慎みある傘が欲しい 日常

日常のゆるーいトラブル
きし 37 0 0 11/07
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第一稿

人 物
 山田節子(28) 事務員
 北園杏奈(28) 節子の同居人
 羽柴爽太(25) 節子の後輩
 青野友美(25) 節子の後輩
 麻薬取締官


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人 物
 山田節子(28) 事務員
 北園杏奈(28) 節子の同居人
 羽柴爽太(25) 節子の後輩
 青野友美(25) 節子の後輩
 麻薬取締官


〇節子と杏奈の家・リビング(朝)
   山田節子(28)が険しい表情でホワイト
   ボードを見つめ、ペンを手に取る。

〇ホワイトボード
   【金:ごみ捨て→♡あんな♡ 今度こそ
   絶対‼ 】とある。下に追記。【次回、
   あなたを一緒に捨てる】とある。

〇路上・ゴミ捨て場・外(朝)
   雨が降っている。
   節子、折り畳み傘とゴミ袋を持って立
   っている。眉間の皺を深くする節子。
   北園杏奈(28)がゴミ袋を枕にし、ゴミ
   袋を抱えて眠っている。
節子「不浄の権化め」
   節子、杏奈の顔めがけてゴミ袋を放る。
杏奈「うわっぷ」
   杏奈、鈍間にゴミ袋を手で払う。去っ
   ていく影を目で追う杏奈。
   節子の後ろ姿がある。
   杏奈、立ち上がり、節子に叫ぶ。 
杏奈「ちょい! 無言かーい⁉」
   節子、振り返る様子はない。
   遠くなっていく節子の背中。
   杏奈、肩の力を抜いて
杏奈「何だよ、一段と機嫌わりいな。Xデー? 
 ……やべ。今日金曜だ」
   杏奈、自分の腕に顔を埋め、くしゃみ。
杏奈「くっさぶ!」
   うんざりした顔の節子。背景に杏奈。

〇㈱ワダコーヒー・事務所・中
   広すぎない事務所。
   エプロン姿の羽柴爽太(25)が、節子の
   様子を眺めている。
   只管、パソコンを操作する節子。
友美の声「僕は気づいてしまった。山田節子
 は人間ではない。彼女の本体。それは、目
 の前のパソコンだ。よく見れば、指の一本
 一本が、パソコンに繋がる回線ではないか。
 山田は事務員のフリをして、自立型エネル
 ギーを充電しているのだ!」
   羽柴、呆れた表情で振り返る。
   青野友美(25)が、羽柴の後ろで茶目っ
   気たっぷりに笑っている。
友美「気づいた? 本当の山田さんに」   
羽柴「好きなの? SF」
友美「うーん。無心な人って妄想力煽るよね」
   羽柴、再び節子に目を向ける。
   節子、羽柴と友美を無感情に見ている。
   羽柴、慌てて節子に駆け寄る。
羽柴「山田さん、すみません」
   節子、手を止めず事務的に
節子「何か御用ですか?」
羽柴「あ、店頭で豆の大口発注いただいて」
   節子、羽柴に付箋を渡して
節子「ここに書いて置いてください」
羽柴「はい。……山田さんって、休日どうし
 てるんですか? 読書とか?」
節子「本は読みません」
羽柴「そうですか。まあまあまあ、僕もあま 
 り……。僕、映画好きで。映画は」   
節子「映画も特に見ません」
   節子、無表情でパソコンを見ている。

〇節子と杏奈の家・節子の部屋・中(夜)
   整理整頓が行き届いている室内。
   日本の近代小説が収められている本棚。
   テーブル上、パソコン横にはローマの
   休日・日の名残りのパッケージ。
杏奈の声「ちゃんと答えてあげろよー」

〇同・ダイニングキッチン・中(夜)
   節子、不機嫌に夕飯を食べている。
   食卓には和食。異常に品数が多い。
   杏奈、節子の対面に座りながら
杏奈「かわいい子じゃんか、そいつ」
節子「……だから、大して親しくもないのに、
 本や映画の話題を――」
杏奈「訊くのは、デリカシーがないね? 聞
 いてたって。聞いた上で言ってんだって」
   不機嫌な節子。
   スマートフォンの着信音。
   節子、すぐにスマートフォンを確認す
   る。節子の表情は明るい。   
   杏奈、注意深く節子を眺めながら
杏奈「例の彼氏?」
節子「いや、そんな。彼氏とかでは……」
杏奈「来月5日十四時、八重洲口で会う男?」
節子「まあ」
   席を立つ節子。玄関の方へ消える。
   杏奈、両手で大袈裟に耳を覆う。目を
   固く閉じて、開く杏奈。

〇同・廊下・中(夜)
   節子、玄関を見る。
   玄関脇には濡れたビニール傘。
   顔を顰める節子。
   節子、物置の扉を開ける。
   物置、段ボール一つ分の空きがある。
   節子、眉間に皺を寄せる。

〇同・ダイニングキッチン・中(夜)
   節子、乱暴に扉を開けて入ってくる。
節子「荷物は?」
   杏奈、テーブルに頬杖をついたまま
杏奈「知らんし」
節子「段ボール! 私が預かってたやつ!」
杏奈「知らんし」
節子「私に覚えがないんだから、あなたに決
 まってるでしょう⁉」
杏奈「……物取るのに動かしたら、落として。
 開けたら中壊れてたから捨てた」
   節子、杏奈の腕を強く叩いて、杏奈の
   頬杖を外す。
節子「信じられない‼ 私の物でしょ⁉」
杏奈「いや、そもそもよ? SNS彼女に大
 事な荷物を、預けた奴が悪くね?」
   節子、半ば喚きがちに
節子「ゴミは出さない! 人の物は壊す! 
 詫びれるどころか、勝手に捨てる! 雨の
 度にビニール傘は買ってきて‼ ……もう
 出てって」
   節子、スマートフォンを片手に急いで
   自室に入る。
   杏奈、両手で顔を覆い、何度も擦る。
   そのまま顔の肉を下に引っ張る杏奈。

〇同・杏奈の部屋・中(朝)
   薄暗い部屋に物が散乱している。机の
   上には5色入りの油性ペンが様々な方
   向に転がっている。
   節子、ゴミ袋片手に杏奈の部屋にそっ
   と入る。躓く節子、咄嗟に杏奈を見る。
   杏奈はベッドで爆睡している。
   節子、杏奈の寝顔を睨みつけた後俯く。
   床上には、閉じたビニール傘。
   節子、ゴミ袋の口を大きく広げたとこ
   ろで、部屋の一点に目を留める。
   節子宛の段ボール。差出人は外国人。
   節子、杏奈の寝顔を再び睨みつけ
節子「盗人とは、これ如何に……」
   杏奈、変わらず爆睡である。

〇同・同・中
   スマートフォンの着信。
   杏奈、ベッドに突っ伏したまま応えて
杏奈「はい」
   しばらくして、飛び起きる杏奈。
   杏奈、部屋の隅に目を向け、段ボール
   がないことに気づく。
   杏奈、急いで部屋を飛び出す。
   しばらくして、戻る杏奈。床上のビニ
   ール傘を拾って、再び飛び出す。

〇厚生労働省・出入口(夕)
   雨が降っている。
   節子、麻薬取締官と一緒に出てくる。
麻薬取締官「傘、持ってきます」
節子「いいえ、大丈夫です。ではまた後日」
   節子、麻薬取締官に深く頭を下げる。
   雨の中、駆けていく節子。

〇路上(夕)
   靴擦れした節子の足首。
   節子、ヒールを片手に俯いて歩く。
   節子の前に影。顔を上げる節子。
   杏奈、閉じたビニール傘を片手に、息
   を切らして立っている。
杏奈「ボロボロじゃん。珍しい」
   節子、しばらく無言で立ち尽くして
節子「……ラブコネクションっていうの」
   黙っている杏奈。
節子「用語も知ってた? ……玄関開けたら
 マトリだよ? よく黙ってられるね? …
 …対応したなら、ちゃんと言って」
杏奈「……言ったら、もう二度と誰かに心開
 かないかもって……ごめん」
   節子、言葉を飲み込んで、杏奈を一瞥。
   節子、杏奈から逃げるように歩く。
杏奈「ちょっと!」
   杏奈、追いながら節子に傘を広げる。
節子「もう意味ない」
杏奈「濡れないに越したことないんだから」
節子「……身に着けてるもの全部! 縁起悪
 いから捨てろってことよ」
杏奈「空に当たんなって」
   節子、視界の端に傘を捉えて見上げる。
   手書きで彩り豊かにデザインされたビ
   ニール傘。
   節子、目を細めて
節子「何、この傘」
杏奈「ビニール傘でも、ちゃんと愛着湧くで
 しょ?」
節子「バカっぽい。傘に慎みが足りない」
杏奈「賢く慎みある傘とは? ……ああ、折
 り畳み? 私が持ってる訳ないじゃん!」
   気まずそうに、速足で歩く節子。
   後ろから傘を差して付いてくる杏奈。

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