僕はまだ君の口元を見た事がない コメディ

2030年。新型コロナウイルス蔓延から10年。青木蓮(14)はマスクに隠され続ける異性の口元に想いを馳せる。
マヤマ 山本 4 0 0 08/03
本棚のご利用には ログイン が必要です。

第一稿

<登場人物>
青木 蓮 (14)中学生
小泉 陽葵(14)青木のクラスメイト
関  (14)青木の友人
壱岐 (14)同
平山 結愛(14)青木のクラスメイト


...続きを読む
この脚本を購入・交渉したいなら
buyするには会員登録・ログインが必要です。
※ ライターにメールを送ります。
※ buyしても購入確定ではありません。
 

<登場人物>
青木 蓮 (14)中学生
小泉 陽葵(14)青木のクラスメイト
関  (14)青木の友人
壱岐 (14)同
平山 結愛(14)青木のクラスメイト



<本編>
○メインタイトル『僕はまだ君の口元を見た事がない』

○青木家・外観
   「青木」の表札。
青木の声「二〇二〇年」

○同・青木の部屋
   輪になって座る青木蓮(14)、関(14)、壱岐(14)。皆、マスク着用。真剣な表情の青木、関に対し、壱岐は状況が呑み込めていない様子。
青木「新型コロナウイルスの蔓延により、我々人類の生活は大きく変わった」
関「変わった、変わった」
青木「あれから一〇年。もはやマスクを着用することに疑問すら抱かなくなった」
関「なった、なった」
壱岐「……ねぇ、何の話してんの?」
青木「幼稚園入園からずっとマスクを着け続けたおかげで俺達は、(感情があふれ涙がこぼれる)俺達はぁ!」
壱岐「え、何で泣いてんの?」
   中央に小泉陽葵(14)の写真を叩きつける青木。写真の中の陽葵もマスク着用。
青木「俺達はまだ、小泉陽葵(ひまり)の口元を、見た事がない!」
関「ない! ない!」
壱岐「あ~、まぁ、確かに」
青木「どうしても見たくて、給食の時間ずっと見てた事もあったが……」

○(回想)中学校・教室
   給食を食べる青木、陽葵ら生徒達。皆がマスクを外す中、陽葵のみマスクを着用したまま器用に食べている。その様子を凝視しながらスープを口に運ぶ青木。全部こぼすが気にしない。
青木の声「食べる時ですら、外さない」

○青木家・青木の部屋
   輪になって座る青木、関、壱岐。
青木「ここまで頑なに隠し続けるなんて、もはや……(決め顔で)乳首」
壱岐「いや、違うでしょ」
青木「しかもただの乳首じゃない」
青木&関「(決め顔で)合法」
壱岐「何で揃うの?」
青木「とにかく、俺は小泉の口元が見たくて見たくて仕方ないんだ。唇は肉厚なのか薄めなのか、色はピンクなのか赤なのか」
関「もしかしてホクロなんかあったりして」
青木「(昇天し)はうっ」
壱岐「何で?」
青木「(復活し)とにかく、小泉の口元を見る。協力してくれ、イッキー、セッキー」
関「もちろんだぜ、アオッキー!」
青木「ありがとう。イッキー、セッキー!」
壱岐「え、僕も?」

○中学校・外観

○同・教室
   壱岐、関らとふざけ合いながら、徐々に陽葵に近づいていく青木。
関「おら、おら~」
壱岐「……いいのかな、このやり方」
青木「よし、今だ!」
   陽葵のマスクに手を伸ばす青木。次の瞬間、二人の間に割って入り、青木を蹴り飛ばす平山結愛(14)。
青木「痛ぇな。何すんだよ!」
結愛「コッチの台詞だよ! 陽葵、大丈夫?」
陽葵「結愛ちゃん? どうかした?」
青木「なに、まだまだ。この作戦は二段構えだ!」
   ポケットからケチャップとマスタードのディスペンパックを取り出す青木。
青木「行けっ!」
   ディスペンパックを二つ折りにし、噴出されたケチャップとマスタードが陽葵のマスクに付着する。
陽葵「あっ……」
青木「(棒読みで)あーごめん。汚しちゃった」
結愛「オメェ何してくれてんだよ!」
青木「(個包装されたマスクを取り出し)替えのマスクあるから、取り替えなよ」
結愛「あ、ありがとう」
   マスクを受け取る結愛。
壱岐「お~」
関「いよいよ……」
   マスクを外す陽葵。息をのみ、その様子を凝視する青木、壱岐、関。陽葵の外したマスクの下に、もう一枚別のマスク。
青木&関&壱岐「二重マスク!?」
    ×     ×     ×
   青木の席に集まる関、壱岐。
青木「誤算だった……」
壱岐「まぁ、これに懲りたら諦めて……」
青木「いや、俺達は諦めない!」
関「諦めない、諦めない!」
青木「何故なら今、女子達は……」

○同・更衣室・中
   着替える陽葵、結愛ら女子生徒達。入口のドアが僅かに開いている。

○同・同・中
   僅かに開いたドアから着替える陽葵の姿を覗き見る青木、関、壱岐。
青木「お~、見える」
関「見える、見える」
壱岐「いや、これバレたらマズいよね?」
   マスクに手をかける陽葵。
青木「きたきたきた。いよいよマスクが……」
   そこに立ちふさがる結愛。
青木&関&壱岐「あ」
結愛「オメェら、なに着替え覗いてんだよ!」
青木「着替えなんて覗いてねぇよ!」

○同・職員室
   教師から説教を受ける青木、関、壱岐。
関の声「どうする?」

○同・廊下
   並んで歩く青木、関、壱岐。
青木「まだ終わってない。今日の体育はマラソンだ。走れば当然、息が上がる」
関「お~、それだ!」
壱岐「それなの?」

○同・グラウンド
   走る生徒達、そもそもマスクを外している生徒も多数。
    ×     ×     ×
   走り終え、息を切らす生徒達。そんな中、マスクをしたまま平然としている陽葵。その様子を見ている青木、関、壱岐。
壱岐「いや、体力」
青木「くそっ、次の作戦だ」
関「次だ、次だ」

○同・教室
   談笑する陽葵、結愛ら生徒達。そこにやってくる青木、関、壱岐。マスクではなく、フェイスシールドを着用。
青木「おいおい、皆。まだマスクなんてオワコンアイテム着けてんのかよ。今はフェイスシールドの時代っしょ?」
関「時代っしょ、時代っしょ」
   困惑する生徒達を前に、大量のフェイスシールド入りの段ボール箱を掲げる関。
青木「仕方ない。特別に皆にも分けてあげよう」
壱岐「(棒読みで)わー、早い者勝ちだー」
   関の元に殺到する生徒達。そんな中、興味なさげに席に着く陽葵の元に、フェイスシールドを差し出す青木。
青木「さぁ、小泉も」
陽葵「あ~、私はいいや」
壱岐「やっぱり、ダメか」
青木「なるほど、こんな子供だましには乗らないって? そんな君には、コレを」
   タバコを差し出す青木。
青木「大人の証に、一本どう?」
関「おぉ! 確かに、アレなら!」
壱岐「いや、アレはむしろ……」

○同・職員室
   教師から説教を受ける青木、関、壱岐。
青木の声「くっそ~……」

○青木家・青木の部屋
   輪になって座る青木、関、壱岐。
青木「俺達、何がダメだったんだ……」
関「何だ? 何なんだ?」
壱岐「まぁ、最終的には法を犯してたからね」
青木「じゃあ、どうしろって言うんだ!」
壱岐「普通に頼んでみたら?」
青木&関「え?」
壱岐「いや、だって別に『服脱いで』って頼む訳じゃないんだし」
青木「イッキー、お前……天才か!?」

○中学校・外観(夕)

○同・教室(夕)
   陽葵に土下座する青木、関、壱岐。
陽葵「……別に、いいけど」
青木「え、本当に!?」
関「やった、やった!」
壱岐「今までの苦労は何だったんだ……」
陽葵「何か、改めて見られると恥ずかしいな」
   と言いながら、ゆっくりとマスクを外す陽葵。やや頬が紅潮している。

○同・外(夕)
   窓から見える、マスクを外した陽葵の後ろ姿とそれを見る青木、関、壱岐。ゆっくりと鼻血を流す青木。
青木&関&壱岐「お、おぉ……」
                   (完)

この脚本を購入・交渉したいなら
buyするには会員登録・ログインが必要です。
※ ライターにメールを送ります。
※ buyしても購入確定ではありません。
本棚のご利用には ログイン が必要です。

コメント

  • まだコメントが投稿されていません。
コメントを投稿するには会員登録・ログインが必要です。