○市役所・事務室
PCに向かい仕事をする職員たち。
段ボールを抱えた原(62)が入口につっかかりながら入ってくる。同僚の平須賀(38)、顔を上げ
平須賀「あ、それ会議室です」
原 「え、あっはい(戻ろうとしてまたつっかかる)」
職員A「原さーん、三階トイレの蛍光灯、切れてたんだけど」
原 「(つっかかりながら)あ、はい」
× × ×
デスクのPCで所在なく天気予報を眺める原。
時計が六時を指しチャイムが鳴る。
原 「(ぼそぼそと)お先失礼します(出ていく)」
書類仕事をしている平須賀と若手の金田(25)。
金 田「原さん、いつも早いっすね」
平須賀「やることないからね」
金 田「でもプライベートの時間充実してんの、いいなあ」
平須賀「(ふっと笑い)家ではやること、あんのかね」
○原の自宅(夜)
原、マンションの一室の鍵を開け中に入る。
暗い廊下にリビングからの明かり。足元に目を落とすと、ブレザーの制服にベルトの首輪をつけて四つん這いになったほのか(17)が原を見ている。
○同・リビングダイニング(夜)
原、荷物を置き台所へ。流し横に洗浄済みの食器、冷蔵庫を開けると中にラップされた豚キムチ。
棚から個包装されたもなかを出し、袋を開ける。足元に寄ってきたほのかの頭をそっとなでて口元に近づけると、ほのかがもなかに食いつく。
食べ終えたほのか、方向転換して手を棚にぶつけ
ほのか「いっ……!」
原、無表情にじっとほのかを見つめる。
ほのか「(その目を見返しながら)……わん」
冒頭終
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