から飛び降りるなんて事しないわ……」
   留美、泣く。
   運転手が腕時計を見る。
運転手「それでは、予定時刻になりました。立花早苗の元に出発致します。シートベルトを、お締めください」
   留美を乗せた霊柩車は、ゆっくりと走り始めた。
   深山は、両手を前に組み目を閉じ、
深山「摩訶般若波羅蜜多、摩訶般若波羅蜜多、神仏霊界君主に告げる。彷徨える立花早苗の霊魂を我に降臨させたまえ!」
   深山は、大きく息を吸いゆっくりと息を吐く。
   吐く息と共に体の力が抜けてぐったりとする。
   辺りは、暗くなりライトの照らす道しか見えない。
   霊柩車は、急な上り坂を登り始め、走行音は、無くなり静かに深い霧の中へ入っていく。
   深い霧を車のライトが照らす。
   ゆらゆらと深山の体が揺れ始める。
早苗の声「あー、留美、留美なのね」
   留美が驚き顔を上げる。
留美「お姉ちゃん! 本当にお姉ちゃんなの?」
早苗の声「ああ、合いたかった」
留美「お姉ちゃん! どうして死んじゃったの、何があったの?」
早苗の声「ごめんね。事故なのよ……」
留美「うそ! 本当の事教えて。誰か庇ってるの?」
早苗の声「うそじゃないのよ……」
運転手「これから霊界に入ります。立花早苗様の真実が車のライトに照らされて見えてきます」
   ×  ×  ×
   ライトで照らされた霧の中に映画のスクリーンのように川沿いの遊歩道が映りだす。


○川沿い遊歩道・休憩所(夕)
   遊歩道の休憩所に置かれたベンチが夕日に照らされている。
   柵の外に流れる川を挟んで街並みが見える。
   ベンチに座って風景をスケッチをしている水樹純平(18)。
   遊歩道を制服でカバンを持った立花早苗(18)が歩いてくる。
   早苗、水樹の後ろで足を止め背中を見つめる。
   水樹のすぐ後ろでそっと立つ。
   スケッチブックを覗き込み、
早苗「上手いのね」
   水樹、少し驚き早苗を見る。
水樹「あー、立花さん」
早苗「初めてね、話しするの」
水樹「そうだっけ?」
早苗「同じクラスになって口きくの今日が初めてよ」
水樹「隣に座ってるのにね(微笑む)」
   早苗、水樹の隣に腰かけて、
早苗「水樹君て、絵を描くの好きなの?」
水樹「まあね、僕、将来アニメーターに成りたいって夢があるんだ」
早苗「ふーん、素敵な夢ね」
水樹「だから、時間がある時にスケッチしてるんだ」
早苗「そうか、だからノートに落書きしてるのね」
   ×  ×  ×
  (フラッシュバック)
   水樹、授業中ノートに先生の似顔絵を描いている。
   ×  ×  ×
水樹「見られちゃった?」
早苗「(微笑)先生の似顔絵、似てたわ」
   早苗、夕日に染まる雲を見て、
早苗「茜色の空ね、綺麗だわ」
水樹「何でだろ、夕日見ていると落ち着くって言うか」
早苗「でも、最近こんな綺麗な夕焼けあんまりないね」
水樹「そうだね、こんな綺麗な風景は、この瞬間しか見れないじゃない。どんどん雲は流れ、姿を変えて行くし、2度と同じ姿は、見られない。そう思うとさ、どうしても描いておかなくっちゃって」
   遠くの街並みに夕日が沈んでいく。
早苗「ごめん、話してる間に日が沈んじゃった」
水樹「もう描き終わったから、早く帰ろう、暗くなる前に(笑顔)」
   ×  ×  ×
   遊歩道を歩く水樹と早苗。
   正面から川崎綾乃(18)が乗った自転車が来る。
   綾乃、横目で見ながら横を通り過ぎる。
水樹「立花さん、少し聞いて良い?」
早苗「何を?」
水樹「少し気になってたんだけど、いつも一人で帰るの?」
早苗「そうだけど、どうして?」
水樹「休み時間とかも、一人でいる事が多いいみたいだし」
早苗「私、友達が出来ないんだ」
水樹「そうなの、どうして?」
早苗「人見知りするって言うか、暗いのよね。きっと」
水樹「そうか、僕もどっちかって言うと人見知りだよ」
早苗「(微笑)そうは、見えないけど」
水樹「(微笑)人は、見かけじゃ解らないって!」

○立花家・台所(夜)
   立花春香(45)が料理を作っている。
玄関が開く音。
早苗の声「ただいま」
春香「おかえりー」
   台所入口から制服姿の早苗が入ってくる。
早苗「あー疲れた! (匂いを嗅いで)あー今日は、酢豚ね」
春香「(笑顔)あたりー。早苗、今日は、遅かったね。寄り道?」
早苗「あー、そうね、ちょっと友達と…… 着替えて来るわね」
   台所を出て行く早苗。
春香「ご飯よそっておくね」
×  ×  ×
   早苗、ジャージ姿。春香と合向かい食卓に掛け食事をしている。
春香「今日は、どこか寄ってきたの?」
早苗「ああ、ちょっとね、友達と話が弾んで」
春香「ふーん。男友達?」
早苗「……ねえ、何で酢豚にパイナップル入れるのかね?」
   早苗、パイナップルを箸で取り見る。
春香「酢豚に合ってるのよ、パイナップル」
   早苗、パイナップルを食べながら、
早苗「私、大好きお母さんの作った酢豚」
春香「(笑顔)うれしいわ。で、その彼氏ってどんな人?」
早苗「えっ…… 何の事?」
春香「だめよ。隠しても。お母さんあなたの事なんでもお見通しよ」
早苗「(笑顔)彼氏じゃないって! なんでよ?」
春香「(笑顔)早苗、今日、何だか雰囲気ちがうし、きっとそうだなって。直感よ」
早苗「まだね、知り合ったばかりなの」
春香「そうなの、ねえ、どんな子?」
早苗「(笑顔)普通」
春香「普通って何よ。教えてよー、ねえってば」
早苗「(笑顔)やだー、お母さん。やめてよ。まだ知り合ったばかりだし」
春香「お母さん、嬉しー。(ウソ泣き)早苗も大人になったのね」
早苗「お母さん、やめてよ。(春香の目を見て)涙出てないし」
春香「うれし泣きよ。でさあ、どんな男の子なの?」
   春香、ニヤニヤしながら早苗の顔を見つめる。
早苗「だからさ、まだ良くわかんないけど、優しい人よ」
   春香、身を乗り出し、
春香「ふんふん、それで?」
早苗「やだー、どうしちゃったのよ。やめてよ!」
春香「だって、早苗の初めての彼氏だし、お母さんも良く知っておかなくっちゃ」
早苗「そんなんじゃないし! 同じクラスの隣に座ってる男の子よ」
春香「そうだ! 早苗、スマホ買ってあげようか」
早苗「嬉しいけど……家計大丈夫?」
春香「大丈夫よ。何とかなるわ。今時ね、スマホくらい持ってなきゃ彼氏と連絡できないし」
早苗「だからさ、まだ彼氏じゃないから」
春香「これからよ、これから」
早苗「そう言えば留美、遅いわね」
春香「留美、部活だって、県大会近いんで遅くなるって」
早苗「ふーん、頑張ってるね」

○香月第一高校・3年3組・中(朝)
   生徒達が雑談している。
   水樹と合向かいに竹本達也(18)が座っている。
竹本「それがさー沙織のやつ、お前の事まだ気にしててさー、ショックだったんだろうね。お前にフラれて」
水樹「困ったなー。早めに言った方が傷つかないかなって思って言ったんだけど……竹本、お前どうにかならない?」
竹本「俺の彼女からの紹介だからな。彼女も怒っちゃってさ。まいったよ」
水樹「最初から、会わなきゃ良かったのかね」
竹本「勧めたの俺だし、責任感じちゃうよ」
   前から早苗が歩いてくる。
早苗「(笑顔で)水樹君、おはよう」
水樹「(手を上げ)おう、おはよう」
竹本「おはよう」
   早苗、竹本に軽く会釈して席に就く。
竹本「あれ? 純平、立花さんいつもと雰囲気違うね」
水樹「(笑顔)そう? 気のせいじゃないの?」
竹本「(横目で)あやしい」
水樹「何が?」
竹本「まあ、いいや。じゃ、なんとかしとくから」
   竹本、席を立つ。

○公園(夕)
   周りが生垣に囲まれた小さな児童公園。
   花壇には、チューリップが咲いている。
   子供達が砂場で遊んでいる。
   ブランコに乗って本を読んでいる早苗。
   ×  ×  ×
   公園脇の歩道を歩く水樹。
   生垣の間からブランコに乗る早苗を見る。
   ×  ×  ×
   ブランコから少し離れたベンチに腰掛ける水樹。
   水樹、スケッチブックを手に持ち早苗の方を見ながら絵を描き始める。
   ×  ×  ×
   砂場には、だれも居ない。
   水樹、スケッチブックに黙々とペンを走らせている。
   水樹、ふと見上げるとブランコの早苗が居ない。
水樹「あれ?」
   早苗、水樹の後ろからスケッチブックをの覗き込む。
早苗「上手く描けてるわね」
   水樹、驚いて早苗を見る。
水樹「いつの間に……」
早苗「(微笑)水樹君、夢中に描いてるんだもの。驚かせてごめんね」
水樹「つい、夢中になっちゃって」
早苗「それ、私よね」
水樹「あ、ごめん。勝手に描いて」
早苗「いいんだけど、ちょっと恥ずかしい」
水樹「その、何て言うか、立花さんの横顔が結構……」
早苗「横顔が、何?」
水樹「ごめん、もう行かなくちゃ。これから塾なんだ」
   水樹、立ち上がる。
水樹「そこまで、一緒に帰ろう」
   早苗、うなずく。
   ×  ×  ×
   公園脇の歩道から2人を見ている綾乃。

○川沿い遊歩道(夕)
   日が落ちかけた歩道は、夕日で茜色に染まっている。
   ジョギングで走っている人が行き交う。
   水樹と早苗が並んで歩いている。
水樹「さっきの絵、仕上げたらあげるね」
早苗「ほんと?」
水樹「たいした絵じゃなくって悪いけど」
早苗「ううん、私、うれしい。本気にしても良いの?」
水樹「(笑顔)本気だよ」
早苗「ねえ、純平って呼んでいい?」
水樹「良いよ、じゃあ、立花さんの事、『早苗ちゃん』で良い?」
早苗「嬉しい。私、男子から名前で呼ばれた事ないから」
水樹「僕は、いつも純平って呼ばれているから、その方が良いな」
早苗「純平」
水樹「なあに? 早苗ちゃん」
   水樹と早苗、笑う。
早苗「やっだー、恥ずかしい」

○香月第一高校・2年3組・中(朝)
   生徒達が雑談している。
   水樹と合向かいに竹本が座っている。
竹本「沙織のやつ、諦めが悪いって言うか。何だか純平を疑ってるらしいよ」
水樹「何? 俺、疑われるような事してないけど」
竹本「そお? お前心当たり無いのか?」
   早苗、水樹の隣の席に座り、
早苗「(笑顔)純平、おはよう」
水樹「(笑顔)早苗ちゃん、おはよう」
竹本「おはよう……あれ?」
水樹「何?」
竹本「(横目で早苗を見て)やっぱ、何か雰囲気が違う」
水樹「気のせいだよ」
チャイム音。
竹本「そおかなー? まあいいや、じゃまたな」
   竹本、自分の席に戻る。
   水樹、机の中から丸めて紐で結んだスケッチを取り出し机の下から早苗の方に出す。
水樹「早苗ちゃん、これ」
   早苗、スケッチを見て、
早苗「何? これ」
水樹「例の絵。出来たからあげる」
早苗「ほんと。ありがとう」
   早苗、スケッチを受け取り机の中にしまう。
水樹「あとで、暇な時見てね」

○香月第一高校・校舎屋上
   良く晴れた青空、ポールに掲げられた校旗が風でたなびいている。
   手すりの前に古い生徒用の椅子が置かれている。
   早苗が手すりに肘を掛け両手でスケッチを広げ見ている。
   スケッチには、淡い水彩で色付けされた早苗の横顔の絵。
   屋上ドアの向こうから話し声、
綾乃の声「それがさー昨日、自転車で通りかかったら見ちゃったんだよ……」
   川田沙織(17)と綾乃が屋上ドアから出てくる。
   早苗、2人を見てスケッチを後ろに隠す。
   綾乃が早苗を見つけ指を差して、
綾乃「あいつだ、立花早苗だよ」
沙織「へー、噂をすれば影だわね」
   沙織と綾乃が早苗の前まで歩み寄る。
早苗「何? あなた達、だれ?」
沙織「あんたね、純平と付き合ってる奴って」
早苗「付き合ってるって……知り合ったばかりよ」
沙織「嘘をつけ、お前が純平とイチャイチャしてるとこ見たんだよ。綾乃がさ」
綾乃「お前ら、公園でキスしてたろ。知ってるんだからな!」
沙織「お前、知り合ったばかりでもキスすんの?」
早苗「何を言ってるの? キスなんかする訳ないじゃない。言いがかりだわ」
   沙織、早苗の持っているスケッチを指さし、
沙織「何持ってんのよ、それ?」
早苗「何でもいいじゃない。ただの絵よ」
   沙織、早苗に滲み寄りスケッチを奪おうとする。
早苗「止めて!」
   沙織、スケッチを強く掴み破れそうになる。
   早苗、スケッチから手を放す。
   沙織、スケッチを広げて見て、
沙織「何だこれ、お前かよ? 綺麗に描けてるじゃない。さすが純平ね」
早苗「返してよ」
   早苗、手を伸ばす。
沙織「ほら、受け取れ」
   沙織、スケッチを上に投げる。
   風に煽られてスケッチが手すりから外に向かって飛ばされていく。
   必死に追う早苗。
   手すりの前に置かれた椅子に上り上半身を乗り出し思いっきり手を伸ばす。
   手の先に触れるが手をすり抜けるスケッチ。
   早苗、前回転するように上半身が手すりを超えて校舎の外へ姿が消える。
   沙織と綾乃が驚き顔を見合わせる。
   沙織と綾乃、あわてて手すりに走り寄り下を見る。
   校舎下の地面に倒れている早苗が見える。
沙織の悲鳴。

○霊柩車・中(深夜)
   映し出された映像が消えライトに照らされた霧しか見えない。
運転手「これでイレブンナイトツアーは、終了致しました。まもなく現世に到着致します。少し揺れますのでご注意ください」
   留美、泣いている。
ナレーション「闇の中に眠る真実の旅。このツアーで見た出来事は、決して他言してはならない」

  〈了〉

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