虎は恋を見た コメディ

41歳の小学校教師・丹生誠は、23歳の同僚・七谷澪に惹かれているが、自信の無さから学校に伝わる七不思議の1つ「美術室の鏡に好きな人の名前を3回言うと恋が叶う」をやってしまう。その現場を誠の教え子で、澪の弟・虎太郎に見られ、虎太郎は誠の恋を応援する。誠は澪に積極的なアプローチをするが、イケメン教師・弓削恭平を見る澪の眼差しに撃沈。ある日の夜、虎太郎が美術室に入る人影を追うと、別の恋を見る。
袰岩慧 8 0 0 09/29
本棚のご利用には ログイン が必要です。

第一稿

<人物>
七谷虎太郎(10)小学4年生
丹生誠(41)虎太郎の担任
七谷澪(23)虎太郎の姉
弓削恭平(27)教師

〇くすノ木小学校・外観(朝)
 木造の校舎。
...続きを読む
この脚本を購入・交渉したいなら
buyするには会員登録・ログインが必要です。
※ ライターにメールを送ります。
※ buyしても購入確定ではありません。
 

<人物>
七谷虎太郎(10)小学4年生
丹生誠(41)虎太郎の担任
七谷澪(23)虎太郎の姉
弓削恭平(27)教師

〇くすノ木小学校・外観(朝)
 木造の校舎。
 水色の外壁はところどころ剥げている。

〇同・1F・渡り廊下(朝)
 出席簿を持ち、歩いている、チノパンにポロシャツ姿の丹生誠(41)。髪型はこざっぱりとしたベリーショート。
 反対方向から、水色のブラウスにジーパン姿の七谷澪(23)が、ポニーテールを揺らし歩いて来る。くりくりとした目が誠を見つける。
澪「丹生先生、おはようございます」
誠「七谷先生。おはようございます」
澪「丹生先生、劇の内容決まりました?」
誠「いえ、まだ考え中でして」
澪「うちもまだなんです。難しいですよね」
誠「わかります」
 チャイムが鳴り頭を下げ離れていく。
 誠は立ち止まり、振り返る。
 弓削恭平(27)と澪が楽しそうに話している。誠、弓削と澪を見つめる。

◯同・2F・4年生教室(朝)
 ざわざわと騒がしい。
 後ろ向きに座る七谷虎太郎(10)。
虎太郎「小4にもなってまだそんなん信じてんのかよ」
 ドアが開き、誠が入ってくる。
誠「みんな席につけ〜虎太郎前みろ〜」
虎太郎「先生、美術室の鏡の噂、知ってる?」
誠「いや、知らないな」
虎太郎「美術室にでっかい鏡あるじゃん。あれに好きな人の名前を3回言うと、付き合えるって話。俺は信じてないけどね」
誠「それはロマンチックな話だな。さて今日は67ページの『白いぼうし』から読むぞ」
 虎太郎、慌ててランドセルを漁る。
 呆れたように笑う誠。
 誠、黒板の方を向き、考え込む表情。
   
◯同・2F・4年生教室(夕)
 虎太郎、机に突っ伏し眠っている。
 目を覚まし、周りを見渡す。
虎太郎「誰か起こしてくれてもいいじゃんよ」
 外は日が落ちかかっている。
虎太郎「うわ、暗っ!」
 慌てて、教室から出ていく。
   
◯同・廊下(夕)
 虎太郎、何かに気がついた素振りでびくりと立ち止まる。つきあたり右側の美術室の扉がピシャリと閉まる。ゴクリと喉を鳴らし、美術室前まで恐る恐る屈みながら進む。ドアの前に着くと、ゆっくりと扉を開ける。

◯同・美術室(夕)
 蛍光灯がチカチカ光っている。
 誠、窓際の大きな鏡前に立っている。
誠「七谷澪、七谷澪、七谷澪。なんちゃって」
 誠、くるりと後ろを向く。
 廊下から覗く虎太郎と目が合う。
虎太郎「まじ?」
誠「虎太郎、これは違うんだ」
 虎太郎美術室に入り誠に近寄っていく。
虎太郎「まさか呪いのつもりじゃあ?」
誠「違う違う。本当に好きなんだ」
虎太郎「ふーん、あの姉ちゃんをねぇ」
誠「ヤバいよな。18歳も離れてるし、俺バツイチだし」
虎太郎「たった一個かよ。先生俺にはもっとバツつけるじゃん」
誠「もっと勉強しよな。いや、とにかくだな」
虎太郎「いつ告白すんの?姉ちゃん彼氏いないぜ」
誠「告白なんてしないよ。七谷先生からしたら俺はお父さんみたいな年齢で」
 虎太郎、遮るように
虎太郎「でも好きなんだろ?」
誠「好きというか気になっているというか」
 虎太郎、サムズアップを突きつけて
虎太郎「おっけ、あとは俺に任せといて!」
 誠、怪訝な顔をする。
恭平の声「丹生先生?」
 美術室前の廊下に恭平が立っている。
恭平「あと七谷くん?どうかしました?」
誠「ああ、いえ、七谷が美術室に忘れ物をしたというんで、一緒に探してたんですよ」
虎太郎「丹生先生ごめん、俺の勘違いだった!」
誠「次から気をつけるんだぞ〜」
 誠、虎太郎の頭にゆっくりコツンと拳を当てる。虎太郎とわざとらしく笑い合う。恭平一瞬ポカンとするも、すぐに微笑みながら誠を見つめる。

◯七谷家・外観(朝)
 二階建てで木造建築の味がある家。

◯同・門柱前(朝)
 誠、スマホを片手に不安げな表情。

◯同・虎太郎の部屋(朝)
 虎太郎、窓の外から誠を見る。
 手に持つスマホに向かって
虎太郎「こちら虎太郎!先生、そろそろ姉ちゃん、家出るよ!」

◯同・玄関・中(朝)
 澪、たたきで足にヒールを入れている。
澪「虎太郎〜外で待ってるね〜」
虎太郎の声「オッケー!」

◯同・玄関・外(朝)
 澪、ガラガラと戸を開けて外に出る。
 誠、七谷家前をゆっくり歩く。澪、誠に気が付く。
澪「え、丹生先生!おはようございます!」
誠「七谷先生!おはようございます。こりゃ奇遇ですね!いつもこの時間に?」
澪「はい。先生は?」
誠「いつもはもっと早い時間に出るのですがね。昨日はハライチのターンというラジオのせいで夜更かししてしまって」
澪「え?先生もハライチのターン聴いてるんですか!私も大好きなんです」
 玄関の扉が開き、虎太郎が出てくる。
虎太郎「に、丹生先生、なんでいるんだい!?」
誠「たまたま通りかかってね」
澪「虎太郎早くいくよ」
 虎太郎、鼻を人差し指でこすりながら
虎太郎「4年生にもなって姉貴と登校できっかよ!あばよ」
 虎太郎ダッシュで誠の横を通り過ぎる。
 通り過ぎる瞬間、ウインクをする。

◯歩道(朝)
 澪と誠が並んで歩いている。
誠「そういえば、再来月の劇は大丈夫そうですか?」
澪「何も決まっていなくて。丹生先生は?」
誠「僕もです。来週にでも宝塚を観に行って参考にしようかなと」
 澪、目を輝かせる。
澪「私、宝塚大好きなんです!」
 誠、わざとらしいくらい目を見開き
誠「すんごく奇遇ですね!良かったら一緒に行きませんか?」

〇校門前(朝)
 誠と澪が仲良く話している。
 恭平が誠と澪に近づく。
恭平「お二人が一緒とは珍しいですね」
 驚く誠と、恭平を見つめ嬉しそうな澪。
澪「丹生先生と劇の参考に、宝塚を観に行くことになったんです!」
恭平「宝塚を参考に。それはまたユニークな」
澪「弓削先生も行きませんか?」
 驚く誠。恭平、誠をちらりとみやる。
恭平「僕はまたの機会で。お2人で楽しんできてください」
 残念そうな表情の澪。
 澪を見て、複雑な表情の誠。

◯職員室(夜)
 誠、1人残って作業をしている。
 スマホが鳴り、煩わしそうに出る。
虎太郎の声「先生!姉ちゃんとうまくいったみたいだな!」
誠「虎太郎のおかげだよ。でも本当に俺みたいなおっさんと行っていいのかな」
虎太郎の声「なんで?」
誠「七谷先生、弓削先生誘ってたからさ」
虎太郎の声「あの爽やか7:3野郎か」
誠「こら!野郎なんて言うな」
虎太郎の声「事実しか言ってないじゃん」
誠「七谷先生、弓削先生と行きたいんじゃ」
虎太郎の声「あ、やべ明日の宿題、教室だ!」
 スマホからドタバタと音がする。
誠「聞いてる?先生の悩み」

◯廊下(夜)
 虎太郎歩いて来る。ふと気がついたように立ち止まる。つきあたり右側の美術室の扉が閉まる。ニヤリと笑う。
虎太郎「何回やっても意味ねぇって」
 美術室前まで屈みながら進む。
 少しずつ美術室の扉を開ける。

◯美術室(夜)
 恭平、窓際の大きな鏡前に立っている。
恭平「丹生誠丹生誠丹生誠。何やってんだか」
 恭平、くるりと後ろを向く。
 廊下から覗く虎太郎と目が合う。
虎太郎「何も聞いてません見てません」
恭平「七谷くん」
 恭平、虎太郎に近づいていく。
 怯えた表情の虎太郎。

この脚本を購入・交渉したいなら
buyするには会員登録・ログインが必要です。
※ ライターにメールを送ります。
※ buyしても購入確定ではありません。
本棚のご利用には ログイン が必要です。

コメント

  • まだコメントが投稿されていません。
コメントを投稿するには会員登録・ログインが必要です。