満月さん 日常

男Aがマンションのバルコニーで夜空を眺めていると、その下の路地で辛そうに働く男Bが見えた。 目があった二人。男Aは男Bを励ますように笑顔やジェスチャーを送り、男Bはそのお返しか、商品のバブルガンを使って夜空にシャボン玉を飛ばして見せた。 ロマンチックな光景に、男Aは自分の彼女をバルコニーに呼び、美しい夜を楽しんだ。 そんな男Aと彼女を別な場所で誰かが見ていた。
barayama 16 1 0 07/13
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第一稿

登場人物
・男A(30代)マンションに住んでいる男。
・男B(20〜30代)サラリーマン。
・社長(30〜40代)男性。
・男C(20〜30代)男Aの同僚。
・女A(20 ...続きを読む
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登場人物
・男A(30代)マンションに住んでいる男。
・男B(20〜30代)サラリーマン。
・社長(30〜40代)男性。
・男C(20〜30代)男Aの同僚。
・女A(20代)男Aの彼女。
・女B(30代)男Bに仕事を頼んだ女性。
++++++++++++++++++++++

○マンション・ベランダ(夜)
男Aがたばこを吸いにベランダに出てくる。
空を見上げ、部屋の中にいる女Aに話しかける。

男A「おい、今日は満月だよ」
女A「(姿を見せず、声だけ)えー? 何?」
男A「満月」
女A「ええ? そんなこと言うキャラだった?」
男A「そうだよ。俺はロマンチストなの」
女A「何言ってんだか」
男A「ほんときれいだよ。こっちおいでよ」
女A「まだご飯準備できてないから待ってて。ねえ、粉チーズ買っておいてくれた?」

下から大きな物音がして、男Aは路地の方へ目をやる。


○マンション下の路地
路地には車が一台止まっていて、その周りにダンボールが積み重なっている。
その横で、スーツ姿の男Bが運んでいたダンボールを道に盛大にひっくり返してしまったのが見える。
社長が現れ、男Bに向かって「何やってんだ」等怒鳴り散らし、去っていく。
男Bはダンボールから散らばっていった水鉄砲やバブルガンなどを拾い、箱に詰め直している。


○マンション・バルコニー
男Aは男Bを気の毒そうに見ている。


○マンション下の路地
男Bはふと顔を見上げる。男Aと目があい、気まずそうに会釈する。


○マンション・バルコニー
男Aは男Bに会釈を返し、視線を自分の部屋の中に戻す。

女A「(声のみ)ねえ、粉チーズ」
男A「ああ、冷蔵庫の、ドレッシングとかの並びに置いたよ」
女A「あ、あったあった。ありがと」

男Aは外の様子が気になり、再びバルコニーから男Bの様子を見る。


○マンション下の路地
男Bが社長と話している様子が見える。
社長は男Bに文句を言っているようで、男Bはヘコヘコと頭を下げている。
そして再び大量のダンボールを運ぶ作業を続ける。つらそうな男B。


○マンション・バルコニー
男A「あ〜あ〜... ... 」


○マンション下の路地
辛くなってしゃがみ込む男B。


○マンション・バルコニー
男Aはバルコニーのフェンスを叩いて男Bを呼ぶ。


○マンション下の路地
男Bは音に気づいて、男Aの方を見上げる。
視線があう二人。


○マンション・バルコニー
男Aは思い切り変な顔をしてみせる。


○マンション下の路地
男Bはぎょっとするが、思わず笑ってしまう。


○マンション・バルコニー
男Aはそれを見て、満足そうに笑い、親指を立てて見せる。


○マンション下の路地
男Bはペコリと会釈をする。



○マンション・バルコニー
男Aはニッと笑って、その口元を指す。
「笑顔になれ」という合図。
男Bがぎこちなく笑い、同じ合図を返すのがバルコニーから見える。


○マンション下の路地
男Aがガッツポーズを見せて男Bをはげますのが見える。
男Bはうれしそうにガッツポーズを返し、再びダンボール運びに向き合う。
男Bは車の中で梱包がされていないバブルガンを見つけ、手に取る。


○マンション・バルコニー
男Aはほほえみながら空を見上げ、たばこを吸う。
満月が見える。
しばらくすると、車をコンコンと叩く音が路地の方から聞こえる。
男Aは音のする方を見て、目を丸くする。

女A「ごはんできたよ〜」
男A「おい、こっち! こっちおいでよ!」
女A「何〜?」
男A「ほら、はやく!」

女Aがベランダに出てくる。

女A「わあ!」


○マンション下の路地
男Bがバブルガンを持って、空に向かってシャボン玉を発射している。
きらきらと夜空に舞い上がるシャボン玉。



○マンション・バルコニー
男Aと女Aはシャボン玉を見つめる。男Bもそれを眺めている。

女A「... ... 誰?」
男A「知らない人」
女A「なにそれ」
男A「名付けるとしたら満月さんだな」
女A「満月さん?」
男A「仕事ってさ。あのくらいの余裕っていうか、遊びがないとやってらんないよな」
女A「余裕?」
男A「タスクに追われて、しんどい思いして、周りが見えなくなってるとさ、いい仕事ができないわけ。息抜きしながら、笑いながら、人も自分も笑顔にする。そういうちょっとした遊びが、仕事をうまく回していくんだよ」
女A「へえ。仕事の中のちょっとした遊び、ね。さすがですねえ」
男A「なんだよ」
女A「ほんとにさすがだなって思ってるの」
男A「茶化してない?」
女A「してない。... ... ごはんにしよ」
男A「いや... ... もう少し、このままで。月が、きれいだよ」

男Aと女Aは寄り添い、満月を眺める。
二人はそっとキスをする。


○別なビル
カメラのシャッターを切る音。
男Cが女Bにカメラの液晶画面を見せる。
男Aと女Aがバルコニーでキスをしている瞬間が映っている。

男C「すみません、この男性、夫さんで間違いないですか」

女Bは険しい顔で頷く。

男C「女性の方に見覚えは?」
女B「夫の会社の、後輩だと思います」
男C「なるほど」

男Cはスマホで電話をかける。

男C「あ、もしもし? 写真ばっちり撮れた。引き上げて」


○マンション下の路地
男Bがスマホで話している。

男B「あ、そう。ふーん、後輩ねえ。そっち大丈夫そう?... ... うん。今からどうする? 突撃?」

社長が男Bを睨みつけている。

男B「あ、ちょっと待って」

男Bはスマホを口元から離し、社長の方を向く。

男B「お邪魔しました、今終わりましたんで」
社長「手伝ってもらえて助かったけど、困るよ、商品ぶちまけられちゃあ」
男B「すみません。壊してはいないんで。あ、これ(バブルガン)、お借りしちゃってスミマセンでした」
社長「そんなのは廃棄予定のやつだからいいんだけどさあ。... ... うちのほうの、その、調査もうまくやってくれよ」
男B「もちろんでございます。今日はご協力ありがとうございました」

社長はため息をついて荷物を積み終わった車に乗る。
男Bは通話に戻る。

男B「(スマホに)もしもし? ... ... ん。わかった。(電話口に女Bが出る)...... あ、もしもし、 いえいえ、そちらこそ大丈夫ですか? ええ、ショックですよね... ... 。心中お察しします。ええ、じゃあ下でお待ちしてます。あ、じゃあ代わってもらえますか? はい。(電話口に男Cが出る)...... あ、俺の方は大丈夫。いけるよ。うん。じゃあ、マンションの下ね。すぐ行く。じゃ」

男Bはスマホを切り、手に持ったバブルガンを見る。

男B「こういう、ちょっとした遊びが、仕事をうまく回していくんだよなあ。ねえ、満月さん」

男は満月を仰ぎ見る。そして、マンションのエントランスに向かってあるき出す。
了。

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