天狗猿 ドラマ

鬼退治から帰ってきた猿のヒデヨシ(22)は、猿山に凱旋する。元ボス猿筆頭候補のライバルを難なく蹴散らすも、翌朝状況が一変する。
マヤマ 山本 9 0 0 08/16
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第一稿

<登場人物>
ヒデヨシ(23)猿
ネネ(21)
イェン(23)
マサル(26)
ボス猿
メス猿A~E

桃太郎(20)人間
ジュウベー(32)犬
キジ(18)雉 ...続きを読む
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<登場人物>
ヒデヨシ(23)猿
ネネ(21)
イェン(23)
マサル(26)
ボス猿
メス猿A~E

桃太郎(20)人間
ジュウベー(32)犬
キジ(18)雉



<本編>
○鬼ヶ島・外観
   おどろおどろしい外観。

○同・岸辺
   鬼達と戦う人間の桃太郎(20)と、それに続く猿のヒデヨシ(23)、犬のジュウベー(32)、雉のキジ(18)。尚、動物達の年齢は人間に置き換えたもの。
   ヒデヨシが手に持った鈍器で鬼を殴り、ジュウベーが鬼の体を食いちぎり、キジのくちばしが鬼の体を貫き、桃太郎が刀で鬼の首を斬り落とす。とにかく血みどろの戦い。
    ×     ×     ×
   鬼達の死体の山を前に、ヒデヨシはゴリラのように胸を叩き、ジュウベーは吠え、キジは空を舞い、桃太郎はクールに背を向ける。
桃太郎「みんな、帰ろう」

○猿山・外観
   自然豊かな山。
桃太郎の声「鬼退治は、終わりだ」
   猿達の歓声。

○同・中央部
   ヒデヨシの元に集まるネネ(21)、イェン(23)ら猿達。小箱の中から、獲ってきた鬼の首を取り出し、見せつけるヒデヨシ。
ヒデヨシ「まぁ、俺の手にかかれば鬼なんてこんなもんよ」
イェン「さすがヒデヨシ。早くボスに見せてやりてぇぜ」
ネネ「ごめんね。パパったら、こんな時にボス猿会議で……」
ヒデヨシ「仕方ないさ。その分、挨拶の文言でも考えておくとするか」
イェン「『娘さんを僕にください』ってか?」
ヒデヨシ「(頬を赤らめ)なっ、おま、そ、そうじゃねぇよ。次期ボス猿としての挨拶だよ!」
   冷やかすイェンら猿達と、ヒデヨシ同様頬を赤らめるネネ。
マサルの声「調子に乗ってんじゃねぇぞ?」
   振り返るヒデヨシら。そこに別の猿達を率いてやってくる猿、マサル(26)。
マサル「ったく、鬼の首を獲ったような面しやがって」
ヒデヨシ「実際、獲ってきたんだよ」
マサル「家柄も、腕っぷしも、次のボスに相応しいのはこの俺、マサル様だ」
ヒデヨシ「確かに、マサル様は良い家柄のご出身だ」
   マサルの毛づくろいを始めるヒデヨシ。
ヒデヨシ「じゃあ、そうだな……俺がボスになったら、君を三猿の一角に任命しよう」
マサル「(ヒデヨシの手を振り払い)ふざけんな! 誰がてめぇの……」
ヒデヨシ「(遮るように)それから」
   荷物の中から、金棒を取り出すヒデヨシ。
イェン「それは……」
ネネ「鬼の、金棒」
ヒデヨシ「腕っぷしでも、負けるつもりはないぜ?」
マサル「ほう……だったら、やるか?」
ヒデヨシ「あぁ。泣かせてやるぜ」

○同・外観
   マサルの断末魔のような叫び声。

○同・中央部
   ボコボコにされたマサルを抱えて逃げるマサルの取り巻き達と、それを見送るヒデヨシ。
ヒデヨシ「ハッハッハ」
メス猿Aの声「ヒデヨシ~」
ヒデヨシ「(振り返り)おう、ネネ……」
   ヒデヨシに駆け寄るメス猿達。
メス猿A「ヒデヨシ、あなた強いのね」
ヒデヨシ「え、あぁ……」
メス猿B「握手して」
メス猿C「こっち向いて~」
メス猿D「手形もらえませんか?」
メス猿E「息子の頭を撫でて」
   困惑しながらも、まんざらでもない表情のヒデヨシ。それを遠くから見守るネネとイェン。
ネネ「何よ、鼻の下伸ばしちゃって」
イェン「ま、まぁまぁ。ね?」

○同・同(夕)
   疲労困憊な様子のヒデヨシに寄り添うネネ。
ヒデヨシ「何か、鬼退治より疲れた……」
ネネ「それはそれは」
ヒデヨシ「ボスって、大変なんだな」
ネネ「じゃあ、止めとく?」
ヒデヨシ「誰が止めるか」
   夕陽を見つめるヒデヨシ。
ヒデヨシ「ネネと一緒なら、何とでもなるだろ」
   沈む夕陽。

○(夢の中)鬼ヶ島・外観

○(夢の中)同・岸辺
   鬼達と戦う桃太郎と、それに続くヒデヨシ、ジュウベー、キジ。
   皆、鬼達に致命傷を与えない程度(殴る、かみつく、つつく等)で戦っている。
    ×     ×     ×
   土下座する鬼達と金銀財宝の山を前に、ヒデヨシはゴリラのように胸を叩き、ジュウベーは吠え、キジは空を舞い、桃太郎はクールに背を向ける。
桃太郎「みんな、帰ろう」

○猿山・ヒデヨシの住処(朝)
   眠っているヒデヨシ。
桃太郎の声「鬼退治は、終わりだ」
   目を覚ますヒデヨシ。
ヒデヨシ「ん……夢か。(周囲を見回し)あれ、ネネ……?」
メス猿Aの声「キャーッ!」
ヒデヨシ「?」

○同・中央部
   イェンの元にやってくるヒデヨシ。
ヒデヨシ「おい、何事だ?」
イェン「おう、ヒデヨシ。アレだよ」
   イェンの指す先、メス猿達に囲まれるマサル。その顔には傷一つない。
メス猿A「マサルさんよ~」
メス猿B「握手して」
メス猿C「こっち向いて~」
メス猿D「手形もらえませんか?」
メス猿E「息子の頭を撫でて」
マサル「まぁまぁ、みんな落ち着いて」
ヒデヨシ「これは一体……(何かに気付き)!?」
   よく見るとマサルの隣にはネネ。
ヒデヨシ「おい、ネネ!」
   メス猿達をかき分け、マサルの胸倉をつかむヒデヨシ。
ヒデヨシ「おい、マサル。どういうつもりだ!?」
マサル「は?」
ネネ「ヒデヨシ……?」
ヒデヨシ「白昼堂々、人の嫁に手を出しやがって!」
   ヒデヨシを止めに入るイェン。
イェン「おい、ヒデヨシ。落ち着けって」
ヒデヨシ「また昨日みたいに泣かせてやろうか?」
マサル「おいおい、さっきから何の話をしてんだ、ヒデヨシ?」
   ヒデヨシの手を振りほどき、ネネの肩を抱くマサル。
マサル「ネネは、次期ボスであるオレの嫁だろうが」
ヒデヨシ「はぁ? 何言って……。おい、ネネも何か言ってくれよ」
   ネネに視線を送るヒデヨシ。視線を逸らすネネ。
ヒデヨシ「ネネ……? おい、マサル。お前、ネネに何をした!?」
   再びマサルに掴みかかろうとするヒデヨシ。
ボス猿の声「こら、止めんか」
   振り返る一同。そこにやってくるボス猿。
ヒデヨシ「ボス」
ネネ「パパ。お帰りなさい」
ボス猿「うむ。一体何事じゃ?」
マサル「コイツがいきなり、言いがかりをつけてきたんですよ」
ヒデヨシ「言いがかりじゃない。次のボス猿は俺なんだ」
ボス猿「ヒデヨシよ、申したはずであろう。『お主が次のボス猿になりたければ、鬼の首でも獲ってこい』と」
ヒデヨシ「だから、獲ってきたんだって」

○同・ヒデヨシの住処
   首の入っていた小箱をボス猿に差し出すヒデヨシ。その後ろにネネとマサル。
ヒデヨシ「ほら、ココに」
   ふたを開けるボス猿。
ボス猿「……何じゃ、コレは?」
ヒデヨシ「だから、鬼の首……」
   箱の中を覗き込むヒデヨシ。その中身は金銀財宝。
ヒデヨシ「!?」
   箱をひっくり返すヒデヨシ。
ヒデヨシ「無い、無い。首が……」
マサル「お前、ボスを買収しようなんて、いい度胸だな」
ヒデヨシ「いや、違う。コレは……」
ボス猿「話は終わりじゃな」
   ヒデヨシを置いて去っていくネネ、ボス猿、マサル。ネネは一度だけ振り返る。
ヒデヨシ「一体、何がどうなって……」

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