ただいまテスト中 学園

市川真央(12)は、茶色がかった地毛のせいでイジメを受け、不登校となっていた。母との約束で渋々、中間テストを受けるためだけに登校すると……。
マヤマ 山本 10 0 0 03/15
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第一稿

<登場人物>
市川 真央(10)(12)中学生
長瀬 竜二(10)(12)真央の同級生
里村 葵(12)同

石田 輝久(12)同
亀井 一彦(38)真央らの担任
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<登場人物>
市川 真央(10)(12)中学生
長瀬 竜二(10)(12)真央の同級生
里村 葵(12)同

石田 輝久(12)同
亀井 一彦(38)真央らの担任
真央の母(45)(47)
小学校教師



<本編> 
○メインタイトル『ただいまテスト中』

○マンション・外観(朝)

○同・市川家・真央の部屋(朝)
   鏡の前に立つ市川真央(12)。髪色は茶色がかっており、肌も白め。寝間着姿のままハンガーごと制服を手に持ち、体に合わせている。
真央「(ため息)」
   制服をベッドに置き、隣に寝転がる真央。
   ドアをノックする音。
真央の母の声「真央~。遅れるよ?」
真央「……うん」
真央の母の声「真央? ……開けるよ?」
   ドアが開き、入ってくる真央の母(47)。
真央の母「ちょっと、全然着替えてないじゃないの」
真央「……うん」
真央の母「今更『行きたくない』とか言わないよね?」
真央「……」
真央の母「約束したよね? 『学校休んでもいいけど、テストの日だけは行く』って」
真央「したけど……」
   制服を手に取る真央の母。真央に渡す。
真央の母「テスト終わったら、また学校休んでもいいから。ね?」
真央「うん……」
   自身の髪の毛を触る真央。
竜二の声「あ~あ、い~けないんだ~」

○(回想)小学校・外観
竜二の声「髪の毛染めちゃいけないんだ~」

○(回想)同・教室
   生徒達や小学校教師の前で真央(10)の髪を指さす長瀬竜二(10)ら複数の男子生徒達。
竜二「先生、市川が髪の毛茶色に染めてま~す」
真央「染めてないもん。地毛だもん」
竜二「不良~、不良~」
   笑う生徒達。目に涙をためる真央。

○(回想)同・職員室
   小学校教師の前に立つ真央の母(45)と真央。
真央の母「ウチの娘は地毛なんですよ」
小学校教師「大丈夫です、お母さん。わかってますから」
真央の母「大丈夫なら、何でウチの娘はイジメられなきゃならないんですか!?」
小学校教師「ですから、あれは遊んでいるのであって……」

○(回想)同・教室
   竜二らに髪の色を冷やかされる真央。
    ×     ×     ×
   習字の授業を受ける真央、竜二ら生徒達。
竜二「おい、市川。俺がお前を真面目生徒にしてやるよ」
真央「え?」
   真央の髪に墨汁をかける竜二。
真央「!?」
竜二「ほら、黒くなった~」
   笑う生徒達。教室を飛び出す真央。

○(回想)同・廊下
   水道で墨汁を落とそうとする真央。涙を流す。

○(回想)中学校・外観
   「入学式」と書かれた看板。

○(回想)同・教室
   席に着く真央、竜二(12)、里村葵(12)ら生徒達。尚、真央の前の席は石田輝久(12)。
   教壇に立ち出席を取る亀井一彦(38)。
亀井「え~、じゃあ出席を取ります。石田輝久」
石田「は~い」
亀井「市川真央」
真央「はい」
亀井「……おい、市川。何だその髪は? 俺達への挑戦か?」
真央「あの、これは地毛で……」
亀井「明日までに黒く染め直してこい。いいな」
真央「いや、でも……」
亀井「問答無用。じゃあ、次。井上……」
   俯く真央。ソレを見て笑いをこらえる竜二ら一部の生徒達。振り返り、心配そうに真央を見ている石田。

○(回想)同・職員室
   亀井の前に立つ真央と真央の母。亀井の手には地毛証明書。
亀井「なるほど、ね。で、いつまでに黒くできますか?」
真央の母「は? だから、娘は地毛だって言ってるじゃないですか!」
亀井「そう言われましても、校則には『中学生に相応しい髪』と書いてあるので、ね」
真央の母「校則で言うなら、髪を染める事自体が禁止なんじゃないですか? 何で黒に染める事はOKなんですか!?」
亀井「お母さんね。娘さん、これまで髪の毛の事でイジメられたりしてきたんでしょう? 髪の毛黒くすれば、それも防げるんじゃないですか?」
真央の母「だったら、そのイジメる側を先生が何とかしてくれれば防げる話でしょ」
   うんざりしている様子の真央。

○(回想)同・教室
   席に座る真央。竜二や葵らに囲まれている。
竜二「いいよな、コイツ。親とグルになって『これは地毛です』って言い張ってよ」
葵「最低だな。マジ恥知れよ」
真央「……」
竜二「おい、何とか言えよ」
葵「シカトこいてんじゃねぇよ」
   竜二や葵らに小突かれる真央。抵抗せず耐え続ける。

○(回想)同・廊下
   歩いている真央。
葵の声「あ、居た」
   振り返る真央。先輩女子達を連れてやってくる葵。
葵「先輩、アイツですよ。一年のくせに髪茶色にしてて」
   真央を睨むように見る先輩女子達。
真央「!?」
   逃げるように立ち去る真央。
葵「おい、バックレんなよ」

○(回想)同・教室
   教壇に立つ亀井と、席に着く真央ら生徒達。
亀井「市川、昨日より髪明るくなってないか?」
   首を横に振る真央。
亀井「染めたら、もう地毛証明書は通用しないからな」
   教室中からの冷やかすような視線。

○(回想)同・校門
   登校して来る真央。しかし立ち止まる。次々と中に入っていく生徒達を横目に、その場から動けない真央。

○同・同
   立っている真央。

○同・教室
   入ってくる真央。竜二、葵ら生徒達の視線が真央に集まる。尚、竜二の顔には殴られたようなケガ。
真央「……」
   席に着く真央。前に座る石田の髪の毛が金髪になっている事に気付く。
真央「え、石田君!?」
石田「おう」
真央「どうしたの、その髪?」
石田「『どうしたの』って、染めただけだし」
真央「そっか……」
    ×     ×     ×
   テスト勉強をする石田や真央ら生徒達。竜二がやってくるが、真央(というより石田)を避けるように通り過ぎていく。
真央「……」
    ×     ×     ×
   教壇に立つ亀井、席に着く石田や真央ら生徒達。
亀井「おい、石田。お前その髪でテスト受ける気か? 俺達への挑戦か?」
石田「いやいや、自分が『挑戦される側』なんて自意識過剰すぎだし」
亀井「なっ……」
   笑う生徒達。

○同・外観

○同・廊下
   下校する生徒達。教室を出てくる真央、木下菜々(12)と鉢合わせる。
真央「あ、ごめんなさい」
菜々「あ、こちらこそ……(真央の髪色を見て)あ~、あなたが噂の『可愛い茶髪女子』?」
真央「噂……?」
菜々「いや、テルがさ『地毛が茶色いってだけでイジメられてる子がいる』『俺の髪がもっと目立てばいいのかな』って言ってたから」
真央「そうなんですか……」
   教室内にいる石田に目を向ける真央。
菜々「まぁ、逆効果になる可能性もあるから、その時は言っていいからね。一応、今はまだ『テスト中』みたいなもんらしいから」
真央「(微かに笑みを浮かべ)……はい」
                   (完)

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