登場人物
・山下優吾(27)男性。フリーカメラマン。
・ネリ(?)若い女性。
・たくま(27)男性。公務員。
・山下の大学の同級生 女性1、女性2、女性3、男性1、男性2
舞台
・一人暮らし男性のアパート(中・外)
・居酒屋(または宅飲み設定で別なアパート、マンションも可)
・役所前(またはオフィス街)
〇山下のアパート・リビング(朝)
山下が目覚めてリビングに出てくる。
散らかったリビングで、ネリがちょこんと座って眠っているのが見える。
ネリはストップウォッチ、タイマー、スマホ、リモコンなどを身につけており、エプロンを着て、そのポケットの中にスケジュール帳を入れている。目の前にはパソコンもセットされている。
山下「ネリ、おはよう」
ネリはぱちっと目を覚まし、アラームを確認する。
ネリ「おはようございます、優吾さん。珍しいですね、アラームより早く起きるのは」
山下「なんか目が覚めちゃった。寒いな。ネリ、エアコン消して」
ネリ「かしこまりました」
ネリはリモコンを使い、エアコンを消す。
山下は顔を洗うなど、朝の仕度を始める。
ネリはパソコンを使って調べ物をする。
ネリ「今日の天気は、晴れのち曇り。降水確率は20パーセント。気温は25度で過ごしやすい一日となるでしょう。今日のおひつじ座の運勢は5位。ラッキーカラーは青。ラッキーフードはラーメンです」
山下「ネリ、今日の予定」
ネリ「(スケジュール帳を開いて)午後から飯田橋のレストランで披露宴撮影が1件です」
山下「あ、それしかないのか……じゃ、この前の和装の写真も空き時間に片付けるか。ネリ、メールは?」
ネリは山下のスマホを見る。3件来ている。
ネリ「3件あります。読み上げますか?」
山下「件名読んで」
ネリ「来週の打ち合わせについて。写真展のお知らせ。ご当選おめでとうございます。1000万円の送り先をご返信ください」
山下「最後のメールは消去」
ネリ「ご当選おめでとうございます。の、メールを消去します。よろしいですか?」
山下「うん」
ネリ「かしこまりました」
スマホに新しいメッセージが届く。
ネリ「新着メッセージが届きました。”日本製ホームアシスタント海外でも売上好調。月城幹事長、またしても汚職発覚。台風接近中、沖縄に15日上陸か”」
山下「ニュースのメルマガね。後で見る」
山下はカップラーメンにお湯を注ぐ。
山下「ネリ、タイマー3分」
ネリ「かしこまりました。タイマー3分」
ネリはタイマーをセットする。
山下「ありがとう」
ネリ「いいえ」
山下「ネリがいて助かるよ。これで、掃除もできたら完璧なんだけどね」
ネリの周りには洗濯物と、プロテインバーやゼリー飲料のゴミが散らばっている。
ネリ「申し訳ございません。掃除は苦手なんです」
山下「いいよ。ネリ、音楽つけて」
ネリ「はい。朝のプレイリストを再生します」
ネリは朝のプレイリストを流す。
山下は気分良く朝の準備を続け、ネリに向かって微笑む。
ネリも微笑みを返す。
〇同・同(夜)
積み重なったカップラーメンの容器。
山下はパソコンでウェディングの写真を調整したりしている。
ネリは後ろでそれを眺めている。
山下「ネリ」
ネリ「はい」
山下「今何時?」
ネリ「深夜2時38分です」
山下「そんな時間か」
ネリ「夜更かしもほどほどになさってください」
山下「明日は休みだから」
ネリ「また夕方まで寝て過ごすんですか?」
山下「そうだよ。起きたらビール飲みながら映画観る」
ネリ「お決まりのパターンですね」
山下「ネリ、新作映画ある?」
ネリ「インドのロボットアクション映画が今日から動画配信サービスに追加されています」
山下「インドのロボット?何それ面白そう。ネリといっしょに観よ」
ネリ「いいですよ。たのしみですね」
山下は結婚披露宴の写真を見つめる。
山下「……ネリ〜……」
ネリ「はい」
山下「…………ネリ」
ネリ「はい」
山下「俺の家に来られて幸せ?」
ネリ「はい、幸せです」
山下「……いつか、結婚したい? 俺と」
ネリ「優吾さんと結婚、ですか」
山下「ああ、いい、いい、忘れて」
ネリ「今のはプロポーズですか」
山下「忘れて、記憶から消去して」
ネリ「嬉しいです」
山下はネリの方を見る。ネリがにっこりと笑う。
山下は照れながら仕事に戻る。
山下「ね、ネリ」
ネリ「はい」
山下「音楽かけて」
ネリ「はい。では夜にピッタリの再生リストを……」
音楽がかかる。
うとうとするネリ。そこへ、メッセージが届き、ネリは起きる。
ネリ「優吾さん、新着のメッセージです」
ネリは内容を確かめる。
山下「何?」
ネリは内容を真剣に確認している。
山下「ネリ」
ネリ「はい」
山下「メッセージ読み上げて」
ネリ「……グループトーク、石沼大学加山ゼミ同期会。たくま、今度同窓会しない? ゆみ、いいね!どこでする? さっくん、スタンプ。たくま、土日で空いてる日教えて。松本健人、土日だと山下来られなくね? 彩香、わたしいつでもいいよ」
ネリが読み上げている最中に、山下がスマホをネリから取り、じっくり内容を見ている。
ネリ「お仕事してください。わたしがお返事しますから」
山下「いや……うん、自分でする」
山下は嬉しそうにメッセージを読む。
ネリ「行かれるんですか」
山下「うん。もちろん」
ネリ「そうですか」
山下「ネリも行く?」
ネリ「え?」
山下「彼女連れてくって行ったら、どんな反応するだろう」
山下はニヤニヤしながら返信を打つ。
ネリ「わたしのことを、皆さんに彼女だと紹介するんですか」
山下「(返信しながら)うん、もちろん」
ネリ「あの……きっと、皆さんに変だと思われます」
山下「どうして? ネリは何も変じゃないよ。かわいいよ」
ネリ「あの、でも……」
山下「俺は、ネリといっしょに居られて幸せだよ。自慢したいんだ。だめ?」
ネリ「だめじゃないですけど……」
山下「お、みんな俺の休みに合わせてくれるって。ネリ、スケジュールに再来週の土曜8時、居酒屋テンテンって入れて置いて」
ネリはスケジュール帳に書き込む。
ネリ「……優吾さん、あの」
山下「ん?」
ネリ「わたしではなく、優吾さんが、変だと思われてしまうと思います」
山下「なんで?」
ネリ「それは……」
山下「大丈夫、思われないよ。こいつらもよく恋人連れてきてたから。俺が連れてくるの初めてだから、驚かれはすると思うけどね」
ネリ「……そうですか」
ネリは黙って山下に手を伸ばす。
山下「え?あ、これ?(スマホ)いや、いいよ。今日は手元に置いておきたい」
ネリは山下を睨む。
山下は戸惑い、スマホをネリに渡す。
ネリ「……お仕事、早く終わらせないと」
山下「あ……ああ、そっか」
ネリ「昨日の就寝時間は3時、おとといは3時半でした。順調に早寝の習慣がついています」
山下「そうかな」
ネリ「さあ、あともう少し頑張りましょう!」
山下「しょうがねぇ、やるかー!」
山下は仕事に戻り、パソコンに向き合う。
ネリはメッセージアプリを確かめる。
メッセージアプリには、山下が彼女も連れていく、という返信をしており、グループトークメンバーがそれに驚く、歓迎するといったような反応が続いている。
たくまから個人メッセージが届く。
彼女いたのか!会うの楽しみ。というメッセージを見るネリ。
山下「ネリ」
ネリ「……はい」
山下「消して」
ネリ「えっと……電気ですか。音楽ですか。エアコンですか」
山下「もう今日は寝るから、全部消して」
ネリ「かしこまりました。全部消します」
山下は寝室へ向かい、ネリは家電を全てオフにする。
〇居酒屋・店外(夜)
同窓会にやってきた山下とネリ。
ネリはめかしこんでいる。
楽しそうな山下とは対照的に、不安そうなネリ。
ネリ「優吾さん、目的地に到着しました」
山下「おお、ちょっとドキドキしてきた。卒業以来だなぁ」
ネリ「優吾さん」
山下「ん?」
ネリ「あの……大丈夫でしょうか」
山下「何が?」
不安そうなネリ。
山下「大丈夫だよ。ネリ。いつも通り、可愛いよ」
ネリ「そういうことではなくて……」
山下「ん?」
ネリ「何も起こらないといいんですが」
山下「ネリ?」
ネリのカバンからスマホの着信音。
ネリはカバンから山下のスマホを取り出す。
山下「だれ?」
ネリ「たくまさんからの着信です」
居酒屋の入口が開き、スマホを片手にたくまが出てくる。
たくまは山下にぶつかりそうになる。
たくま「おっと、すみませ……山下!」
山下「おー、たくまぁ!久しぶり!」
たくま「いや、今電話かけてたとこ! お前変わってねぇなぁ。で、彼女は?」
山下「あ、こっち」
山下はネリの方を指す。
ネリはぎこちなく微笑む。
ネリ「こんばんは……」
たくまの顔が強ばる。
ネリとたくまは見つめ合い、山下は慌てて間に入る。
山下「ネリと付き合ってんだ、俺」
たくま「ネリって……え……?」
山下「で、みんな来てる?こっち?」
たくま「あ、ああ、1番奥の座敷」
山下「分かった、入ろ、ネリ」
山下はネリの腕を掴むと、店内に入っていく。
たくまはしばらく立ちすくみ、我に返って2人の後を追う。
〇同・座敷
座敷に山下とネリが入っていく。
テーブルにはすでに数人の男女がいて、同窓会を楽しんでいる。
山下「久しぶり〜」
男1「山下ぁ〜!」
女1「久しぶり! 元気そうじゃん」
男2「え、で? 彼女は?」
山下「連れてきた。ネリ、挨拶して」
山下に引っ張られ、ネリが座敷に入る。
静まり返る座敷内。
ネリ「……ネリです。こんばんは、あの、すみません、お邪魔しちゃって……」
間。ネリの表情も強ばる。
山下「……あ、あの」
同級生たち、歓声を上げる。
女2「……うわあ〜!ネリじゃあ〜ん!」
男1「びっくりしたあ!」
女1「やだ、ネリちゃん何年ぶり?」
ネリ「ゼミが別々だから、大学2年のとき……ぶり?」
女1「そうだよ〜!ね、わたしのこと覚えてる?」
男1「その前に山下といつから?」
男2「そうだよ、お前、言えよなぁ!」
山下「はは」
照れる山下とネリ。
それを後ろからたくまが見ている。
男1「たくま来た、よし、乾杯乾杯」
女2「2人ともとりあえず生でいい?」
わいわいと席につく。
〇同・トイレ
少し酔った山下がトイレから出て、座敷に戻る。
〇同・座敷
山下が戻ると、ネリは女性陣に囲まれ楽しそうに話している。
山下は男性陣に加わる。
男1「いやあ……やるなあ山下」
山下「何が」
男1「いや、松野ネリちゃん。俺密かに目の保養にしてたんよ」
男2「まじで今もかわいーなぁ」
男1「羨ましいぞ、このやろー」
山下「へへ」
たくま「どう?同棲生活」
山下「問題ないよ。俺のサポートもしてくれるし、仲良くやってる」
男2「そっかあ〜いいなぁ、家庭的なんだなあ」
山下「掃除と料理は苦手なんだけどね」
男1「じゃあお前が何とかしろよ。ていうかお前ら2人とも、ちょっと顔が疲れてんぞ」
山下「そう?」
男2「言われて見りゃ、ネリちゃん、ちょっと変わったな。すげー猫背だし」
山下「……そうかな」
男1「性格はさすがに変わった?昔かなり不思議ちゃん系っていうか、変わってて近寄り難いっていうか……」
山下「どう……かな」
男2が山下の背中をバンと叩く。
男2「大事にしろよ、かわいい彼女」
山下「おう」
男1「そういや、たくま、ちょっとだけネリちゃんと付き合ってた時期あったよな」
山下「え、そうなの?」
たくま「いや、付き合ってたっていうか……結局2回くらいデートして終わったから、その……気にすんなよ!」
山下「ああ、うん……ごめん、知らなくて」
たくま「いいんだって!ほぼ何もなかったから。手つないだっけなー、程度!」
男2「あっ!手といえば!(男1に)この前の話なんだけど、同期がバイクで事故って利き手骨折してさ……」
男1と男2は別な話題で盛り上がり始める。
気まずい山下とたくま。
たくま「山下さ」
山下「ん?」
たくま「……大丈夫なの?」
山下「何が?」
たくま「俺がお前に電話かけたとき、松野さんがスマホ持ってたよな。……お前の」
山下「ああ、うん」
たくま「……松野さんてさ、そういうとこあんじゃん」
山下「そういうとこって何だよ」
たくま「なんていうか……いや、いいんだけど。ごめん、忘れて」
山下「……たくまは、自由人だったもんなぁ。そんなお前が今は公務員だもん。お役所はルールとか厳しいんだろ?大丈夫?」
たくま「まぁ、大丈夫だよ。ルールっつっても、そんな厳しいもんじゃないから……でも……」
たくまはネリを見る。
ネリもたくまを見る。
たくまは慌てて視線を逸らす。
たくま「まぁ、お前がいいならいいんだ」
女3が座敷に駆け込んでくる。
女3「ごめーん!遅くなった!」
男1「おう、おせーぞ!」
女3「まだやってる?やってる?やってるよね?あっ、山下優吾ぉ〜。てめー、久しぶりだなぁ」
女3は乱暴に山下の背を叩く。
山下「いってーな、お前は昔っからそういう……」
女3「あっ、あたし生!あれ?その子?彼女?」
女2「松野ネリちゃん。深瀬ゼミの」
女3「あー、そうなんだー!とりあえず乾杯させて、乾杯」
女3を歓迎するメンバーたち。
嬉しそうな山下を、ネリは冷たい視線で見つめる。
〇山下のアパート・部屋の中(深夜)
帰宅後の暗いアパート。
ネリが部屋にあったものを山下に投げつけている。
ネリ「他の女に触った!話した!」
山下「痛い、痛いって、ネリ!」
ネリ「浮気だ!この裏切り者!信じられない!」
山下「触ってないって、あれは向こうが……」
ネリ「うるさい!クズ!」
理不尽な暴力が続く。
ネリは山下のスマホを開き、メッセージアプリを消して行く。
山下「何してんの?」
ネリ「SNSもメッセージアプリも全部いりませんよね?」
山下「えっ」
ネリ「退会が完了しました、ですって」
メッセージアプリを見せるネリ。画面にはメッセージアプリを退会したことを告げる表示。
ネリ「わたしと家族と仕事関係以外の連絡先も全部消します。いいですよね?わたし、彼女なんですから」
愕然とする山下。
ネリは再びスマホに戻り、メッセージアプリなどを消す作業。
笑い出す山下。ネリはぎょっとして山下を見る。
山下「……いいよ。全部消して。大丈夫だよ」
ネリ「……いいの?」
山下「いいよ。もっと俺を束縛して。もっと俺に依存して。俺の世界をネリだけにして」
山下はネリを抱きしめる。
ネリ「……こんな関係、やっぱりおかしいですよね。女の子たちにも言われました。優吾さんのこともストーカーしてたの?束縛のしすぎはだめだよって、あんな、わたしのこと、何も知らない女たちに」
山下「俺たちがいいなら、これでいいんだよ。他人なんか、関係ない。俺の世界にはネリが必要で、ネリしかいらない。ネリのいない生活なんて、考えられないんだよ」
ネリ「わたしを受け入れてくださるんですか」
山下「うん。ネリが、俺を受け入れてくれたからね」
ネリは山下に縋って泣く。
〇同・寝室
裸の山下とネリが布団に寝転がっている。
山下は幸せそうにネリの頭を撫でる。
山下「ネリ……きっと俺たち、ずっといっしょにやっていけるよ。心配しないで。君が俺の全部を支配してくれて、俺は幸せだし、君もありのままでいられて、幸せだろ。こうやって、ずっと、いっしょにいようね……。……ネリは、ずっと俺を支配してくれるよね?…………ネリ?」
ネリは背を向けて寝ている様子。
山下は眠る。
ネリは目を開けて、暗がりを見つめている。
山下が寝たことを確認すると、自分のスマホと山下のスマホの両方を出し、操作する。
〇同・リビング(朝)
ネリは自分のスマホを見ている。
バタバタと山下がスーツを着たり、カメラを準備したりと、出勤の準備をしている。
山下「なんだよ、ネリ!昨日アラームお願いしたろ?」
ネリ「あ、優吾さん、ごめんなさい……」
山下「ネリ、今何時?」
ネリ「今8時21分です」
山下「天気は?」
ネリは答えない。
山下「ネリ、天気!」
ネリ「あ、くもりです」
山下はネリに手を伸ばす。
山下「行ってきます」
ネリは山下の手を握る。
ネリ「いってらっしゃい」
山下「ちがう。俺のスマホ」
ネリ「ああ、これ?いりますか?」
山下「え、でも連絡とるのに使うし」
ネリ「誰と連絡する必要があるんですか?」
山下「え……」
ネリは脱ぎ捨てられたエプロンからスケジュール帳を取り出す。
ネリ「今日の撮影は新宿で一件。スタジオ集合。もしモデルさんが遅れても、スタジオならそこの電話が借りられるでしょう?」
山下「ああ、うん。でも……ネリにも終わったって連絡したいし」
ネリ「必要ありません。わたしはここにいるし、あなたは絶対帰ってくる。必ず」
ネリは両手で山下の手を包む。
山下は微笑む。
山下「しょうがないなぁ。浮気の心配かけたのは俺だしね。じゃ、置いていくよ」
ネリ「ええ。いってらっしゃい」
山下はアパートを出る。
〇同・外
山下が外に出ると鍵がかけられる。
山下「雨降ってんじゃん……」
山下は外に立て掛けてあった傘を手に持つ。
すると、部屋の中から朝のプレイリストが大音量で聞こえる。
山下「ちょっと、ネリ……音デカすぎ」
山下は部屋に戻ろうとドアの鍵を開ける。が、チェーンも掛けられていたため、中に入れない。
山下「ネリ? おーい、ネリ!音!近所迷惑!」
〇同・リビング
ネリが大音量の音楽をかけてプロテインバーの袋を準備し、小躍りしている。
そしてネリは自分のスマホのメッセージアプリで、たくまを見つけ、フォローする。
ネリはメッセージを打つ。
〇役所前
出勤中のたくまのスマホがなる。
たくまはメッセージを確認し、驚きと嫌悪で顔を歪める。
〇同・リビング
ネリがメッセージアプリの画面を睨んでいる。
ネリが送ったメッセージは「お久しぶりです!ネリです。この前、たくまくんに会えて本当にびっくり&嬉しかった!もしかして運命かな……?なんてドキドキしてます。ねえ、たくまくん、昔と変わらずとおってもカッコよかったけど、指輪のセンスはイマイチだったかな?彼女さんのセンスだったら、ちょっと疑問。あんまりたくまくんのこと見てないんだな〜って思っちゃいました。それで、この前たくまくんに良く似合いそうな可愛いリングを見つけたので、良かったら見に行きませんか?わたしも新しいの欲しいなって思ってたんです。あのころみたいに、いっしょにお出かけしましょう?いつが空いてますか?わたしはいつでもOKです」
既読がつき、ネリは飛び上がって喜ぶ。
そして、ニヤニヤしながら続きのメッセージを打つ。プロテインバーの袋を開け、食べ、そのゴミを床に散らかし、また新しい袋を開ける。
〇同・外
山下「ネリ!音消して!電気無駄遣いするなよ!エアコンも電気も音楽も消して!全部消して!」
ネリの声「はあい」
山下はイライラしながら出勤する。
〇同・部屋の中
ネリは同窓会で撮った集合写真をスマホで見ながらニヤニヤしている。
ネリ「全部、消しまぁす」
ネリはスマホを指で撫でる。撫でた場所が黒く塗りつぶされていく。
ネリは、自分と、たくま以外を黒く塗りつぶしていく。最後に山下も塗り消す。
了
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