<登場人物>
市川 真央(10)(12)中学生
長瀬 竜二(10)(12)真央の同級生
里村 葵(12)同
石田 輝久(12)同
亀井 一彦(38)真央らの担任
真央の母(45)(47)
小学校教師
<本編>
○メインタイトル『ただいまテスト中』
○マンション・外観(朝)
○同・市川家・真央の部屋(朝)
鏡の前に立つ市川真央(12)。髪色は茶色がかっており、肌も白め。寝間着姿のままハンガーごと制服を手に持ち、体に合わせている。
真央「(ため息)」
制服をベッドに置き、隣に寝転がる真央。
ドアをノックする音。
真央の母の声「真央~。遅れるよ?」
真央「……うん」
真央の母の声「真央? ……開けるよ?」
ドアが開き、入ってくる真央の母(47)。
真央の母「ちょっと、全然着替えてないじゃないの」
真央「……うん」
真央の母「今更『行きたくない』とか言わないよね?」
真央「……」
真央の母「約束したよね? 『学校休んでもいいけど、テストの日だけは行く』って」
真央「したけど……」
制服を手に取る真央の母。真央に渡す。
真央の母「テスト終わったら、また学校休んでもいいから。ね?」
真央「うん……」
自身の髪の毛を触る真央。
竜二の声「あ~あ、い~けないんだ~」
○(回想)小学校・外観
竜二の声「髪の毛染めちゃいけないんだ~」
○(回想)同・教室
生徒達や小学校教師の前で真央(10)の髪を指さす長瀬竜二(10)ら複数の男子生徒達。
竜二「先生、市川が髪の毛茶色に染めてま~す」
真央「染めてないもん。地毛だもん」
竜二「不良~、不良~」
笑う生徒達。目に涙をためる真央。
○(回想)同・職員室
小学校教師の前に立つ真央の母(45)と真央。
真央の母「ウチの娘は地毛なんですよ」
小学校教師「大丈夫です、お母さん。わかってますから」
真央の母「大丈夫なら、何でウチの娘はイジメられなきゃならないんですか!?」
小学校教師「ですから、あれは遊んでいるのであって……」
○(回想)同・教室
竜二らに髪の色を冷やかされる真央。
× × ×
習字の授業を受ける真央、竜二ら生徒達。
竜二「おい、市川。俺がお前を真面目生徒にしてやるよ」
真央「え?」
真央の髪に墨汁をかける竜二。
真央「!?」
竜二「ほら、黒くなった~」
笑う生徒達。教室を飛び出す真央。
○(回想)同・廊下
水道で墨汁を落とそうとする真央。涙を流す。
○(回想)中学校・外観
「入学式」と書かれた看板。
○(回想)同・教室
席に着く真央、竜二(12)、里村葵(12)ら生徒達。尚、真央の前の席は石田輝久(12)。
教壇に立ち出席を取る亀井一彦(38)。
亀井「え~、じゃあ出席を取ります。石田輝久」
石田「は~い」
亀井「市川真央」
真央「はい」
亀井「……おい、市川。何だその髪は? 俺達への挑戦か?」
真央「あの、これは地毛で……」
亀井「明日までに黒く染め直してこい。いいな」
真央「いや、でも……」
亀井「問答無用。じゃあ、次。井上……」
俯く真央。ソレを見て笑いをこらえる竜二ら一部の生徒達。振り返り、心配そうに真央を見ている石田。
○(回想)同・職員室
亀井の前に立つ真央と真央の母。亀井の手には地毛証明書。
亀井「なるほど、ね。で、いつまでに黒くできますか?」
真央の母「は? だから、娘は地毛だって言ってるじゃないですか!」
亀井「そう言われましても、校則には『中学生に相応しい髪』と書いてあるので、ね」
真央の母「校則で言うなら、髪を染める事自体が禁止なんじゃないですか? 何で黒に染める事はOKなんですか!?」
亀井「お母さんね。娘さん、これまで髪の毛の事でイジメられたりしてきたんでしょう? 髪の毛黒くすれば、それも防げるんじゃないですか?」
真央の母「だったら、そのイジメる側を先生が何とかしてくれれば防げる話でしょ」
うんざりしている様子の真央。
○(回想)同・教室
席に座る真央。竜二や葵らに囲まれている。
竜二「いいよな、コイツ。親とグルになって『これは地毛です』って言い張ってよ」
葵「最低だな。マジ恥知れよ」
真央「……」
竜二「おい、何とか言えよ」
葵「シカトこいてんじゃねぇよ」
竜二や葵らに小突かれる真央。抵抗せず耐え続ける。
○(回想)同・廊下
歩いている真央。
葵の声「あ、居た」
振り返る真央。先輩女子達を連れてやってくる葵。
葵「先輩、アイツですよ。一年のくせに髪茶色にしてて」
真央を睨むように見る先輩女子達。
真央「!?」
逃げるように立ち去る真央。
葵「おい、バックレんなよ」
○(回想)同・教室
教壇に立つ亀井と、席に着く真央ら生徒達。
亀井「市川、昨日より髪明るくなってないか?」
首を横に振る真央。
亀井「染めたら、もう地毛証明書は通用しないからな」
教室中からの冷やかすような視線。
○(回想)同・校門
登校して来る真央。しかし立ち止まる。次々と中に入っていく生徒達を横目に、その場から動けない真央。
○同・同
立っている真央。
○同・教室
入ってくる真央。竜二、葵ら生徒達の視線が真央に集まる。尚、竜二の顔には殴られたようなケガ。
真央「……」
席に着く真央。前に座る石田の髪の毛が金髪になっている事に気付く。
真央「え、石田君!?」
石田「おう」
真央「どうしたの、その髪?」
石田「『どうしたの』って、染めただけだし」
真央「そっか……」
× × ×
テスト勉強をする石田や真央ら生徒達。竜二がやってくるが、真央(というより石田)を避けるように通り過ぎていく。
真央「……」
× × ×
教壇に立つ亀井、席に着く石田や真央ら生徒達。
亀井「おい、石田。お前その髪でテスト受ける気か? 俺達への挑戦か?」
石田「いやいや、自分が『挑戦される側』なんて自意識過剰すぎだし」
亀井「なっ……」
笑う生徒達。
○同・外観
○同・廊下
下校する生徒達。教室を出てくる真央、木下菜々(12)と鉢合わせる。
真央「あ、ごめんなさい」
菜々「あ、こちらこそ……(真央の髪色を見て)あ~、あなたが噂の『可愛い茶髪女子』?」
真央「噂……?」
菜々「いや、テルがさ『地毛が茶色いってだけでイジメられてる子がいる』『俺の髪がもっと目立てばいいのかな』って言ってたから」
真央「そうなんですか……」
教室内にいる石田に目を向ける真央。
菜々「まぁ、逆効果になる可能性もあるから、その時は言っていいからね。一応、今はまだ『テスト中』みたいなもんらしいから」
真央「(微かに笑みを浮かべ)……はい」
(完)
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