晩霜 学園

合唱祭まであと一ヶ月と迫った頃、吉原梓(12)はいきなり担任教師から「吉原さん、合唱祭で伴奏やってくれるだってね?」と身に覚えのない事を言われ……。
マヤマ 山本 49 0 0 06/15
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第一稿

<登場人物>
吉原 梓(12)中学生
中村 大海(12)梓のクラスメイト
杉山 夏美(12)同

吉原 梢(40)梓の母
村田 典子(48)梓の担任
音楽教師

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<登場人物>
吉原 梓(12)中学生
中村 大海(12)梓のクラスメイト
杉山 夏美(12)同

吉原 梢(40)梓の母
村田 典子(48)梓の担任
音楽教師



<本編>
○メインタイトル『晩霜』

○中学校・外観
   T「4月」
音楽教師の声「え~、六月に合唱祭があります」

○同・音楽室・前
   「音楽室」と書かれた表札。
音楽教師の声「各クラス、伴奏者が三人必要なんですが、やってくれる人~?」

○同・同・中
   音楽教師の授業を受ける吉原梓(12)、中村大海(12)、杉山夏美(12)ら生徒達。中村と杉山が挙手している。
音楽教師「あと一人、誰かピアノ出来る人、いないかな?」
   下を向く梓。

○吉原家・外観
   「吉原」と書かれた表札。
梓の声「ただいま」

○同・リビング
   ピアノやソファーのある室内。あまり上手くはないが、ピアノを演奏する梓。
   そこにやってくる吉原梢(40)。
梢「梓。そろそろピアノのレッスンの時間じゃないの?」
梓「え? (時計を見て)ヤバっ」
   鍵盤蓋を閉める梓。

○中学校・外観
   T「5月」
   流ちょうなピアノの音が聞こえる。

○同・音楽室・中
   ピアノを演奏する中村。その周囲には夏美ら数名の女子生徒。
夏美「凄~い。中村君、めっちゃ上手いね」
中村「まぁ、俺は勉強も運動もパッとしないから。せめてコレくらいは、ね」
   そんな中村達を横目に、片づけをして出ていく梓。

○同・一年三組・前
   「1ー3」と書かれた表札。
   やってくる梓を呼び止める村田典子(48)。
典子「あ、吉原さん」
梓「はい」
典子「聞いたよ。合唱祭、伴奏やってくれるんだってね?」
梓「……はい?」
典子「え、違うの?」
梓「初耳ですよ。今まで伴奏の『ば』の字も聞いてないです」
典子「そうなの? おかしいな……?」

○(イメージ)
   コップにたまり始める水。

○中学校・音楽室
   音楽教師に説得される梓。
音楽教師「やってくれないかな? もう、今から別の伴奏者探すのは難しいし」
梓「そんな事言われても……」

○(イメージ)
   コップに半分近くたまっていく水。

○中学校・教室
   夏美らに囲まれる梓。
梓「ねぇ、何で嫌なの? いいじゃん。音楽の成績『5』にしてもらえるっぽいよ?」
梓「そういう問題じゃ……」

○(イメージ)
   コップに満杯近くたまっていく水。

○吉原家・外観
梓の声「おかしいと思わない?」

○同・リビング
   ソファーに座る梓とキッチンに立つ梢。
梓「多分四月のあの時、授業の途中で女子だけ『何とか検診』で抜けて……」

○(回想)中学校・音楽室
   音楽教師と男子生徒だけがいる室内。
梓の声「その時に男子の誰かが、『吉原はピアノ出来る』って言ったんだろうね」

○吉原家・リビング
   ソファーに座る梓とキッチンに立つ梢。
梓「それで先生が『ピアノ出来る人』みたいなメモをしたのが、巡り巡って『伴奏者リスト』にすり替わったのかな、っていうのが私の推測なんだけど」

○(回想)中学校・一年三組・前
   典子に呼び止められる梓。
梓の声「でも、だからって一か月も経ってから、いきなり『伴奏やってくれるんだって?』は、おかしいでしょ?」

○吉原家・リビング
   ソファーに座る梓とキッチンに立つ梢。
梓「一週間後くらいに、まず『ピアノ出来るんだってね?』から入って『伴奏やってくれないかな?』だったら、まだわかるよ? なのに、色々すっとばし過ぎだし、今更言われても困るよ」
梢「それで?」
梓「みんな『やってよ』『やってよ』一辺倒で、挙句『このままじゃウチのクラスはアカペラで歌わなきゃいけなくなる』なんて脅しも入ってさ。もう、信じられない」
梢「やりなさいよ」
梓「……え?」
   梓の隣に座る梢。
梢「アンタ、ピアノ出来るんだから、やりなさいよ、伴奏くらい」
梓「え、何で……?」
梢「逆に、何でやらないの?」
梓「だって……こんな後出しじゃんけんみたいなやり方、許される訳ないでしょ?」
梢「その前に、自分で立候補しなかったのがいけないんでしょ?」
梓「それは、やりたくなかったから」
梢「だから、何でやりたくないの?」
梓「それは……」

○(イメージ)
   コップからあふれ出す水。

○吉原家・リビング
   ソファーに座る梓とキッチンに立つ梢。
梢「練習時間、もう一ヶ月しかないんでしょ? だったらウダウダ言ってる暇なんてないんじゃないの?」
   その後も梢の話は続いているが音がどんどん遠くなっていく。
梓M「そっか……私の味方、いないんだ。そりゃそうか」

○(イメージ)
   コップに亀裂が入る。
梓M「私が自分の時間削って練習して伴奏やったとして、損するのは私だけ。押し付けたもん勝ちだもんね」
   割れるコップ。

○吉原家・リビング
   ソファーに並んで座る梓と梢。
梓M「こんなの、イジメと一緒じゃんか」

○中学校・外観

○同・一年三組・中
   梓に頭を下げる中村。
中村「お願いします。伴奏、やって下さい」
   しばしの沈黙
梓「……わかったよ」
中村「(顔を上げ笑顔で)マジで? 良かった~!」
梓M「もう心は折れていたし、何より……」

○吉原家・リビング
   ピアノの練習をする梓。
梓M「あの誠意あるやり方を無下にしちゃったら、私は私を許せない気がしたから」
   手を止める梓。
梓M「でも……」
梓「先に謝っとく。ごめんね」

○中学校・体育館・外観

○同・同・中
   ステージに立つ中村、夏美ら生徒達。ピアノ前に座る梓。指揮者の合図に合わせ、弾き始める。

○同・外観
夏美の声「この前の合唱祭、ウチのおばあちゃんが来てたんだけどね」

○同・一年二組・中
   休み時間。思い思いに過ごす生徒達。
   女子生徒と話している夏美。
夏美「『もう一人の伴奏の女の子、あんまり上手くなかったね』って言ってたんだよね」
   笑う女子生徒達。
梓M「知ってるよ」

○同・同・前
   入口脇に立つ夏美。漏れてくる笑い声。
梓M「だから、やりたくなかったんだよ」
                  (完)

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