Dr.LOSER II(20枚ver.) ドラマ

歯科医・勝呂進一(40)、またの名を「Dr.LOSER(=敗北者)」。今日、彼の元を訪れてきたのは、旧友であり内閣官房新型ミュータンスウイルス感染対策推進室室長の正木喬矢(40)だった。
マヤマ 山本 11 0 0 10/19
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第一稿

<登場人物>
勝呂 進一(40)歯科医
正木 喬矢(40)厚生労働省職員
伝田 蛍(23)同
須田 卓也(10)患者
須田 麗華(36)須田の母

足利 美南(28) ...続きを読む
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<登場人物>
勝呂 進一(40)歯科医
正木 喬矢(40)厚生労働省職員
伝田 蛍(23)同
須田 卓也(10)患者
須田 麗華(36)須田の母

足利 美南(28)写真のみ、故人



<本編>
○メインタイトル『Dr.LOSER II』

○勝呂歯科・処置室
   須田卓也(10)の診察をする勝呂進一(40)。
勝呂「はい、おしまい。口ゆすいで」
勝呂の声「虫歯はありませんでした」

○同・待合室
   レジ台を挟んで向かい合う勝呂と須田、須田麗華(36)。
勝呂「ではまた半年後をめどに、定期健診に来てください」
麗華「ありがとうございました」
須田「先生、またね」
勝呂「ちゃんと歯磨けよ」
   出ていく須田と麗華。尚、ドアにはドアベルが設置されている。
   ドアに背を向け、奥に向かう勝呂。その時再びドアが開き、ドアベルが鳴る。
勝呂「? (振り返り)忘れ物?」
   そこに立っている正木喬矢(40)と伝田蛍(23)。
勝呂「……」
正木「おいおい俺だよ、正木だよ。まさか、『忘れた』とか言わないよね?」
勝呂「予約の名簿に、そんな名前は無かったな」
正木「そりゃあ、予約した覚えはないからね」
勝呂「……まぁまぁ出世してるらしいな」
正木「さすが、耳が早いね。けど『まぁまぁ』じゃない。内閣官房新型ミュータンスウイルス感染対策推進室室長だ」
蛍「正木の部下の伝田と申します」
勝呂「で、そんなそこそこのお偉いさんがこんな僻地まで何の用だ?」
正木「いや~、コッチはそんなに感染が進んでないみたいだな。東京はもう大変で……」
勝呂「用が無いなら帰ってくれ。仕事中だ」
正木「奇遇だね。俺達もだ」
蛍「私達と一緒に、東京まで来てください」
勝呂「俺が? 何のために?」
正木「おいおい、この流れでダンスパーティーに誘うヤツが居ると思うか?」
勝呂「大学時代だけで三回は誘われたな」
蛍「私も先月に」
正木「……まぁ、二人の過去に何があったかは知らないが、進一が今やるべきことは一つ。虫歯の治療だ。違うか?」
勝呂「歯科医師なんて、東京にも居るだろ?」
正木「腕のいい歯科医師は、そう居ないね」
勝呂「買いかぶるな。もうあの頃の俺じゃない」
正木「安心しろ。俺達も、ある程度の衰えを差し引いた上で頼んでいるからね」
勝呂「褒められてんだか、貶されてんだか」
正木「いいから、東京に戻って来い。進一はこんな所でくすぶっているような男じゃない」
   ドアベルが鳴り、駆け込んでくる須田。
須田「先生!」
勝呂「? どうした、忘れ物か?」
須田「母ちゃんが、母ちゃんが!」

○同・前
   口元を押さえ苦悶の表情を浮かべる麗華の元に駆け寄る勝呂と須田。
須田「母ちゃん」
勝呂「どうされました?」
麗華「歯に痛みが……」
勝呂「とりあえず、中へ」

○同・診察室
   麗華の口元のレントゲン写真を見つめる勝呂、正木、蛍。
勝呂「なるほど……」
蛍「患者の名前は須田麗華、三六歳。ディアス社の新薬は、当時妊娠中により未使用……。どうやら、新型ミュータンスに感染した訳ではなさそうですね」
正木「なら、一安心だね」
勝呂「……いいや。最悪、神経を取る必要があるかもしれないな」
蛍「え? そうは見えませんが……?」
勝呂「削ってみればわかる」
   手術着のような服に着替え始める勝呂。
正木「おいおい、まさか一人で治療しよう、とか言わないよね?」
勝呂「仕方ないだろう? 助手が居ないんだ」
   勝呂の視線の先、足利美南(28)の遺影。
勝呂「それとも、正木が手伝ってくれるのか? 曲がりなりにも免許は持ってるもんな」
正木「あぁ、手伝うさ。俺じゃないけどね」
   蛍に目をやる正木。
蛍「……え、私?」

○同・処置室
   診察台に横になる麗華の歯にラバーダム(=細菌を含んだ唾液が他所に流入しないよう、治療する歯以外を覆うゴム製のシート)をかける勝呂と蛍。ともに手術着のような服装。入口付近でその様子を見守る正木と須田。
蛍「(ラバーダムを含む器具類を目にし)こんな地方の歯科医に、これだけの設備が……?」
勝呂「お前の部下、本当に使えるのか?」
正木「そりゃあ、国家公務員だからね」
勝呂「(勝呂からの答えを諦め、蛍に)使えないと判断したら即、叩き出す」
蛍「では『使えなくはない』と思っていただけるように努力します」
勝呂「ふん。では、治療を開始する」
    ×     ×     ×
   麗華の治療をする勝呂と助手の蛍。
勝呂「(歯を削りながら)ほらな」
蛍「本当だ。こんな深くまで虫歯が……」
    ×     ×     ×
   マイクロスコープ(=顕微鏡のような器具)を使って、麗華の治療をする勝呂と助手の蛍。
   入口付近に立ち、その様子を見守る正木と須田。
須田「先生、凄ぇ~」
正木「さすが。衰えるどころか、進化してるとはね」

○同・待合室
   レジ台を挟んで向かい合う勝呂と須田、麗華。
勝呂「まだ麻酔が効いているので、あと二時間は食事しないようにお願いしますね」
麗華「本当に、ありがとうございました」
須田「先生、かっこ良かったよ」
勝呂「知ってる」
   一礼し、出ていく須田と麗華。
   勝呂の元にやってくる正木と蛍。
正木「さすがは勝呂先生。ゴッドハンドは健在で何よりだね」
勝呂「いや(蛍に)良い助手がいたおかげだよ。どこで経験を?」
蛍「研修で、多少」
勝呂「さすがは、国家公務員って所か」
正木「おいおい、国家公務員と歯科助手の腕は何の関係もないからね」
勝呂「(ため息をつき、蛍に)コイツの部下をやってる事、心底尊敬するわ」
蛍「人の心配をしている場合ではないと思いますけどね」
勝呂「?」
正木「なぁ、進一。お前今『伝田のおかげ』って言ったよね?」
勝呂「言ったけど……」
正木「って事は、この恩を返したいよね? そう思ってるよね?」
勝呂「(察して)」

○走る車(夜)
   都会を走っている。

○車内(夜)
   運転する蛍と後部座席に座る勝呂、正木。窓から見える様々なネオン。
勝呂「あーあ、来ちまったな、東京」
正木「何でそんな残念そうなんだ?」
勝呂「星が見えん」
正木「随分ロマンチストだね。いつからそんな事言うようになった?」
勝呂「今日から」
正木「そうか。まだまだ俺の知らないお前が居たとはね」
勝呂「……ふん」
   停まる車。
蛍「着きました」

○高級ホテル・外観(夜)
   外観からして高そうなホテル。

○同・エントランス(夜)
   着飾った人々が出入りしている。
勝呂の声「これはまた、凄い所だな」

○同・エレベーター(夜)
   並んで立つ勝呂と正木。
勝呂「こんな所に患者が居るのか?」
正木「これだから日本人は良くないね。こんな時間に仕事させる訳ないだろ?」
勝呂「あ、そういう事? だったら、ビジネスホテルにしてくれよ。落ち着かないわ」
正木「おいおい、税金でこんな所に泊まれると思ってるの? 末恐ろしいね」
勝呂「え、じゃあ……?」
   エレベーターが止まり、扉が開く。

○同・大広間(夜)
   ダンスパーティーが行われている。
   入口に立つ勝呂と正木。
正木「ダンスパーティーだよ」
勝呂「……帰っていいか?」

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