Blue Journey ドラマ

高校の修学旅行に行けなかった達弥と始は、同じく修学旅行に行くことの出来なかった綾乃と学校を抜け出し、街に繰り出す。しかし、行動を共にしているうちににそれぞれが抱えた問題について知ることとなる。
松上全也 7 0 0 10/07
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第一稿

登場人物

香山 達弥(17)……高校2年生。
中村 綾乃(17)……高校2年生。
荻野 始(17)……高校2年生。
高倉 京子(53)……高校の副校長。
荻野 奈美( ...続きを読む
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登場人物

香山 達弥(17)……高校2年生。
中村 綾乃(17)……高校2年生。
荻野 始(17)……高校2年生。
高倉 京子(53)……高校の副校長。
荻野 奈美(20)……始の姉、キャンペーンガール。
島野 隆二(17)……達弥の中学時代の同級生、建設作業員。
清里(23)……大学生、綾乃のバイトの先輩
立川(17)……高校2年生、達弥と始のクラスメイト。
少女(5)……達弥と始の住む団地に住む。
少女の母親(25)
スーパーの店長(50)
警察官
カレー屋の店員

○団地(早朝)
  団地の棟がひしめきあう様に立っている。
  薄暗い中、ボストンバックを持った高校生の一団が歩いている。
高校生1「沖縄ってさ、まだ暑いの?」
高校生2「知らねぇ、一応、長袖一枚持ってきたけど」
高校生3「間違えて成田行く奴とかいないかな」
  笑っている一団に団地の一室の窓から銃が向けられる。

○同・達弥の部屋
  電気の点いていない部屋で香山達弥(17)がモデルガンを構えている。  
  沈鬱な表情。

○タイトル

○同・B棟外
  明るくなっている。
  高校の制服を着た荻野始(17)、B棟と書かれた棟から出てくる。
  上を見ると、ベランダに少女(5)が立っている。

○高校・玄関
  達弥、靴を履きかえている。
  他の生徒たちはおらず、上履きだけが並んでいる棚が並んでいる。

○同・二年生教室
  達弥、教室に入ると黒板に「図書室に集合してください」と書かれている

○同・階段
  達弥が階段を降りていると、始が昇って来る。
始「達弥」
達弥「始、図書室だってさ」
始「えー、ここまで来たのに」
達弥「俺なんて教室まで行ってんだよ」
始「しょうがない」
連れだって階段を降り始める。
達弥「休みにしてくれればいいじゃんな」

○同・図書室
  達弥、図書室に入ろうとすると座っている女子の背中を見る。
始「どうした?」
達弥「あれ、誰? 俺たちだけじゃないの?」
中村綾乃(17)が振り返る。
始「中村」
達弥「知ってんの?」
始「F組の、話したことはないけど」
  始が笑顔で小さく手を振るが、綾乃、応えず、前を向く。
  二人の後ろから教頭の高倉京子(53)がやって来る。
高倉「ほら、席について」
達弥「席って?」
高倉「どこでもいいから」
二人、綾乃から離れて座る。
高倉「(笑いながら)もっと近づけばいいのに」
高倉、分厚いプリントを配りだす。
高倉「先生達からの課題のプリントがあります。やって提出すること」
  綾乃、プリントを受け取り、ため息をつく。
  高倉、達弥たちに渡しながら
高倉「ちょっかい出しちゃダメよ」
達弥「出さないっすよ。それに話しかけるなオーラが出てるし」
始「それよりこれ全部やるんですか?」
 高倉、少し笑い
高倉「まぁ、そうね」
達弥「えー」
高倉「まぁ、三日あれば何とかなるでしょ。また様子見に来るから」
× × ×
  LINEの画面が映し出される。
  「これから飛行機!!」などのメッセージに打ち返している綾乃。
  目の前にコンビニのシュークリームが差し出される。
  高倉が立っているのを見て、ヤバッという顔をする綾乃。
高倉「差し入れ、食べない?」
綾乃、受取る。
綾乃「ありがとうございます」
  達弥と始も課題をやりながら食べている。
  綾乃、包装を破き食べ始める。
  × × ×
  達弥がシュークリームの包装を丸めてゴミ箱に投げ入れるが外す。
  それに構わず、スマホを見ている綾乃。
達弥「あーあ」
  続いて、始が投げると、
達弥「リバウンド」
  達弥が叩き落とす。
始「おい」
包装が綾乃の元に飛んで当たる。
綾乃が顔を上げ、じっと二人を見る。
達弥、気まずそうな顔をする。
始が代わりに
始「悪い、ごめんな」
始、包装を拾い捨てる。
  バツの悪そうな達弥に
始「終了、ハイ、試合終了でーす」
  達弥、真剣な口調で
達弥「始」
始「どうした?」
達弥「帰ろう」
始「はぁ?」
  綾乃、顔を上げる。
達弥「早退しよう」
始「何でだよ?」
達弥「もったいねえよ。他の奴は遊んでんのに、俺達だけ課題なんてさ」
  二人のやり取りに聞き入っている綾乃。
始「いいけどさ」
達弥「決まり! 映画でも見に行こうぜ」
  二人、バッグを取り、図書室を出ようとすると、綾乃が立ち上がる。
綾乃「待って」
二人、驚き
達弥「何?」
綾乃「私も行く!」
二人「え!」
  綾乃、シュークリームの包装を丸めてゴミ箱に投げる。
  綺麗にゴミ箱に入る。
綾乃「ダメ?」
二人、顔を見合わせる。

○同・校庭
  高倉、草むしりをしている。
  綾乃を真ん中にして三人がやって来る。
綾乃「先生」
高倉「どうした?」
綾乃「これ」
  綾乃は堂々と、達弥と始は恐る恐る
早退届を出す。
  高倉、受け取り
高倉「三人とも体調不良?」
綾乃、満面の笑みで元気よく
綾乃「はい!」
  達弥と始、堂々とした綾乃に気圧されている。
  高倉、苦笑し
高倉「わかった。危ないとこには行っちゃダメだよ」

○同・校門前
綾乃「ね、何見に行く?」
始「何って?」
綾乃「映画に行くんでしょ?」
達弥「別に決めてないけど」
綾乃「じゃあさ、見たいのがあるんだけど」
達弥「いいけど」

○映画館・受付
  達弥と始がハリウッドのアクション映画のポスターを眺めている。
達弥「これやってたんだ」
始「面白そうだな」
達弥「1が良かったんだよ」
始「中村、何買いに行ったのかな」
達弥、映画館を見廻し
達弥「なぁ」
始「どうした?」
達弥「最後に映画館に来たのっていつ?」
始「さあ、お前は?」
達弥「俺もわかんねえや」
綾乃がやって来る。
綾乃「チケット買ってきたよ」
  綾乃が二人にチケットを渡すと「応援上映」と書かれている。

○同・会場
アニメの美青年が囁きかけてくる。
美青年「僕の秘密知りたい?」
綾乃&客たち「教えて!」
美青年「どうしようかな?」
  両端の二人に
綾乃「ちゃんとお願いしてよ。じゃないと教えてくれないじゃん」
始「そうなの?」
達弥「んなわけねえだろ」
綾乃「いいから」
× × ×
登場人物たちが抱き合っている。
美青年「大丈夫、僕がいるよ」
綾乃、達弥のYシャツで涙を拭う。
達弥「おい、やめろよ」

○カレー屋
  三人それぞれの前にナンのついたカレーが置かれている。
  綾乃、アニメのキャラクターのキーホルダーをカレーの前に並べて、
  スマホで写真を撮っている。
始「何してんの?」
綾乃「ご飯と撮るのがいいって」
始「何だよ、それ」
綾乃「サイリウム持ってくれば良かった」
達弥「中村って」
綾乃「綾乃でいいよ」
達弥「結構なアレだよな」
綾乃「アレって何?」
始に
達弥「相当な、なぁ?」
  始もわかったような表情で頷く。
  綾乃、ムッとした顔。
始「今頃、皆も飯かなぁ?」
達弥「あの、なんとかソバでも食ってんじゃないか?」
始「ソーキソバ」
綾乃「あと、タコス。食べたかったな」
始「まぁ、でも今、インドにいるんだしいいじゃん」
  カウンターからネパール人の男性店員が顔を出し
店員「違う。ここネパール。お客さん、今食べているのネパールのカレー」
始、頭を下げ
始「すんません」
綾乃、カレーを食べてため息をつく。
達弥「食った途端にため息つくなよ」
綾乃「そうじゃなくて」
達弥「どうした?」
綾乃「バレたなぁって思ってさ」
達弥「何が?」
綾乃「貧乏。中学までは割と普通だったんだけどな」
始「中学の修学旅行は行けたの?」
綾乃「行けたよ。京都と奈良。どこだった?」
始「俺は中学の時も行けてないから」
綾乃「そうなの?」
達弥「俺は修学旅行行ったことないよ」
綾乃「小学校も?」
達弥「行ってない」
  綾乃、聞きすぎたことを詫び
綾乃「ごめん」
  打ち消すように笑い
達弥「謝るなよ」
店員がラッシーを持ってくる。
始「注文してないけど」
店員「店のおごり」
三人「ありがとうございます」
三人、頭を下げる。

○ゲームセンター
三人でマリオカートをやっている。
達弥「これ負けた奴はアイスおごりな」
綾乃「(驚き)ラスト1周でそれ言う?」
始「俺たちルールだから」
綾乃「ていうか最初に言うべきでしょ」
達弥「ついでに言っとくと、俺、マリオカート負けたことないから」
綾乃「本当に?」
始「いや、立川に負けたじゃん」
  綾乃、「立川」の響きに反応し、達弥を見る。
達弥「ああ、あいつ、すげえ上手かったな」
綾乃「立川くんと仲いいの?」
始「同じクラスだし、話はするけど」
達弥「でも、一回ここでばったり会って遊んだくらいだよ」
綾乃、耳に入らず
綾乃「立川くんってどんな人?」
達弥「いい奴だけど」
  始、気づき、からかう口調で
始「お前、ひょっとして」
綾乃、達弥の方に身を乗りだし
綾乃「ねえ、紹介してくれない?」
達弥「紹介って」
達弥の運転の邪魔になる綾乃。
達弥「わかった、わかったからどけよ」
綾乃「本当? 本当?」
綾乃、達弥のハンドルに手をかける。
達弥「おい、ふざけんなよ」
綾乃、笑い
綾乃「約束だよ」
達弥「お前わざとやってんだろ」
その間に始がゴールする。
始「よっしゃあ!」
達弥「あーあ」
嬉しそうな綾乃。

○同・ベンチ
三人、アイスを食べている。
達弥「何で俺が出すんだよ」
綾乃「美味しいね」
始「お前、すげえな」
素知らぬ顔でアイスを舐める綾乃。
始「つうかさ、何で立川なの? 立川ってさ」
綾乃、食い気味に
綾乃「優しいから」
達弥「話したことあんの?」
綾乃「うん」
達弥「じゃあ、別に俺たちが紹介しなくてもいいじゃん」
綾乃「一回だけだしさ。それに結構ひどい事しちゃったし」
始「何したの?」
綾乃「うーん」
達弥「言えよ。じゃないと紹介出来ないだろ」
綾乃「1年の時、入学した時に教科書買うじゃん」
達弥「ああ」
綾乃「それでさ、お昼のお金無くなっちゃって、購買で途方にくれてたんだ。そしたら、立川くんが来て、千円出して来てくれたの『これ良かったらって』」
始「で、どうしたの?」
綾乃「カッとなって……はたき落とした……何であんな事しちゃったんだろう」
達弥「でも気持ち少しわかるよ」
始、俯く。

○団地・B棟(夕方)
  ベランダで少女が他の棟の部屋の灯りを見ている。

○ファミレス・厨房(夜)
  使用後の食器を持ってくる店員の制服を着た綾乃。
シェフ「中村さん、休憩入っていいよ」
綾乃「はい」

○同・休憩室
  綾乃、入るとバイトの先輩の清里(23)が週刊誌を読んでいる。
  綾乃、嫌悪感を露わにする。
清里「おう」
綾乃「どうも」
  ゴミ袋にゴミが溜まっているのを見つける。
  綾乃、ゴミ袋を縛り始める。
清里「おっ、サンキュー、よく気づくじゃん」
  綾乃、無視する。
清里「綾乃ちゃんってさ、なんでバイトしてんの?」
綾乃「お金欲しくて」
清里「ふーん、まぁ、そんなもんだよね」
綾乃「はぁ」
清里「じゃあさ、高校卒業したらもっといい仕事教えてあげるよ。人気が出りゃひと月で100万稼げるよ」
清里、下品な笑顔。
  綾乃、ゴミ袋を持ち、外に出る。

○ゴミ捨て場
綾乃、ゴミ袋を投げ入れる。
綾乃「だったらあんたがやれ」
  電柱に、高額バイトの張り紙が貼ってある。 
  綾乃、勢いよく剥がす。

○コンビニ・レジ
  店員姿の始、伏し目がちに突っ立っている。
  建築作業員の格好をした客がカップラーメンと炭酸飲料をレジに出す。
始「いらっしゃいませ」
客「始」
始「隆二」
客は島野隆二(17)。
始、笑顔になる。
隆二「久しぶりじゃん」
始「1年ぶりか」
隆二「ここで働いてんの?」
始「万引きすんなよ」
隆二「じゃあ安くしてくれよ」
始「無理だよ 372円」
  隆二、金を払い
隆二「今度、飯でも食いに行こうぜ。俺奢るからさ」
始「本当かよ」
隆二「なぁ、高校楽しいか?」
始「まぁまぁだよ」
隆二「そうか」
始「じゃあな」
隆二、去ろうとすると、向き直り戻ってくる。
隆二「なぁ、今の話本当だよな」
始「今の話って?」
隆二「今度、飯食おうっていうの。本気にしていいんだよな」
始「ああ」

○スーパー・食品売り場
  小学生の男の子がおにぎりをポケットに入れようとする。
  その手首を掴むエプロンをした達弥。
  男の子が怯えていると、達弥、首を振り、無言でおにぎりを棚に戻す。
  達弥、男の子を離す。
  男の子、走り去って行く。
惣菜を回収し始める達弥。
唐揚げを見ている。
女性店長(50)がやって来る。
店長「それ持って帰る?」
達弥、笑って打消し
達弥「いや、大丈夫っす」
店長「そう」
達弥、惣菜を回収ケースに入れる。

○学校・図書館(朝)
  達弥と始が話している。
始「昨日、バイトしてたらさ。誰が来たと思う?」
達弥「えー? 誰だよ」
始「実はさ」
綾乃、登校してくる。
綾乃「おはよう」
達弥「うっす」
始「おはよう」
綾乃「早退届もらってきたよ」
綾乃、早退届を見せる。
達弥「早ぇよ」

○同・職員室(昼)
教師たちが働いている。
高倉、エクレアを食べている。
  デスクに3人分の早退届が置いてある。

○ショッピングモール
綾乃、心地よさそうに声を上げている。
綾乃「あああ」
  三人がマッサージチェアに座っている。
達弥「おっさんかよ、お前は」
始「課題終わるかな?」
綾乃「明日一日あるし、大丈夫でしょ。三人で助け合おう」
始「お前、結構いい根性してるよな」
達弥「好きなものは一番最初に食べるタイプだろ」
綾乃「違うの?」
達弥「俺は最後に食べる」
始「俺も」
綾乃「早くしないと誰かに食べられちゃうかもしれないじゃん。文句を言ってもノロノロしている方が悪いっていわれたりもするんだから」
達弥&始「確かに」
綾乃「それに何を言ってもお腹は膨れないし」
達弥「そうだな」
綾乃「それより今日はどこに遊びに行く?」
達弥「今日は」
  マッサージチェアの振動が心地良く
達弥「ああああ」

○上野・ミリタリーショップ
  達弥が目を輝かせて米軍の放出品のジャケットを見ている。
達弥「おお、見ろよ。AIR FORCEのジャケットだよ」
綾乃「AIR……?」
達弥「AIR FORCE。アメリカ空軍だよ」
  店員に
達弥「これは50年代の奴ですよね」
店員、親指を立て頷く。
綾乃、ついていけず、
綾乃「ああいうの好きなの?」
始「ひくなよ。昨日のお前と同じだよ」
綾乃「(驚き)私、あんなんだった?」
達弥「おれ、卒業したらここで働こうかな」
  達弥がジャケットを着ると、店員がサングラスを持ってくる。
達弥「ありがとうございます」
  それを掛けて両手で銃を構える仕草をする達弥。
  後ろのガタイのいい外国人にぶつかってしまう。
達弥「すみません」
  謝っている達弥を見て、吹き出す二人。
達弥「あれ、多分海兵隊上がりだな」
綾乃「あっそ」
始、綾乃を肘で突っつく。

○上野動物園
  達弥の鞄に米軍の缶バッヂなどが沢山ついている。
  飼育員が怪訝な顔をしている。
  達弥が象に向けてライフルを構える真似をしている。
  それに気づいた綾乃。
綾乃「ちょっとやめなよ」
達弥を叩く。

○道路
  上野駅周辺の通りをブラブラと歩いている三人。
達弥「なぁ、御徒町の方にもミリタリーショップがあるらしいんだけど」
綾乃「もういいから」
始「今頃、皆『ひめゆりの塔』とかかな?」
綾乃「戦争の悲惨さと平和について考えてるよ。それなのに」
綾乃、達弥をじっと見つめる。
達弥「何だよ。何で俺の時だけさあ」
  高収入バイトの宣伝カーが音楽を鳴らしながらやって来る。
綾乃「イヤッ」
  綾乃、耳を塞ぎ、後ろを向く。
始「どうした?」
綾乃「あれ、嫌なの。見たくないし、聞きたくない」
  耳を塞ぎ震えている綾乃の姿を心配そうに見ている達弥と始。
  宣伝カーが去っていく。
綾乃「行った?」
始「行ったよ」
綾乃「ごめんね」

○牛丼屋
  壁にバイト募集のポスターが貼られている。
  それを見ている綾乃。
  カウンターに座っている三人の前に牛丼が置かれる。
店員「お待たせしました」
達弥、大量に紅生姜を載せる。
綾乃「ねぇ、入れすぎ」
達弥「普通だよ、これ位」
綾乃「うわー、迷惑」
  始、笑いながら
始「写真撮らなくていいの?」
綾乃「あっ」
  鞄からキーホルダーを出し、牛丼の前に置きスマホで写真を撮る。
  二人、牛丼を食べ始める。
綾乃「ねぇ、私って子供っぽいのかな?」
達弥「何、いきなり?」
綾乃、キーホルダーを持ち
綾乃「こういうアニメとか好きだしさ」
達弥「しょうがねえよ。好きなものはさ」
始「さっきの達弥、見ただろ」
綾乃「……うん」
始「どうした? 何かあった」
綾乃「バイト先の先輩がさ、変な感じなんだよね」
達弥「変な感じって?」
綾乃、口に出したくない感じで
綾乃「大学生らしいんだけど、なんていうか、変なこと言ってくるっていうか、ヤラしいこと言ってくるっていうか」
  二人、真剣に聴きはじめる。
綾乃「でも、ああいう人ってどこにでもいるだろうからスルーするっていうか、気にしないようにするしかないよね」
  達弥も諦めたように目を伏せる。
始「違うよ」
  達弥と綾乃、始を見る。
始「絶対違う」
綾乃「でも」
始「ガキなのはそいつだろ。お前が嫌がっているのわかってないんだから。わかって言ってたとしたらただのクズだよ」
綾乃「うん」
  綾乃、牛丼を食べ始める。

○アメ横
  三人が歩いている。
綾乃「ねぇ、始はどっか行きたいところとかないの?」
始「俺?」
綾乃「私たち、二人は行きたいところいったしさ」
始「カラオケは?」
達弥「えー」
綾乃「何よ?」
達弥「始、ミスチルしか歌わないじゃん」
綾乃「いいじゃん。ミスチル好きなの?」
始「まぁ」
達弥「こいつのさ」
  後ろから声を掛けられる。
声「始」
  振り返ると、キャンペーンガールが立っている。
始「姉ちゃん」
始の姉、奈美(20)が始の腕を掴む。
奈美「こんなとこで何してんの?」
始「……」
奈美「学校は? っていうか修学旅行じゃないの?」
達弥と綾乃、顔を見合わせる。
奈美「お姉ちゃん、お金渡したでしょ」
始「いや、まぁ、ちょっと」
奈美「お母さんにも話したでしょ」
始「何か面倒くさくてさ」
奈美「面倒って、あんただって喜んでたじゃん」
始、黙っている。
奈美「ねえ、どうして?」
キャンペーンガールが声を掛ける。
キャンペーンガール「奈美ちゃん、どうしたの?」
奈美「すみません。(始に)今日、家に行くからその時に聞かせて」
奈美、去っていく。
  始が取り繕うように笑って振り返ると、達弥は目を逸らす。

○喫茶店
三人が座っている。
  達弥の前にはアイスコーヒー、始の前にはオレンジジュース、綾乃はアイスティーを飲んで    いる。
始「まさかあんなところで姉ちゃんに会うなんてさ」
綾乃「優しそうな人じゃん。それにキレイだし」
始「そんなことはないけどさ」
達弥「いや、優しいだろ。旅行の金出してくれたんだろ」
綾乃「そうだよ。行けば良かったじゃん。何で行かなかったの?」
始「……」
達弥「俺が行けないからか?」
始「……」
達弥、責めるような口調で
達弥「俺が可哀そうだから行かなかったんだよな」
綾乃「そんなわけないじゃん」
始「中学の時、すげえ楽しかったじゃん。俺たちと隆二でさ」
達弥「(ボソッと)気ぃ使われんのが一番むかつくんだよ」
綾乃「やめなよ」
達弥「お前だってそうじゃないの? だから立川に怒ったんだろ?」
綾乃「……それは」
始「悪ぃ、今日は帰るわ」
始、立ち上がり出て行く。
綾乃「待ってよ」
達弥「ほっとけよ」

○JR上野駅前・パンダ橋(夕方)
  塞ぎ込んでいる達弥と綾乃が歩いている。
達弥「じゃあ、俺、JRだから」
綾乃「うん」
達弥、駅の中に入っていく。
綾乃のスマホに着信がある。
見てみると友人からのLINEで「立川くんと付き合うことになった」と書かれている。
綾乃、それを見て、ため息をつくが、すぐに何かを決心した表情に変わる。

○電車・車内
達弥が座っている。
突然、綾乃が前に立つ。
綾乃「ねぇ」
達弥「えっ? 何してんの? こっちなの?」
綾乃「ついてってあげる」
達弥「はぁ?」
綾乃「ついてってあげるから、始と仲直りしなよ」
達弥「いいよ。別に」
綾乃、厳しい顔つきになり
綾乃「ダメだよ。こんなことで友達無くしちゃダメだよ」

○住宅街(夜)
  綾乃が達弥にスマホで撮った三人の写真を見せる。
  カレー屋や動物園での写真がある。
綾乃「始が言ってたこと嘘じゃないと思うよ」
達弥「?」
綾乃「中学楽しかったって話。私も今、すっごく楽しいもん。3日間どうやって過ごすかずっと悩んでたけどさ」
達弥「そうか」
綾乃「卒業アルバムにも載らないけど、絶対忘れない」
達弥「俺がアルバムに載らなくても忘れない?」
綾乃「?」
達弥「俺、そういうの載らないから」
綾乃、困惑して
綾乃「どうして?」
達弥「別れた親父に居場所がばれちゃうから」
綾乃、立ち止まる。
綾乃「ごめん」
  笑顔を向ける達弥を見て、感情が溢れそうになるが抑え込み、俯く。
達弥「泣くなよ」
綾乃「泣いてないよ。可哀そうって思われるの嫌なんでしょ」
達弥「行こうぜ」

○団地・荻野家
始が帰ってくる。
始「ただいま」
台所から奈美が顔を出す。
奈美「おかえり」
始、気まずそうな顔をする。
奈美「ご飯、今作っているから」
始「これからバイトだから。帰って来てから食べるよ」
奈美「そう」
始、自分の部屋に入っていく。

○同・B棟階段
私服に着替えた始が降りて行く。

○同・B棟外
降りてくる始。
ベランダの少女を見ると、突然、倒れる。
始「おい!」
達弥と綾乃がやって来る。
綾乃「どうしたの?」
始「女の子が」
達弥「女の子?」
始、ベランダを指差す。
綾乃「あの子どうしたの?」
始「いつもベランダに出てて、それで」
綾乃「何号室?」
始「502号室」
綾乃「行こう」
綾乃、駆け出すと二人もついていく。

○同・B棟階段
綾乃を筆頭に階段を駆け上がっていく。

○同・502号室
綾乃がインターホンを何回も押すが、誰も出てこないのでドアを叩く。
ドアが開き、迷惑そうな母親(25)が出てくる。
母親「何なの?」
綾乃「あの、ベランダの」
母親「ベランダ? ああ、躾で出してんのよ」
達弥が震えている。
始「でも倒れてますよ」
母親「中に入れとけばいいんでしょ。私ももうすぐ仕事だし。あんまり騒がないでよ」
綾乃、我慢できず、母親を押しのけ、散らかった部屋に入っていく。
母親「ちょっと!」
始が母親を抑える。
母親「ちょっと触んないで。離して」
綾乃、窓を開き、倒れている女の子を抱きしめ、中に入れる。
綾乃「救急車呼んで!」
母親「余計なことしないで」
綾乃「早く!」
達弥は震えて立ち尽くしている。
綾乃「達弥!」

○警察署・廊下
  ベンチに座っている三人に奈美が付き添って立っている。
  中年の警察官が缶ジュースを渡している。
警察官「ほら、奢りだ」
  三人受け取るが、開けようとしない。
警察官「炭酸嫌いか?」
奈美、代わりに頭を下げ、
奈美「ありがとうございます」
  高倉がやって来る。
奈美「先生」
高倉、奈美に気づく。
高倉「荻野さん」
警察官「先生ですか?」
高倉「どうも、松富士高校の教頭の高倉です」
警察官「いやぁ、お手柄ですよ。女の子を助けたんだから」
高倉「はい」
警察官「病院側もね、もう少し遅かったら危なかったらしいですよ」
暗く沈みこんでいる3人。
警察官「どうした。君たちはいいことをしたんだぞ」
達弥、缶ジュースを落とす。
  腕に顔を埋め、背中が小刻みに震える。
綾乃「何がいいことなんですか?……いいことなんかじゃないんです。……いいことなんてない」
  綾乃、堰を切ったように泣きだす。
  俯いている始。
  奈美、駆け寄り、ハンカチで綾乃の涙を拭ってやり、達弥の背中をさすってやる。
  困惑している警察官。
  子供たちが何故泣いているのかを察して黙り込む高倉。

○達弥の部屋
  暗い部屋の中、達弥、思いつめた表情をしている。
  口を開き、モデルガンの銃口を喉に向ける。

○高校・階段(朝)
綾乃、沈鬱な表情で階段を昇っていく。

○同・図書室
  綾乃、入ると達弥と始は既に来て、離れた席に座り、押し黙っている。
綾乃「おはよう」
始「おはよう」
綾乃、気を取り直し笑って
綾乃「立川くんさ、紹介とか別にいいや。何か私の友達が付き合うんだって」
始「そうか」
綾乃「修学旅行で付き合うなんてありがちだよね」
  綾乃が必死に笑い話にしようとするが雰囲気は良くならない。
  綾乃、離れた席に座り黙り込む。
  重たい沈黙が流れ、時計の秒針の音が聞こえる。
  綾乃、鞄から筆箱を取り出そうとすると、落としてしまう。
  それを拾おうとするが、辞めて、立ち上がる。
  綾乃、始に
綾乃「始、音楽かけて」
始「え? 何を?」
綾乃「なんでもいいから」
  始、スマホでMr.childrenの「シーソーゲーム~勇敢な恋の歌」を流す。
  綾乃が体を揺らして、歌いだす。
  驚き見ている二人。
  踊っている綾乃、始にも歌うように促す。
  始も戸惑いながらも歌いだし、体を揺らし踊り始める。
  二人が体を弾ませながら歌っているのを達弥だけが暗い顔をして見ている。
達弥「やめろよ……やめろって」
綾乃、達弥の前で両手の人差し指を自分の頬に立てて満面の笑みを見せ
綾乃「『友人の評価はイマイチでもShe So cute』」
達弥、耐えきれず吹き出す。
綾乃、達弥も踊るように身振りする。
達弥、仕方なしに体を揺らし始めるうちに、夢中になっていく。
3人が歌い踊っている。

○同・踊り場
  高倉が踊り場の鏡に向かって三人にかける言葉を練習している。
高倉「確かに今回のことつらい出来事だったけど、でも私はあなたたちのこと誇りに思うの……ヨシッ」
高倉、階段を昇っていく。

○同・図書室
微かに音楽が聞こえてくる。
高倉、中を覗き、踊っている三人を見て何も言わず出て行く。
× × ×
3人が向き合って課題をやっている。
  必死で始が教えているが、達弥も綾乃もわからないと首を振る。
  × × ×
  3人が昼食を食べている。
  大量のパンを買い込み、真ん中に集めている。
  ヤケ食い気味の綾乃を止める達弥と始。
  × × ×
  課題を回収している高倉、綾乃にみたらし団子を差出すが、食べ過ぎの綾乃、嫌そうに首を 振る。
  × × ×
  終業のチャイムが鳴る。
  鞄を持った綾乃が二人に
綾乃「バイバイ」
手を振る。

○本屋(夕方)
小さな商店街の本屋。
  高倉、雑誌の棚を見ていると、横から声を掛けられる。
声「先生」
  見ると奈美が服飾の本を持って立っている。

○商店街・自販機
  硬貨を入れると、すかさず紅茶のボタンを押す奈美。
受取口に手を突っ込んでいる奈美に
高倉「落ち着きなさい」
  奈美、舌を出す。
  高倉、硬貨を入れ缶コーヒーのボタンを押す。

○公園
ベンチに座っている高倉と奈美。
  奈美は紅茶を、高倉は缶コーヒーを飲んでいる。
高倉「大学?」
奈美「ううん、バイト掛け持ちでなんとかやってます。でも、お金溜まったから来年から専門学校入るんだ」
高倉「そう」
悪戯っぽく
奈美「しかも、同棲中なんだよ。私」
高倉、笑い
高倉「そう」
高倉、鞄の中からみたらし団子を出す。
高倉「食べる?」
奈美「何で持ってんの? いただきます」
奈美、食べ始める。
奈美「ねえ、まだシュークリームあげているの?」
高倉「うん? ああ、アレね」
奈美「1日目はシュークリーム、2日目はエクレアで3日目はなんだっけ」
高倉「これよ。みたらし団子、あの子たち食べ過ぎたからいらないってさ」
奈美「そうなんだ」
高倉「それにエクレアもあげる前に、遊び行っちゃったし」
奈美、笑う。
高倉「よく覚えてたね、そんなこと」
奈美「先生に奢ってもらうなんて初めてだったしさ」
奈美、紅茶を一口飲む。
奈美「ねえ、ああいう子たち増えているの」
高浦「ええ、正直、もうああいう子たちになんて言ってやればいいのかわからない」
奈美「弱気だね」
高倉「情けないけど」
奈美「でも、いいと思うよ。先生はそれで」
高倉「そう?」
奈美「だから変わらないでいてあげてよ」

○学校・教室(朝)
  生徒たちが騒いでいる中で、達弥と始が外を見ている。
  生徒たち、沖縄の思い出を話し合っている。
生徒1「海キレイだったよね」
生徒2「見て見て、この写真」
  達弥と始、綾乃が登校してくるのを見ている。
始「今度さ、隆二も誘って飯でも食いにいこうぜ」
達弥「ああ」
  少し太り気味の少年がやってくる。
立川「ねえ」
達弥「立川、どうした?」
立川、二人それぞれに手提げ袋を渡す。
  中には沖縄のお菓子が沢山入っている。
驚く二人。
始「何これ?」
立川「お土産」
二人「……ありがと」
立川、去っていく。
二人、顔を見合わせ教室から駆け出す。

○同・階段
二人、階段を駆け下りて行く。

○同・下駄箱
  綾乃が靴を履きかえていると、二人が駆け寄ってくる。
達弥「綾乃!」
驚く綾乃。
綾乃「どうしたの?」
  達弥、お菓子の袋を差出す。
始「立川から沖縄のお土産だって」
綾乃「それで、走って来てくれたの?」
達弥、袋を開けながら、
達弥「(照れくさく)ああ」
綾乃、お菓子の袋を受け取り、満面の笑顔で
綾乃「ありがとう」 (完)

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