10年後の私と僕 日常

あの頃いつも一緒にいた幼馴染はもう二度と目を覚ますことはない…。 私はいつの間に大人になっていた。
りょう 6 0 0 11/26
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第一稿

〇(回想)白浜高校・教室・十年前
   呆然と立ち尽くしてる生徒達。
   大量に血を流し、倒れているのは高校生の林有太(18)。
   その横で、有太の出血部に必死に手を当 ...続きを読む
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〇(回想)白浜高校・教室・十年前
   呆然と立ち尽くしてる生徒達。
   大量に血を流し、倒れているのは高校生の林有太(18)。
   その横で、有太の出血部に必死に手を当てて、止血しているのは幼馴染の中西夏菜(18)。泣きながら
夏菜「有太…行かないで…ち、血が…死んじ
 ゃ嫌。有太…」
 (回想終わり)

〇病院・(夜)
   昏睡状態となり、ベッドで眠っている有太(28)。横の椅子で暗い顔で座ってる、夏菜(28)
夏菜「また来るね…」
   病院から出ていく。
  
〇白浜高校・外観・現在
   ごく普通の田舎の学校。
〇同・教室(3年2組)
   十年たち、高校の教師になった夏菜、歴史の授業をしている。
夏菜「フランス皇帝、ナポレオンが人生の最後を過ごしたと言われている島、セントヘレナ島。ナポレオンは戦争に敗れた後、島流しにあいこの島へ流され人生の時を終えました。セントヘレナ島はテストにも出すと思うので、きっちりおさえといてください。ナポレオンは人生の最期にこういう言葉を残したと言われています」
   夏菜、チョークを手に取り黒板に「フランス軍、軍の先頭、ジョゼフィーヌ」
   と書く。
夏菜「フランス軍、軍の先頭、ジョゼフィー
 ヌ.言葉の意味ははっきりとは分かりませ
 んが、人生で一番愛した最愛の女性、ジョ
ゼフィーヌへの想いがこの言葉から汲み取
れます。こうして人生の最期をむかえたナ
ポレオンですが……」
  授業を聞かずにボーっと外を眺めてい
  る岸川涼(18)。
涼M「あー人生退屈だな。学校だるいし、もうすぐ受験だし。中西先生可愛いけど、授業つまんないし」
   涼、斜め横に座っている幼馴染、中村結衣(18)を横目で眺める。
涼M「偶然が重なって結衣と付き合えたりしな
 いかな。自分から行かない限り無理だよな。
 でもな、幼馴染の心地良い関係が壊れるの
 は嫌だし。てか、結衣に片思いして何年た
つんだろう。このまま、何もせずに終わっ
ちゃうのかな…」
  結衣が、斜め後ろを振り浮き、涼と目が合う。動揺した涼はそのまま椅子のバランスを崩す。
結衣「あ…」
涼「やべ…」
   そのまま後ろに倒れる。
涼「痛え…」
男子生徒「びっくりした」
夏菜「大丈夫?怪我してない?」
涼「あ、はい。すみません、ぼっとしてて」
結衣「大丈夫?涼ちゃん」
涼「あ、うん。ありがとう」
   結衣の手を借りて立ち上がる。
夏菜「…(薄ら笑い)」
 ×  ×  ×
   チャイムの音が鳴る。
夏菜「次の授業がレポート提出期限なので、
 各自、準備しといてね。以上です」

〇同・廊下
   生徒達でにぎわってる、廊下を夏菜が無表情で歩いてる。

〇同・職員室(夜)
   夏菜、机でデスクワークをしている。
   そこに一人の女性教員が近づいてくる。
   その女性は先輩教員の新山(36)
新山「中西先生」
夏菜「あ、新山さん。どうしたんですか」
新山「ちょっと悪いんだけど、夕食買ってきてくれない?」
夏菜「え?」
新山「今から英語科の会議が合って、その後に学年会議でしょ。買いに行く時間無いのよ。お願いできない?」
   財布から1万円札を取り出し、夏菜に強引に手渡す。
新山「これで、中西さんの分も買っていいから。ね、お願い」
夏菜「…分かりました」
新山「ありがとう。本当助かるわ」
夏菜「いえ、何がいいですか?」
新山「任せるわ。じゃあ」
 × × ×
   30分後。
夏菜「夕食買ってきます」
   職員室から出ていく。

〇歩道・夜
   コンビニまでの道をゆっくりと歩いてる。

〇コンビニ・雑誌コーナー・十年前
   雑誌コーナーで有太と親友の田中幸(18)が雑誌を立ち読みしている。
   背後から夏菜が
夏菜「わあ!」
有太「夏菜かよ、びっくりさせんなよ。心臓
止まるかと思ったわ」
  有太、夏菜の頭を叩く。
夏菜「いてっ」
桜「夏菜、早いよ」
   コンビニに遅れて入ってきたのは中川桜(18)。
夏菜「ごめんごめん」
桜「何読んでたの?」
夏菜「日帰り旅のガイドブック?どこか行く
 の?」
幸「まあ」
桜「有太は?」
夏菜「どうせ、エロ本でしょ」
有太「…」
夏菜「あ、図星だ!」
有太「違うわ。なんでそうなるんだよ」
夏菜「まあいいや。肉まん買ってくる」
   (回想終わり)

〇同・入り口・現在・夜
夏菜「…(雑誌コーナーを眺めながら)」
店員「いらっしゃいませー」

〇同・レジ
店員「会計1340円です」
   一万円札を出す。
店員「一万円お預かりします。お返しが86
60円です」
夏菜「領収書もらえますか?」
店員「かしこまりました」
 × × ×
店員「ありがとうございました」
   夏菜、コンビニから出ていく。

〇(回想)帰り道・十年前
   4人が並んで帰ってる。
幸「今度の週末、旅行行かね?」
桜「旅行?急にどうしたの?」
幸「旅行っていうか、キャンプなんだけど」
   コンビニで買った雑誌を見せる。
幸「じゃん!この海辺のキャンプ場、すごい
穴場でさ、夜にめちゃくちゃ綺麗な星が見
えるらしいんだよ」
夏菜「へーいいね、行きたい!」
幸「だろ、そーこなくっちゃ!」
桜「隣の町にこんな所あるんだ」
幸「有太は?」
有太「俺寒いのはちょっと…」
夏菜「大丈夫、有太は私が無理やり連れてい
くから!」
有太「夏菜だったら本当にしそうで怖いわ」
桜「そっか、家、隣だもんね二人」
夏菜「うん。時間になっても起きてなかった
 ら、たたき起こすからね」
有太「でもなんで急にキャンプなんだよ」
幸「だって受験勉強でもうこれからほとんど
遊べないだろ。高校生活最後の思い出にキ
ャンプ、最高じゃん」
有太「そうだな…」
夏菜「よし、じゃあ決定ね!」
 × × ×
   数分後
   2人と別れ、夏菜と有太が並んで帰っ歩いてる。
夏菜「キャンプ、楽しみだね」
有太「でも、それが終わったら遂に受験か…」
夏菜「…うん。でも本当あっという間だよね、
小学生の頃はみんな、あんなに小さかった
のに、それがいつの間にか大学受験だもん」
有太「人間って年を取るにつれて、時間の流  
 れが早く感じるからな。特に高校生活なん
 てあっという間だったよ」
   夏菜、有太の肩を両手で触る。
有太「なんだよ、急に」
夏菜「肩幅広くなったと思ってさ」
有太「え?」
夏菜「昔は小さくて、いじめられっ子でいつも私の後ろに隠れてたのに、それがこんなにたくましくなるなんてね」
有太「」
   夏菜、有太に微笑む。
有太「…」
夏菜「ん、どうしたの?」
有太「え、あ、なんでもない」
夏菜「ふーん、変なの」
有太「夏菜って、もう第一志望決めた?」
夏菜「うん決めたよ。白浜中央大の社会学部」
有太「へ―」
夏菜「私さ、まだやりたい事とか、なりたい
職業とか特に見つかってないからさ、社会
 学部がいいんじゃないかなと思ってさ。有太は?」
有太「俺は…まだどこか決めてないけど教育学部かな」
夏菜「教師になる夢、昔から変わってないんだね。そっかー教育学部か。そういえば、教育学部だったら白浜中央大にもあるんじゃない?」
有太「まあ一応」
夏菜「じゃあ、一緒の大学に行こうよ!」
有太「夏菜が行くような大学に俺が受かる訳ないだろ」
夏菜「そんなことないでしょ。今から頑張ったら間に合うよ」
有太「いいよな、頭が良い奴は…」
夏菜「私に言ってる?」
有太「うん」
夏菜「そうかな、私は…夢がある人の方がよっぽど羨ましいけどな…
有太「え?」
夏菜「夢を持って何かに取り組んでる人はとても輝いて見えるよ」
有太「ずっと思ってたんだけどさ、夏菜って教師に向いてるんじゃない?」
夏菜「教師…私が?」
有太「うん」
夏菜「いやいや、ないない。そんな子供好きじゃないし。教師なんて絶対ブラックじゃん。そんな仕事が、私に向いてるわけないじゃん」
有太「そっか…。ま、いいや」
   背後で黒い影の男が夏菜を見つめてる。

〇林家・有太の部屋・週末
   キャンプの支度を急いでしている有太。
   下の階から
有太の母「有太、夏菜ちゃんもう来てるわよ」
有太「うん、今行く」

〇同・階段
   2階から降りてくる有太。

〇同・玄関
夏菜「遅いよ、いつまでちんたらしてんの」
有太「ごめんごめん」
夏菜「じゃあ、行こ」
有太「母さん、行ってきまーす」
   有太の母、玄関に来る。
有太の母「行ってらっしゃい。帰ってくるの明日だっけ?」
夏菜「はい」
有太の母「そっか、楽しんでね」
有太「じゃあ行ってきます」
   家を出ていく。

〇キャンプ場
   綺麗な海に囲まれたキャンプ場にやっ
   て来た、4人。
幸「うおーすげえ!」
 × × ×
   BBQやトランプなどをして楽しむ4
   人。
 × × ×
4人で記念写真を撮る。
 × × ×
   夕方。有太、一人で海を眺めてる。
夏菜「有太!」
有太「…」
夏菜「桜たちは?」
有太「コンビニに飲み物買いに行った」
夏菜「そっか」
   有太の横に座る。
夏菜「あー風が気持ちいねー」
有太「コーラいる?」
夏菜「おー気が利くね」
   手元にあったコーラを夏菜に渡す。
夏菜「ありがとう」
   コーラの栓を開ける。しばらく無言で海を眺める。
夏菜「綺麗だね」
有太「…うん」
夏菜「なに、ぼんやり考えてんの?」
有太「いや、別に」
夏菜「別にってことないでしょ」
有太「そういうお前はどうなんだよ」
夏菜「私?」
有太「うん」
夏菜「私は…」
有太「なんだよ」
有太「…この波の一つ一つが時の流れみたいに見えてきて、これまでの人生振り返りながら、この先十年後、自分はどこにいて、誰といて、何をしてるのかなーって、そんなこと考えてた。きっと、また4人でここに来てお酒飲んでるだろうな」
有太「俺も…」
夏菜「そうだ、タイムカプセルしない?」
有太「タイムカプセル?」
夏菜「うん。十年後の自分と相手にそれぞれ手紙を書くの。紙と鉛筆あるからさ」

〇同・砂浜
   タイムカプセルが埋め終わった。埋めた位置に目印になるものがついてる。
夏菜「よし、これでオッケー。これならどこ
に埋めたか分からなくなる心配もないね」
有太「うん」
夏菜「十年後の今日、ここに来てお互いの手紙を読む。約束!」
   指切りげんまんをする。
   2人の目が合い、お互いが相手を意識する。
有太「あのさ…」
   有太の唇が夏菜の唇にゆっくりと近づく。お互いの顔が少し赤くなる。
幸「有太―、夏菜―」
   慌てて離れる。
幸「ん、何してんの?」
夏菜「あ、いや、別に」
有太「お、お前こそ、何してるんだよ」
幸「夜食買ってきたんだよ。てか、お前が俺に頼んだんじゃん」
有太「あ、そうだったな…」
   黒いレインコートを着た怪しげな男が、
   また遠くから夏菜を見つめてる。
  (回想終わり)

〇白浜高校・職員室(現在)
   学年会議。
学年主任「中西先生、中西先生、中西さん!」
   夏菜、ようやく気付き立ち上がる。
夏菜「…はい?」
学年主任「お願いできますか?」
夏菜「何がですか?」
   少し険悪な空気になる。
夏菜「すみません、ちょっと考え事してて」
学年主任「十年後の大切な人への手紙の後処理係です。引っ越しなどによって届かなかった手紙は、全てこちらに届くので、その手紙ができるだけ届くようにする役目です。
 やってくれませんか?」
夏菜「私がですか?」
学年主任「中西さんならこの学校のOBでもありますし、まだ若いので適任かと思いまして」
夏菜「…分かりました」
学年主任「ありがとうございます。本当助かります。では今日の会議は以上です。お疲れ様でした」
   会議が解散する。
夏菜「はあ(ため息)」

〇同・門・夜
   仕事を終え、学校の門を出ていく夏菜。

〇(回想)同・外観(十年前)

〇同・教室
先生「授業始めるぞー座れ」

〇同・門の前
   黒いレインコートを着て刃物を持った
   男が学校に入っていく。(刃物男)

〇(回想)同・教室
   授業中に隣のクラスから尋常じゃない
ほどの悲鳴が聞こえる。
有太「なんだなんだ」
   刃物男が夏菜たちの教室に入ってくる。
先生「あのーどちら様ですか?」
   先生、刃物男に蹴り飛ばされる。刃物
を取り出し、教室中に悲鳴が起こり、全員が後ろの方に逃げる。刃物男、夏菜の方に近づき、服を引っ張り教卓前に引きずりこみ、顔を殴打する。
夏菜「誰か、誰か助けて…」
刃物男「恨むなら、お前の父親を恨むんだな」
   刃物を振り上げる。
   有太、夏菜を助けようと刃物男ともみ
合う。
有太「早く逃げろ」
夏菜「有太…」
有太「早く…」
 もみ合っているうちに、有太が刺され
、そのまま倒れて意識が無くなる。夏菜、有太に近寄り
夏菜「(震え声)有太、嘘でしょ…」
刃物男「死ね」
刃物男、再び夏菜を殺そうと、刃物を振り上げる。
幸「おらっ」
  幸、背後から金属バットで刃物男を殴
打し、他の男子生徒たちが一斉に刃物男を取り押さえる。
夏菜、呆然とした顔で、有太の手を握り、肩を揺すぶる。
夏菜「(震え声)有太…ねえ有太…起きてよ…」
 虫の息の有太、出血がひどい。
夏菜「(震え声)ち…血を止めないと」
 有太の出血ケ所を手でおさえる。
幸「有太…救急車、救急車だ、早く(大声)」
先生「救急車をお願いします。白浜中の生徒がナイフで刺されて意識がありません。早く来てください」
夏菜「有太、死んじゃいや、ゆうたー」
(回想終わり)

○帰り道(夜)
 一人で歩いている夏菜。
夏菜の声「有太は、そのまま植物状態になった。一命はとりとめたものの、もう二度と目を覚ますことはない。本当は私がそうなるはずだったのに…。有太が眠ったままのになってからの日常は、自然と笑顔が少なくなっていた。今の私を有太が見たらどう思うだろうか。有太が傍から消えて、私は知った。有太という存在が私の心にどれだけ住んでいたかという事を」
  偶然有太の母に会う。
有太の母「夏菜ちゃん?」
夏菜「あ、お久しぶりです。おばさん」

〇林家・外観

〇同・リビング
   有太の母、お茶を持ってくる。
有太の母「どう?懐かしいでしょ」
夏菜「…はい。昔、ここでよく、おばさんの手料理を食べたのを思い出します」
有太の母「夏菜ちゃん、引っ越しちゃって全然会えてなかったから、久しぶりに会えて
 嬉しいわ」
夏菜「私も、元気そうな顔が見れてよかったです」
有太の母「幸君や桜ちゃんも元気にしてる?」
夏菜「最近は全然会ってないけど元気にしてると思いますよ。桜は結婚したって聞きましたし」
有太の母「そっか。夏菜ちゃんは、もう結婚したの?」
夏菜「いえ、独身です」
有太の母「じゃあ、お仕事は?」
夏菜「母校の高校で、社会科の教師をしています」
有太の母「そっか、頑張ってるんだね」
夏菜「…」
有太の母「あの事件からもうすぐ十年か…っ早いもんだね」
夏菜「はい…。あの」
有太の母「ん?」
夏菜「有太がこうなってしまったのは、私のせいでもあると思います」
有太の母「どうして」
夏菜「有太が私をかばおうとしなかったら、有太が死ぬことはありませんでした。逆に言えば、有太が守ってくれなかったら、私は、今この世にはいないと思います。本当にすみませんでした」
有太の母「馬鹿ね。有太が命をかけて夏菜ちゃんを守ったってことは、有太にとって夏菜ちゃんは、かけがえのない大切な存在だったってことでしょ。そんな夏菜ちゃんを恨んだりなんかしないわよ。…むしろ感謝してるの」
夏菜「えっ」
有太の母「有太の保険証見た時、驚いたわ。まさか、有太が脳死となった時に自分の体を全て、ドナーに提供する意思があったなんて」
夏菜「そうなんですか?」
有太の母「うん。私も、つい最近知ったの。シングルマザーで、ろくに傍にいてあげられなかったのに、いつの間にかそんな優しくて強い子に成長していて、誰に似たんだろうね。あの子がそんな強くて、優しくて、たくましくなってくれたのは、夏菜ちゃんのおかげなんでしょ?」
夏菜「そんな…私は何も」
有太の母「夏菜ちゃんみたいな、優しくて、真っ直ぐで、いつも笑顔な幼馴染が傍にいてくれたから、有太は真っ直ぐ生きることができたの。ありがとう」
夏菜「…(涙が溢れる)」
有太の母「本当に、ありがとう」
夏菜「ありがとうございます…」

〇同・玄関
夏菜「今日は、ごちそうさまでした。久しぶりに会えて、良かったです」
有太の母「うん。教師の仕事大変だろうけど、頑張ってね。たまにでいいから、有太に会いに行ってやってね」
夏菜「…はい。あの、一つ聞いてもいいですか?」
有太の母「何?」
夏菜「もし、有太の提供を必要としてる人が現れたら、有太の意思を尊重しますか?」
有太の母「…多分」

〇白浜高校・職員室
   夏菜と同じ社会科の教員、橋本(31)
   、鏡を見て自分の髪を整えてる。
橋本「ふう、よし」
   橋本、自分の頬を叩き、夏菜の方に向
かう。
橋本「あの、中西先生」
夏菜「はい?」
橋本「あの、この前は私が休んでいる間、授
 業を見てくれてありがとうございました」
夏菜「あ、いえ、困ったときはお互い様です」
橋本「それであの、そのお礼に今日おしょく
…」
おばさんの先生「ちょっと橋本先生、お茶入
 れてー」
   橋本が夏菜を食事に誘おうとしてた時
   に邪魔が入る。
橋本「いや、今はちょっと…」
おばさんの先生「ちょっとなによ、早くしな
さーい」
橋本「あー、もう分かりました」
橋本「ちょっとすみません、失礼します」
夏菜「あ、はい…」
橋本「お茶ぐらい自分で入れてくださいよ」             
おばさんの先生「いいじゃない、若いんだか
 ら」
橋本「いや、そういう問題じゃなくてですね」
   橋本とおばさんの先生がコントみたい
   な会話をしている。
校長「みなさん、紹介したい人がいるので集
 まってください」
   職員室に校長と、有太と顔がまるで同
じのスーツ姿の男が入ってくる。
校長「この度、産休でお休みになられた藤野
 先生の代わりに、新しく入られた先生を紹
介します。西本有祐先生です」
西本(26)「西本です。分からない事が多
 くて迷惑をかけるかもしれませんが、精一
 杯頑張るのでよろしくお願いします」
   西本がお辞儀をし、拍手が鳴る。
校長「えー西本先生には、藤野先生が担当していたクラスの数学と三年四組の副担任、元高校球児であるので野球部の指導をお願いしています。色々教えてあげてください。
 以上です。では今日もよろしくお願いします」
教職員「よろしくお願いします」
   教職員達が解散する。夏菜も一限目の授業に行こうとする。
校長「中西先生、ちょっといいですか」
夏菜「私ですか?」
校長「はい」
夏菜「なんでしょうか?」
校長「中西先生、三年四組の担任ですよね?」
夏菜「はい」
校長「じゃあ、西本先生の教育係をお願いできますか?」
夏菜「それだったら、私なんかよりもっとベテランの先生の方が…」
校長「こういうのは、近い年齢の方がいいと思うんですよ。お願いできませんか?」
夏菜「(戸惑いながら)分かりました…」
校長「ありがとうございます。じゃあ、そう言う事でよろしくお願いします」
   校長、職員室から出ていく。
西本「あの、よろしくお願いします」
夏菜「社会科の中西夏菜です。分からない事があれば何でも聞いてください」
   有太にそっくりな西本を見つめる。
西本「あの、僕の顔に何かついてますか?」
夏菜「あっいえ、知り合いの顔によく似ていたので」
西本「知り合い?」
夏菜「すみません、私一限目の授業があるので失礼します」
西本「あっ、すみません時間取らせて」
   夏菜、軽くえしゃくし授業へ向かう。

○同・教室
 夏菜が担任のクラス。ホームルームの
授業。プリントを配りながら
夏菜「十年後の大切な人への原稿用紙です。
家族、友人、恋人、誰でも構いません。そ
の大切な人へ十年後に渡す手紙を書いてく
ださい。十年後は、君たちも就職して働い
ていたり、夢に向かって突き進んでいたり
する年齢かと思います。そこらへんもイメ
ージして書いてください。この学校の伝統行事でもあるため、全員出し忘れのないようにしてください」
生徒A「先生、誰でもいいって事は自分に書いてもいいんですか?」
夏菜「まあ、誰でもいいって事は自分でもいいと思うよ」
生徒A「先生もこの学校の卒業生なんですよね?」
生徒B「じゃあ先生がいた頃もこの手紙書いたんですか?」
夏菜「まあ、伝統行事だからね」
生徒C「めんどくせえ伝統だな」
夏菜「…」
結衣「ねえ、涼ちゃんは誰に書くの?」
涼「まだ決めてないよ。結衣は決めたの?」
結衣「ううん、そうだ、涼ちゃんに書いてあげよっか?」
涼「えっ(顔が少し赤くなる)」
結衣「まあでも、こういうのはやっぱ家族かなー」
涼「…だよな」(ため息をつく)
夏菜「後の時間誰に書くか決めて書いてください。後、書く人の住所を調べて提出してください。もちろん手紙の中身は見ないので安心してください」

〇同・職員室(夜)
   残業で、西本と夏菜が残って作業をしている。
夏菜「西本君、後私やっとくからあがっていいよ」
西本「いえ、最後までやります。新人なのでもっと働かないと」
 × × ×
西本「あー終わった」(背筋を伸ばしながら)
夏菜「お疲れ様」
西本「中西先生は終わったんですか?」
夏菜「うん、これコピーしたらね。鍵、後やっとくからお疲れ様」
   夏菜、コピー機を動かし始める。
西本「あの、中西先生」
夏菜「ん?」
西本「もしよかったら、この後飲みに行きま
 せんか、僕が奢るんで」

〇居酒屋
西本「いやあ、いつもありがとうございます。中西さんみたいな優しくて綺麗な人が僕の教育係でよかった。本当に恵まれてるなー」
夏菜「ちょっと大丈夫?けっこう酔っぱらってるよ」
西本「いいんです。明日休みですから。それに、教師って結構忙しいから、こうやって飲める時に飲んどかないと」
夏菜「そっか」
西本「あの…どうして中西さんは、生徒からあんなに好かれることができるんですか?」
夏菜「えっ?」
西本「生徒たちの会話を盗み聞きしてたら、他の先生の愚痴なんかをよく耳にするんですけど、中西先生の話題では、いい情報しか聞こえてこないんです」
夏菜「どうだろう…。まあでもそう言ってくれる人がいるのは、何だか嬉しいね」
西本「あの、中西さんはどうして教師になろうと思ったんですか」
夏菜「…強いて言うなら幼馴染の影響かな」
西本「幼馴染?」
夏菜「西本君は?」
西本「僕は、学生の頃の担任の先生に憧れたからという、ごくありふれた動機です」
夏菜「へー」
西本「まあでも、あの頃の担任の先生のように、生徒に自分が伝えてあげれる事は、精一杯教えたいですね。そして自分の教え子
 がいつの日かその教えを糧に、社会に羽ばたいて立派な大人になってくれる。きっとそれが、教師のやりがいなんですよね」
夏菜「いい志だね」
西本「あれっ、こんな新人が何言ってるんだろう。はははっ」
夏菜「すごいよ、私は多分、生徒に西本君のような想いで接してあげれてないから…」
西本「…」
夏菜「さっき西本君、私は生徒に好かれてるって言ってたけど、それは多分違うな。私はきっと、その教師の理念みたいなのを忘れて、生徒と深く関わるのを避けてるだけなんだと思うな…。その結果がそう見えているだけであって」
西本「あの、さっき言ってた幼馴染って」
夏菜「昔好きだった幼馴染。ま、今はもういないんだけどね。彼の時が止まってしまったのと同じように、私もまた、いくつ年を重ねても、前に進めずにいるんだろうな…。
 あ、ごめんね、こんな暗い話しちゃって」
西本「いや、全然。むしろ良かったです。中西さんみたいな完璧そうな人でも、そうやって何かしら悩みを抱いてるのを知れて」
夏菜「そりゃあそうだよ」
西本「もう今日はどんどん飲んでください。
 いつもお世話になっているお礼なんで」
夏菜「じゃあ、乾杯!」
西本「乾杯!」

〇電車・車内
   夏菜、一人で乗ってる。

〇キャンプ場
   十年前のキャンプ場にやってきた夏菜。
   有太と埋めたタイムカプセルを掘り起こすため。

〇同・砂浜
   夏菜、目印の付いた部分を掘り始める。
 × × ×
   掘り起こしていくうちに、有太と夏菜の手紙を入れた瓶が出てくる。

〇同・ベンチ
   有太がが夏菜に書いた手紙を開く。
   手紙には「今を懸命に生きてますか?」と書かれてある。   

〇白浜高校・教室
   道徳の授業。授業テーマ「大切な人」
   と黒板に書いてある。夏菜、プリントを配っている途中で、手が止まる。
 × × ×
(フィードバック)手紙「今を懸命に生きていますか?」
 × × ×
(フィードバック)西本「生徒に自分が伝え
 てあげられることは、精一杯伝えたいです
 ね」
 × × ×
夏菜「ごめん、やっぱプリント回収して」
生徒「えっ、どうして?」
夏菜「みんなにプリントで、自分の想いなん
 かを書いてもらおうと思ったけれど、それ
じゃあいつも通りだしね」
   生徒達からプリントを回収し
夏菜「ありがとう。今日のテーマは、大切な
 人なのでテーマに沿って、私の大切な人に
ついて話そうと思います。その話で得られ
る事は、きっとあると思うので聞いてくだ
さい」
生徒「どうしたの先生」
夏菜「なんか私、いつもみんなに何も大切な
 事を伝えてあげれてないと思ってさ」
生徒「なんか先生かっこいい」
夏菜「私にはね、小さいころからいつも一緒
 にいた幼馴染がいたの。その人の名前は林
 有太というんだけど…」

〇(回想)歩道
   夏菜と有太が仲よさそうに歩いてる。
夏菜の声「彼は野球が好きで、将来教師を目
指していて、母親想いな、顔が本当に西本
先生にそっくりな人なんだ」

〇白浜高校・教室
   夏菜、後ろに立っている西本を指差す。
   全員が少し笑う。

〇(回想)有太の家・リビング
   夏菜、有太、有太の母、3人で鍋を食
べてる。
夏菜の声「彼の家と私の家は隣にあって、よ
く一緒に遊んだり、私、早くに母親を亡く
しているから、有太のお母さんがよく家に
招いてくれて一緒にご飯を食べたりして、
小さい頃からずっと一緒にいたんだ」

〇白浜高校・教室
夏菜「今日は、そんな彼の事をベースに、み
んなに伝えたいことを話そうと思います」
   夏菜、黒板に字を書き始める。「白浜
高校殺人未遂事件」と書く。
夏菜「みんなこの中学校で十年前に起きたこ
の事件の事、知ってるかな」
   生徒達、うなずく。
夏菜「私はその事件の現場にいたんだ…」

〇(回想)同・教室(十年前)
夏菜の声「私と有太はその時同じクラスで、
いつものように授業を受けていたの。そし
て隣の教室から悲鳴が聞こえ、教室に刃物
を持った男が入ってきて…」
   有太が夏菜をかばおうと刃物男ともみ
合う。
夏菜の声「私の父は警察官で、その刃物男は私の父に恨みを持っていて、その復讐で私を殺そうとしたの。そして…」
有太「早く逃げろ」
   有太、刺されて倒れる。夏菜が有太の
所に駆け寄り涙を流しながら
夏菜「有太、ねえ有太…、ゆうたー」
   (回想終わり)

〇同・教室
夏菜「彼はそのまま植物状態になったの。今
もベッドで眠っていて、私が何度問いかけ
ても、彼は表情一つ変えなくて悲しさがこ
みあげてくるんだ…」
   いつもと違い、真剣なまなざしで話を
   聞く、生徒達。
夏菜「彼が、私のそばから消えて気付いたんだ…。彼が、私にとってどれほど大切な存在だったかという事を。いや、元から気付いていたんだ。私の有太への気持ちは。でも、いつでも気持ちを伝えられると思っていて、あんまり深く考えないようにしてたんだと思う。それからの私は有太がいなくなって、何の目的も無く、無気力で、有太の人生を奪ってしまった事を引きずって、何も中身のない十年間を過ごしてきてしまったんだ。そして今も…」
生徒「じゃあ、先生が教師になったのって」
夏菜「うん…。バカみたいでしょ。いつまでも過去の事を引きずって前に進めてなくて」
西本「…」
夏菜「みんな、目を閉じてくれる?」
   生徒たちが目を閉じる。
夏菜「家族、恋人、親友、好きな人、誰でも構いません。誰か自分にとって大切な人をイメージしてください」
   数秒、間を置き
夏菜「目を開けてください」  
   生徒達が目を開ける。
夏菜「今君たちがイメージした人はきっと、これから先、長い人生を生きていくうえで、関わる事があると思います。私が伝えたい事は、その大切な人との当たり前の時間が、本当にかけがえのない時間だという事です。自分の大切な人との別れというのは、本当にいつ来てもおかしくないし、もしかしたら、今日来てしまうかもしれない…。私は、有太に自分の想いを伝える事ができなかったこと、有太に私への想いを聞くことができなかった事、ものすごく後悔している。
その後悔は今でも自分に取り付いています。だからみんなにはそういう後悔をして欲しくない。だから、今…今自分のそばにいてくれる大切な人との時間を当たり前だと思わず、その人との時間をかけがえのない時間だという事を知り、大切にしてください。
 有太は、自分が脳死となった時に、体の全てを適合者に提供する意向があるから、おそらく、もう長くは生きられないの。私はできる事なら有太に生きていてほしい。たとえ、これから先、絶対に目を開かないとしても。でも、人々はこれまで多くの血と命を散らして、誰かがその魂を受け継ぎ、それを次の者が受け継ぎ、それらが繰り返されて、今の生活は成り立っています。有太の意思は人の命を救うだけでなく、そういう歴史を作る一人の行動だと私は思う。これから言う事は、社会科の教員ではなく、一人の人間としての意見です。なぜ勉強をしなきゃいけないのか。数学の先生には失礼だけど、微分関数やサイン、コサインなんかの訳分からない数式などを覚えて何の意味があるんだろうと、他の科目も同様に、私は学生時代に思っていました。皆もそう思ったことは、少なからずあると思います。教員になった今でも、それは思っています。
 私が社会科を選んだのは決して、歴史や地理が好きだったわけではありません。大学で選んだ学部がたまたま社会学部だったからです。でも、実際に社会の勉強をして、学んで本当に良かったという思いが今になって身に染みています。少なくとも、社会科目は学んでおくと、将来必ず、自分の糧となります。特に歴史は。歴史を学んで、なぜ自分が、今ここに立っているのかを認識することによって、自分の人生への視野が大きく広がります。だから、みんなも今は受験のことで、そんな余裕はないかもしれないけど、時間ができた時には歴史を詳しく学んでみてください。私が二十五年生きてきて、みんなに一番伝えたい事を言います。今、私はみんなを見て話しているけど、本当に一人一人が輝いて見えるの。あなたも、あなたも、あなたも。時間はお金で買う事はできません。だから今、みんなには若さという武器があります。それは、本当に強い武器です。だからその武器を最大限生かしていろんな事に挑戦してください。君達が先生ぐらいの年齢になった時に若い時にもっとこうすれば良かった、と思う事が無いように今からの何気ない日常を大切にしてください」
   少し沈黙が続く。夏菜、真面目な表情
から下を向き微笑む。
夏菜「なんか、しめっぽい話になっちゃった
ね。最後にプリントを配るから今日の授業
で感じた事などを書いてください」
   夏菜がプリントを配る。

〇同・職員室(夜)
西本「お疲れ様です」
夏菜「あっ、お疲れ様」
西本「あの中西さん」
夏菜「ん?」
西本「今日の授業本当にすごかったです」
夏菜「ありがとう」
西本「なんか中西さんって、本当に心が
綺麗な人なんだなって思いました」
夏菜「そんなことないけどね」
   西本、少し小声で
西本「ほんと、中西さんって素敵な人ですよね」
夏菜「えっ?」(あまり聞こえてなかった)
西本「あっいえ、じゃあ僕はこれで、お疲れ様でした」
夏菜「お疲れ様」
   西本、足早に職員室を出ていく。
   夏菜、再びデスクワークをする。
   
〇病院。外観(夜)

〇同・有太の病室
   眠っている有太のそばにある椅子に夏
菜が座っている。
夏菜「昨日さ、初めて生徒に自分の伝えたい
事を熱意を持って伝えることができたんだ。
きっと有太もそういう事がしたくて教師を
目指してたんだね。有太、もう有太と一緒
にいられる時間も限られてきたから、後悔
しないように伝えておくね。有太が私のそ
ばから消えて、気付いたんだ。有太とが私
にとってどれほど大切な存在かという事に。できる事ならずっと一緒にいたかった…」
   夏菜、有太の手を握り、
夏菜「有太と温かい家庭を持って、たくさん
の思い出をもっともっと築きたかった。い
ろんな所に行って沢山の景色を見て一緒に
笑ったり、悩んだり、泣いたりして時間を
もっと一緒にしたかった。有太が私の事を
どう思ってくれてたかは知らないけど、自
分の想いは伝えておきたいんだ。届いてた
らいいな…」
   
〇白浜高校・外観(夜)

〇同・職員室(夜)
   夏菜と西本、十年後の大切な人への手紙の後処理をしている。机には大量に届かなかった手紙が積まれてある。
西本「これ、全部届けるんですか…」
夏菜「まあ、できる限りね」
西本「それにしても、すごい量ですね」
夏菜「去年のやつとかもあるからね」
西本「こんな仕事、良く引き受けましたね」
夏菜「この係は、かなりの重労働だから、毎
年誰もやりたがらないの。私も去年までは
やらずに済んでたんだけどね。こういうの
は、やっぱり若手の自分がやらないとね」
西本「僕も手伝いましょうか?」
夏菜「いいの?」
西本「もちろんです。むしろ、やらせてください」
夏菜「じゃあ、こっちの分お願いできる?」
西本「はい!」
 × × ×
   30分後、一つ一つの手紙の人の住所を調べていってる。西本1つの手紙を手に取り
西本「ん?」
夏菜「…」
西本「中西先生」
夏菜「どうしたの?」
西本「これって…」
   西本、1つの手紙を夏菜に見せる。
   その手紙には、拝啓中西夏菜様と書かれてあり、裏には林有太と書かれてある。
夏菜「え…」
西本「これって、前言ってた幼馴染からです
 よね」
夏菜「ごめん、ちょっと出ていいかな?」
西本「あ、はい」
夏菜「ありがとう」
   夏菜、走って出ていく。

〇道(夜)
   夏菜、手紙を握りしめながら全力で走ってる。

〇病院・有太の病室(夜)
   夏菜、学校から走ってきて、少し息が荒くなりながら病室に入ってくる。有太が、眠っているベッドのそばにある椅子に座り、手紙を開く。
有太の声(手紙)「夏菜へ、今前の席に座っ
 ている人に、手紙を書くのは変な感じだけ
ど、夏菜に書こうと思います。十年後の俺
は夏菜のそばにいれていますか、それとも
別々の道を生きていますか。夏菜に自分の
想いを伝える事ができていますか。多分、
自分は臆病なので今は伝える事ができなく
て、別々の道を歩んでいる事を想定して手
紙を書こうと思います(笑)。
夏菜は今何の仕事をしていますか、傍にど
んな人がいますか。そして今、俺が手紙を
書いている時のようにいつも笑っていられ
ていますか?小さい時から一緒に過ごしてきた俺から見た夏菜は、いつも笑顔で、お人好しで、自分の思った事ややりたい事はすぐ行動にうつすような性格です。俺はそんな夏菜の真っ直ぐな所や、優しい所を本当に尊敬しています。きっとそんな夏菜なら、今も夏菜の周りには沢山の人がいると思います。何か夏菜に苦しい事があったらきっと、その人達が、助けてくれると思い
ます。もちろん俺も(笑)。
そんな人達と夏菜らしくいつも笑顔で過ごしてください。そして夏菜の人生が幸せな人生になるように応援しています。夏菜に自分の気持ちを言う事ができなかったら、きっと後悔するので、今の自分の気持ちを残しておきます。小さい時からずっと夏菜のことが好きでした。(この手紙を見て気持ち悪いと思ったらごみ箱にでも捨ててください笑。)
 夏菜の人生が明るい色であることを願って
います。 林有太」
   夏菜、手紙を読み終わり大粒の涙を流
している。涙をふく。有太の手を握り
夏菜「ありがとう…」
   有太が夏菜の手を一瞬強く握り返す。
夏菜「え…」
   有太、眠ってまま。
夏菜「届いてたんだ…」

〇有太のお墓・(七年後) 
   夏菜、有太のお墓の前に立ってる。
夏菜の声「有太、有太が亡くなってからもう
 すぐ七年がたつよ。時の流れというのは早
 いもんだね。いつになっても有太との時間
は一生の宝物だよ。有太が私に言ってくれ
たように、いつも笑顔で幸せな人生を私は
今おくれているよ。本当にありがとう。有
太が私を守ってくれたように今度は私が誰
かを守れるような人間になるように頑張る
よ。有太…一生、忘れないからね」
   西本と子供が少し遠くに立っている。
西本「夏菜、そろそろ行くよー」
子供「お母さん、早くー」
   (西本と夏菜は結婚している)
夏菜「分かったー」
   夏菜、有太のお墓に向かって笑顔で
夏菜「また来るね、じゃあ」
   夏菜、二人のもとへ走っていく。
   三人が手を繋いで歩いてく。
夏菜「夜ごはん何がいい?」
子供「ハンバーグ!」
夏菜「じゃあ帰りにスーパーで材料買って行
こうか」
子供「うん!」
夏菜の声「有太、あなたの人生は幸せでした
か、私は有太と出会えて本当に…幸せだっ
たよ」
   


   

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