『HERO-1グランプリ』スピンオフその9 オムニバス

第25話『説明しよう、ザ・ガンバルマンはまだ何者でもないのだ』 第26話『説明しよう、お嬢様はイエスマンしかお認めにならないのだ』 第27話『説明しよう、イアン・シルバは再び戦う決意をしたのだ』
マヤマ 山本 12 0 0 03/22
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第一稿

<当所人物>
ガンバルマン(15)第25話主人公
お嬢様(17)第26話主人公
イアン・シルバ(48)~(60)/シロガネ/オトシルバー 第27話主人公

校長
黒田鉄 ...続きを読む
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<当所人物>
ガンバルマン(15)第25話主人公
お嬢様(17)第26話主人公
イアン・シルバ(48)~(60)/シロガネ/オトシルバー 第27話主人公

校長
黒田鉄男(26)お嬢様の秘書
仲間A、B
オトイエロー シルバの仲間



<本編>
○高校・外観
   立派な校舎。爆破される。
   T「第25話 説明しよう、ザ・ガンバルマンはまだ何者でもないのだ」
ガンバルマンM「吾輩は、高校生である」

○同・校庭
   大破した校舎の残骸。
ガンバルマンM「まだ何者でもない」
校長の声「我が校は先日、怪人の攻撃により校舎を失いました」
   学生服姿のガンバルマン(15)ら多くの生徒の前で挨拶する校長。
校長「本校は本日をもって廃校となりますが、皆さん、頑張って生きて下さい。以上」
   呆然とするガンバルマン。

○繁華街
   私服姿で歩くガンバルマン。ため息。
子供達の声「頑張れ、シロガネ~」
   声のした方へ顔を向けるガンバルマン。怪人と戦う白い戦闘スーツの戦士・シロガネ。怪人を倒し、歓声があがる。
    ×     ×     ×
   周囲の人々から喝采を浴び、求められるまま握手をしていくシロガネ。
シロガネ「声援ありがとう。ありがとう」
   シロガネに歩み寄り、掴みかかるガンバルマン。どよめく周囲の人々。
シロガネ「?」
ガンバルマン「何故……何故学校を守りに来てくれなかったのだ!」
   変身を解除しイアン・シルバ(48)の姿となるシロガネ。
シルバ「話を聞こうかの」

○公園
   ベンチに座るガンバルマンとシルバ。
シルバ「……なるほど。辛かったんじゃの」
ガンバルマン「申し訳なかったのである。さっきのは吾輩の八つ当たりだったのである」
シルバ「で、これからどうするんじゃ?」
ガンバルマン「わからないのである。皆に『頑張れ』と言われても、何を頑張れば……」
シルバ「なら、ヒーローになったらどうじゃ?」
ガンバルマン「え?」
シルバ「ヒーロー一人に出来る事には限度がある。どうしても救えぬ者も出てくる。であれば、ヒーローを増やす事が先決じゃろう?」
ガンバルマン「……しかし、吾輩のような何も出来ない人間を雇ってくれる組織など……」
シルバ「ワシの知り合いにヒーローのプロダクションをやっとる者が居ってな。お主さえよければ、口を利いといてやろうか?」
ガンバルマン「……何故、吾輩をそこまで?」
シルバ「大事なものを失った事がある、そんな人間の強さを、ワシが信じとるだけじゃ」
ガンバルマン「吾輩の強さ……」
シルバ「もちろん、死ぬ気で頑張ってもらわねば困るんじゃが……出来るかの?」
ガンバルマン「吾輩、頑張るのである」
   満足そうにうなずくシルバ。

○豪邸・外観
   T「第26話 説明しよう、お嬢様はイエスマンしかお認めにならないのだ」

○同・お嬢様の部屋
   対峙するシルバ(50)とお嬢様(17)。
お嬢様「何故だ? 父上の代から我が家に仕えるお前まで、私に従わぬというのか!?」
シルバ「ワシは先代から、お嬢様を守るように言われとるんじゃ。止める時は止めねば……」
お嬢様「もういい。従わぬなら、この館を去れ!」
シルバ「……仕方ありませぬな」
   懐から退職願を取り出すシルバ。
お嬢様「!?」
シルバ「ワシとて、お嬢様のご意向に口を出す以上、このくらいの覚悟はしとります」
お嬢様「……お前も、私を見捨てるか?」
シルバ「とんでもない。見捨てられないからこそ、苦言を呈しておるんじゃ。見捨てるなら、何も言いますまい」
お嬢様「……」
シルバ「どうでしょう、考えを改めては……?」
お嬢様「黒田!」
   扉が開き、入ってくる黒田(26)。
黒田「お嬢様、お呼びでしょうか?」
お嬢様「部外者を連れ出せ。力づくでも構わぬ」
黒田「では、変身させていただきます」
お嬢様「許可する」
シルバ「……」
   降参するように両手を上げるシルバ。
お嬢様の声「これで良いのだ」
    ×     ×     ×
   窓から見える、大荷物を抱えて出ていくシルバの姿。
お嬢様の声「私に逆らう者はみんなみんな、いなくなればいいのだ」
   お嬢様の傍らに立つ黒田。
お嬢様「そうだな、黒田」
黒田「おっしゃる通りです」
お嬢様「私は間違っていない。そうだな、黒田?」
黒田「おっしゃる通りです」
お嬢様「黒田は、私に逆らったりしないな?」
黒田「私はお嬢様の味方です。たとえ……」
黒田の声「寂しくなります」

○(回想)同・玄関
   大荷物を抱えるシルバを見送る黒田。
黒田「これから、何を?」
シルバ「田舎に帰って隠居生活じゃよ。昔のツレを誘って、音楽でもやるかの」
   シルバの乾いた笑い声が響く。
シルバ「……お嬢様は少し、恵まれ過ぎたのかもしれんな。まだ何も失った事がない。心配で仕方ないわい」
黒田「……ですね」
シルバ「お嬢様を頼むぞ、クロガネ」
黒田「もちろんです」
シルバ「言っておくが、簡単じゃないぞ? 少しでも逆らえば、すぐにクビじゃ。ワシも、アカガネもコガネもそうじゃった」
黒田「そうでしたね」
シルバ「じゃから、いざという時にお嬢様の傍に居るためには、どんな指示でも聞くのじゃ。イエスマンに徹するのじゃ。己の正義感を捨ててでも」

○同・お嬢様の部屋
   お嬢様の傍らに立つ黒田。
シルバの声「その結果、たとえ……」
黒田「たとえ、全世界を敵に回しても」
お嬢様「(満足げに)よろしい」
   窓の外に目を向け、頷く黒田。

○地方のライブハウス・外観(夜)
   漏れてくる音。
   T「第27話 説明しよう、イアン・シルバは再び戦う決意をしたのだ」

○同・中(夜)
   ステージで演奏するシルバ(60)、仲間A、B。全員同年代。客はまばら。
シルバの声「今日もまばらじゃったな」

○居酒屋(夜)
   卓を囲むシルバ、仲間A、B。
シルバ「まぁ、こんなジジィバンドの演奏なんざ、誰も興味ないんじゃろうがな」
   笑う一同。
仲間A「でもまぁ、もしかしたらあの話も、何か関係してるのかもしんねぇけどな」
シルバ「あの話?」
仲間A「若いバンドマンが、次々と怪人に攫われてる、って話だよ」
仲間B「それって、アレだろ? 邪音教団ノイズとかいう輩の話だろ? そんなん東京の話だし、何よりオトレンジャーが戦ってんだから、こっちに影響はねぇだろ。なぁ?」
シルバ「ノイズ? オトレンジャー?」
仲間A「……まさか、お前知らんのか?」
仲間B「曲がりなりにも、元ヒーローだろ?」
シルバ「そうか。今そんな事に……」
仲間A「それにしても、辛いよな」

○市街地
   一人歩くシルバ。決意に満ちた表情。
仲間Aの声「若いもんが犠牲になるってのは」
シルバM「ワシは何をしておったんじゃろうか」

○(フラッシュ)高校・校庭
   呆然とするガンバルマン。
シルバM「戦う力を持ちながら」

○(フラッシュ)豪邸・お嬢様の部屋
   対峙するシルバとお嬢様。
シルバM「若者の未来ひとつ守れず」

○(フラッシュ)東京のライブハウス・中(夜)
   謎のブラックホールに吸い込まれていく川上恭太郎(18)らバンドマン達。
シルバM「そして、今も……」

○市街地
   一人歩くシルバ。立ち止まる。
シルバM「老い先短いこの命、今更何が出来るか等わからんが……」
   シルバの視線の先、ノイズ戦闘員達と戦うオトレンジャーの姿。
シルバ「これがワシの罪滅ぼしじゃ」
イエロー「おい、じいさん。そんな所居ったら死んでまうで」
シルバ「心配無用じゃ、若者よ。老兵は死なん」
   腕に付けたブレスレット型変身アイテムを操作するシルバ。
シルバ「演奏チェンジ」
   オトシルバーに変身するシルバ。
シルバー「シニアのDJ、オトシルバー!」
               (その9 完)

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