〇登場人物
・櫻庭宗介(30)主人公。
・沢城千秋(29)シェアハウス家主。
・村上信子(49)パートのおばさん。
・星七緒(26)シェアハウスメンバー 占い師。
・古川紘(23)シェアハウスメンバー コスプレイヤー。
・長谷川なつき(26)シェアハウスメンバー BL漫画家。
・山中(26)長塚の部下。
・和田(26)長塚の部下。
・櫻庭五郎(59)宗介の父
・櫻庭里子(56)宗介の母
・長塚(46)借金取り
〇弁当屋・HOT・HOT・キッチン(朝)
櫻庭宗介(30)が、フライパンで野菜炒めを作ったり野菜を器用
に切り刻んだりしている。
パートの村上信子(49)が容器にご飯を詰めていく。
信子「宗ちゃん。ご飯いれたわよ」
宗介「うぃっす」
蓋を閉じ輪ゴムで止め、出来上がった弁当を袋に入れていく宗
介。
宗介「よし、これで、終り!」
信子「今日も、朝のお客さんの予約分間に合ってよかったわね」
宗介「そうっすね!でも二人だとやっぱハードですよね…」
額の汗を拭く宗介。
信子「人件費削減だもんね。でも、この店いつまで持つのかしらね…ま
だこうやって少しだけどお客さん来てるけど」
宗介「うーん…」
信子「宗介君次の仕事とか、何か探してる?」
宗介「いやぁ…」
信子「念の為に探してた方がいいわよ。いざって時に」
宗介「はぁ…でも、面倒なんすよね…また、新しく履歴書書いて面接受
けて。受けてから合否の連絡受けるまでヒヤヒヤして…そこからまた
新しい人間関係作るのも」
信子「何言ってんのよ。宗ちゃん、私より全然若いんだよ。もっとしっ
かりしなきゃ!」
宗介の背中を思い切り叩く信子。
宗介「イッてぇ…は、はい…(苦笑い)」
青ざめた顔でオーナーの立花(54)が入ってくる。
宗介「オーナー…おはようございます」
立花「お…おはよう…」
信子「どしたの?オーナー顔色悪いけど」
立花「宗介に、信子さん悪いけど…店は今日で終わりにする」
信子「え?」
宗介「マジっすか?」
立花「あぁ…もう正直言うと回していくのが…無理なんだ」
力なく椅子に座り込む立花。
立花「朝の予約の弁当渡したら、店閉めるから…」
宗介「…」
立花「あぁ、今日まで出てもらった二人の給料はちゃんと後で渡すから
そこは心配しないで…」
宗介「はぁ…」
立花「せめてもと思って二人の次の仕事先の紹介とかも出来たらよか
ったんだけど、それ所じゃなくなってきてて」
信子「そんな、そこまで心配しなくてもいいわよ。オーナーも大変だと
思うけど体だけは大事にしてね」
立花「信子さん、ありがとう…そして本当にすまない…宗介も…」
宗介と信子に頭を下げる立花。
〇道(夕)
アルバイト情報誌を片手に持って歩いている宗介。
宗介「仕事危ないかもって信子さんと話した当日に店が終わっちゃうん
だもんなあ…」
立ち止まり雑誌をペラペラとめくる宗介。
宗介「条件がいいの、あんま載ってねぇよなあ」
雑誌を閉じて溜息を付く宗介。
宗介「でも、仕事早く探さなきゃな…」
〇櫻庭家・前(夕)
宗介が帰ってくると、父の吾郎(59)と母の里子(56)が荷物を
まとめて出てくる。
宗介「え?親父にお袋?」
里子が宗介に気付く。
里子「!」
宗介「お袋!」
吾郎と里子の所に行く宗介。
吾郎「宗介、すまない…」
宗介「は?二人してどしたんだよ?そんなに荷物持って」
里子「宗介ごめん…」
宗介「だから、どうしたんだよ。二人で謝ってばっかじゃ分かんねぇだ
ろ?」
吾郎と里子が宗介を振り切って走って逃げていく。
宗介「ちょ!ちょっと待てって!」
二人を追いかけようとする宗介。
男の声「あの…」
宗介「(振り返って)え?」
男の声「貴方、ここの櫻庭さんの家の方?」
宗介「あぁ、そうっすけど…」
長塚「私、長塚と言いまして」
名刺を宗介に渡す長塚(46)。
宗介「んで、何すか?」
長塚の隣にいる部下の山中(26)と和田(26)がニヤニヤと笑っ
ている。
宗介「何なんすか、あんた達は」
長塚「私、貴方のお父様にお金を貸してましてね」
宗介「は?」
長塚「あれ?ご家族の方なのに知りませんでした?」
宗介「し、知らなかった…」
長塚「何度も何度も返済を待たされてしまいまして、まぁこちらも待た
せてもらってましたが、もう利息の方も大変な事になってまして
ね…」
宗介の額に汗が滲む。
長塚「お父様とお母様は?」
宗介「あ…」
宗介M「だから…逃げたのか?」
〇フラッシュ
吾郎と里子が宗介を振り切って走って逃げていく。
〇フラッシュ戻り
宗介の顔色が青ざめていく。
長塚「どこに居るんですか?ご両親は」
宗介「さ、さぁ…ちょっと出かけてるんじゃ…」
長塚「おかしいなぁ…さっき電話した時は、家に居たみたいなんだけど
なあ」
山中「もしかして、夜逃げじゃないんですか?」
和田「夜逃げするには時間早くないか?」
山中「まぁ、確かに」
笑う山中と和田。
長塚「今日が期限の日だったんですよ。もし返却できないのであれば」
ポケットから借用書を出し宗介に見せる長塚。
長塚「家を売ってそのお金で借金返済するってお父様からサイン頂いて
るんですよ」
借用書を見て体が震えだす宗介。
長塚「時間は今日の夕方五時(腕時計を見て)あぁ、今ちょうど時間に
なりました。返済の意思はないようなのでこの家抵当として頂く事に
なりますので」
宗介「ちょっと待って!」
長塚「え?返済していただけるんですか?お金あるんですか?」
宗介「う…」
長塚「家の中にある物も、返済対象になるものはそちらに回すので。ま
ぁ何とか返済はこれで終わるでしょう」
宗介「え?じゃあ俺は今日からどこに住めばいいわけ?」
長塚「さぁ、私達に聞かれましても」
山中「あれだったら、紹介しましょうか?ホームレス」
宗介「結構です!」
長塚達を睨みつける宗介。
長塚「あの、私達にそういう目を向けられても困るんですよ。これも仕
事ですからね…」
宗介「…」
長塚「恨むなら…(宗介の耳元で)てめぇの親を恨むんだな」
力なく、膝から崩れ落ちる宗介。
長塚「まぁ、貴方の必要最低限の物だけは持ち出していいとしましょう
これから部屋探し大変でしょうから」
宗介の肩を軽く叩く長塚。
長塚「それが済んだら、さっさと出て行って下さいね。もう貴方の家じ
ゃないんですから」
笑いながら宗介の家に入っていく長塚達。
〇道(夜)
大きな鞄や荷物を持った宗介が歩いている。
宗介「何でこんな事になったんだよ」
宗介の視線の先に居酒屋がある。
お腹を鳴らす宗介。
宗介「腹、減ったなぁ…」
ポケットから給料袋を出し中身を確認する宗介。
宗介「少しだけ…飯食うか…」
居酒屋へ入っていく宗介。
〇居酒屋・中(夜)
テーブル席で、宗介が酒を飲み酔っている。
宗介「畜生!仕事は無くなる、家は無くなる!なんで俺がこんな目
に合わなきゃいけねぇんだよ!俺が一体何したって言うんだよ」
宗介から離れた席で、一人飲んでいる男が宗介を見ている。
宗介「これから、俺どうやって生きてけばいいんだ…貯金もほとん
どねぇし…」
泣きながらテーブルに突っ伏す宗介。
男が近づくと宗介は泣きながら眠っている。
男「…」
暗転。
〇シェアハウス・部屋・中(朝)
宗介がベッドの中で眠っている。
宗介を囲むように寝顔を見ている男達
宗介「う…」
眉間に皺を寄せながら、目を覚ます宗介。
宗介「やべ、寝ちまった…会計して…」
体を起こす宗介。
宗介「あ?」
周りを見渡す宗介。
宗介「え?」
にやにやと笑って宗介を見ている家主の沢城千秋(29)占い師の
星七緒(26)コスプレイヤーの古川紘(23)漫画家の長谷川なつ
き(26)
宗介「え?ここ…どこ?」
千秋「ここ?俺達のシェアハウス」
宗介「シェ、シェアハウス?」
千秋「ここで、一緒に暮らしませんか?」
宗介「はぁ?何で?何でこんな展開に?」
あたふたしだす宗介。
千秋「何でって…何か住むとこないとか言って酔っぱらってたでしょ?
だから」
宗介「だから?じゃなくて…あぁあの時酔って言った事聞いてた
の?」
千秋「(笑顔で)はい」
宗介「いや、はい。じゃなくて…だからってなんで俺をこんな所に連れ
込んでるの?ってか(七緒達を指して)この人達は何」
紘「何って…」
なつき「ここに住んでる住人ですよ」
七緒が急に宗介の前に手をかざし驚く宗介。
七緒「貴方がここに来たのも…運命です。運命には素直に従う事です」
宗介「え?何、怖い…あ…」
掛け布団をめくると、上半身裸と下着一枚になっている。
宗介「あぁ…俺、パンイチになってる」
千秋「あぁ、脱がせておいたよ」
宗介「何で!」
千秋「何でって、そのままで寝てたら気持ち悪いだろうなって…」
宗介「そうだけど勝手に脱がすかなあ…」
千秋「え?何恥ずかしがってるとか?別にいいいでしょ。ここ男し
か居ないんだし」
宗介「そうだけどさ…ってか、もういい。こんな所に居るつもりは
ないから」
起き上がり宗介の体が露になる。
千秋は見とれ、紘となつきはニヤニヤと笑い七緒は手で目を
隠しつつ指の隙間から見ている。
宗介「な、何だよ…」
千秋「いやぁ…」
宗介M「何、この視線…ちょっと怖いんですけど…」
引きつりながら笑う宗介。
続。
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