偽善的で最適で最幸な人生を 前編 ドラマ

彼女は心理学者だった。私は道を踏み外した彼女を弁護するはずだった。はずだったのに… 弁護士と交番勤務の警官がある恩師のために事件に隠された真実を探す!
奈々瀬りん@脚本家志望 7 0 0 06/30
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第一稿

人物
佐野間伊月(5)(19)(24)
烏間俊明(20)(25)
早川紫織(35)(40)
平山康生(31)
宮野霞(44)

〇(回想)湖
T「15年前」
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人物
佐野間伊月(5)(19)(24)
烏間俊明(20)(25)
早川紫織(35)(40)
平山康生(31)
宮野霞(44)

〇(回想)湖
T「15年前」
  ロッジの立っている湖のほとり。
伊月の声「それは私が4歳の時だった」
  湖のほとりで走っている佐野間伊月(5)。
  湖の中央に浮かんでいる物陰。
伊月「…なにあれ」
  湖に近づいていく伊月。
  湖に浮かんでいる人影。
伊月「うわあああああああ」
  ロッジの中に逃げ込んでいく伊月。

〇法テラス・中
  仕事をしている伊月(24)。
宮野「これ、依頼」
  資料を差し出す宮野霞(44)。
伊月「依頼?今日多くないですか?」
宮野「今回もまた児童虐待。今度は児相から」
伊月「きちんと今回は連絡行ってるか…」
宮野「やるせないわよね。ほんとに」
伊月「確認しておきます。ありがとうございます」
  資料を受け取る伊月。
  書いてある文字を見て顔をしかめる。
伊月「この名前…」

〇交番・中
  椅子に座って本を読んでいる烏間俊明(25)。
男「お巡りさん!僕の話を聞いてください!」
烏間「何?彼女が君のこと好きすぎるって?ほかの男に言ったら恨まれるぜ君」
男「だから好きとかそういうレベルじゃなくて…」
烏間「ちなみに俺含め」
  読んでいる本のタイトルを見せる烏間。
  本のタイトルは「絶対にもてる10の秘訣」。
  ×  ×  ×
  男が帰った後。
平山「朝からきついなあ」
烏間「聞いてたんですか」
  交番の中に入ってくる平山康生(31)。

○(回想)大学・教場
T「5年前」
紫織「人の心理はいたって単純なものです」
教卓で授業をしている早川紫織(35)。
目の前の机で紫織の授業を聞いている烏間俊明(20)。
紫織「難しくしようとするから複雑難解になるんです。いいですか。人の心理なんて善と悪。いや極論をいうと興味あるかないかというもので分けられる」
黒板に心理の図を書く紫織。
紫織「要は皆さんにも犯罪を明日にでも起こす可能性はあるとこと。じゃあ、そのリスクはどうやったら抑えられる?えっと…烏間君」
  立ち上がる烏間。
烏間「理性じゃないですか」
  笑顔で首を振る紫織。
紫織「君は普通ね。サイコパスと健常者には決定的な違いがある。わかる人いる?」
  手を上げる佐野間伊月(19)。
伊月「恐怖心があるかどうか」
紫織「正解よ」
  おおっと歓声に似たため息の漏れる教場 
  内。
  思わず伊月を見る烏間。

○公園・中
ベンチに座っている紫織(40)。
虚空を見つめ気の抜けた顔をしている。
平山の声「すみません」
振り向く紫織。
平山「ちょっと不審者がいるって通報があって」
紫織「私を捕まえてください」
平山「え?」
紫織「私、自分の子供殺しちゃった」
平山「な…」
平山康生(31)、無線に何か話す。
平山「一度、交番までご同行下さい」
同行を促す平山。
立ち上がる紫織。

〇交番・前
  巡回から帰ってくる烏間(25)。
  交番の席に座っている紫織の後ろ姿。
烏間「え?誰…」
平山の声「おお戻ってきたか新人」
  交番の裏から出てくる平山康生(31)。
  平山の声に振り向く烏間。
平山「公園のベンチにいたんだ。自分の子供、殺したというが、その証拠がねえ」
烏間「殺した?」
  交番の中から見える紫織の横顔。
烏間「いやまさか…」
平山「知り合いか」
烏間「…ちょっと」
  ×  ×  × 
紫織「まさか警察になってたとはねー」
  紫織と向かい合って座っている烏間。
烏間「どういうつもりですか」
紫織「何が?」
烏間「…だからほんとなんですか。ほんとにお子さんを…」
紫織「烏間君。覚えてる?5年前の授業」
烏間「…人の善悪は見た目じゃ判断できない」
紫織「そういうこと。嘘かほんとかなんてその本人じゃないんだからわからないでしょ」
烏間「ふざけないでください」
紫織「あなたは私を信じてるの」
烏間「今は」
紫織「じゃあ、あなたが私の真実を見つけてみなさい」
  ×  ×  ×
  夕方。
  烏間が出ていった後の交番の中。
平山「すまないが、署まで同行お願いできますか」
紫織「…ええ」
  平山をにらみつける紫織。立ち上がる。
平山「普通なら隠そうとするだろうに。何で自首したんですか。貴方は変な人だ」
紫織「自主、しないほうがよかったですか」
平山「そんなことないですよ」
  交番の外を見る紫織。
  ×  ×  ×
  交番の外に止まっているパトカー。
紫織の声「私は普通の人とは違うんですよ」

〇駅前
  伊月(24)と歩く烏間。
伊月「先生が?」
烏間「そう。もうびっくりしちゃってさ」
伊月「早川先生って心理学の先生だったよね」
烏間「そんなことするような人に見えなかったからさ」
伊月「そっか…」
  話しているうちに烏間の家にたどり着く二人。

〇烏間家・中
  リビングに入ってくる伊月。
伊月「なんか烏間君の部屋って久しぶり」
烏間「そうだっけ」
伊月「そうだよ。確か大学生ぶり?」
烏間「そんなだっけ」
伊月「そんなだよ。最初はちゃんと話もしてくれなくて何この人って思ったり…(笑)」
  ×  ×  ×
  (フラッシュ)
  伊月、大学の校庭で本を読んでいる伊月。
  烏間、その隣に座る。
  烏間に気がつく伊月。
伊月「さっきの授業の…」
  お辞儀する烏間。
伊月「そんなかしこまらなくても」
  笑う伊月。
  ×  ×  ×
烏間と真顔で向かい合う伊月。
伊月「やっぱりおかしいよ」
烏間「なにが」
伊月「早川先生はそんなことする人じゃない」
烏間「でも俺ら、先生のこと何も知らねえじゃん」
伊月「知らなくちゃ」
烏間「?」
伊月「調べなくちゃ。先生の言うように先生の真実は私たちで探そう」
烏間「学生じゃねえんだぞ」
伊月「先生にとってはいつまでも学生みたいなもんだよ」
  ポケットから弁護士バッチを取り出す伊月。
伊月「まさかこんなとこで役に立つなんてね」
烏間「遊びじゃないんだよ」
伊月「烏丸君ってまじめだよね昔から」
烏間「?」
伊月「まあ、そこがいいんだけどさ。まじめなだけじゃ、どうにもならないことあるよ」
烏間「なんだよそれ」
伊月「なんだろうね」
  笑う伊月。
  つられて笑う烏間。

〇交番・中(朝)
  番をしながら法律の本を読んでいる烏間。
平山「なんだよ。お前が勉強なんて珍しいじゃん」
  裏から出てくる平山。
烏間「彼女の影響で」
平山「法学部の時の」
烏間「それもありますけど、やっぱり昨日のこと気になって」
平山「あの人、署が事情聴取してるぞ」
烏間「…そうなりますよね」

〇警察署・面会室・中
  中に入ってくる紫織。
  やつれた顔で前を冷たく見据える紫織。

〇交番・中
平山「弁護士、確かお前の彼女さんじゃなかったか」
烏間「え?」
平山「まあ、そんなことどうでもいいか。ほら、もう巡回の時間だぞ」
烏間「うす」
  交番を出ていく烏間。

〇警察署・面会室・中
  ミラー越しに紫織と向かい合っている伊月。
紫織「…」
伊月「…何で先生が」
紫織「あんたたちは同じことを何度も言うのね。さすが仲良かっただけあるというかなんというか…」
伊月「自首したとか、嘘ですよね」
紫織「さあ?」
伊月「警察の人から聞きました。自首したのに今度は弁護士呼ばないと何も話さないと言ってるみたいじゃないですか」
紫織「…(にやり)」
伊月「ほんとのこと放さないと誰もわかりませんよ」
紫織「じゃあ、仮に99パーセント私が有罪だったとして、物証が今何もないわ」
伊月「…」
紫織「あの子の遺体は見つかったかしら」
伊月「いえ…それどころか子供がいた、結婚していたかという事実すら今は疑わしいです」
紫織「すべてにおいてほんとに疑ってかかっているわけね警察は」
伊月「先生も知っているでしょう。物証がなく、遺体もなく、ただ判決を出すのはできないんです」
紫織「くだらない司法制度だわね」
伊月「何でこんなこと…」
紫織「気になるなら烏間君と一緒に調べたら?大好きな彼氏さんと一緒に」
  思わず紫織をにらみつける伊月。
  飄々としている紫織。
伊月「絶対真実は暴いてやるから。覚悟しなさい」

〇アパート・早川家・前(夕)
  自転車で通りがかる烏間。
烏間「ここって…」
伊月の声「早川紫織大先生の家よ」
  烏間の隣に立つ伊月。
  振り向く烏間。
  伊月、般若の表情で烏間の隣に立っている。
烏間「今日先生の接見じゃ…」
伊月「行ったわよ。そのうえで何もわからなかった。あの人とんでもない人だわ」
烏間「ほんとに何考えてるんだあの人…」
伊月「グダグダ言ってないで行くわよ」
  そういってアパートの中に入っていく伊月。
烏間「いや、お前も来るのかよ…」
  伊月の後を追いかけていく烏間。

〇紫織の部屋・前
  鍵を開ける管理人。
伊月「ありがとうございます」
  頭を下げる伊月。
烏間「おい!何やってんだよ不法侵入だぞ」
伊月「気になってるくせに」
  そういって中に入っていく伊月。
烏間「どうなっても知らないからな…」
  伊月の後を追うように中に入る烏間。

〇留置所・中
  座って鉄格子の外を見ている紫織。
  口元には不敵な笑み。
〇同・中
  ゴム手袋を身に着ける伊月。
伊月「こういうのやってみたかったんだよね」
  タンスの中を物色する伊月。
  その様子を後ろで眺めている烏間。
烏間「でもさ、自白してきたら、言質とったってことで有罪にならないの」
  あきれたように烏間を振り返る伊月。
伊月「あんた何でここ来たの。つーか警察手帳もって何年目よ」
烏間「2年目だけど関係なくない?」
伊月「先生も言ってたけど、人は嘘つく生き物なの。あの人、子供を殺したって言ってるけど、誰かをかばっている可能性だってあるし、遺体が見つかっていない以上、もしかしたら虚言って可能性もあるじゃん」
烏間「だけどさ、そんなの本庁のやつらに任せようぜ」
伊月「帰りたいなら帰れば?先生がほんとうに伝えたいメッセージがあったなら、それ知っとかないと私何も弁護できなくなっちゃうじゃん」
烏間「…」

〇商店街(深夜)
  一人で歩いている烏間。

〇河川敷
  河川敷に座って捜査資料のコピーを見ている伊月。
伊月「子供を殺した?でも結婚歴も出産歴もない…」
  川を見つめる伊月。
  何かが浮かんでいる川。
少年「なんか人が浮かんでいるよ!」
少年2「子供?子供じゃね?」
  騒いでいる少年二人。
伊月「まさか…」
  川に入って浮かんでいる少女を救助する伊月。
伊月「大丈夫!?」
  青ざめている少女の顔。
  心臓部に耳を当てる伊月。
伊月「死んでる…」

〇烏間家・リビング・中
  ソファーに座ってテレビを見ている烏間。
  伊月がリビングに入ってくる。
  烏間の隣に座る伊月。
烏間「なんかあった?」
  テレビを消す烏間。
伊月「…」
  無言の伊月。
  小刻みに震え蒼白な表情の彼女。
  いつもと違う彼女に首をかしげる烏間。

〇交番・中
  机に伏している烏間。
  巡回から戻ってくる平山。
平山「どうした」
烏間「俺って警官向いてないんですかね」
平山「彼女さんか?…そういえば、遺体見つかったらしいな」
烏間「何のですか」
平山「川で女の子の死体。あの早川って女がやったのかって情報だぞ。あ、ちなみに見つけたの彼女さんらしいぞ」
烏間「は?」
  ×  ×  ×
(フラッシュ)
  蒼白な顔で震えている伊月。
  ×  ×  ×
平山「しかも彼女さん、さっき職場で倒れたんだって?大変だよな」
烏間「…え」
平山「今警察病院だって。まさか知らないのか」
  ガタンと勢い良く立ち上がり、交番を出ていく烏間。
平山「ちょ…シフトどうすんだよ」
  交番の外をのぞき込む平山。
烏間の声「すみません!変わってください!」
  烏間の声に「仕方ないな」と頭をかく平山。

〇病院・病室・中
  ベッドに座っている伊月。
伊月「だから、寝不足なだけですって。問題ないから退院させてください」
医者「駄目です。今日だけは絶対安静です」
  そういって病室を出ていく医者。
伊月「いいじゃん。接見行くくらい!」
  枕をドアに投げる伊月。
  部屋に駆け込んできた烏間に枕がぶつか 
  る。
烏間「…っ!」
伊月「いや、何してんの」
烏間「倒れたって聞いたから見舞いに来たんだろうが!」
  伊月の隣に座る烏間。
  烏間、伊月に枕を返す。
烏間「被害者見つけたのか」
伊月「…うん」
烏間「弁護できそうか」
伊月「…」
  顔をそむける伊月。
烏間「どうした」
伊月「私、わからなくなってきたあの人弁護すべきかどうか」
  伊月の顔を見る烏間。
  烏間の目を見ない伊月。

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