ブリージング ドラマ

駆け出しの放送作家である穂高真嗣(26)は流行る事に関しての勘は誰よりも自負していた。穂高が流行ると確信した『就活生のSNS調査会社』の題材が会議で没になった帰り道、コンビニ店員の大学生の態度に腹を立て、『就活生のSNS調査会社』の取材を自ら申し出る。調査会社では、頂き女子、出会い厨など学生の問題行動を調査し、リスト化、企業に提供していた。そこで働いていたのは家出少女の紗耶(17)であった。穂高は紗耶を取材するが、話すらしてもらえない。
M.K. 17 0 0 08/19
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第一稿

<登場人物>
穂高 真嗣(26)   フリーランスの放送作家
紗耶   (17)   グレイのアルバイト

石崎 竜司(32)   グレイ社長

春田 和也(27)   ...続きを読む
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<登場人物>
穂高 真嗣(26)   フリーランスの放送作家
紗耶   (17)   グレイのアルバイト

石崎 竜司(32)   グレイ社長

春田 和也(27)   穂高の友人
金井 涼子(28)   喫茶店の店員

実松 秀徳(48)   テレビのプロデューサー
瀬古 純希(24)     〃 スタッフ
山下 陽翔(22)     〃 スタッフ

佐藤 真夏(17)   女子高生
原田 智則(23)   真夏の恋人
小野 拓実(21)   地下アイドルオタク

少女
インタビュアー
アナウンサー
コメンテーター
店員
ミナト
女将
友希

<本文>
○テレビ画面・ドキュメンタリー映像
   目線にボカシが入った少女がインタビューを受けている。
少女「貰える物は貰っとくみたいな?別にくれるんだから良いでしょって感じ」
インタビュアー「相手はどう思ってるの?」
少女「知らんけど、若い子と喋れてヤッターとかなんじゃない」
インタビュアー「(ピー)さんはどう思う?」
少女「えー、何とも思ってないよ。あざっすとか?でも感謝してるよ、居ないと
 生活できないし」

○同・ニュース・スタジオ
アナウンサー「こう言った頂き女子と言われる若者が増える中で、危険があるの
 も事実です」
コメンテーター「頂き女子なんて援交とかパパ活の言葉変えただけでしょ。ホテ
 ル横でどんちゃん騒ぎしたりさ、将来の為に何にもならないんだからやめた方
 がいいよね」

○テレビ局・会議室
   会議終わりの散らかった室内、テレビのニュースを見る穂高真嗣(26)
   と実松秀徳(48)。
実松「もうちょい攻めたいな、ネットに勝てんわ」
穂高「倫理ですか」
実松「なんか良いネタないの」
穂高「いや……ないですかね」
実松「そ、あと頼むわ」
   と、出て行く。
   穂高、部屋を片付ける。

○居酒屋・中(夜)
   カウンターに座る穂高と春田和也(27)、二人の間に日本酒が置いてあ
   る。
穂高「なんで無洗米はあるのに、洗わなくていい炊飯器はないんだろう」
春田「ケツ使ったら拭く。だからだろ」
穂高「頑張ってくれよ、技術者の皆さんよ」
春田「頑張るのはお前だろ」
穂高「時短は大事だ」
春田「時間作っても、良い題材に出会えるかは別の話だからな。Pがクソの可能
 性もある」
穂高「プロデューサー駄目なの?」
春田「こっちがどんなに企画出しても、発言してくれてないらしい」
穂高「大変そー。広告業界知らんけど」
春田「フリーはどう?慣れた?」
穂高「実松さん頼み」

○駅前・広場(夜)
   酔った穂高と春田が歩いてくる。
   二人の前方に大学生の集団が見える。
   大学生の手には酒の缶。
穂高「どこで誰が見てるのか知れないのに、よくやるね」
春田「ほんとよ。取材してきたら?」
穂高「いい、いい。ピンとこないし」
春田「作家の勘ってやつだ」
穂高「バズる予感は分かるのよ」
   近くのベンチで大学生集団を見る紗耶(17)、手にはタブレット。
   穂高のスマホに実松からの着信。
穂高「(電話に出て)はい、お疲れ様です」
実松「(電話越し)今日の資料なんだけど、どこに置いた?」
穂高「それなら自分が持ってます」
実松「(電話越し)至急持ってきてもらえる」
穂高「分かりました。局ですか?」
   春田、先帰るとジェスチャー。
   穂高、手を挙げて応じる。

○テレビ局・会議室(夜)
   ホワイトボードに企画が書かれている。
実松の声「サンキューね」
穂高の声「近かったんで、良かったです」
   パソコン作業をする実松、穂高から資料を受け取る。
実松「なかったっけなー、潰れそうなパン屋」
穂高「真ん中辺りにあった気がします」
実松「(資料をめくって)これだこれだ」
   穂高、ホワイトボードが目に入る。
穂高「何追うんですか?」
実松「名前を変えて進化する若者の実態」
穂高「援交、パパ活、頂女子ですか」
実松「そう。似たような感じの」
   『就活生のSNS調査会社』の文字が横線で消されている。
穂高「就活生のやつ良さそうですね」
実松「だよな。やっぱそれだよな」

○コンビニ・外(夜)
   中に入って行く穂高。

○同・中(夜)
   カップ麺をレジに置く穂高、振り返って店員を探す。
   店内は雑誌売り場でタブレットをいじる紗耶、他の店員の姿はない。
   穂高、レジ奥を覗き込む。
   レジ奥にも店員は居ない。
穂高「すいませーん」
   店員の笑い声が微かに聞こえる。
   待ちぼうけする穂高、身を乗り出し、
穂高「すいません!」
   奥から来る店員、レジ打ちを始める。
店員「百四十九円になります」
穂高「(店員を見る)」
店員「(……?)」
穂高「袋」
店員「あー、袋。百五十二円です」
   と、商品を袋に詰める。
   穂高、雑に代金を支払う。
穂高「箸も」
   店員、雑に袋に箸を入れる。
   レジ袋を奪い取る穂高、店を出る。
   店員、レジ奥に戻って行く。
   店員たちの笑い声が響く。
   タブレットをいじる紗耶。

○アパート・外(夜)
   階段を上がって行く穂高。
穂高「実松さん、夜分遅くにすみません。さっきの就活生のやつ、自分が取材行
 ってもいいですか?」
実松「(電話越し)いいけど、個人的にって事になるよ」

○雑居ビル・外
   穂高、辺りを物色しながら入って行く。

○同・廊下
   窓から薄明かりが差し込む。
   穂高の懐にカメラバック。
   埃の被った自転車、積み重なった段ボール。
   口元を押さえながら歩く穂高、突き当たりのドアの前で立ち止まる。
   『タケウチ』の名刺。
   穂高、三回ドアをノックする。
   反応が無い。
   穂高、静かにドアノブを回して中を覗く。

○同・グレイ
   ゆっくりとドアが開き、穂高が顔を覗かす。
   ゲーミングチェアに座る石崎竜司(32)、スマホゲームをしている。
   穂高、部屋の奥を覗く。
   ソファーに座る紗耶、タブレットをいじっている。
   穂高の視線に制服、警官などのコスプレ服。その下にSMグッズ。
石崎「(女っぽく)すごーい。ミナト君のカバーで助かっちゃった。えへっ」
ミナト「(スマホ)ユイちゃんは俺が守るよ」
石崎「(女っぽく)ミナト君、本当にカッコいい。好き」
ミナト「(スマホ)俺も好きだよ。ユイちゃんしか居ないから。マジ付き合いた
 い。ちゅき」
   笑いを堪える石崎、スマホをミュートにする。
石崎「ははははははは。気持ちわるぅ。この十六歳ヤバいね」
紗耶「(高速でタブレットをいじる)」
石崎「カテゴライズは、ちゅきちゅき繋がり厨にしよう」
紗耶「オンライン出会い厨だから。ノリで決めないで」
石崎「備考には書いといてよ。ビビッときたんだから」
   ドアを閉める穂高、
紗耶「来た」
   の声で動きを止める。
石崎「見たい見たい見たい」
   と、紗耶のタブレットを覗き込む。
   垢抜けてない男子高校生の画像。
石崎「コイツめっちゃ芋じゃん。本名ジロウだし。これで五股かー。キツ」
紗耶「追加した」
   と、顔を上げると穂高と目が合う。
紗耶「……何?」
石崎「何が?」
   紗耶、部屋の奥に隠れる。
   ドアが閉まる。

○同・廊下
   立ち去る穂高、実松に電話をかける。
電話「現在電話に出る事ができません」
穂高「マジか」
   ドアから顔を出す石崎。
石崎「どうしました?」
穂高「(苦笑い)間違いました。かな」
石崎「……実松さんの?」
穂高「そうです。タケウチさん?」
石崎「いえ、イシザキです。訳あってタケウチ名乗ってました」
穂高「そうなんですね」
   と、苦笑い。

○同・グレイ
   紗耶、陰から石崎の背中を見つめる。

○居酒屋・中(夜)
   食べかけのステーキ肉。
   春田、ビールを一気に飲み干す穂高を見ている。
春田「良い飲みっぷりだこと」
穂高「勝ち企画さん、出会っちゃいました」
春田「先越すなよ。どんな感じ?」
   穂高、辺りを見渡す。
   五十代の男性と未成年と思われる少女が腕を組んで入って来る。
穂高「入口見ろ」
春田「うわ、絶対援じゃん」
穂高「あの子を未来で裁く会社かな」

○雑居ビル・グレイ
   あくびをしながら入って来る穂高、ナースとバニーガールで悩む石崎と紗
   耶が目に入る。
   穂高、そのままUターンして出て行く。

○同・廊下
   穂高、ポケットに手を入れる。
   ドアを開ける石崎。
石崎「どうしました?入んないんですか?」
穂高「お邪魔かなって」

○同・グレイ
   爆笑する石崎、ゲーミングチェアでくるくる回る。
   紗耶、ソファーで外方を向く。
   丸椅子に座る穂高、部屋を見渡す。
石崎「作家さんは発想が一味違うね」
穂高「状況が状況なだけに」
石崎「奥が深いよ、この会社は」
穂高「早速、取材してもいいですか?」
   と、カメラを出す。
   紗耶、奥に入って行く。
石崎「今はカメラ無しでお願いします」
穂高「すみません。いい時教えてください」
   穂高、ソファーに置かれた高卒認定試験の本が目に入る。
石崎「説明しますね」

○ビジネスホテル・横
   紗耶のタブレット。
石崎の声「学生のデータ収集が主です。SNSでイキってたり、裏アカなんかで
 ヤバい事してる、しそうな人の個人情報を特定してリスト化し、企業に提供し
 ています」
   地雷メイクをした女の子の集団が歩いて来る。
   ピンク髪の女の子、酒瓶を持っている。
   タブレットを向ける紗耶。
   穂高、カメラを向ける。
紗耶「はぁ?」
   女の子集団、カメラを持った穂高を不審がる。
   紗耶の画角に通りすがりの人が映り込み、上手く撮れない。
   一斉に逃げ出す女の子の集団。
   呆気に取られる穂高、振り返る。
   紗耶、無言で立ち去る。
穂高「なんでー?」

○雑居ビル・グレイ
   ドアが勢いよく開き、紗耶が入って来る。
   驚く石崎、パソコン画面を閉じる。
石崎「どしたの?」
紗耶「あの人無理」
石崎「取材だから」
紗耶「カメラでかい。分かってない」
石崎「何でも否定しない。ちゃんと伝えた?」
紗耶「……」
石崎「穂高さんは?」
紗耶「ホテル横」
石崎「連絡しとくから、キセルオタク行って」

○同・外(夜)
   トボトボと歩いて来る穂高、右手にはカメラバック。
   腰を叩きながら歩いて来る石崎と鉢合わせる。
石崎「お疲れ様です。紗耶がすみません」
穂高「こちらこそ邪魔しちゃったみたいで」
   と、バックからカメラを取り出す。
   穂高、石崎にカメラの画面を見せる。
   カメラの画面にピンクの髪の女の子。
石崎「さすがです。ピントも完璧」
穂高「フォーカス合わすの得意なんですよ」

○地下鉄・改札前(夜)
   ベンチに座る紗耶、高卒認定の本を見ている。
   紗耶の前を通り過ぎる女子高生二人、談笑している。
   紗耶、女子高生二人を目で追う。

○雑居ビル・グレイ(夜)
   パソコン画面のロックが解除される。
   パソコンを見る穂高と石崎。
穂高「あの子は従業員?」
石崎「紗耶ですか?バイトみたいな感じ」
穂高「バイト?」
石崎「住み込みの」
穂高「高校行ってないですよね」
石崎「気付きました?」
穂高「高卒認定の本を読んでいたので」
石崎「色々あるのかな、知らないけど」
穂高「最近は干渉しない方が普通ですもんね」
石崎「普通が何か分からないけど、これでも努力したよ。最初に比べると」
穂高「最初……」
石崎「取材する方は距離を詰めるのが上手いイメージだから、簡単ですよね」
穂高「(苦笑い)」

○喫茶店・中
   パソコン作業をする穂高。
   金井涼子(28)、コーヒーを出す。
涼子「お待たせしました。コーヒーです」
穂高「ありがとうございます。店長は?さっきまで……」
涼子「振興組合のゴルフに」
穂高「あー」
涼子「娘の涼子です」
穂高「常連の穂高です。最近の女の子が好きな食べ物って分かります?」
涼子「私、最近の若い子って感じでもないんだけどな」

○地下鉄・改札前(夜)
   ベンチに座る紗耶、タブレットを向けた先に大学生。
   大学生が改札を抜ける瞬間、穂高が紗耶の前に立つ。
穂高「好きな食べ物ある?」
   紗耶、タブレットを下げる。
   キセル乗車した大学生が遠ざかる。大学生の後ろに小野拓実(21)が続
   く。
穂高「聞いてる?」
   紗耶、無言で貧乏ゆすり。
   穂高、紗耶の隣に座る。
穂高「色々買ったんだけどさ、何が好きとか分からなくて」
紗耶「要らないから」
穂高「時間かかりそうだし、食べた方が良くない?」
   と、アンパンを出す。
   紗耶、アンパンを手で払う。
紗耶「ずっと待ってれば偶然出会えるとかじゃないから。調べた結果で来てるか
 ら」
   紗耶のタブレットの画面が切れる。

○居酒屋・中(夜)
   アンパンとヨーグルトが置かれている。
春田「持ち込み有りだっけ」
穂高「店長がいいってよ」
春田「張り込みでもしてた?」
穂高「最近の若い子は分かんねぇわ」
春田「それは歳のせいだな」
穂高「うるせ。好みとか流行りとかピンとこないんだ」
春田「調べたら出てくるでしょ」
穂高「流行り廃りが早すぎて、一月経つと映えが変わってるんだ」
春田「適当に歩いて目に入った物が流行りだ」
穂高「名言っぽく言うなよ」
春田「若い子より同世代ってな」
穂高「同世代な。あの喫茶店の娘、綺麗だったよ。たぶん同世代」
春田「会ったの?涼子ちゃん」
穂高「なんで知ってんだよ」
春田「会ってみたくて通い詰めたからな。結果オール店長」
穂高「運悪」

○雑居ビル・廊下
   アイドルソングが流れている。

○同・グレイ
   パソコン画面にアイドルのライブ映像。
   画面を見ながら踊る石崎。
   紗耶、ライブ映像を止める。
紗耶「うるさい」
石崎「これから落ちサビなのに。イエッタイガー!」
紗耶「(石崎を睨む)」
石崎「反抗期でちゃった?」
紗耶「あの人、無理」
石崎「えー、良い人じゃん」
紗耶「話したの?」
石崎「話すよ。向こうも聞きたい事あるだろうし」
紗耶「ありえない」
石崎「それでも上手くやってね。俺もやってくるから」
紗耶「クズ」

○商店街・コンコース
   店を見ながら歩く穂高、マカロン店の前で立ち止まる。

○マカロン店・中
   マカロンが並ぶショーケースに穂高の顔が映る。
穂高「オススメを三つずつください」

○雑居ビル・グレイ
   紙袋を持った穂高が入って来る。
   ソファーでタブレットをいじる紗耶。
穂高「石崎さんは?」
紗耶「……」
穂高「……ですよね。マカロン買って来たんだけど食べる?」
紗耶「甘いの嫌い」
穂高「勉強に糖分大事」
紗耶「……」
穂高「高卒認定って四択とか五択だったよね」
   と、高卒認定の本を手に取る。
穂高「テストで鉛筆転がして決めるみたいな事やったなー、懐い」
紗耶「勝手に触らないで」
   穂高、本を開くと、びっしり線とメモが書かれている。
穂高「ごめん、ごめん」
紗耶「そもそもシャーペンだから」

○ホテル街
   不定期に点滅する看板。
   早歩きの紗耶。
   紗耶を追いかける穂高。
紗耶「付いて来ないでもらえます」
穂高「仕事の取材だから」
紗耶「ストーカーで登録しますよ」
   と、タブレットを向ける。
   穂高、咄嗟にカメラを向ける。
   カメラ画面に映る紗耶の画角が少し歪む。
紗耶「撮るなし」
穂高「そっちが先じゃん」
紗耶「……」
穂高「たまには撮られる側になってみたら?」
紗耶「無理」
穂高「何で」
紗耶「……化粧薄いし」
穂高「そんなこと気にしなくても」

○喫茶店・中
   涼子の笑い声。
   落ち込む穂高が座っている。
涼子「後で修正するって、とんでもなく失礼だから」
穂高「加工フィルターなんて普通のカメラに入ってると思います?」
涼子「光の加減、角度、フィルター、複雑なんだから。フォルダが自撮りだら
 け」
穂高「涼子さんも?」
涼子「私だって自撮りくらいするんだから」
穂高「よく撮れてると思うんですけどね」
   と、カメラを見せる。
涼子「可愛い。この子はマカロンが好きね」
穂高「(吹き出して笑う)」

○焼肉屋・中(夜)
   ビールジョッキ。
   対座する穂高と実松。
穂高「実松さんって、年齢離れてる人とどんな会話します?」
実松「人にもよるけど、休日の過ごし方とか聞くこと多いな」
穂高「休日」
実松「休日だけは、その人のプライベートだから。意外と内面知れる」
穂高「なるほど」
実松「人って難しいよね、不確定だから知って楽しい部分もあるんだけど。食べ
 ちゃって、焦げるから」
穂高「はい、食べます」
実松「知らなくていい事もあるし」

○ホテル街・ラブホテル・前
   看板の陰に穂高と紗耶、向かいのラブ
   ホテルを監視している。
穂高「休日は何してるの?」
紗耶「仕事中だから」
穂高「まだ来ないんでしょ。石崎さんから聞いてるよ」
紗耶「休日は勉強」
穂高「遊んだりしないの?友達とか」
紗耶「やる事あるから」
穂高「パパ活?」
紗耶「するわけないでしょ」
穂高「冗談だって。笑ってよ」
紗耶「あんなのする人たちで笑えないから」
穂高「否定的なんだね」
   向かいのラブホテルから年寄りと女子大生が出てくる。
   紗耶、タブレットで写真を撮る。
紗耶「わざわざアカウント作って、胸見せて、連絡きた人にキモい言葉で甘える
 とか、ありえないでしょ。それを一人でやってるって、気持ち悪い」
穂高「過去に嫌な事されたの?ってぐらいに言うね」
紗耶「めっちゃ調べてるから」
穂高「努力の証か」
紗耶「どう見られてるか気付けないバカ女」
   穂高、ラブホの看板に視線を送る。
   ラブホの看板に『秘密の二人の映えた世界』の文字。
   紗耶、目を丸くする。

○雑居ビル・廊下
   紗耶を追いかける穂高。
穂高「そんな怒るなよ」
紗耶「気持ち悪いから。付いて来んな」
穂高「一緒にして悪かったって」
   紗耶、グレイに入って、鍵を閉める。
   立ち止まる穂高。
石崎の声「いつかの自分を思い出すなぁ」
   穂高の後ろに石崎が立っている。
穂高「お疲れ様です」
石崎「一服しましょ」

○同・外
   缶コーヒーの蓋が開けられる。
   缶コーヒー片手に壁に寄りかかる穂高と石崎。
石崎「ブラックなんだ」
穂高「甘い成分が入ると苦手で」
石崎「逆だ。甘くないと飲めない」
穂高「紗耶ちゃん?さん?と、どうやって仲良くなったんですか?全然、近寄れ
 ない」
石崎「えー、分からん。お腹鳴って、出前頼んだら話してくれるようになった」
穂高「……単純」
石崎「ヒーローになったらいいのかもね。白馬の王子様になるとか。貸そうか?
 コスプレ」
穂高「金輪際口聞いてくれなくなりますよ」
石崎「(笑って)良い内容の為に頑張って。僕からも言っとくけど」
穂高「お願いします」
石崎「良い内容が、会社の評判を上げるんだ」
穂高「……」

○同・グレイ
   ドアノブが回る。
   石崎、ゆっくりと入ってくる。
   ソファーで勉強している紗耶。
石崎「仲良くしてよ。鍵まで閉めて」
紗耶「すぐ開けたし」
石崎「穂高さんの仕事にならないでしょ」
紗耶「石崎の方を取材させればいい」
石崎「こっちを見せられるわけないよ」
紗耶「あの人、ぐいぐい来る」
石崎「来ない方法教えてあげよっか」
紗耶「なに?」
石崎「こっちから行けばいいんだよ」

○居酒屋・中(夜)
   顔を伏せる穂高、項垂れる。
   春田、気にせずにビールを飲む。
春田「寝てると思われるの嫌だから、顔上げてくれない?」
穂高「(起き上がる)」
春田「飲めよ」
穂高「マカロンしか勝たん」
春田「……」
穂高「ってか、俺、男だし……辞めよっかな」
春田「やっと出会った勝ち企画なんだろ」
穂高「辞めないけどさ」
春田「面倒臭いな」
穂高「面倒臭いやつなんだよ」
春田「とりあえず頑張ろうぜ」
穂高「運を天に任せるか」

○雑居ビル・外
   穂高と紗耶が向き合っている。
穂高「何?」
紗耶「(一歩近づいて不敵な笑み)」
穂高「……」
紗耶「手伝って」
穂高「お、おう」
   と、微笑む。

○ラブホテル・一室
   脱ぎ散らかった男女の服。
   ナース服を着た佐藤真夏(17)がベッドでスマホをいじる。
   散らかった服から自分の服を着る石崎。
真夏「この後、何人とやるの?」
石崎「二人かな」
真夏「ヒナが二回撮られてもいいよ」
石崎「そんなに要らないよ」
真夏「何それー、つまんなー。ヒナが一番気持ちいって言ってたくせに」
石崎「それな」
真夏「適当かよ」

○雑居ビル・グレイ
   パソコン画面に真夏の顔写真。
   パソコン作業をする穂高、タブレットを見ながら入力している。
穂高「んなことだとは思ったけどさ、どんだけ居るんだよ」
紗耶「多分もっと居る」
穂高「十七って、将来が心配だわ」
紗耶「自業自得」
穂高「気付かぬうちに裁かれてるなんて、末恐ろしいな」
紗耶「自分で稼ぐ努力しないからよ」
穂高「高卒認定頑張ってるもんね」
紗耶「別に普通だし」
穂高「素直じゃない」

○喫茶店・中
   入って来る穂高、鼻歌を歌う。
   カウンター席で涼子と話す春田が居る。
   穂高、春田の隣に座る。
涼子「コーヒーでいい?」
穂高「はい。仕事は?」
春田「打ち合わせ終わりに寄ってみた」
穂高「ふーん」
春田「良い事でもあった?」
穂高「あ、分かっちゃう」
春田「と言いたいところだが、今日は俺の企画が通りまくった最高の一日だ」
穂高「良かったじゃん」
春田「やっと頑張りが認められたんだ」

○駅前・広場
   腰を叩きながら歩く石崎、通り過ぎる穂高を呼び止める。
石崎「穂高さん」
穂高「おお、石崎さん」
   × × ×
   ベンチに座る穂高と石崎。
石崎「紗耶と上手く行きました?」
穂高「一歩近づいたって感じです」
石崎「その調子で同世代とも仲良くなって欲しいんだけど」
穂高「友達居なさそうですよね」
石崎「居ないね。彼女なりに努力してるっぽいけど」
穂高「全然見えない」
石崎「高卒認定。あれ取れば、大学行って、いつでも友達作れますけど。って意
 味なんだって」
穂高「作らないだけのスタンス」
石崎「自分の力量で何とかなるほど、世の中簡単じゃないよね」
穂高「運ってやつですか」
石崎「待ってるだけじゃダメってやつ」

○地下ライブハウス・中(夜)
   アイドルのライブを見る穂高と紗耶。
   × ×  ×
   (フラッシュ)
石崎の声「オタクは危険なんだから、注意すること。忘れてないよね」
   × ×  ×
   一番前で小野が見ている。
   × ×  ×
紗耶の声「転売、不正アクセス、SNSでの過激な発言、ネトスト」
穂高の声「溜まって騒ぐやつだろ、ゴミ問題で話聞いた事ある」
紗耶の声「全員が全員そうじゃないけど」
   特典会中、アイドルとオタクがチェキを撮っている。
   隠れて写真を撮る紗耶、若いオタク狙う。
   列に並ぶ穂高、スマホを胸に構える。
   壁に寄りかかる紗耶を見つける小野、微笑んで唇を舐める。

○同・外(夜)
紗耶「くっさいなー」
   と、深呼吸する。
   穂高、自分の匂いを嗅ぐ。
穂高「俺も同じ匂いする?……どう?」
紗耶「止めて、気持ち悪い」
穂高「ごめん。やっぱトイレ。待ってて」
紗耶「(呟く)おじさん」

○近くの路地裏(夜)
   壁に寄りかかる紗耶、地面を見る。
   紗耶の口が塞がれる。
   暗闇に引きずられていく紗耶。

○地下ライブハウス・外(夜)
   手の水滴を飛ばしながら来る穂高、紗耶を探す。

○近くの路地裏(夜)
   紗耶に馬乗りする小野、口を塞ぎ、上着を脱がす。
   抵抗する紗耶、涙目になる。
小野「あー、かわいい。感じてる?」
   と、太ももを触る。
   紗耶、目をギュッと瞑る。
穂高の声「おい!何してる!」
   小野がライトで照らされる。
   紗耶の視線の先に立つ穂高、カメラを持っている。
小野「撮ってんじゃ……」
   穂高の後ろをたくさんのオタクが通り過ぎる。
小野「クソ!」
   と、走り去る。
   怯える紗耶、上着を着直す。
   穂高、紗耶に自分の上着を掛ける。
紗耶「……ありがと。でも、これ臭い」
穂高「おい」

○道路(夜)
   並んで歩く穂高と紗耶。
紗耶「アイツは私が何とかするから。石崎には言わないで」
穂高「何とかって」
紗耶「オタクの弱点知ってる」
穂高「分かった分かった。二人だけの秘密な」
紗耶「そういうのキモい」
穂高「キモい言うな」
紗耶「(微笑む)」
穂高「ベタなやつ言っていい?」
紗耶「?」
穂高「あっ(微笑む)」
   紗耶、穂高のスネをける。

○雑居ビル・グレイ(夜)
   紗耶と穂高が入って来る。
   マカロンを食べながら腰を回す石崎。
石崎「おっ、ただいまー。紗耶の好きなマカロン置いてあったよー」
紗耶「(咄嗟に)はい?」
穂高「好きなんだ」
石崎「特にピンクが好きなんだよね?」
紗耶「知らんし」
石崎「そう。なんか汚れてるよ」
穂高「えーっと」
紗耶「(遮って)転んだ。腰痛い」
石崎「一緒じゃん。俺も腰が……丁度いいじゃん、銭湯行ってきなよ、二人で
 さ」
穂高「え?」
紗耶「勘違いしないで」
石崎「保護者枠です」

○銭湯・男湯(夜)
   湯船に浸かる穂高、顔を洗う。

○同・女湯(夜)
   シャンプーの入ったカゴ、中に小型カメラが隠されている。

○同・外(夜)
   紗耶のタブレット、小野の顔写真、家、住所がネットに晒されている。
   『こいつが噂の強○男』『しゅかのオタクまともな奴いない』のコメン
   ト。
   首にタオルを掛けた穂高、手にモナカアイス。
穂高「お待たせ」
紗耶「遅い」
   モナカアイスが半分に分けられる。

○道路(夜)
   モナカアイスを食べる穂高と紗耶。
穂高「モナカって一人だと多くない?」
紗耶「別に」
穂高「最後一列がしんどくてさ。分ける相手がいる時、専用のアイスなんだよ
 ね」
紗耶「なんか嫌」
穂高「誰なら良いんだよ。やっぱ友達か」
紗耶「まあ」
穂高「居ないだろ」
紗耶「うるさい」
穂高「紹介しよっか?」
紗耶「どうせ年上でしょ」

○雑居ビル・グレイ(夜)
   パソコン作業をする石崎、ドアの音で外面をスリープさせる。
   入って来る紗耶と穂高。
石崎「さっぱりだね。預かるよ」
   と、紗耶からシャンプーの入ったカゴを受け取る。
   穂高、カゴに入ったカメラに気づく。
穂高「待った」
石崎「はい?」
   穂高、石崎の胸ぐらを掴む。
   石崎の手から小型カメラが落ちる。
   地面に転がる小型カメラ。
穂高「やったんですか」
石崎「やってますね」
穂高「やらせてた?」
石崎「はい」
紗耶「止めて。やったのは私」
   穂高、石崎を突き飛ばす。
   パソコンに石崎が当たり、画面が付く。
   パソコンにAVの編集画面。
   頭を掻く穂高、立ち去る。

○居酒屋・中(夜)
   穂高、一人飲み。
   駆けつける春田、隣に座る。
   食べかけの枝豆。
春田「通報だな。証拠は十分」
穂高「それが、とある女の子の居場所を奪っても?」
春田「てもだろ」
穂高「本当は、やらされてただけかもだし」
春田「裏で何があるとか知らないし、その女の子がどんな状況で、どんな事情が
 あるにせよ、全て犯罪の上の行動だから」
穂高「このまま通報して終わりって感じでもないんだよ」
春田「売れないフリーランスが出会ったのは、居場所を守るために嘘をつく女の
 子……放って置けない感情が芽生え」
穂高「おい、茶化すな」
春田「飲みと作品は楽しくないと」

○アパート・穂高の部屋(夜)
   暗い部屋にパソコンの明かりが見える。
   穂高、パソコンに映るグレイの映像を見ている。
   パソコンに石崎のインタビューが映る。

○テレビ局・会議室(朝)
実松「良くないね」
   パソコンを見る穂高と実松。
実松「仮とはいえ、中途半端だね」
穂高「すみません」
実松「他人が見たい映像なんて偶然では撮れないよ。自ら動かないと」
穂高「はい」

○雑居ビル・グレイ
   ゲーミングチェアに石崎、落ち着かない紗耶が動き回る。

○同・外
   歩いて来る穂高、立ち止まる。
   出て来る紗耶と鉢合わせる。
紗耶「警察行くんですか」
穂高「(目を逸らす)どうだろ」
紗耶「(頭を下げ)大学に行きたいの」
   顔を歪ます穂高、紗耶の手を引っ張る。
   紗耶、手を振り解く。
穂高「大学行くんだろ」
   と、手を引っ張る。

○道路
   穂高、紗耶の手を引っ張っている。
紗耶「痛い!離して!」

○大学・前
   穂高、紗耶を大学の中に入れる。
紗耶「意味分かんない」
穂高「大学行きたいんだろ」
紗耶「高卒認定受かってからね」
穂高「違うだろ」
紗耶「はぁ?」
   スマホを取り出す穂高、耳に当てる。
   紗耶、穂高の電話を阻止する。
   穂高、紗耶を突き飛ばす。
   飛ばされて尻餅をつく紗耶。
穂高「嘘だけはつくなよ」
紗耶「……嘘じゃないし。嘘じゃない。嘘なんかついてない。嘘じゃないか
 ら!」
穂高「だから嘘つくなよ」
紗耶「あんたがそれ言う?仲良くなりたいとか言って、取材したいだけの人でし
 ょ」
穂高「別に、だけとか思ってない」
紗耶「仲良くなりたいが嘘じゃないんなら、友達として黙っててよ。無理だよ
 ね、黙ったら隠蔽とかになるんだから」
穂高「……」
紗耶「取材だけの人が、それ以上は入ってこないで。私の邪魔しないで!」
   と、立ち去る。

○喫茶店・中
   湯気の上がるコーヒー。
   涼子、雑誌を見ている。
   入って来る穂高、カウンター席に座る。
   涼子、穂高の頭に雑誌をポンと置く。
涼子「酷い顔。そんな顔じゃ、誰も笑ってくれないぞ」
穂高「顔見てないでしょ」
涼子「些細な変化も見逃さない。きちんと見てないとベストなコーヒーは出せな
 いの。味覚は感情によって変わるんだから」
穂高「感情が見えない人には?」
涼子「そんなの、笑顔でいらっしゃいませ。しかなくない?」
穂高「普通ですね。感情論とかで、ぶつかれって言うのかと思いました」
涼子「ぶつかっても分からない事もあるし、相手が本当に言って欲しい事なんて
 分かる訳ないから。まともな事を笑顔で言えば大抵良く聞こえるものよ」
穂高「(笑顔を見せる)参考にします。何の雑誌ですか?」
涼子「彼氏が旅行に連れてってくれるって言ってたんだけど、色々問題ある旅館
 っぽくて。そもそもホテル派だし」
穂高「彼氏居たんですね」
涼子「酷い」

○雑居ビル・グレイ
   穂高が買ったマカロン。
   パソコン作業をしている石崎。
石崎「あーあ、腐ってるじゃん」
   と、マカロンを捨てる。
男の声「確かに腐ってるな。お前」
   石崎、振り返る。

○カフェの前の道路
   立ち止る紗耶、カフェの中を覗く。
   カフェの中で談笑する女子高生集団。
   紗耶、立ち去る。

○雑居ビル・廊下
   ガラスの割れる音。

○同・グレイ
   入って来る紗耶、唖然とする。
   荒れ果てた室内に、血だらけの石崎。
   室内を物色する原田智則(23)とソファーに座る真夏。
   紗耶、石崎に駆け寄る。
原田「お宅の社長、俺の女に手出したんだよ。未成年と知ってて、裸も撮って」
真夏「マジ、キモかったー」
紗耶「同意した、アンタの責任でしょ」
原田「未成年の純粋な女の子が、おっさんに犯される恐怖を知らないから言えん
 しょ」
紗耶「被害者ぶらないで」
原田「被害者なんだよ。同意してないよな?」
真夏「うん。してなーい」
原田「俺たち優しいから、示談にしてやろうと思ってんのに、話さないんだよ」
真夏「変態おじさん、示談しよーよ」
紗耶「ここまでやったら」
原田「(パソコンを蹴る)んあ!」
紗耶「(ひるむ)」
石崎「(呟く)穂高さんは?」
紗耶「知らない」
石崎「(呟く)仲良くなってないの?」
紗耶「喋るな!」
石崎「(呟く)嫌いじゃないくせに」
   紗耶、パイプ椅子を持ち上げる。
原田「何?同罪じゃん?正当防衛じゃーん」
   と、机の鉄の脚を拾う。
   紗耶、原田に向かって行く。
   原田、床に鉄の脚を叩きつける。
石崎「(呟く)やめろ」
穂高の声「全然勉強してないのな。どおりでJKと話しが合わない訳だ」
   と、カメラを持って立っている。
原田「何撮ってんだよ」
穂高「今現在取材中でして」
原田「へー。この会社、社長マジ犯罪者っす」
穂高「知ってるよ。そのせいで素材が全部無駄になってんだ。つうか、ここにい
 るの全員犯罪者だろ」
原田「はぁ?」
穂高「インタビューしに来た。何とか紗耶!」
紗耶「……」
穂高「化粧とかは関係ない。助けてやるから正直に答えろよ」
原田「うるせえな!」
   と、カメラを奪いにかかる。
   原田と格闘する穂高。
穂高「大学に行きたいか?」
原田「黙れって言ってんだろ」
紗耶「……」
穂高「友達が欲しいか?」
紗耶「……」
穂高「友達が欲しいか!」
紗耶「……欲しい」
石崎「(微笑む)」
穂高「どんな友達が欲しい?」
紗耶「普通の、普通の友達がいい」
穂高「友達と何して遊ぶ?」
紗耶「何でもいい。流行ってる事とかしたい」
穂高「大雑把だな。グレイはどうする?」
紗耶「ないとダメ。ここがないと私の居場所がなくなる。私は……」
穂高「紗耶、お前の居場所はここじゃない」
紗耶「(俯く)本当に、ここしかないの」
穂高「ある!」
   と、原田を蹴り飛ばす。
穂高「(笑顔)警察署だ!」
紗耶「(笑いだす)まとも過ぎて笑える。言葉にセンスない」
穂高「うるせー」
   パトカーのサイレン。
石崎「(呟く)俺の高学歴……俺の膨大なデータ……」
穂高「石崎さん、少しだけいいですか?」

○テレビ画面・ニュース映像
   逮捕される石崎、原田の映像。
アナウンサー「準強制性行、児童ポルノ禁止法違反などで逮捕された石崎容疑者
 は、当時十七歳の少女に現金を渡し、猥褻な行為をした上で、その様子を撮影
 した疑いが持たれています。原田容疑者は、石崎容疑者に対し恐喝の上、現金
 を騙し取ろうとしました。原田容疑者は調べに対し、言い争っただけ正当防衛
 だ。と容疑を一部否認しています」

○テレビ局・報道フロア・副調整室
   実松が腕を組んで見ている。
   隣に穂高が立っている。
実松「いいね。やってくれると思ってた」
穂高「偶然ですよ」
実松「努力した結果でしょ。次も頼むよ」
穂高「ありがとうございます」

○山・外観
   緑生い茂る木々。

○山道
   回転するタイヤ。
   走行する白いバン。

○同・白いバン・中
   荷台に積み込まれた撮影機材。
   運転する山下陽翔(22)。
   助手席の瀬古純希(24)、スマホを見ながら道案内する。
瀬古「ここから真っ直ぐで見えて来る」
山下「そろそろ交代してくださいよ」
瀬古「帰りは運転するから」
山下「そもそも遠すぎなんですよ」
   後部座席でカメラをいじる穂高。
瀬古「でも、よく見つけましたね」
穂高「まあな」
瀬古「(カメラを見て)それブリージング起きないやつじゃないですか。自前っ
 すか?」
穂高「これ用に買った」
瀬古「さすがっす」
山下「自分だって、良いネタさえ落ちてれば運転手してないんすからね」
瀬古「落ちてるわけないだろ。足使って取りに行くんだよ」
穂高「(鼻で笑う)」

○旅館・玄関
   慌ただしく右往左往する女将。
女将「右かしら?左かしら?それとも正面」
   友希、気怠げにやって来る。
友希「えー、ガッツしじゃーん」
女将「言葉遣い!」
友希「まだ来てないのにー」
女将「お茶とお菓子の用意は?」
友希「美優がやってる」
女将「あの子は起きてるかしら?ちょっと見て来てくれる」
友希「階段降りて来たばっかなんだけど」
女将「友達でしょ」
   友希、スマホを取り出す。


○同・駐車場
   白いバンが止まる。
   中から出て来る瀬古と山下。
   ドアだけ開ける穂高。
瀬古「駐車場の位置だけ確認してきます」
山下「はぁ、怖いっすわ。非行少女……」
瀬古「更生してるから大丈夫だって」

○同・客室
   スマホが鳴っている。

○同・廊下
   歩く着物姿の女の子の後ろ姿。

○同・玄関
   友希、電話を切る。
友希「出ない」
女将「直接行ってちょうだい」
友希「はーい」
瀬古の声「すみません。本日取材の件で」

○同・駐車場
   穂高、カメラを持って玄関に向かう。

○同・廊下
   鏡に映る唇に口紅が塗られる。

○同・前
   大きな階段。
   階段の下で山下が座っている。
   階段上の玄関から瀬古が出て来る。
瀬古「車の位置、奥のバスの所に移動しといて」
山下「了解っす」
   と、駐車場に戻る。
   降りて来る瀬古と穂高が合流する。
瀬古「一旦ここでお願いします。三脚持って来ます」
穂高「うい」

○同・廊下
友希「取材の人来たよ。行くよ」
   友希、口紅を塗る女の子の手を引く。

○同・前
   カメラをいじる穂高、画面を覗く。

○同・玄関
女将「急いで急いで」
   と、出て行く。
   友希、女将に続いて出て行く。

○同・前
   穂高の撮るカメラに女将、友希が映る。
   女将と友希にフォーカスが当たり、後ろに立つ女の子がぼやけている。
   女の子にフォーカスが合うと、立っている紗耶がハッキリ見える。
穂高「……」
   紗耶、笑顔でピース。
                 終わり

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