刑事ツインズ ミステリー

警視庁千早警察署の刑事課に所属する安土次元(35)は、ある男が不審死した事件を担当する。「自殺」という見立てに違和感を覚えた次元は双子の妹で同署署長・安土峰(35)の権限を使い、やや強引な捜査を開始する。
マヤマ 山本 10 0 0 07/27
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第一稿

<登場人物>
安土 次元(35)千早署刑事
安土 峰(35)同署長、次元の双子の妹
早川 弥生(27)千早署刑事
奈良 慶三(59)同
鎌倉 明彦(40)同
東山 飛鳥 ...続きを読む
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<登場人物>
安土 次元(35)千早署刑事
安土 峰(35)同署長、次元の双子の妹
早川 弥生(27)千早署刑事
奈良 慶三(59)同
鎌倉 明彦(40)同
東山 飛鳥(53)警視庁副総監
関谷 朝美(53)居酒屋店主
関谷 南(21)朝美の娘
安土 優子(61)次元と峰の母
安土 昭平(32)次元と峰の父、故人

安土 ハル(83)次元らの祖母、故人
太田 桜子(28)新興宗教団体の初級幹
テツ (25)当たり屋
重松 浩一郎(44)遺体で発見



<本編>
○歩道
   喪服姿の安土次元(35)が歩いている(顔はまだわからない)。

○葬儀場・外観
   「故安土ハル儀葬儀式場」と書かれた看板。

○同・中
   安土ハル(83)の遺影が飾られた祭壇の前に立つ安土峰(35)。
優子「ねぇ、峰」
   振り返る峰。そこにやってくる安土優子(61)。
峰「どうしたの、お母さん?」
優子「次元がまだ来てないんだけど」
峰「放っとけばいいって。どうせ、時間ギリギリに来るんだから」
優子「遺族なんだから、ギリギリじゃダメでしょ? 本当、双子なんだから、もう少し峰と似てくれてもいいのにね」
峰「でも、二卵性だから」
優子「まぁ、それはそうだけど……」
   遠くで自動車の急ブレーキの音、続いて何かにぶつかった音。
   気付き、駆け出す峰。
優子「ちょっと、峰」

○同・前
   人だかりをかき分けて進む峰。
峰「すみません、失礼します」
   人だかりの前に出る峰。もめているテツ(25)と太田桜子(28)。桜子は腕に白いバンド(竜の柄付き)を着けている。
テツ「あ~、痛いの~。腕折れたかもしれんの~」
桜子「すみません。でも……」
テツ「五万やな」
桜子「……五万?」
テツ「慰謝料と治療費、込み込みで五万や。警察呼ばれたないやろ? そんだけで勘弁したろ、言うとんねん。やさしいやろ?」
桜子「ほ、本当ですか? 五万なら……」
峰「お待ち下さい。交通事故の際には速やかに警察に届け出る義務が……」
テツ「何や? 関係ない奴は引っ込んどれ」
峰「な……。お言葉ですが、私は……」
次元の声「随分、いい車だな」
   振り返る峰、テツ、桜子。桜子の車を近距離で睨みつけるように見ている次元(実際はただの近眼、以降も人、物問わずに同じような見方)。
峰「次元、遅いから」
次元「こんなもんだろ。(桜子に)で、この車、アンタの?」
桜子「そうですけど……」
テツ「何やねん、あっちからこっちから。外野は黙って……(次元に気付いて)あっ」
   テツに近づき、顔を眺める次元。
次元「何だ、やっぱりテツか。あいかわらず下手くそな関西弁だな」
テツ「……ご無沙汰です」
峰「知り合い?」
次元「前にしょっぴいた当たり屋だ。足洗ったと思ってたけど、懲りねぇ奴だな」
桜子「あ、あの、お二人がどなたかは存じませんが、私も警察沙汰になるのは……」
次元「あぁ、残念。手遅れ」
桜子「はい?」
   警察手帳を取り出す次元と峰。
次元&峰「警察」
峰「です」

○メインタイトル『刑事ツインズ』

○千早警察署・外観

○同・入口
   あくびをしながら入ってくる次元。

○同・刑事課
   「強行犯係」と書かれた札。
   やってくる次元。
次元「うぃ~ッス」
   早川弥生(27)に投げ飛ばされる鎌倉明彦(40)。
鎌倉「痛たた……」
弥生「すみません、係長。大丈夫ですか?」
鎌倉「だから、何で投げるんだよ」
弥生「すみません。急に間合いに入られるとつい……」
   席に着く次元。隣の席に座る奈良慶三(59)。
次元「また投げられたのかよ」
奈良「おう安土、おはよう。そうなんだよ。弥生ちゃんも弥生ちゃんだけど、係長も係長だよな」
次元「少しは学べよ、って?」
奈良「その点、俺なんて日々勉強よ」
   昇進試験の問題集を見せる奈良。
次元「奈良さんは『諦めが悪い』だけ」
奈良「そんな事言うなよ。俺だって、せめて巡査部長くらいにはなりてぇさ」
鎌倉「(痛そうに立ち上がって)なんだ、安土来てたのか。署長がお呼びだぞ」
次元「あぁ? ……ったく、めんどくせぇ」

○同・署長室・前
   「署長室」と書かれた札。

○同・同・中
   廊下側と隣の部屋側に一つずつ扉のある部屋。
   署長席に着く峰とその前に立つ次元。書類に目を通している。
峰「『白竜の声』って、お父さんが最後に調べてたカルト教団だよね?」
次元「良く言えばな」
峰「悪く言えば?」
次元「テロリスト予備軍」
峰「どうりで、手に入れるのが大変だと思った」
次元「さっすが、署長ともなると、権限が違ぇな」
峰「もっと褒めていただいても、全然構わないんだけど?」
次元「これ以上ねぇくらい褒めてるつもりだけどな。(資料を見ながら)ふ~ん。信者の証とかあんだな。……なぁ、この『足』とか『腕』ってのは何だ?」
峰「初級幹部、中級幹部の呼び名らしい。……ってソレに書いてあるから」
次元「そいつは失礼」
   次元の携帯電話が鳴る。
次元「(電話に出て)うぃっス。……うい。……うい~っス(電話を切る)」
峰「事件?」
次元「死体が出たんだと。じゃあな」
   資料を置き、部屋から出て行く次元。引き出しを開ける峰。一番上の資料を取り出し「白竜の声」の資料をしまってから、一番上にあった資料が再び一番上になるようにしまう。その資料には「安土昭平警部補殺害事件捜査資料」と書かれている。

○アパート・外観
   安アパート。
   警察車両が何台も停まっている。

○同・重松の部屋・中
   簡素な室内。中央に首を吊るためのロープが下がっており、その下に横になっている重松浩一郎(44)の遺体。室内を探る次元と鎌倉、そこにやってくる弥生と奈良。
弥生「係長、亡くなったのは重松浩一郎さん、四四歳。二ヶ月前に経営していたコンビニが閉店し、現在は無職です」
奈良「かなり借金もあったみたいですな」
   奈良の手には大量の督促状。
鎌倉「事業に失敗、借金して自殺、そんな所か。なぁ、安土。……安土?」
   競馬新聞の束を持ってくる次元。
次元「(競馬新聞の束を置いて)押し入れの中から出てきた」
鎌倉「競馬新聞か……。借金の原因はギャンブルかもしれない、って事だな」
次元「さぁな」
鎌倉「は?」
次元「そんな事より、俺が気になってるのはコッチだ」
   遺体の脇に立つ次元。白いバンド(無地)を着けている重松の遺体。
次元「このバンド、何だ?」
鎌倉「わざわざ気にするような事か?」
奈良「まぁ、気にはなるよな」
鎌倉「え?」
弥生「無地だから、余計に」
鎌倉「……まぁいい。奈良さんと早川は仏さんの金の流れを調べてくれ。俺と安土はアパート周辺の聞き込みだ。いいな」
次元「俺、金の流れ調べてぇな。奈良さん、代わってくんねぇ?」
奈良「そりゃあ、俺は構わんが……」
鎌倉「何勝手な事言ってんだ。ダメに決まってんだろ。この現場の責任者は俺だ。俺の指示に従え!」
次元「(舌打ち)」
鎌倉「何だ安土、その態度は。悔しかったら偉くなってみろ」
奈良「耳が痛いですな」
鎌倉「あ、いや、別に奈良さんに言った訳じゃなくてですね……」

○警視庁・外観

○同・副総監室・前
   「副総監室」と書かれた札。

○同・同・中
   向かい合って座り、お茶を飲む峰と東山飛鳥(54)。その傍らには「女性初の警視庁副総監」「女性の社会進出の象徴」などと書かれた飛鳥の写真付き新聞記事が置いてある。
峰「で、今度はどんなオファーが来ていらっしゃるんですか?」
飛鳥「『情熱大陸』。『女性初の警視庁副総監に密着』って。数字獲れると思う?」
峰「注目度は高いと思いますけど。お断りになるおつもりですか?」
飛鳥「えぇ。警視総監になってからでも遅くないでしょ?」
峰「なるほど」
   お茶を口にする峰と飛鳥。
峰「ところで、本日のご用件は?」
飛鳥「『白竜の声』に関する資料を取り寄せたそうね」
峰「少々、気になる事がありまして」
飛鳥「それは現在進行形の事件? それともお父様の事件?」
峰「両方です。私の中では、父の事件は現在進行形ですから」
飛鳥「そう。まぁ、いいけど、あまり無茶はしないようにね? 私が警視総監になった暁には、他の女性キャリアにもそれ相応のポストに就いてもらうつもりなんだから。もちろん、峰ちゃんにもね」
峰「光栄です」
   お茶を口にする峰と飛鳥。

○千早警察署・外観(夕)

○同・会議室(夕)
   捜査会議をしている次元、弥生、奈良、鎌倉。次元は口座の取引情報の資料を凝視している。
鎌倉「重松はここ二ヶ月、つまり経営していたコンビニがツブれてからだな、かなりふさぎ込んでいたらしい」
弥生「じゃあ、事業の失敗が自殺の理由、って事ですか?」
鎌倉「だろうな」
次元「どうかな」
鎌倉「な……」
奈良「お、安土は何か掴んでんのか?」
次元「いや。ただ、コンビニ自体の評判は悪くなかった。少なくとも、ツブれた理由は経営の悪化とは別にあるんじゃねぇかと」
弥生「別の理由って、何ですか?」
奈良「例えば土地の所有者とか、そういうバックにいるスポンサーみたいなヤツとの契約が切れた、とかじゃないか?」
鎌倉「それは無いですね。少なくとも店の土地は、重松が購入した土地ですから」
次元「それもおかしいんだよな」
鎌倉「何だよ、さっきから」
次元「奈良さん達が調べてくれた、重松の金の流れの中に、無ぇんだよ」
鎌倉「何が?」
次元「店の土地を売った金」
鎌倉「え?」
弥生「あ、確かに……」
次元「借金の返済にも充てられてないな」
鎌倉「なるほどな。だが、それは……」
次元「(遮るように)奈良さん。重松の口座から、定期的に一定の金が引き出されてるみてぇだけど、重松が車か何か持ってたっていう情報は?」
奈良「いや、聞いてないな。そんな形跡も無い。俺もその金は、何かのローンか、あるいは会費かと疑ってはいたんだが……」
次元「あんなコンビニにみかじめ料もクソも無ぇだろうし……」
鎌倉「いい加減にしろ。お前ら、何の話をしてるんだ? これは自殺の裏付け捜査だ。仏さんは様子がおかしかった。借金もあった。これで遺書との整合性もとれただろ。検死の結果も『自殺』だと判断された。これ以上何を調べるつもりだ?」
   立ち上がり、鎌倉に迫る次元。
鎌倉「(うろたえて)な、何だよ……?」
   鎌倉の前に写真を置く次元。買い物をする重松を捉えた防犯カメラの画像。
   腕に白いバンドを着けている。
鎌倉「……何だこれは?」
次元「アパートの近くのスーパーの防犯カメラに映っていた、重松だ。三日前のな」
鎌倉「またお前、勝手な事を……」
   写真を見に来る弥生と奈良。
奈良「まぁまぁ、係長。で、安土。この写真がどうかしたのか?」
   写真の一部を指差す次元。その指す場所を見る弥生、奈良、鎌倉。

○署長官舎・外観(夜)
   「安土」と書かれた表札。

○同・仏間(夜)
   仏壇に飾られた安土昭平(32)とハルの遺影。

○同・リビング(夜)
   ソファーに座る次元、峰。その前には小さなテーブルがあり、その上には書類と香典袋が置いてある。
次元「赤川……? 知らねぇな」
峰「次元でも知らないか……」
   そこにやってくる優子。
優子「またその香典の話? もういいって言ったじゃない」
峰「でも十万だよ? そういう訳にいかないから。ねぇ、次元。本当に覚えない? 例えば、おばあちゃんが母親代わりやってたっていう姪っ子の……」
次元「それは長澤」
峰「最近結婚したっていう、お母さんの従兄弟の……」
次元「それは広瀬」
峰「あ、おじいちゃんの一番下の弟さんの息子さんは……」
次元「ソイツも安土だろ」
峰「あ、そっか」
次元「っていうか、それくらいお袋だって知ってんだろ?」
峰「だって、お母さんは『別にいい』の一点張りで、全然協力してくれないから」
優子「だって、そうでしょ? この赤川さんって人にも何か事情があるのかもしれないじゃない? 例えば……ほら、おばあちゃんの隠し子だ、とか」
峰「まさか、そんな……」
次元「それは多村」
優子「え、いるの?」
峰「何で知ってんの?」
次元「常識だろ」
優子「……どちらにしろ、もう手がかりもないんだから、諦めましょうよ」
次元「住所は? 受付で書かせたんだろ?」
峰「東京都千代田区霞が関二の一の一」
次元「警視庁の住所か」
峰「よくわかるね」
次元「常識だろ」
峰「……悪かったね」
次元「で、どうすんだ?」
峰「……お母さんの言う通りだね。もう手がかりも無いみたいだから、諦めよっか」
次元「……だな」
優子「そう、それがいいわよ。で、次元は今日どうするの? 泊まっていくの?」
次元「いや、帰る。あ、漬け物あったら、また貰って帰りてぇんだけど」
優子「本当、好きねぇ。ちょっと待ってて」
   と言いながらその場を去る優子。
次元「(小声で)で、どうすんだ?」
峰「(小声で)一応、警視庁内で『赤川』って人を探しとくから」
次元「わかった。コッチでも気にしとく」
   戻ってくる優子。
優子「はい、漬け物と、あと貰い物の佃煮も入れておいたから」
次元「おう。じゃあな」

○居酒屋ほくと・外観(夜)
   隠れ家的な店。

○同・中(夜)
   カウンター席と、テーブル席が二、三ある程度の店。
   入ってくる次元。カウンター席で出迎える関谷朝美(54)とテーブル席で食事中の関谷南(21)。他に客はいない。
次元「うい~っス」
南「あ、次元ちゃん。いらっしゃい。(隣の席を指して)ここ、空いてるよ」
次元「全部空いてんだろ」
   カウンター席に座る次元。
朝美「安土君にしては遅かったわね。今日は来ないかと思ったわよ」
次元「ちょっと署長の家に寄ってたからな」
朝美「じゃあ、ひょっとして……?」
   朝美に漬け物の入ったタッパーを渡す次元。その間に南も、食事中の皿ごと次元の隣の席に移動してくる。
南「何々? あ、漬け物?」
朝美「ありがとう。安土家の漬け物って、本当に美味しいのよね~。あ、お礼しないとね。ちょっと待ってて」
次元「いいって。気にすんなよ」
朝美「そうはいかないわよ。南、ちょっとお店よろしく」
   言いながら店の奥に姿を消す朝美。
南「え~。まぁ、いっか。次元ちゃん、いつものでいい?」
次元「おう」
   カウンターからウーロン茶の入ったペットボトルとコップを持ってくる南。
南「はい、どうぞ」
   次元の前にコップを置き、ウーロン茶を注ぐ南。その南に(いつも通り)顔を近づける次元。
南「え? もう、しょうがないな~」
   キスの体勢に入る南。もちろん、寸前で止まる次元の顔。
次元「髪の色、変えたのか。色気づきやがって」
南「え? (嬉しいような悲しいような感じで)まぁ、確かにちょっと暗くしたけど……」
   カウンターに戻ってくる朝美。
朝美「お待たせ。はい、安土君。貰い物で悪いけど、佃煮。持ってって」
次元「……この辺で誰か佃煮配ってんのか?」
朝美「何の話?」
次元「いや、何でも無ぇ」
南「何でも無くないよ。次元ちゃん、ちゃんと髪の色気付いてくれたんだ~」
朝美「あら、さすがね」
次元「いや、気付くだろ」
南「ママは気付いてくれなかったけどね」
朝美「就活生なんだから、いっそ真っ黒にすればいいのに」
次元「就活か。大変そうだな」
南「そうでもないよ。いざとなれば、次元ちゃんがお嫁にもらってくれるでしょ?」
次元「何の罰ゲームだよ」
南「またまた~、照れちゃって~」
朝美「私も、安土君が貰ってくれたら嬉しいんだけどな~。そうすれば、南が安土家秘伝の漬け物作れるようになる訳でしょ?」
次元「何だそれ」
南「大体、次元ちゃん、他にいいパートナーになれそうな娘なんていないでしょ?」
次元「他に……その手があったな」
南「え?」
次元「お前もたまにはいい事言うじゃねぇか」
南「本当? お嫁にしたくなった?」
次元「勝手に言ってろ」

○署長官舎・リビング(夜)
   ソファーに座る峰。スマホが鳴る。
峰「次元? (電話に出て)もしもし? 何か忘れ物でもした?」
次元の声「いや、ちょっといいアイデアが浮かんじまってな」
峰「へぇ、それは良かったね」
次元の声「それで、署長さんにちょっと頼みがあんだよ」
峰「断る」

○千早警察署・外観

○同・署長室
   署長席に座る峰と、その向かい側に直立不動で立つ鎌倉。
鎌倉「早川を安土と組ませろ、と?」
峰「はい。もちろん、このような事は署長の私が口を挟むべき事ではない、と重々承知していますよ?」
鎌倉「はぁ……。でしたら、何故?」
峰「やはり、早川刑事は若い女性ですから。セクハラ等、極力ないようにしてあげたいんです」
鎌倉「早川から、そのような話があったんですか?」
峰「いいえ、あくまでも私の判断です。もちろん、奈良さんも鎌倉係長もそのような事はないと信じていますが、念には念を、という訳ですよ」
鎌倉「しかし、よりによって安土ですか?」
峰「個人的な付き合いの長さですかね? 私からすれば、この点において、彼は一番信用できる人間なんですよ」
鎌倉「はぁ……」
    ×     ×     ×
   通路側の扉から出て行く鎌倉。
   一息つく峰。隣の部屋の扉から次元が入ってくる。
峰「これでいいの?」
次元「あぁ、助かった。係長のバディじゃ自由に捜査できねぇからな。早川相手なら、心置きなく動けるぜ」
峰「でもこんな指示は、さすがに聞く耳持たないかもよ? 強制力ゼロだから」
次元「聞くさ。(小声で)惚れた弱みってヤツだ」
峰「(聞こえず)え?」
次元「何でもねぇよ。もし係長が何か文句言ってきたら、こう返してやれ。『悔しかったら偉くなってみろ』ってな」

○マンション・外観
   インターホンの音。

○同・エントランス
   インターホンの前に立つ次元と弥生。
桜子の声「はい」
弥生「あ、太田さんですか? 警察です。少しお話よろしいですか?」
桜子の声「……すみません。今、手が離せないので」
   切られる。
弥生「……ダメでした」
次元「ったく」
   インターホンを押す次元。
桜子の声「だから、今は手が離せないって……」
次元「一昨日はどうも」
桜子の声「(驚いて)!?」
    ×     ×     ×
   待っている次元と弥生の元にやってくる桜子。
桜子「……一昨日の件だったら、もう終わったんじゃないですか?」
次元「あいにく、今日は別件でな」
桜子「別件?」
   防犯カメラが捉えた重松の写真を桜子に見せる弥生。
弥生「こちらの男性、ご存知ですか?」
桜子「知りません」
次元「お揃いのバンドを着けてるのに?」
桜子「え……?」
   重松の写真のバンドの部分を拡大した写真を桜子に見せる弥生。そのバンドは桜子が着けているものと同じ柄。
弥生「この男性が着けているバンドを拡大したものです。太田さんが着けられているものと同じ、ですよね?」
桜子「これは……」
弥生「では、そのバンドはどこでご購入なさいましたか?」
桜子「……」
次元「こんな所で立ち話もなんだ、ちょっとお宅に上げてもらえねぇか?」
桜子「お断りします。話がそれだけなら、失礼します」
   建物内に戻って行く桜子。慌てて追おうとする弥生。
弥生「待って下さい」
桜子「不法侵入、ですよ」
弥生「あ……」
   立ち止まる弥生。
次元「ここで戻ったら、余計に怪しまれると思わねぇのか?」
桜子「勝手に怪しんでいるのはソチラじゃないんですか? どうしても調べたいって言うなら、令状でも持ってきて下さい」
次元「言ってくれるねぇ」
   自動扉が閉まり、奥に姿を消す桜子。

○駐車場
   多数の車が駐車されている。
   車を見ながら歩く次元と弥生。その中から桜子の車を見つける。
次元「あった。あの女の車だ」
弥生「あの、安土さんはあの女性と知り合いなんですか?」
次元「別の事件で顔を合わせただけだ」
弥生「そうですか……。でも、仮に重松さんが他殺だったとして、女性一人で自殺の偽装をするのは無理があると思うんです。他に共犯が……」
次元「お前、他殺だと思ってんのか?」
弥生「え? 安土さんはそう思ってるんじゃないんですか?」
次元「自殺だろ。アレは」
弥生「じゃあ今、コレは何を調べているんですか?」
   立ち止まる次元。
次元「真実、だな」

○千早警察署・署長室・中
   自分の席の引き出しを開け「安土昭平警部補殺害事件捜査資料」を取り出す峰。読み始める。
峰の声「一九八九年九月二九日。都内の路上で安土昭平警部補三二歳が遺体で発見された」

○(回想)路上(夜)
   雨が降っている。
峰の声「第一発見者は同僚の若月正治巡査長二六歳。胸部を鋭利な刃物で刺されており即死だったとみられる」

○(回想)千早警察署・大会議室・外
   「安土昭平警部補殺害事件捜査本部」と書かれた紙。
峰の声「すぐさま捜査本部が立ち上げられ、真っ先に『白竜の声』関係者が捜査線上に浮かんだものの」

○(回想)葬儀場(夜)
   祭壇に飾られた昭平の遺影。
峰の声「遺留品や目撃証言等、組織につながるものが何もない事から捜査は混迷を極め二〇〇四年九月二八日……」

○千早警察署・署長室・中
   捜査資料を読んでいる峰。
峰の声「時効を迎えた」
   資料をとじる峰。スマホが鳴る。
峰「(画面を見て)次元?」

○同・外観(夜)

○同・会議室(夜)
   捜査会議中の弥生、奈良、鎌倉。
鎌倉「一日待って、結局『自殺』の結論を覆すものは出なかったか」
奈良「係長のご推察通りでしたな」
鎌倉「そんなのは誰だってわかる事ですよ。腕のバンドが三日前と違うから何だって言うんですか?」
奈良「おっしゃる通り」
鎌倉「ただ、どうしてもと言うから一日待ってやったっていうのに……その張本人がいないってのはどういう事だ?」
   空席を見つめる弥生、奈良、鎌倉。
鎌倉「おい、早川。安土はどこだ?」
弥生「さぁ……? 署内にはいると思うんですけど」
鎌倉「ったく、俺の目の届かない所に行った途端にコレだ。安土の野郎」

○同・取調室(夜)
   椅子に座るテツ、その脇に立つ次元。
次元「よぉ、テツ。お前今、どこの組織にも入ってねぇらしいな」
テツ「だから、足洗ったんですよ」
次元「じゃあ、一昨日のは何だ?」
テツ「アレは、その……魔が差して」
次元「……なぁ、テツ。取引しねぇか?」
テツ「取引?」
次元「俺に協力してくれたら、今回の事は目ぇつぶって、ここから出してやるよ」
   しばしの沈黙。やがて笑い出すテツ。
次元「何がおかしい?」
テツ「馬鹿言わないで下さいよ。アンタにそんな権限ないですよね?」
次元「確かに、俺には無ぇな。だが……」
   部屋に入ってくる峰。
峰「お邪魔します」
テツ「? あぁ、一昨日一緒にいた?」
峰「千早署署長の安土です」
テツ「署長?」
次元「どうだ? 取引するか?」
   考え込むテツ。
テツ「……何をすれば?」
次元「話のわかるヤツだな」

○マンション・外
   出てくる桜子。

○駐車場
   自分の車の前にやってくる桜子。ワイパーに一枚の紙が挟まっている。
桜子「?」
   紙を手に取る桜子。青ざめる。
桜子「え?」

○居酒屋ほくと・外
   「準備中」と書かれた札。

○同・中
   テーブル席に座る次元と、カウンター席に座る弥生、カウンター内で作業をしている朝美。
弥生「へぇ、亡くなったご主人のお店を守られてるんですね」
朝美「そうなの。全然繁盛してないけどね」
弥生「(次元に)いつ頃からこのお店に来てるんですか?」
次元「……」
弥生「安土さん?」
次元「静かにしろ。来るぞ」
弥生「え?」
   入ってくる桜子。
次元「よう。来てくれると思ってたぜ」
桜子「どうも」
   次元の向かい側に座る桜子。
朝美「じゃあ、私は奥にいるから。ごゆっくりどうぞ」
   店の奥に姿を消す朝美。
次元「安心しな。この店は隠れ家みてぇなもんだ。人も来ねぇし、密会には向いてる」
   テーブルの上に紙を置く桜子。「話があるから来るように」という旨と地図が書かれている。
桜子「(不満そうに)……」
次元「わかりづれぇ地図で悪かったな。こういうのは苦手なんだよ」
桜子「……コレはどういう事ですか?」
   紙を裏返す桜子。捜査令状のコピー。
次元「現物見るのは初めてか? 令状だよ。まぁ、コレはコピーだけどな。ほれ」
   捜査令状の原本を見せる次元。
桜子「私が何をしたって言うんですか? この間の男を知らないって言って、部屋に入るのを拒否しただけで、いちいち令状なんて出るんですか?」
次元「あいにく、今日は別件でな」
桜子「別件?」
弥生「え、別件なんですか?」
次元「お前は黙ってろ」
弥生「え~」
次元「三日前、葬儀場の前でアンタの車にぶつかった当たり屋の口座に事件前後、大金が振り込まれてた。その事を追求したら、その当たり屋が吐いたんだよ。アンタに雇われた、ってな」
桜子「何の事ですか? そんなお金は知りませんし、大体、そんな事して私に何の得があるんですか?」
次元「知るか。保険金目的だったり、色々考えられんだろうが、そもそもソレを調べるために捜査する令状なんだよ」
桜子「なら何で、その捜査をしないで、私をこんな所に呼び出したんですか?」
次元「警察と接触したらマズいんだろ?」
桜子「(探るように)……」
弥生「それは、どういう事ですか?」
次元「『白竜の声』」
   わずかに体を震わせる桜子。
弥生「え? 『白竜の声』って……確か、新興宗教の……?」
次元「まぁ、良く言うとな。そこのルールでは、警察との接触を禁じられてんだよ。ソレを、よりによって幹部のアンタが破っちゃマズいよな?」
弥生「え、幹部?」
桜子「……何で知っているんですか?」
次元「まずは腕のバンドだな。竜の柄が入った白いバンド。アレは『白竜の声』の会員の証だ」
弥生「って事はつまり、重松さんも『白竜の声』の会員だった、って事ですか?」
次元「そういう事だ」
桜子「でも、それじゃ『会員だ』って事しかわからないハズですけど」
次元「もう一つ、身の丈に合わねぇ車を持ってて妙だと思ったんだよ。で、調べたら……『足』って言ったっけ? 初級幹部はそういう『足』代わりになるものを幹部昇格時に買わされるんだってな。『組織への忠誠を誓う証』だっけか?」
桜子「よくご存知ですね。いくら警察でも、相当上位の階級でないと知り得ない情報のハズですけど」
弥生「あの、そろそろ私、話について行けなくなってるんですけど……」
次元「だったら黙ってな。っていうか、耳塞いどけ」
弥生「そんな……」
次元「一つ確認してぇ。その『足』に昇格する時に買わされる物の中に『馬』ってあんのか?」
桜子「……」
次元「今更、黙秘権もクソもねぇだろ? 安心しな。ここでアンタが話したなんて、バレやしねぇから」
桜子「でも……」
次元「それから、勘違いすんなよ。(捜査令状を見せて)俺は今からお前の家に押し入る事だって出来んだからな」
桜子「……。あり得る、とだけ答えればいいですか?」
次元「十分だ。これで解決したな。重松は馬を持っていた。あの金は馬の維持費だ」
弥生「何で馬……あ、競馬新聞」
桜子「何の話ですか?」
次元「こっちの話だ。それより(重松の写真を見せて)この男はアンタと同じ『足』だったハズだ。もう一度聞くが、見覚えは無ぇのか?」
桜子「本当に無いんですよ。『足』同士は、そんなに面識無いんで」
次元「そうか。ちなみにこの男は、三日前に遺体で発見された」
桜子「……そうだったんですか」
次元「今の所は自殺で処理されてるが、怪しい所もチラホラある」
   テーブルの上に数枚の写真を並べる次元。重松の腕のバンドや、殺風景な室内を写した写真。
次元「初級幹部のクセに、部屋には『白竜の声』関連の物は一つも見つからなかった。それに、腕のバンドも別モンにすり替わっていた。どう思う?」
桜子「……」
次元「アンタは組織から罰せられる事を必要以上に恐れている。それは最悪の場合、組織によって『消される』可能性があるからだ。違ぇか?」
桜子「……」
次元「どうなんだ?」
   捜査令状をヒラヒラさせる次元。
桜子「……自殺だと思います」
次元「根拠は?」
桜子「もし、その人が組織に消されたんだとしたら、現場に死体は残ってないはず」
次元「だと思った」
桜子「? アナタも最初から自殺だと思ってたんですか?」
次元「まぁな。ただ、さっきも言った、怪しい所はどう説明する?」
桜子「多分、自殺を知った後で、組織が隠蔽工作をしたんだと思います。組織とのつながりを隠すために。幹部なら、部屋の合鍵を本部に預けてありますし」
次元「アンタの部屋の鍵も、か?」
桜子「……はい」
次元「わかった。これからも接触の仕方には気をつけてやろう」
桜子「また来るつもりですか?」
次元「当たり前だろ? こっちは聞きてぇ事がまだ山ほどあんだよ」
   桜子に顔を近づける次元。
次元「(桜子だけに聞こえるような声で)せっかくの獲物、簡単に逃がす訳ねぇだろ」
桜子「……」
   元の位置に戻る次元。
次元「今日はもういい。気をつけて帰れよ」
桜子「……失礼します」
   店から出て行く桜子。
次元「さて、俺達も帰るか」
弥生「……あの、結局、安土さんは何を調べてたんですか?」
次元「聞いてなかったのか? 自殺の裏付けが出来ただろ?」
弥生「それは……まぁ、確かに」
次元「(カウンターの奥に向かって)じゃあ俺らも帰っから」
   カウンターに出てくる朝美。
朝美「終わったの? お疲れさま」
弥生「ご協力ありがとうございました」
次元「……今日の事は、他言無用で頼むぜ」
朝美「何言ってんの、今更。そんなのいつもの事じゃない」
次元「……アイツにだよ」
朝美「え? あぁ、南?」
次元「『女と会ってた』とか『相棒が女だ』とか、知られると色々面倒くさそうだからな。頼んだぜ」
朝美「(笑いながら)はいはい」

○千早警察署・外観

○同・取調室
   椅子に座るテツ、その脇に立つ次元。
次元「よぉ、テツ。今回はお前のおかげで、いい情報屋が手に入ったぜ」
テツ「お役に立てて何よりです。ところで、約束通り、俺もう釈放ですよね?」
次元「あぁ」
テツ「それじゃあ、失礼しますね」
   出て行こうとするテツの前に立ちふさがる次元。
次元「まぁ、そう急ぐなよ。釈放はしてやるから、もう少し話しようぜ?」
テツ「……何ですか、話って」
次元「お前、何であんな場所で当たり屋やろうと思ったんだ?」
テツ「それは、だから魔が差して……」
次元「あんな葬儀場の前の、大通りでか?」
テツ「いいじゃないですか、別に」
次元「じゃあ、質問を変えよう。お前を雇ったのは誰だ?」
テツ「だから、俺は今どこにも所属してないって、この間言ったじゃないですか」
次元「じゃあ、あの事故の前後でお前の口座に振り込まれた大金、アレ何だ?」
テツ「それは、その……」
次元「お前を雇ったのは、誰だ?」
テツ「……」
次元「赤川」
テツ「(驚いて)!? 何で……?」
次元「当たり、か」

○警視庁・外観

○同・副総監室・中
   向かい合って座り、お茶を飲む峰と飛鳥。
峰「またオファーが来ていらっしゃるんですか?」
飛鳥「そうなの。今度は『王様のブランチ』ですって」
峰「これはまた、意外な所から来ましたね」
飛鳥「でも、面白そうじゃない?」
峰「お受けになるんですか?」
飛鳥「さぁ、どうかしら?」
   お茶を口にする峰と飛鳥。
飛鳥「ところで、随分と強引に、捜査令状の請求をしたそうじゃない?」
峰「やはり、その件でしたか」
飛鳥「で、どうなの?」
峰「確かに、やや強引なやり方ではあったと思います。ですが、容疑者は任意の捜査には応じていただけず、挙げ句『次に来る時は令状を持ってこい』とまで言われた、と現場の刑事に泣きつかれてしまいまして。やむを得ず」
飛鳥「その『現場の刑事』っていうのは、峰ちゃんの弟さんかしら?」
峰「……ご想像にお任せします」
飛鳥「この間も言ったけど、あまり無茶はしないでね? 問題が大きくなりすぎれば、私でもカバーできなくなっちゃうから」
峰「ご忠告、ありがとうございます。もしお話がそれだけでしたら、署の方に戻らねばなりませんので、失礼します」
   立ち上がり、出て行こうとする峰。
飛鳥「あ、そうそう。もう一つ」
峰「はい」
飛鳥「警視庁内に『赤川』という人は、いないわよ」
峰「さすが、お耳が早いですね」
   一礼し、退室する峰。

○路地(夜)
   一人で歩いている峰。前方に、一人で佇む次元を見つける。
峰「待たせたね」
   周囲を伺う次元。
次元「行くぞ」
   角を曲がって行く次元と峰。その後を追いかけて行く数名の男達。
   角を曲がった先、次元と峰の姿が無く焦る男達。方々に手分けして走って行く。
   男達が去った事を確認し、物陰から姿を現す次元と峰。
峰「……いつの間に。よく気付いたね」
次元「気付くだろ。ったく、コレだからキャリアは使えねぇんだよ」
峰「次元だって、現場以外じゃ使い物にならないから」
次元「まぁ、いい。行くぞ」
   歩き出す次元と峰。

○居酒屋ほくと・外観(夜)

○同・中(夜)
   テーブル席に向かい合って座る次元と峰。そこにテキーラとウーロン茶を持ってくる南。
南「お待たせしました。ウーロン茶と、テキーラです」
峰「(テキーラを受け取り)ありがとう」
南「確か、次元さんのお姉さんですよね。ご無沙汰してます」
峰「あぁ、良く間違われるんですけど、私が妹ですから」
南「あ、そっか。って事は、私がお義姉さんになるって事ですね。よろしくお願いします」
峰「こちらこそ」
   カウンター内に立つ朝美。
朝美「南(と言って手招き)」
南「(気付いて)じゃあ、ごゆっくり」
   席を離れる南。
峰「いいお嫁さんになりそうね」
次元「セクハラで訴えるぞ?」
峰「で、何がわかった?」
次元「テツが吐いたぜ」
峰「……誰だっけ、それ」
次元「この間の当たり屋」
峰「あぁ、そうかそうか。で?」
次元「あの日あの時間、あの場所で事故を起こすために雇われた、ってよ。『赤川』って男にな」
峰「だとしたら、その『赤川』って男の目的は何?」
次元「おそらくだが、受付に香典を出した後で葬儀場の外に出るための口実、とか?」
峰「そこまでして、おばあちゃんのお葬式に香典を出したかったって事?」
次元「わからねぇが、秘密を墓まで持ってったばあちゃんへの、謝礼みたいなもんじゃねぇか?」
峰「なるほどね……。あ、情報屋も一人見つけたんだっけ?」
次元「あぁ。ただ、初級幹部程度じゃ、情報もたかが知れてるからな。あんまり期待しない方がいい」
峰「わかってる。こっちでももっと上位の情報探ってるから」
次元「残る問題は、さっきお前を付けてた連中が誰かって事だな」
峰「『白竜の声』か、また別の組織か、あるいは……」
次元「警察か」
峰「おばあちゃんの遺言通りなら、可能性あるかもね」

○(回想)病院・病室
   ベッドに横たわるハルと、その脇に立つ次元と峰。
ハル「峰、次元。良く聞きな。アンタ達のお父さんは、警察に殺されたんだ。私の息子は、警察に殺されたんだ。警察に、殺されたんだ」
   真剣に聞き入る次元と峰。

○居酒屋ほくと・中(夜)
   テーブル席に向かい合って座る次元と峰。
次元「少しは近づいたかな」
峰「真相に? それともお父さんの敵に?」
次元「親父に、だな」
   互いに見合う次元と峰。

○(回想)葬儀場(夜)
   祭壇に飾られた昭平の遺影の前に立つ幼い次元(4)と峰(4)。互いに見合っている。

○居酒屋ほくと・中(夜)
   テーブル席に向かい合って座る次元と峰。乾杯をする。
                   (完)

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