はじめまして、ご先祖様 ~墓参り代行業・袴田愛理~ ドラマ

「株式会社みんなの理葬」の新入社員・袴田愛理(23)は、初めての墓参り代行業に向かう。しかし、墓に向かって手を合わせていたハズが、目を開けるとソコは依頼人の先祖たちが暮らす一軒家で……。
マヤマ 山本 22 0 0 02/01
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第一稿

<登場人物>
袴田 愛理(23)墓参り代行業者
松下(34)同、愛理の先輩
桐島家の住人A~C



<本編>
○駅前
   喪服姿の袴田愛理(23)。鞄からまん ...続きを読む
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<登場人物>
袴田 愛理(23)墓参り代行業者
松下(34)同、愛理の先輩
桐島家の住人A~C



<本編>
○駅前
   喪服姿の袴田愛理(23)。鞄からまんじゅうを取り出し、食べる。
愛理「(笑みを浮かべ)美味ひ」
松下の声「おい、新人」
   振り返る愛理。そこにやってくる松下(34)。動きやすい服装。
愛理「あ、松下さん。おはようございま……」
松下「いや、お前何その恰好。今日、何するかわかってんの?」
愛理「わかってますよ。さすがに。お墓参りですよね?」
松下「……まぁ、いいや。行くぞ」
   歩き出す松下についていく愛理。まんじゅうをもう一口食べる。

○霊園A・外観
愛理の声「桐島、桐島……」

○同・中
   「桐島家之墓」と刻まれた墓。墓石は汚れ、雑草も生い茂る等、手入れされていた様子はない。
   そこにやってくる愛理と松下。松下は両手に墓参り用の道具や花束等を持っている。
愛理「あ、ありました」
松下「おう。じゃあ、まずは写真撮って」
愛理「私がですか?」
松下「(両手の荷物を掲げ)俺に撮れと?」
愛理「ですよね。さすがに」
   スマホで墓の写真を撮る愛理。それをチェックする松下。
愛理「これでどうですか?」
松下「う~ん……もうちょい墓の汚さが伝わるような写真の方が俺好みなんだけど……まぁ、いいや」
   荷物を置き、鞄から数珠を取り出して、愛理に渡す松下。
松下「挨拶すっから、コレ付けな」
愛理「(鞄から自前の数珠を取り出し)あ、数珠なら持ってきました。さすがに」
松下「数珠だけは会社の使え。そういうルールだから」
愛理「あ、そうなんですか」
   松下から渡された数珠を身に着ける愛理。
松下「じゃあ、始めっか」
   墓に向け手を合わせ、目を閉じる松下。それを見て、同じようにする愛理。
松下「桐島家の皆様、桐島恵子様のご依頼により、お伺いいたしました」
桐島家の住人Aの声「は~い、今開けますね」
愛理「え?」

○桐島家・前
   目を開け、顔を上げる愛理。目の前に広がる庭付き一軒家。愛理と松下だけが墓の前と同じ状態。
愛理「!?」
   ドアが開き、桐島家の住人Aが姿を見せる。尚、この家の住人は老人の男女で、皆足元が消えかかっている状態。
桐島家の住人A「いらっしゃい」
松下「はじめまして。私、墓参り代行の松下と……」
   状況が呑み込めていない様子の愛理に挨拶を促す松下。
愛理「……あ、同じく墓参り代行の袴田愛理と申します」
桐島家の住人A「はい、どうぞ」
松下「失礼します」
   中に入っていく松下。
愛理「どうなってるの……?」
   ドア脇に「桐島」の表札。

○メインタイトル『はじめまして、ご先祖様 ~墓参り代行業・袴田愛理~』

○桐島家・外観

○同・各地
   六〇~八〇歳程の男女が思い思いに生活している。
   その中を掃除する松下。
松下「すいません、失礼しますね」

○同・庭
   草むしりをする愛理。その背後に立つ桐島家の住人B。
愛理「あ~、完全に服装間違えたな」
桐島家の住人B「ほら、手を止めない」
愛理「あ、はい。すみません」

○同・廊下
   電球を取り換える松下。電球が明かりを灯すと、周囲の住人から拍手が起きる。

○同・仏間
   花を生ける愛理。その背後に立つ桐島家の住人B。
桐島家の住人B「あなた、それで良く桐島家の嫁が名乗れるわね」
愛理「ですから、私は桐島家の嫁じゃな……」
桐島家の住人B「問答無用!」
愛理「理不尽……」

○同・前
   打ち水をする松下。

○同・廊下
   雑巾がけをする愛理。その後ろで窓のサッシ部分を指でなぞり、指についた埃を見せる桐島家の住人B。
桐島家の住人B「やり直し!」
愛理「うぅ……松下さ~ん」

○同・台所
   料理をする松下。その匂いに釣られて集まってくる住人達。

○同・部屋
   疲れ切って座り込む愛理と、室内をくまなくチェックする桐島家の住人B。
桐島家の住人B「……まぁ、今日はこのくらいで良いでしょう」
愛理「やっと終わった……」
桐島家の住人B「桐島家の嫁たるもの、精進は怠らないように」
愛理「いや、ですから、私は桐島家の人間じゃないんですよ……」
桐島家の住人B「? なら一体、あなたはどこの誰なの?」
愛理「(名刺を手渡し)墓参り代行で来た、袴田と申します」
桐島家の住人B「墓参り代行……?」
愛理「そんな事より、ご飯、ご飯~」

○同・居間
   鼻歌交じりにやってくる愛理。タブレット端末を持った松下の周囲に集まる住人達。
愛理「? 松下さん、何してるんですか?」
松下「おう、遅かったな新人。今、依頼人の曾孫の写真を見せてんの」
   タブレットに映る赤子を抱いた若夫婦の写真。
愛理「あ~、可愛いですね」
桐島家の住人A「恵子ちゃんの曾孫って事は、私の来孫ね」
愛理「来孫?」
桐島家の住人C「って事は、俺の昆孫か」
愛理「昆孫?」
桐島家の住人B「つまり、私の仍孫ね」
愛理「あぁ、ダメだ。ついていけない……」
   と言って食卓に目をやる愛理。空になった皿が並ぶ。
愛理「って、もうご飯無くなってる……」
   膝から崩れ落ちる愛理。
松下「いや、残ってたとして、お前の分じゃねぇからな」
愛理「……わかってますよ。さすがに」
松下「どうだか。……さて、仕事は終わったし、最後に写真撮って帰るぞ」
愛理「は~い」

○同・前
   集まる住人達と松下に向け、スマホを構える愛理。
愛理「じゃあ、撮りますよ。はい、チーズ」

○霊園A・中
   愛理のスマホに映る画像、清掃が終わりきれいになった桐島家の墓。花やお供え物も多数。
愛理「!?」
   周囲を見回す愛理。元の霊園に戻っている。愛理のスマホの画面を覗き見る松下。
松下「う~ん……まぁ、こんなもんでいっか」
愛理「あの、松下さん。今の今まで、何が起きてたんですか?」
松下「あ? 墓参りだろ?」
愛理「いや、でも、だって……私の知ってる墓参りと大分違うというか……説明してくださいよ、さすがに」
松下「はいはい、とにかく、さっさと片付けて会社に帰るぞ。話は車ん中で聞いてやるから」
   と言って、掃除道具を手に歩き出す松下。
愛理「あの、片付けって、何を……?」
松下「食いもんとか、そのままにして帰る訳にいかねぇだろ?」
愛理「え、じゃあ(嬉しそうに)食べていいんですか?」
松下「……せめて、車ん中にしろよ」
愛理「は~い」
松下「……ったく」
   お供え物を集める愛理。その中に自身の名刺(桐島家の住人Bに渡したもの)を見つける。そこには「株式会社みんなの理葬 袴田愛理」の文字。

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