誰がために闘う 学園

自身の失敗を引きずる女子高生は、仲間意識を打ち砕く男に出会い、受験勉強を始める。
山岸遼 15 0 0 04/03
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第一稿

   人物
澤田雪菜(17)  高校生
掛方咲希(18)  雪菜の部活仲間
相木桜(18)   雪菜の部活仲間
敷田四郎(34)  雪菜の部活顧問
五十嵐荒清(29) 予 ...続きを読む
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   人物
澤田雪菜(17)  高校生
掛方咲希(18)  雪菜の部活仲間
相木桜(18)   雪菜の部活仲間
敷田四郎(34)  雪菜の部活顧問
五十嵐荒清(29) 予備校講師


〇競技場・全景

〇同・グラウンド
   サッカーの試合中。
   大歓声に包まれる観客席。「頑張れ、町高」の横断幕。
   澤田雪菜(17)、ボールを受け取る。町高のゼッケン。背番号は9。ゴールに向かって走っていく。
   電光掲示板、「4―3」の得点表。町田高校が3点。
   会場、雪菜コール。
   雪菜の傍から、相手チームの選手が迫る。
   雪菜、ハッとして唾を呑み込む。
咲希の声「雪菜!!」
   雪菜、向こうを見やると町高のゼッケン、掛方咲希(18)の姿。手を掲げて合図する。
   目前のゴール。迫る相手チームの選手。
   雪菜、頷いて、咲希にパスを出す。
雪菜「咲希、お願い!」
   ボールは咲希に向かって飛んでいく。が、咲希に届く直前で、相手チームの別の選手がボールを奪取する。
   雪菜、思わず立ち止まる。
雪菜「……!」
   試合終了のホイッスルが鳴る。
   歓喜の声を上げる相手チームの選手たち。
   観客席から湧き上がる歓声。
   「頑張れ、町高」の横断幕が下げられる。
雪菜「そんな……」
   その場に崩れ落ちる。
   目の前にはゴールがある。

〇同・バックヤード(夕)
   相木桜(18)ら女生徒たちは、雪菜をロッカーに叩きつける。
桜「あんたも、私たちもこれで引退。わかる?」
雪菜「……」
桜「どうして撃たなかったの!」
   咲希、隅の方、雪菜たちから目を背けて俯く。
雪菜「……ごめん」
桜「あんたが撃ってたら同点。延長で勝つことだってできたかもしれない」
雪菜「……」
   敷田四郎(34)、入る。
敷田「まあまあ」
   と、桜たちを雪菜から離して、
敷田「雪菜だってチームのことを思ってパスを出したんだ。そうだろ?」
   咲希、徐に顔を上げる。
雪菜「……(小さく頷く)」
桜「でも……!」
敷田「One for all. All for one.忘れたわけじゃないだろ。みんなよくやった。立派な最後だったよ」
   悔しそうに拳を握る桜。
雪菜「……すいませんでした」
敷田「雪菜……」
   雪菜、逃げるようにその場から去る。
   咲希、雪菜を追いかける。

〇同・裏門(夕)
   雨が降っている。
   雪菜、出てくる。傘もささずに歩いていく。
   咲希、出てくる。
咲希「雪菜!」
   雪菜、立ち止まる。
咲希「ごめん」
雪菜「……」
咲希「私のせいでごめん……」
   雪菜、目を閉じる。その瞳から涙が流れる。
雪菜「(振り返らずに)……咲希のせいじゃないよ」
咲希「雪菜……」
雪菜「違う。咲希のせいじゃないから、大丈夫だから」
   と、目を開く。大きく息を吐き出す。歩き出す。
   咲希、悲しそうに雪菜の後ろ姿を眺める。

〇町田駅・実景
   晴れ渡る空。

〇高校・外観
   校舎から、「サッカー部関東大会ベスト4」の横断幕が垂れ下がっている。

〇同・体育館
   大勢の生徒がパイプ椅子に座り、舞台に立つ五十嵐荒清(29)の話を聞いている。寝ている人やこそこそ話している人もちらほら。その中に、雪菜、俯いている。
   舞台上、スクリーンには「受験の心構え」と記されたスライドと、「新生予備校 代表 五十嵐荒清」の文字。
五十嵐「受験はよく団体戦だといわれる。だがそんなの嘘だ。受験はひとりでするもの。自分以外は全員敵だと思え」
   雪菜、徐に顔を上げる。
五十嵐「One for all. All for one.なんて言葉があるが、それほど受験に似合わない言葉はないな。……いいか、高3の夏、今からの受験でもまだ十分間に合う」
   雪菜の視線は五十嵐に注がれている。

〇同・正門・中
   五十嵐、歩いている。
   雪菜、来て、
雪菜「あの!」
   五十嵐、立ち止まる。ニヤリと笑みを浮かべて振り返り、
五十嵐「ああ、君か」
雪菜「(五十嵐に近づきながら)あの、私でも、まだ間に合いますか」
五十嵐「サッカーはもういいのか?」
雪菜「え、どうして?」
五十嵐「そっちの道に進むと思っていた」
雪菜「……負けたんです」
五十嵐「君のパスのせいで」
雪菜「……」
五十嵐「君のサッカー人生は終わった。だから今から受験勉強を頑張ると、そういうことか」
雪菜「間に合いませんよね……」
五十嵐「君に訊きたい。あのときどうしてパスをした?」
雪菜「……仲間を、信じたんです」
五十嵐「なるほど、それが君の欠点だな」
雪菜「……」
五十嵐「君は、誰のために闘っていたんだ?」
雪菜「……チームのためです」
五十嵐「今振り返って、その闘いは正しいことだったと思えるか」
雪菜「それは……」
五十嵐「もし、あのとき自分を信じてゴールに向かっていれば、どうなっただろう」
雪菜「……」
五十嵐「本心を言ってみろ。もう答えは出ているはずだ」
雪菜「……後悔、しています」
五十嵐「後悔?」
雪菜「思っちゃったんです、どうしてパスしたんだろうって」
五十嵐「それで?」
雪菜「あのときパスを出さなければ、点を取れていたかもしれない。いや、絶対にシュートを決めていました」
五十嵐「私もそう思う」
雪菜「え?」
五十嵐「One for allの呪縛に囚われていた君は優しすぎた。もっと自分のために闘うべきだったんだ。あの試合だけでなくずっとね」
雪菜「私のこと、以前から知っているんですか?」
五十嵐「無論」
雪菜「どうして?」
五十嵐「(ニヤリと笑って)……自分のために闘う覚悟はあるか」
雪菜「……」
   雪菜、拳をぎゅっと握りしめて、
雪菜「自分以外は全員敵、ですよね」
五十嵐「(満足そうに頷いて)ついてこい」
   と、歩き出す。
   雪菜、頷いて、五十嵐に続く。
   柱の陰には、咲希。柱にもたれかかり、涙を流す。

〇新生予備校・外観(夕)

〇同・教室(夕)
   きれいに整列された座席。背筋をピンと伸ばし、手元のタブレットを視聴する生徒たち。
五十嵐の声「授業はすべて映像を視聴して進めてもらう」

〇同・廊下(夕)
   壁一面には、生徒の進捗状況を記した紙が貼られている。
   それを見ている五十嵐と雪菜。
五十嵐「動画の視聴を終えると、単元テストを実施。満点を取れば先に進む」
雪菜「満点を取れなければ?」
五十嵐「次には進めない」
雪菜「なるほど……」
五十嵐「そして毎週末に進捗度合いをチェック。その週で一番単元を進められなかったものは、その時点で脱落。退会してもらう」
雪菜「自分以外は全員敵」
五十嵐「そう、それが新生予備校のやり方だ」

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