マイカズン・マイヒーロー ドラマ

アルバイトをしながら、役者活動をしている峯田康太(29)。バイトから帰宅したある朝、母から、祖父が亡くなったと知らされる。 告別式の日。 康太は、12年ぶりに従兄弟の辻優人(21)と再会をする。数年ぶりに対面した祖父の姿を見て、泣き崩れる優人。収骨を待つ間、12年ぶりに、言葉を交わす康太と優人。 そして納骨後。 優人から、孤独や諦念を感じた康太は、彼をごはんに誘う。初めて一緒に酒を飲む2人。そこで康太は、空白だった優人の壮絶な12年間を知り・・・
古堅元貴 48 0 0 02/09
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第一稿

【人物一覧表】
峯田康太 (29)フリーター 役者志望
辻優人  (21)フリーター 康太のいとこ
峯田景子 (53)康太の母
辻由加里 (50)優人の母
峯田薫  (9 ...続きを読む
「マイカズン・マイヒーロー」(PDFファイル:228.16 KB)
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【人物一覧表】
峯田康太 (29)フリーター 役者志望
辻優人  (21)フリーター 康太のいとこ
峯田景子 (53)康太の母
辻由加里 (50)優人の母
峯田薫  (90)康太と優人の祖母
峯田タカオ(95)康太と優人の祖父



〇浦安・物流倉庫
深夜。50人以上のアルバイトがピッキング作業をしている。
その中の1人、峯田康太(29)。

〇同・喫煙スペース(夜)
休憩中。談笑しながら吸ってる人が多い中、隅で1人、電子タバコを吸っている康太。

〇マイクロバス内(朝)
駅へ向かう送迎バス。車内にはびっしりとバイト終わりの人たちが座っている。その中に康太。手には文庫本。
康太「(うたた寝している)」
変な体勢で寝ているせいで、ページに変な折り目が付いてしまっている。

〇葛西駅(朝)
改札から出てくる康太。改札へ入って行く多くのスーツ姿の人達。康太と同世代くらいの人たちが目に入り。
康太「(自身に劣等感)」

〇康太の一人暮らしのアパート(朝)
8畳ほどのワンルーム。帰宅した康太。棚には本や映画、舞台のDVDが並んでいる。
康太、バッグから文庫本を出し、部屋内のモノを利用したりして、折り目が付いてしまったページの皺を伸ばそうとする。しかし皺は直らず。
冷蔵庫から缶チューハイを取り、飲むと、スマホにLINE受信音。確認すると母からだ。
康太「(メッセージの内容に言葉を失う)」

〇葬儀場・待合室(日替わり・朝)
康太の祖父・峯田タカオ(享年95歳)
の家族葬の開始前。
康太、康太の母・峯田景子(53)、祖母・峯田薫(90)が座っている。
薫「お医者さんが、本人も亡くなったこと気づかないくらい、全く苦しまずに、寝てる間に、天国へ向かったんじゃあないかって」
景子「ある意味、いちばん幸せな最後よ」
薫「亡くなる前の日なんて、いつも食べてるおかずなのに、これはおいしいなんて、わざわざ私に言って」
景子「ある意味、死期を悟ってたのかもね」
薫「最後だけ仏のようになって・・・。康太、この前出てたね、ドラマ」
康太「え、ああ、ほんの一瞬だったけど」
薫「すぐ康太だって分かったよ。それね、おじいちゃんと一緒に見てたんだよ。おじいちゃんね、いつも康太と優人のこと、気にかけてた」
康太「(自身の力なさを感じる)」
そこに従兄弟の辻優人(21)と優人の母・辻由加里(50)が到着。
由加里「あー、お母さん、姉さん」
薫「由加里」
景子「迷った?」
由加里「この辺、昔と変わりすぎててー。え、康太?久しぶり。わかる?あ、優人」
優人「(康太に会釈する)」
康太「久しぶり(優人に会釈する)」
12年ぶりの再会でぎこちない2人。

〇告別式会場
出棺前のタカオとの、最後の対面。
泣き崩れている薫。それを支える景子と由加里。その横に康太と優人。
スタッフ「(康太に)最後にお言葉、かけてあげてください」
康太「(何と声をかけたらいいか、考えてると)」
優人、タカオに近づくと。
優人「おじいちゃん。ありがとう。ずっと会わなくてごめんなさい」
泣き崩れる優人。その姿に驚く由加里。だが薫の介抱で手が離せない。優人、それに気づき。
康太「(恐る恐る、優人の背中を擦る)」
優人「(康太のおかげで、少し落ち着く)」

〇葬儀場~道(昼)
火葬場へ向かう霊柩車。

〇火葬場・火葬炉
タカオの棺が火葬炉へ入っていく。それを見守る家族たち。

〇火葬場・待合室(昼)
収骨を待っている家族たち。康太と優人が2人で話している。
優人「さっきはありがとう」
康太「いやいや全然。・・・最後に会ったの、優人が小4?のときだから、12年ぶり?」
優人「12年だね」
康太「背、めちゃくちゃ大きくなったな」
優人「中高で30センチ伸びた」
康太「すご」
優人「そうだ、観たよ、ドラマ。すごいね」
康太「もうほんのちょっとだけど」
優人「やりたいことあるのがすごいよ。(僕は)ないよ」
康太「(優人から、どこか諦念を感じる)」

〇火葬場・出口(昼)
納骨後。やり終えた開放感もあり、話したりない様子の薫。
由加里「お母さん、もうその話聞いたからー」
薫「そこのお惣菜、本当においしいから。買って帰りなさい。晩御飯も済むから」
景子「ありがとう、今日は家事したくないから、ウチも買って帰る」
由加里「姉さん、あと任せちゃって大丈夫?」
景子「大丈夫。身体気を付けて」
由加里「姉さんも。康太もまたね」
康太「うん」
優人「(軽く会釈)」
駐車場へ向かう優人と由加里。
康太「(優人が気になる)」
2人を追いかける康太。
康太「(追いついて、優人に)あのさ」

〇錦糸町・駅前(日替わり・夜)
優人を待っている康太。
康太「(そわそわしている)」
優人「康太くん」
振り返ると、優人がいる。
康太「お、おう」
   

〇居酒屋
メニュー表を見ている康太と優人。
康太「・・・お酒?」
優人「うんうん」
康太「何飲む?」
優人「最初はビールで。康太くんは?」
康太「(ビールは苦手だが)そうね、俺も最初は。ごはんは?嫌いな物あったっけ」
優人「魚。でも焼き魚はいける。刺身と寿司はダメ」
康太「あー、だったね」
優人「康太くんは何ダメだっけ?」
康太「豆、くるみ、落花生はずっとダメ」
優人「でもアレルギーじゃないんだよね」
康太「うん、だけど食べると気持ち悪くなる」
優人「そうだそうだ、思い出した」
笑う2人。
康太「とりあえず先飲み物頼もうか(店員に)すいませーん」
店員、返事をし、駆け寄ってくる。
優人「声通るね、さすが役者さん」
康太「いや全然・・・」
×     ×     ×
1時間後。程よくお酒が入った状態の康太と優人。
優人「一生続くと思ったらもう限界で、そいつ殴ったら退学。その影響でバイトもクビになって。その翌週にマンションの隣の部屋が火事になって、巻き込まれて」
康太「え?それ全部高校3の冬?」
優人「そうそう」
康太「でも殴ったのはそいつがいじめてたからだよね」
優人「うん。でも殴っちゃったから。結局、専門学校も行けないってなって、今の職場で働くことになったんだけど、まあそこも色々あって・・・、とりあえず月残業が60時間。計上されないやつ」
康太「すごいね・・・」
優人「でもこのまえ康太くんドラマで見たとき、超元気もらったよ。家族が知らない場所で戦ってたんだって。嬉しくなった」
康太「(優人の力になれなかった情けなさと、ほんの少しの出番でも誰かの力になれてることを初めて実感する)」
×     ×     ×
1時間後。だいぶ酔っている2人。
康太「え!?何日目?」
優人「え何日目だろ、クリーズが出てた日」
康太「俺もその日!」
優人「じゃあすれちがってたかもだ」
康太「でもこんなに背伸びてたら気づかない」
優人「そうだよね、でもあの日いたんだー。すごっ、いとこのDNAだ」
康太「同じ日に同じフェス行ってたのは、すごい偶然だね。しかもお互い1人」
優人「友達いないから、誘えばよかったー」
康太「同じく」
優人「毎日1人過ぎて希望がない」
康太「・・・でも名作も名画も名曲も、99%は、1人でいるときにアイディアが浮かんで、ゼロイチにする作業は1人でして、生まれたものだから・・・だから1人って、えっと(続きを思い出そうとして)」
優人「それ、康太くんが出たドラマのセリフ?」
康太「・・・いじってる?」
優人「ちがうちがう!なんかドラマのセリフっぽいなーって」
康太「(笑って)小説だよ」
優人「なんの小説?」
康太、バッグから文庫本を取り出し、優人に渡す。
優人「難しそっ」
パラパラとめくる優人。
優人「どうしたの、このページ?」
変に皺のついたページだ。
康太「これはね・・・」
優人「あ、99%書いてた!でも皺でめっちゃ読みづらい(笑)」
今ここにあるモノで、ページの皺をなんとか伸ばそうとする優人。
康太「無理だよ(と言いながらその姿を微笑ましく見る)」
×     ×     ×
レジ前。お会計をしようとしている康太と優人。
康太「先出てていいよ」
優人「いやいやいやいや」
康太「年上のいとこですから」
優人「じゃあ・・・ありがとう」
先に店を出る優人。
店員「ありがとうございます。5千8百円です」
康太、迷って。
康太「・・・全額ポイント払いってできます?」

〇錦糸町・駅前(夜)
駅へ歩いている康太と優人。到着し。
優人「本、ありがとう。皺直ったら連絡するね」
康太「読み終わったらでいいよ」
優人「そうだった。そのときはまた飲もう」
康太「うん。墨田の方だよね(調べながら)この時間ならまだ終バスあると思う。バスなら一本で帰れる?」
優人「うん」
バスの時刻表を見に行く康太。
優人「(その姿に嬉しい)」
康太「(戻って来て)まだ全然バスあった」
優人「康太くん、やっぱりヒーローだね」
康太「え?」
優人「ありがとう。声かけてくれなかったら、また会う機会、無くなってたと思う」
康太「俺の方こそ話したかったから」
優人「すごい楽しかった。またほんとに。一人っ子で友達もいないから絶対に」
康太「それは俺も」
優人「あと、今度おばあちゃんち、一緒に行きたい」
康太「行こう」
バス停へ向かう優人。
その姿を見守る康太。           

おわり

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