人身御供
飢饉が起きると、村人は神にいけにえを捧げた。生身の少女を神に捧げるのだ。
その条件として、傷物であってはいけないし、親がいないことなどだ。
ひそかに思いを寄せる相手が生贄に捧げられたとき、血の涙が大地に落ちた。
紛れもなく山の神はそれを飲み込み、彼女を大切にすると誓った。
雨は人々の頭上に落ち、血の涙をぬぐい去る。
山の神は少女に近づけば少女は目を閉じて覚悟を決めるのであった。
「…なぜ目を閉じる?我が怖いか」
少女は口を開かない。
「しゃべれないのか、なるほど」
指先から暖かい光が宿ると少女はみるみる美しく変身を遂げた。
「あっ…」
目が金色に光る少女。山の神はすぐに彼女を欲しいとも思った。
「まだ怖いのか。なぜ目を背ける」
彼女は目に涙を浮かべた。とぎれとぎれの会話を聞いているうちに山の神は怨霊と化したかつての彼女の遠縁に自分自身を投影させ怒りおののいた。
「いけません。なぜ私が生贄に捧げられたか。あの村にいては危ないからです」
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