Pink! Pink! Pink! 恋愛

女子大生のゆうは、ピンクを愛するサークル『ピンク・メート』の一員。 メンバーは二人だけ。ゆうと、親友で幼馴染のひとみ。 ひとみはふくよかな体形であったが、それでもピンクの似合う、自身に満ち溢れた素敵な女性だ。 ゆうはそんなひとみに恋をしていた。 しかし、ゆうの前に現れた一人の男性が、二人の愛をはらんだ友情を壊していく……。
紺未来(こんみ) 25 0 0 06/14
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第一稿

ー人 物ー
白田ゆう(22)女子大生
桃谷ひとみ(23)ゆうの幼馴染。通称P
黒瀬まさき(32)記者
灰田ななこ(22)まさきの友人
女性店員  文房具屋の店員

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ー人 物ー
白田ゆう(22)女子大生
桃谷ひとみ(23)ゆうの幼馴染。通称P
黒瀬まさき(32)記者
灰田ななこ(22)まさきの友人
女性店員  文房具屋の店員


〇大学・『ピンク・メート』部室
  全面ピンクの壁。フラッシュ音。
  テーブルの上。水の入った透明なグラスに、ピンクの色鉛筆が数本つかっている。
  ソファに座る白田ゆう(21)。
  全身ピンク色の服、ピンクに染まった派手な髪。
  落ち着きなく目をきょろきょろさせたゆう、目の前の誰かに話している。
ゆう「なんで? なんでかあ。うーん。あ、でも。小学生の頃、ピンクって、クラスで一番人気
 の女の子しか、着ちゃいけなかったじゃないですか。それで、私、着れなかったから……。そ
 の、反動っていうんですかね?なんていうか。そういう、かんじ」
  へらへらと笑っているゆう、次第に黙り込み、気まずそうに俯く。

〇大学・サークル棟・廊下
  【ピンク・メート】と書かれた扉。
ゆうの声「Pとは幼馴染。ずっと、一緒。ずっと二人だけで、信じてきたんです」

〇同・『ピンク・メート』・部室
  ピンクの色鉛筆が入ったグラス。ゆう、水につかった色鉛筆の一つを取り出す。
  鏡の前に立ち、濡れた色鉛筆でくっきりと目元を囲う。
  全身ピンクに身を包んだ、肥満体形の桃谷ひとみ(23)、窓際に立ち、何かを指先でなぞ
  っている。
  窓の外の中庭。派手なグループの中をせわしなく彷徨う、灰田ななこ(22)の行く先だ。
  ななこ、グループの女子の一人に向って。
ななこ「そのチョーカーの色、素敵。私も真似していい?」
  ななこ、また別の女子に向って。
ななこ「あ、それ、雑誌に載ってたやつだよ
ね。私もそのブランド気になってたの」
  ひとみ、動き回るななこを指でなぞり、鼻で笑う。ゆう、窓際にやってくる。ひとみ、なな
  こを眺めたまま。
ひとみ「……まるで点Pね」
ゆう「それってPのこと?」
ひとみ「ちがうわよ。知ってて聞くのね」
ゆう「何度でも聞きたいの」
ひとみ「いいわ。私のPは……」
  ひとみ、ゆうの耳元で囁く。

〇同・キャンパス内
  ピンクのバイクに二人乗りするゆうとひとみ。ゆう、後ろからひとみの背中を、ぎゅっと抱きしめる。

〇アパート・ゆうの部屋・ベランダ(夜)
  手持ち花火を持った黒瀬まさき(32)。パチパチと青白い光線がはじける。まさき、目の
  前の誰かに向って。
まさき「突出したものが美しいなんて、いかにも未熟な人間が考えそうなことだ。そしてそうい
 う人間のほうが実はずっと、点P的なんじゃないのかな」
  光線の勢いが強まっていく。
まさき「君の信じているそれは散る前の一瞬の輝きでしかないんだよ。分かる?」
  火が弱まり、散っていく花火。

〇文房具屋・店内
  一面ガラスばりの、都会的な文具屋。コスメショップのように、美しく陳列された色鉛筆。
  ぼんやりとそれを見ているゆう。ピンクの色鉛筆を手にとろうとして、止める。
  女性店員、ゆうに近づく。
店員「今日は迷っているんですね」
ゆう「……そういうわけじゃ」
店員「でも、私、ずっと思ってたんです」
ゆう「え?」
店員「あなたって本当は……」
  ゆう、はっと振り返る。そこには、ただ静かに微笑むひとみがいる。
  ゆう、店員のことなんか忘れてしまったように、じっと、ひとみだけを見つめている。

〇カフェ・喫煙席
  席でストロベリーラテを飲むひとみ。ミニスカートははちきれそう。
  二人の若い男たち、通り過ぎ、ひとみを見て冷笑。煙草の煙を、ひとみに向って吐く。
  気にせずラテを飲み続けるひとみ。灰皿を持ったゆう、気まずそうにひとみの隣に座る。
  ひとみ、勢いよく席を立つ。
ひとみ「(不適な笑み)ねえ。誰にも縛ることができないものって、知っている?」

〇ランジェリーショップ
  試着室のカーテンがひるがえる。
  ピンク色の派手な下着をつけた着たひとみ、試着室の外で待っていたゆうを挑発的に見つ
  め、自らの胸元を撫でる。
ひとみ「それは私の心よ。それは信念。それは自我の選択。それは過大イデオロギー。それはい
 つだって、私だけのものなの」
  ゆう、操られるように、試着室に入っていく。シャッ、とカーテンが閉まる。
ゆうM「Pは美しい。今まで出会った人間の、誰よりも」

〇道(夜)
  音をたて、ピンクのバイクが走る。

〇アパート・前(夜)
  ヘルメットを取り、バイクを降りるゆう。
  ひとみ、バイクに乗ったまま黙っている。
  ゆう、静かに立ち去る。が、足を止め、一度振り返る。
  ひとみ、ただゆうを見て、微笑んでいる。
ひとみ「ねえ。また、あなたの部屋の、最高なカーテンを見せてくれる?」
ゆう「……うん。いつでも」
ひとみ「愛しているわ。たったひとりのピンク・メート」
  少し悲しそうに、微笑みかえすゆう。

〇同・ゆうの部屋(夜)
  扉を開けるゆう。モノトーンのシックな室内。黒色のカーテン。
  ベッドの上、ななことまさきが裸で抱き合っている。
ゆう「……カーテンも変えたの?」
まさき「あれは派手すぎだよ。ずっと見てい
ると、気がおかしくなってくる」
  立ち上がったまさき、後ろからゆうのコートを脱がし、首筋に顔をうずめる。
まさき「あの人に会ってきたんだね」
ゆう「(ななこを見て)この子は?」
  ななこ、くすくすと笑いながら立ち上がり、前から、ゆうに軽いキスをする。
まさき「君はもっと普通にしていなきゃ。綺麗なんだから」
  まさき、後ろからゆうのピンクのブラウスを脱がす。
  露わになった黒いブラジャー。
  まさき、それを見て満足気にほくそ笑み、ゆうの首筋を舐めあげる。
  ななこ、ゆうに濃厚なキスをする。次第に恍惚とした表情に変わっていくゆう。
  ゆうの艶めかしい吐息が繰り返される。
ゆうM「それに比べて、私はなんと、よごれているのだろう……」

〇大学・『ピンク・メート』・部室
  ゆうの目元。右にピンク、左にグレーの色鉛筆が施されている。ゆう、鏡の中の自分を見
  て、次第に呼吸が乱れていく。

〇スーパー・精肉売り場・前
  精肉売り場の前で立ちすくんでいるゆう。目元はかぶれ、赤く腫れている。
  精肉売り場の中。厨房の電動ミンチ機で、肉が粗挽きされていく。
  その様子をじっと見るゆう。
  と、カートをひいた中年女性たちが通り過ぎる。大口開けて談笑している。
  彼女らのむき出しの歯茎を見つめるゆう。
  粗挽きされた肉。歯茎。肉。歯茎。繰り返し、交互に視界に映し出される二つの光景。
  静寂。かぶれたゆうの瞼。甲高く鳴り響くゆうの叫び声。
  ×        ×       ×
  誰もいない店内。崩れ落ち、項垂れているゆう。
  目の前にひとみがいる。ひとみ、ゆうの腫れた瞼にそっと触れる。
  虚ろなゆう。
  ひとみ、ゆうの異変に、はっと目を見開く。

〇大学・キャンパス内
  グレーのワンピースを着た黒髪のゆう、まさき・ななこと談笑している。
  と、怒りに震えたひとみが迫ってくる。
  いつものようにピンク一式の格好をしたひとみ、ゆうの髪の毛を強くひっつかむ。
ひとみ「……なんの意味があるの」
  ゆう、頭を掴まれた痛みに耐えている。
ひとみ「(叫ぶ)自分に嘘をついて得たものに、何の意味があるというのよ!」
  お互いを睨むように見つめ合うゆうとひとみ。
  間。
  ひとみ、ゆうをつき離し、去っていく。ゆう、俯いている。
まさき「意地なんだろうな」
ななこ「(薄ら笑い)可哀そうなひと」
ゆう「(遮るように)そんなんじゃない!」
  顔を見合わせ、首をかしげるまさきとななこ。
  ゆう、ワンピースを脱ぎ捨てる。
  露わになったゆうのピンクの下着。
  まさき、それを見てがっかりとため息。
まさき「分かってないんだよなあ。やっぱ」
  涙を流したゆう、遠ざかるひとみの後ろ姿を、いつまでもじっと見つめている。

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