人 物
南野裕子(22)大学生
南野朱里(19)大学生
南野洋介(51)サラリーマン
大川智(38)警察官
五十嵐拓哉(28)警察官
警備員A
警備員B
依頼人
○美術館・外観(夜)
○同・屋上(夜)
天川裕子(22)が立っている。
裕子「今回のターゲットも楽勝なものね」
1階では刑事たちが何人もおり、厳重な警備体制を敷いている。大川智(38)が大声で叫ぶ。
大川「今日こそは怪盗キャッツを捕まえる
ぞ!準備はいいか!」
おう!と叫ぶ刑事たち。
裕子「それじゃ行くとしますか」
○同・エジプト展内(夜)
黄金のランプが飾られており、近くに警備員A、Bの2名立っている。
裕子が通気口から様子をうかがっている。
裕子「警備員は2人か……」
裕子、吹き矢を取り出す。
裕子、吹き矢を口に当て、発射する。
警備員A「うっ!」
警備員A、倒れる。
警備員B「一体どうした?」
警備員B倒れた警備員Aの肩を揺さぶる。
警備員B「うっ!」
警備員B、吹き矢で撃たれて倒れる。
裕子「これで大丈夫ね」
裕子、警備員が倒れたのを確認して通気口から出てくる。
裕子「さ、お宝、お宝」
裕子、黄金のランプの前に立つ。
裕子「キラキラしてるわねえ。さすが黄金」
黄金のランプにうっとりする裕子。
裕子「さ、さっさといただいて、と」
黄金のランプを手に取ろうとすると警報音が鳴り響く。
裕子「しまった?」
大川たち警察官が突入してくる。
大川「怪盗キャッツ!今日が年貢の納め時って奴だな!」
大川たち警察官は銃を構えている。
裕子「イッツアピーンチ……」
大川たち、ジリジリと裕子に近づいていく。
大川「ついにここまでか、怪盗キャッツ!」
裕子「冗談じゃない!」
大川「確保―!」
大川が叫んだ瞬間、煙玉が投げ込まれ、室内が煙まみれになっていく。
裕子「それじゃ、さようなら」
通気口から出て行く裕子。
煙が明けて行く。
けほけほとせき込みながら大川たちが辺りを見渡す。
大川「この間に逃げて行ったか……」
黄金のランプが盗まれている事に気付く大川。
大川「やはり盗まれたか……」
大川、床に髪飾りが落ちている事に気付く。
大川「これはもしや怪盗キャッツの……」
○路地裏(夜)
片手に黄金のランプを持って息を切らしている裕子と南野朱里(19)がいる。
朱里「お姉ちゃん、大丈夫?」
朱里、裕子の肩をポンと叩く。
裕子「何とかね。いやー今日は過去一で大変
だったわ」
朱里「そうだったんだ」
裕子「え?あの状況見てたから煙玉投げてくれたんじゃないの?」
朱里「今日私監視カメラのジャックくらいしかやってないよ」
裕子「そうなの……」
朱里「何かあったの?」
裕子「いや、今日かなりピンチだったけどね、煙玉が投げ込まれて何とかなったのよ」
朱里「誰が投げ込んでくれたんだろうね」
裕子「永遠の謎になりそうな予感……」
朱里「まぁいいじゃん、助かったんだから」
裕子「まぁ、そうね。帰りましょうか」
朱里「今日の晩御飯は天ぷららしいよ?」
裕子「嘘!やったー!」
裕子、髪を触る。
裕子「髪飾りがない?ま、いっか。新しいのかえば」
○裕子の家・客間(夜)
依頼人と南野洋介(51)がテーブル
を挟んで座っている。テーブルには500万円と黄金のランプが置かれている。
依頼人「ありがとうございます。これで我が先祖もお喜びになることでしょう」
依頼人、黄金のランプをしまう。
南野「それはそれは」
○大宮警察署・外観(夜)
○大宮警察署・捜査本部室(夜)
大川が髪飾りをじっと見ながら座っている。
五十嵐拓哉(28)が入ってくる。
大川「出たか!」
五十嵐「ええ。調査の結果、そちらの髪飾り
は駅前にあるショップでしか取り扱ってな
い事が分かりました」
大川「これが手掛かりで捕まえることができるといいのだが……」
○裕子の家・リビング(夜)
裕子と朱里と南野がテーブルを囲んで座っている。テーブルの上には500万円が置かれている。
裕子「今日の報酬も中々じゃなーい!」
朱里「お姉ちゃんこういう時いつも元気だよ
ね」
裕子「そりゃお金貰えるんだから元気にもなるでしょ、あんたはならないの?」
朱里「そりゃなるけどさ……」
裕子「元気ないわね、どうしたのよ」
裕子、朱里のほっぺを人差し指でぐりする。
南野「これから取り分を発表していく。まず
裕子」
裕子「はいはい、はーい」
南野「今回は150万」
南野、150万円を裕子に渡す。
裕子「やっふう!これでコーチとディオールとグッチと、色々買えるわね」
朱里「そろそろ部屋を片付けないと部屋が高級品で溢れかえっちゃうよ?」
裕子「その時は倉庫でも借りればいいわよ」
朱里「そうかもしれないけどさ……」
裕子「次、朱里の取り分よ?」
朱里「うん……」
南野「朱里も裕子と 同じく150万だな」
朱里に150万円渡す南野。
朱里「ありがとう……」
裕子「もうちょっと楽しそうな顔しなさいよ」
朱里「お姉ちゃんとお父さんにちょっと話があるんだ」
南野「どうしたんだ、改まって」
朱里「私、翻訳家になりたい」
南野「翻訳家か」
朱里「その為にも留学もしたい」
裕子「りゅ、留学?じゃあこの稼業はどうするのよ?」
朱里「だから次の任務で私はもうこの稼業から足を洗う」
南野「なるほどな」
うでを組む南野。口を大きく開けている裕子。
裕子「ちょっと待ってよ!そんな急に決めて!この稼業やってけないわよ!それはわかってるわよね!」
朱里「じゃあこの稼業は終わりになるのかな」
裕子「そんなあ」
朱里「お姉ちゃんだってこの稼業ずっと続くと思ってないでしょ?」
裕子「私はあんたが辞めるなんて思わなかったからずっとできると思ってわよ!」
朱里「だとしたら見通しが甘すぎるよ。もしかしたらずっと続くと思ったから就活してなかったの?」
裕子「う……」
南野「確かにこの仕事もいつまで続くか分からんところはあるな。身の危険だって晒されるわけだし」
裕子「そんなぁ。じゃあ私はどうなるのよ、今更就活始めたってロクな所とってくれないのよ!」
朱里「という訳で私は降りるから」
○流星ショップ・外観
○流星ショップ・控室
大川と五十嵐が監視カメラを凝視している。監視カメラの先で裕子が例の髪飾りを買っている。
大川「行くぞ!」
大川、部屋を飛び出す。
○流星ショップ・店内
裕子が店を出て行こうとすると大川が止める。
大川「君、ちょっといいかな?この髪飾りに見覚えはないか?」
裕子「これって……!」
ハッ!と口を手で覆い隠す裕子。
大川「ビンゴだな少し署までご同行願おう」
裕子を連れて行こうとする大川。
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