やっぱり、嫌な女 恋愛

『嫌な女』の続編です。 恭子も准のバーで真面目に働いて、やっと落ちついたと思ったのに、准の初恋の人が出てきて、しかも既婚者!?そして恭子にはまた新たな男の影が…?お店の売上も落ちていて(主に恭子のせいで)大ピンチ! 新たなキャラクターも迎え入れ、今回もドタバタやってます!
南さくら 8 0 0 03/18
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第一稿

河田恭子(みほ)(27) 顔が可愛く性格が悪い。恭子という名前がコンプレックスで男の前ではみほという偽名を使っている。准が経営するバーでバーテンダーとして働いている。

仲田准 ...続きを読む
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河田恭子(みほ)(27) 顔が可愛く性格が悪い。恭子という名前がコンプレックスで男の前ではみほという偽名を使っている。准が経営するバーでバーテンダーとして働いている。

仲田准(25)バーを経営している。自身もバーテンダーとして店で働いている。毒舌だがなんだかんだ優しい。恭子を渋々雇っている。佳奈のことが密かにずっと好き。

今村佳奈(28)准が幼い時に隣に住んでいた幼馴染。既婚者。旧姓は中野。

河田光輝(35)恭子の兄。スキンヘッド。いかつい。目が紫外線に弱いため、サングラスをかけている。

田中(50)よく恭子にお酒を奢ってくれる陽気なおじさん。

近藤(50)佳奈の近所の人。孫がいる。

孫(5)近藤の孫。一緒に買い物に来ていた。

スーツの男(28)恭子に酒を奢ってあげた。なかなかイケメン。

客1・客2(23)バーに来た客。

○バー(夜)
恭子「は〜やっと帰った〜」
自身で肩を揉む恭子。
准「お疲れ様でした」
水が入ったグラスを机に置く准。
恭子「お酒が良いな〜」
准を上目遣いで見つめる恭子。
冷たい目で見下ろす准。
准「そうですか」
グラスを持ち飲もうとする准。
恭子「嘘嘘!飲みたい!」
准の腕を掴む恭子。
ため息をつく准。
准「最初からそうしてください」
グラスを恭子に渡す准。
飲まずにグラスを見つめる恭子。
恭子「……なんか、成長したよね〜〜私」
准「急に……?まぁ、そうですね…最初は酷かった…」

○(回想)バー(夜)
ザワザワとした店内。
カクテルを飲みながら仕事をしている恭子。
そんな姿を見つけ、恭子のもとへ行く准。
准「ちょっと、営業中に何で飲んでるんですか!」
恭子「平気!平気!あたしお酒強いから!」
准「いや、そうじゃなくて……」
ため息をつく准。
准「給料から天引きしますね」
メモしようとする准。
恭子「何で〜〜〜!奢ってもらったのにぃ」
准「え、誰にですか?」
メモしていた手を止める准。
恭子「あそこの〜紺のスーツ着てる人」
指をさす恭子。
視線に気がつき、スーツの男が微笑んで恭子に会釈する。
恭子「え〜〜本当イケメン」
胸の前で手を合わせている恭子。
恭子「狙っちゃおうかな〜〜」
首を少し傾げる恭子。
呆れている准。
准「……お好きにどうぞ」
恭子「わーい!!次何にしようかな〜」
メニューを見る恭子。
准「酒はやめろ」
メニューを取り上げる准。

○バー(夜・日替わり)
カクテルを飲んでいる恭子。
准「またですか!?」
恭子「今日は、このおじさまが♡」
掌でカウンターの客を指す恭子。
田中「みほちゃん、おじさんの相手してくれるからね、お礼」
恭子「やったーー!大好き〜!」
田中・恭子「かんぱ〜い」
2人で乾杯する。
准「お客様、すみません、仕事中なので…」
田中「今日は人少ないし、多めに払うから、ねっ?」
納得いかない様子の准。

○バー(夜・日替わり)
ドアのベルが鳴る。
恭子「いらっしゃいませ〜」
田中がこちらに歩いてくる。
田中「お?みほちゃん何首からかけてるの〜」
恭子「マスターにかけられたんです〜〜」
『酒を与えないでください』のプラカードを掲げる恭子。
田中に笑われる恭子。
(回想終わり)

○バー(夜)
准「まぁ、あの時からしたら確かに成長しましたよ」
恭子「でしょ〜〜!頑張った〜みほちゃんえらい!」
准「普通の人は仕事中に飲みませんけどね」
ボソッと呟く准。
准を見つめる恭子。
准「何ですか」
恭子「もうちょっ〜〜とお給料あげてくれたりとか…」
作業の手を止める准。
准「そもそも、うちはあなたを雇っている時点でカツカツなんですよ」
作業を再開する准。
准「無理です」
不貞腐れる恭子。
恭子「くそっ」
小さく呟く恭子。
何かを思いつく恭子。
恭子「あ!バニーガールとか着たらお客さん増えるんじゃない??准くんが」
准「何で俺が着る方なんだよ」
恭子「え〜〜みほに着て欲しいの〜〜?このむっつりめ〜〜」
恭子の話を遮る准。
准「とにかく、真面目に改善策を考えないと」
恭子「んーー」
少し考える恭子。
恭子「准くん何もないの?」
准「今のところは特に…」
黙って考える2人。
ボロボロの布巾が目に入る准。
准「そろそろ備品も買い換えたいですしね……」
恭子「これくらいだったら直せるよ!お姉さんに任せなさい!」
得意げな恭子。
疑いの目を向ける准。

○倉庫
パイプ椅子に座り、破れた布巾を縫っている恭子。
倉庫に入ってくる准。
裁縫をしている恭子に気が付く。
恭子の元に近づき、手元を覗き込む准。
准「裁縫、出来るんですね」
得意げな恭子。
恭子「みほちゃん何でもできちゃうからな〜〜」
恭子が縫うのを黙って見ている准。
恭子、悪戯を思いついた悪い顔になり、准の方を向く。
恭子「あれ!?准くんギャップ萌えしちゃったかな!?」
准、鼻で笑うが一瞬で真顔に戻る。
准「…きったねぇなって、縫い目が」
恭子「なに!?」
准「小学校の時、習いませんでした?大きさを揃えて縫わないと汚くなるって」
他のパイプ椅子に座る准。
准「貸して」
手際良く縫っていく。
感心する恭子。
恭子「…そういえば、何でこんな何でも出来るの?裁縫とかやる機会ないでしょ」
一瞬動きが止まる准。
すぐ再開する。
准「…小さい頃、よく怪我して擦りむく人がいて…その人の服、直してあげてたんです」
恭子「ふーーん……じゃっ、残りもよろしく!」
倉庫を出ていく恭子。
准「あっ、ちょっと!」
大きくため息をつき天を仰ぐ准。
視線を下に戻し布巾を見る准。
准「っていうか、これ縫った所でボロボロなのは変わらないだろ……」
小さく呟く准。

○バー・外(朝)
電話している恭子。
恭子「ねぇ!もうしつこいってば!」
光輝(電話)「どこにいるかくらい教えてくれたって良いだろ」
恭子「だから嫌だって言ってんじゃん」
光輝(電話)「もう、帰って来いって」
准が扉を開け、外に出てくる。
准に気づく恭子。
恭子「じゃあね」
光輝(電話)「あ、ちょっ恭子」
途中で電話が切られる。
准「何やってるんですか」
恭子「え?朝の体操?みたいな」
乾いた笑いを零す恭子。
准「……ふーん」
恭子の携帯が鳴る。
『光輝』の名前が見える。
准「出なくて良いんですか?」
食い気味に答える恭子。
恭子「良いの!」
拒否のボタンをスワイプする恭子。
准「じゃ、ゴミ出しお願いします」
ゴミ袋を足元に置く准。
恭子「はいはい!」
ゴミ袋を持って走っていく恭子。
准、素直な恭子に不思議そうな顔をしながらもバーの中に戻る。

○バー(夜)
ドアのベルが鳴る。
恭子「いらっしゃいませ」
佳奈、恭子のもとに歩いてくる。
佳奈「あなた、誰?」
恭子「……は?」
イラッとした様子の恭子。
佳奈「何で女の子が働いてるんだろう?」
首を傾げる佳奈。
イライラした様子の恭子。
恭子「あの」
恭子の話を遮る様に准の声がする。
准「佳奈!」
カウンターから呼びかける准。
嬉しそうな表情。
振り返って微笑む佳奈。
佳奈「久しぶり。准」
訝しげな表情の恭子。

○バー(夜)
腕組みをして佳奈を見ている恭子。
カウンターに座っている佳奈。
准「元気だった?」
佳奈「もちろん」
准に微笑む佳奈。
准に尋ねる恭子。
恭子「この人、誰?」
佳奈「幼馴染の、中野佳奈です」
微笑む佳奈。
恭子「……どうも」
引き気味の恭子。
佳奈「それにしても、准が人を雇うなんてね〜」
恭子を見る佳奈。
佳奈「女の子だったから余計にびっくりしちゃった」
准「まぁ、成り行きで雇うことに…注文は何にする?」
メニューを眺める佳奈。
佳奈「ん〜何にしようかな〜おすすめはある?」
顔を上げて准に尋ねる佳奈。
恭子「あ!あれは?」
准、恭子の方を見る。
恭子「私たちの、想い出のカクテル♡」
佳奈「え!なぁにそんなのがあるの?」
准「あぁ」
酒を取り始める准。
准「彼氏にこっぴどく振られて、可哀想だから出してあげた」
恭子の方を向く。
恭子「え」
准「あのメリーウィドウの事ですか?」
恭子にニッコリと微笑む准。
恭子「何でそういう言い方するの〜〜!」
恭子の方を見ずに答える。
准「本当のことじゃないですか」
恭子「いや、もっと言い方ってもんが」
佳奈「アハハ、仲良いのね〜」
准「いや、別に。全然」
慌てて否定する准。
恭子「准くんツンデレだからな〜〜〜この前も」
恭子の話を遮る佳奈。
佳奈「うん、知ってる」
准に微笑む佳奈。
一瞬戸惑う恭子。
作業の手を一瞬止める准。
佳奈「准、本当は優しいのに、不器用だから、隠しちゃうんだよね」
恭子「私が話してたんですけど?」
無視する佳奈。
俯きながら話す佳奈。
佳奈「小さい時も、私がよく転んで服破ちゃった時、いつも准が直してくれてたもんね」
顔を上げ、微笑む佳奈。
作業をしつつ、俯きながら話す准。
准「そんな昔のこと、もう忘れた」
佳奈「私は、嬉しかったのになぁ」
頬杖をつき、准を優しく見つめる佳奈。
後ろを向きグラスを片付ける准。
耳の淵が赤い。
感づく恭子。
急いで喋り出す。
恭子「私だってこの前、准くんに布巾縫ってもらったもーん」
准「もう捨てましたけどね」
恭子「何で!?」
准「あそこまでボロボロだと縫ったところで使えないじゃないですか」
恭子「早く言ってよ!」
佳奈「ほら、やっぱり仲良し」
微笑む佳奈。
佳奈の発言にイラッとする恭子。

○バー(夜)
恭子「ね〜准くんってさぁ…」
片付けをしている准。
恭子「さっきの女の人が好きなの?」
持っていたグラスを落として割ってしまう准。
准「は!?何!?」
恭子「あーもうはいはい、とりあえず片付けよ」
納得いかない様子だが渋々ほうきとちりとりを持ってくる。
恭子「で?いつから?どこが好きなの?」
准「急にそんなこと…」
恭子「あ、またあれ言うの?『教える義理ないんで』って」
准の言い方を小馬鹿にしながら真似する恭子。
准「あ?」
恭子「はいはい、ごめんって。で?」
しばらく悩む准。
准ほうきで割れたガラスをはいている。
恭子、ちりとりをしゃがんで固定している。
嫌そうに話し出す准。
准「いつからかは…良く分からない…気付いたら好きだったから」
恭子「はー…25歳の言葉とは思えないほど純粋…」
准「でも、結婚してる」
恭子「え!?結婚してるの!?」
思わず立ち上がる恭子。
准「しっ!声が大きい!」
口元に人差し指を当てる准。
恭子「私たち以外誰もいないじゃん!」
周りを指差す恭子。
准「うるさい」
恭子「っていうか私に色々言ってたけど自分だって」
恭子の言葉を遮る准。
准「別に…好きでいるだけだったら自由でしょ」
恭子「は〜〜チッチッ甘いね〜〜」
腰に手を当て、呆れたように首を横に振る恭子。
准「あ?」
腕を組みながら喋る恭子。
恭子「良い?側で見てるだけで足りなくなるからみんな浮気とか不倫に走るんでしょ〜」
ふてくされる准。
准、割れたガラスを袋に入れる。
准「…そもそもアンタ、既婚者とか気にするんだ。あんなに浮気しておいて」
恭子「残念!既婚者には手出さないポリシーなんです〜〜後で慰謝料請求されたりしたら嫌じゃん」
准「貞操観念ガバガバなのにこんな時だけしっかりしていらっしゃいますこと」
不思議そうな顔をする恭子。
恭子「准くんがイヤミを言うとは…珍しい…」
准をじっと見つめる恭子。
准「なに?別に俺だって」
准の話を遮る恭子。
恭子「そんなに好きなの?」
准「はぁ?」
恭子「あの人、好意に気付いてると思うよ」
准「は!?なんで…?」
恭子「准くんの目がこーーんなハートマークだから!」
親指と人差し指で指ハートを作り、准の目にかざす恭子。
その手を振り払う准。
准「別に、そんな目してない」
恭子「でも、本当に分かりやすいもん」
准に背を向け、片付けを再開する恭子。
恭子「好意に分かってて来てるんだから、君が思ってるより良い女じゃないよ、彼女。指輪もしてなかったし」
准「…指輪は…仕事中に邪魔だから外してるだけで…」
恭子「そう!そういうところだよ!悪い女だな〜」
話を遮る准。
准「悪い女だったとしても嫌な女じゃない」
振り返る恭子。
恭子を睨む准。
准「アンタと違って」
バーを出て行く准。
恭子「あっちょっ…」
呆然と立ち尽くす恭子。

○バー(夜・日替わり)
下げものを持ってくる恭子。
准「これ、早く運んで」
顎で指示する准。
恭子「今、後片付けしてたじゃん!」
恭子の方を見ずに作業しながら答える。
准「普通に考えて飲み物出す方が先でしょ」
恭子「はぁ〜〜〜?ねぇ、っていうかいつまで怒ってんの?」
無視する准。
恭子「そうやってネチネチネチ」
准、酒のボトルを勢いよく置く。
驚く恭子。
准、恭子の目を見る。
准「口じゃなくて手動かせよ」
カクテルを持ってホールに出ていく准。
恭子、エプロンを外し、勢いよくテーブルに置く。
店を出ていく恭子。
出て行った様子を横目で確認しながらも接客を続ける准。

○バー(夜・日替わり)
ドアが開く。
田中「みほちゃーーん!」
准「いらっしゃいませ」
カウンターに歩いてくる田中
田中「あれ?今日みほちゃんいないの?」
准「無断欠勤3日目です」
グラスを拭きながら答える准。
田中「あ〜〜やりそうだな〜」
笑う田中。
椅子に座る。
田中「喧嘩でもしたんだろ?」
ニヤつきながら聞いてくる田中。
准「まぁ、そんな感じです」
田中「自分から折れなさそうだもんな〜2人とも」
准「ご注文は?」
メニューを手渡す准。
田中「おお、何にしようかな〜おすすめは?」
メニューを受け取り、見る田中。
准「マティーニ、とかですかね」
田中「なるほど〜」
メニューを眺める田中。
准の方を向く。
田中「とりあえず生で!」

○バー(夜)
ビールを飲む田中。
田中「はっーー!生き返ったー!」
静かな店内。
田中「それにしても……あの子がいないとこんな静かなんだなぁ」
店を見渡す田中。
准「今日はお客さんが少ないからですよ」
振り返って准の方を見る田中。
田中「素直じゃないね〜」
准のスマホが鳴る。
通知を見て驚く准。

○恭子・部屋(朝)
ベッドに横になっている恭子
恭子「なーんであの女がそんなに好きかなぁ」
小さく呟く恭子。
勢いよく起き上がる。
恭子「っていうか普通、あそこまで言うこと無くない!?手動かせって動かしてたじゃん!!」
恭子「ねぇ!くま太郎?」
くまの人形に向かって喋りかける。
ため息をつく恭子。
恭子「4日も休んでるのに何も連絡無いし……」
落ち込む恭子。
スマホが鳴る。
勢いよく見る恭子。
准『話があるので今日店に来て下さい』

○バー
恭子「おはようございまーす……」
恐る恐る店の中に入ってくる恭子
無言で作業している准
准のもとに行く恭子
准「そこ、座って下さい」
大人しく椅子に座る恭子。
作業の手を止める准。
准「ここ、辞めたいですか、続けたいですか」
質問に驚く恭子。
恭子「まだ、怒ってる?」
准「質問に答えて」
恭子俯く。
恭子「辞めたくはない……です……」
仕方がないという様に息をつく准。
准「……分かりました」
顔を上げる恭子。
准「今日の夜からちゃんと戻ってきて下さい」
恭子「准くん……」
准「で、別にもう怒ってはないです」
恭子「許してくれるってこと?」
准「許すっていうか……そんなことで悩む必要が無くなったから」
不思議そうな顔をする恭子。
恭子「どういう……?」
准「佳奈は、アメリカに行くそうです」
恭子「アメリカ!?」
准「……旦那の赴任先に着いていくって。暫く日本には帰ってこない」
恭子「じゃあ、もう会えなくなるってこと!?」
准「別に一生会えなくなる訳では無いけど…店にはなかなか来れなくなりますよね」
少し考える恭子
恭子「……このまま、行かせて良いの?」
准を見つめる恭子。
准「他にどうしようもないでしょ」
自虐的に笑う准。
恭子「……あーーー!!ウジウジしてて本当面倒臭い!!」
頭を掻きむしる恭子。
その姿に驚く准。
恭子「そんな未練タラタラな顔しておいて、なーにがどうしようもないよ!!」
驚いている准。
恭子「一回も好きって伝えてないんでしょ!?もう一生言えなくなるかもしれないんだよ!?」
准「……一生……」
小さく呟く准。
准、少し考える。
准「……ちょっと、出てきます」
准、上着を取り出口に向かう。
准「オープンまでには戻ってくるんで!」
扉を出て、走って出ていく准。
やれやれといった顔をする恭子。

○歩道
走っている准。
准M「俺なんで今こんなに走ってるんだ?」
× × ×
カフェの中を覗く准。
× × ×
スーパーの中を覗く准。
× × ×
暗い路地裏を覗く。
猫の尻尾を踏み、威嚇される准。
焦って飛び出していく。
× × ×
ゴミ箱の中に呼びかける准。
准「こんな場所にいるはずも無いのに……」

○商店街(夕方)
疲れてしゃがみ込み、自虐的に笑う准
准「こんなの、見つかるわけ……」
准の呟きを遮るように声がする。
佳奈「ありがとうございます〜」
商品を受け取り、歩き出す佳奈。
声に気がつき、振り向く准。
准と目が合う佳奈。
佳奈「准?」
准の元に歩いてくる。
准「こんな所で何してるの?」
笑う佳奈。
立ち上がる准。
佳奈を見つめる。
准「ずっと、探してたんだ」

○バー
ドアが閉まろうとしている。
恭子「やれやれ」
手を洗う恭子。
光輝から電話がかかってくる。
無視する恭子。
またかかってくる。
手を拭いて、電源を切ろうとすると扉を叩く音がする。
ハッとし、急いで鍵をかけに行こうと入口へ走るが、先にドアを開けられてしまう。
ドアの先にいる人物を見て驚く恭子。

○商店街(夕方)
佳奈「連絡してくれれば良かったのに」
准、しまったという顔をする
准「電話すれば良かったんだ……!」
また、しゃがみこむ准。
佳奈「アハハ、准しっかりしてそうでちょっと抜けてるからな〜」
笑っている佳奈
佳奈もしゃがむ。
佳奈「汗もこんなにかいて」
ハンカチを准の顔に当てる佳奈。
その手を握る准。
准「俺、佳奈が」
話を遮る様に声をかけてくる近藤。
近藤「あの、大丈夫ですか?」
振り返る2人。
手をパッと離す准。
心配そうに准を見る近藤。
驚き、立ち上がる佳奈。
佳奈「近藤さん!」
佳奈の顔を見て驚く近藤。
近藤「あら、今村さん!?」
近藤「あ、彼は大丈夫なの?」
佳奈「え?」
近藤「え、具合が悪くてしゃがんでたんじゃ……?」
佳奈「あ〜〜!」
笑う佳奈。
ゆっくり立ち上がる准。
佳奈「走って疲れたからしゃがんでただけですよ。ね?」
准、無言で頷く。
近藤「あら、そうなの?ごめんなさいね、邪魔しちゃったわ」
少し恥ずかしそうな近藤。
佳奈「いえ、そういう場合もありますもんね。ありがとうございます」
微笑む佳奈。
准を見る近藤。
近藤「弟さん?かしら」
佳奈「あはは、幼馴染です」
近藤「そう〜カッコ良いわね〜〜」
准のことを頭から爪先までじっくり見る。
近藤「あ!」
手を叩く近藤。
近藤「それはそうと、アメリカ、行くらしいじゃない」
佳奈「急に決まったことで、私も驚いてるんですけど……」
苦笑する佳奈。
近藤「大変だとは思うけど、ラブラブだから大丈夫よ!今朝だって」
佳奈と准を見てニヤニヤする近藤。
近藤「ね〜〜?」
照れて恥ずかしそうな佳奈。
居心地が悪そうな准。
孫「おばあちゃん〜〜早く行こうよ〜」
孫が繋いでいた手を揺らす。
近藤「あ、じゃあ、また」
佳奈「えぇ、また今度」
会釈して立ち去っていく
孫「今日の夕飯なにー?」
近藤「ん〜肉じゃが!」
孫「また〜?」
2人を見送ってる佳奈。
准「……もう中野じゃないんだもんな」
小さく呟く准。
佳奈「あ、話は何だったの?」
准の方に向き直る佳奈。
准「いや、アメリカに行っても元気でって言いたくって」
佳奈「何それ〜〜」
笑う佳奈。
買い物袋を見る准。
准「今村さん家の夕飯は?」
佳奈「今日は〜鍋!」
買い物袋を掲げる佳奈。
少し笑う准。
佳奈「簡単で良いでしょ?」
微笑む准。
目線を少し落としながら喋る准。
准「あっち行く前にまた店にも来てよ」
佳奈「もちろん」
笑う佳奈。
少しの沈黙。
佳奈「あ、じゃあまた!」
手を掲げる佳奈。
准「うん、また」

○河原(夕方)
歩いている准。
恭子から電話がかかってくる。
准「もしもし?」
恭子(電話)「准くん、告白終わったら大至急帰ってきてください。大至急」
焦っている恭子。
電話の外から男の声がする。
光輝(電話)「恭子、そいつに早くしろって言っとけ」
恭子(電話)「だそうです……」
焦り出す准。
准「すぐ戻ります」
電話を切り、走り出す准。

○バー(夕方)
息を切らして店に入ってくる准。
准「遅くなりました!」
光輝が入り口に向かって歩いてくる。
光輝「准っていうのは君だな?」
いかつい光輝にビビる准。
准「そう…ですけど…」
手を差し出す光輝。
おずおずと手を握る准。
手に力が籠る光輝。
光輝「で?恭子と付き合ってどれくらいだ?」
驚く准。
恭子「だから、付き合ってないってば!何回言わせるの!」
光輝「俺はこいつに聞いてる」
准を見つめる光輝。
准「付き合ってないです…全然。全く」
激しく首を横に振る准。
光輝「給料は払ってんのか?」
准「少ないですが……」
光輝「仕事はちゃんとやってるか?」
准「まぁ…たまに酒飲んでますけど……」
恭子の方をを見る光輝。
目を逸らす恭子。
光輝「おい、どういうことだ」
恭子「別に今は飲んでないし」
光輝「酒を飲みながら仕事は出来ないだろ」
食い気味に反論する恭子。
恭子「ちゃんとしてたし!」
准「結局眠くなって裏で寝てたじゃないですか」
准の方を向く光輝。
ビビる准。
光輝「うちの妹がご迷惑をかけて申し訳ない!」
頭を下げる光輝。
恭子「お兄ちやん!」
准「え?」

○バー(夕方)
3人でテーブルを囲んでいる。
恭子、腕を組みそっぽを向いている。
サングラスを外す光輝。
光輝「ご挨拶が遅れました。恭子の兄の河田光輝です。」
准「あ、ここの店長の仲田准です」
光輝「突然押しかけて申し訳ない」
頭を下げる光輝。
恭子「本当に」
恭子を睨む光輝。
慌てる准。
准「大丈夫なので顔上げてください」
顔を上げる光輝。
准「えっと、整理すると、つまりお兄さんは連絡が途絶えた恭子さんが心配でここまでやってきたってことですよね」
恭子「過保護だから」
呟く恭子。
頷く光輝。
光輝「今何してるって聞いても答えないし、また変な男に捕まってるんじゃないかと思って」
准「あり得そう……」
光輝「だろ?」
恭子「2人とも失礼!」
光輝「で、まともに働いてないようだったら家に連れて帰ろうかと思ってたんだけど…」
准を見る光輝。
光輝「君だったら恭子のこと任せられる」
准「自信はないですが、ありがとうございます。」
恭子「何これ……」
恭子ため息をつき、スマホを見る
驚く恭子。
恭子「うわ、あと10分しかない!」
准「え!?急がないと」
立ち上がる准。
光輝「せっかく来たから俺も一杯呑んでいっても良いかな?」
准「もちろん」
恭子「え〜」
准「あなたは準備」
立つように促す准。

○バー(夜)
カクテルを飲み、つまみを食べている光輝。
准「お口に合いますか?」
光輝「酒は上手い……」
ホっとする准。
光輝「けどつまみが合ってない」
准「料理は…あまり得意じゃなくて…」
話しながら徐々に俯いていく准。
光輝「簡単なものだったら教えてやるよ」
准「え?」
顔を上げる准。
恭子「うち、実家が飲食店なの」
壁にもたれながら答える恭子。
准「良いんですか?」
光輝に向き直る准。
光輝「可愛い妹が働いてる店だからな」
准「ありがとうございます!」
光輝「まずは簡単なものから。これとかどうだ?」
准にスマホの写真を見せる光輝。
准「美味しそうです」
光輝「よし、キッチン借りるぞ」
椅子から立ち上がる光輝。
准「あ、はい。こちらです」
裏に入っていく2人。
呆れた様に見ている恭子。

○バー(夜)
恭子「なんか、ドっと疲れが……」
椅子に座る恭子
准「まぁ、結局認めてもらえたし。良いじゃないですか」
恭子「それは、そうなんだけど〜」
片付けをしている准。
恭子「准くんは?どうだったの、告白」
准「……結局、出来ませんでした」
手を止める准。
黙って話すのを待っている恭子。
准「……なんというか、もう、今村さんの佳奈なんですよ。俺が知ってる仲田佳奈じゃなくて」
小さく笑う准。
准「多分、俺は誰かのものになった姿も、全部含めて好きだったんです。そしたら、幸せを壊すようなこと出来なかった」
恭子「そう……」
椅子から勢いよく降りる恭子。
恭子「まっ、そんな気はしてたけどね〜」
恭子の方を見る准。
准「告白できないって分かってて行かせたんですか?」
恭子「だって、ウジウジグズグズしてる准くん面倒くさかったんだもん」
ため息をつく准。
恭子「後は勢いとノリ?なんかドラマみたいだな〜って思ったらノってきちゃって」
笑いながら話す恭子。
呆れている准。
准「アンタって本当に…」
恭子「嫌な女?」
移動する恭子。
恭子「でも、ちょっとはすっきりしたでしょ〜〜」
恭子、カクテルの道具が目に入る。
恭子「あ!カクテル作ってあげようか!」
准「え、いい……」
恭子「そんなこと言わないで!ほら!ここ座って」
カウンターの椅子をひく恭子。
動かない准。
椅子の座席をポンポンと叩く恭子。
ため息をつき、ノロノロと椅子に移動する准。
後ろを向き、酒を選んでいる恭子。
恭子「失恋カクテルは何にしようかな〜」
× × ×
准「もっと入れて」
× × ×
准「あ〜〜そんなに混ぜなくて良い」
恭子「ちょっと黙っててもらえるかな!?」

○バー(夜)
恭子「はい、お待たせしました」
准「モスコミュール?」
恭子「そう」
少し笑う准。
准「喧嘩したらその日のうちに仲直りしようって?」
恭子を見上げる准。
恭子「お!さすが!知ってるんだ」
感心する恭子。
准「まあ、っていうか失恋関係ないし」
無視する恭子。
恭子「私たち、これからも喧嘩することはあるだろうけど、その日の内に解決しよ」
准「誰かさんが余計なこと言わなければ喧嘩にならないだろうけど」
恭子「まーた、そういうこと言う!?」
恭子の発言を無視し、モスコミュールを飲む准。
フッと笑う准。
恭子「え!そんなに美味しかった!?」
嬉しそうな恭子。
准「アハハ、味は薄いし、炭酸は抜けてるし、俺が作った方が全然うまい」
不貞腐れる恭子。
恭子「そんなの、当たり前じゃん!!!作り方習ったのも凄い前だし、その時も早くて良くわからなかったし」
ブツブツと文句を言ってる恭子。
そんな恭子を見て微笑む准。
准「…でも、なんか元気出たわ」
恭子「え?」
椅子から立ち上がる准。
准「よし、今から作り方もう一回教える」
カウンター裏に回ってくる准。
准「ちゃんと覚えてください」
嫌そうに返事をする恭子。
恭子「はーーい」

○バー(夜・日替わり)
店内がザワザワと混雑している。
客1「ここ、本当お酒もおつまみも美味しいよね」
客2「分かる!私このカナッペ好き〜!」
客1「……もう一個頼んじゃう?」
顔を見合わせる2人。
客2「すみません〜〜」
後片付けをしている恭子。
恭子「はーーい」
行こうとするが入り口に人影を見つける。
恭子「ごめん、准くん行って〜〜」
足早に入口へ向かう恭子。
恭子「お待たせしました〜ご予約のお客様ですか?」
客の方を見る恭子。
こちらを向く佳奈。
恭子「うわっ」
佳奈ということが分かり苦い顔になる。
佳奈「予約はしてないんだけど……」
食い気味に答える恭子。
恭子「本日もう満席でーーす」
佳奈の顔を見ずに答える。
恭子「っていうか、なんでまだ日本にいるんですか」
佳奈「そんなにすぐには行けないわよ」
笑う佳奈。
恭子「ふーーん」
佳奈「私何か嫌われるようなことしちゃったかな?」
首を傾げる佳奈。
恭子「心当たり無いんですか、やばっ」
佳奈「あぁ…」
恭子の耳元に口を寄せる佳奈
佳奈「准が私のこと好きだったから?」
耳を押さえて急いで佳奈と距離を取る恭子。
恭子「何!?」
佳奈「何もないから大丈夫よ」
微笑む佳奈。
佳奈「じゃあ、また来るね」
ニコッと笑い、帰っていく佳奈。
耳を押さえたまま叫ぶ恭子。
恭子「もう来なくて良い〜〜!」

○バー(夜)
カウンターにドシドシと怒った様子で入ってくる恭子。
恭子「あの女、ほんっと嫌い!!」
恭子の方を向く准。
呆れている。
准「またお客さんと喧嘩したんですか?」
恭子「お客さんだけど、お客さんじゃない!!」
准「はぁ?」
恭子「いや、あっちが…!もういい!」
ホールに出ていく恭子。
准のスマホが鳴る。
スマホの通知を見る。
佳奈『今日はお店混んでたから、また今度行くね。私、みほちゃんに完全に嫌われちゃったみたい(泣の絵文字)』
准、忙しそうに働いている恭子を見る。
佳奈の言葉が蘇る。

○(回想)商店街(夕方)
佳奈「あ!准待って!」
後ろを振り返る准。
准に近づく佳奈。
佳奈「この前はごめんね。意地悪しちゃった」
准「何の話?」
不思議そうな顔をする准。
佳奈「あの子があんまり准のこと好きそうだから、つい」
笑う佳奈。
准「あの子って…」
恭子「みほちゃん!」
准「まさか」
笑う准。
佳奈「そう?私のこと凄い嫌そうだったけど」
准「あの人、同性に対してはいつもあぁなんだよ」
呆れている准。
佳奈「准もだいぶ心を許してる様に見えたけどな〜?」
准「誰に対してもズカズカ土足で入ってくるタイプだから」
佳奈「ふ〜〜ん?」
ニヤニヤしている佳奈。
(回想終わり)

○バー(夜)
恭子「准くん、どうしたの?ボーッとして」
准の顔を覗き込んでいる恭子。
作業を再開する准。
准「別に?」
恭子「ふ〜〜ん?」
不思議そうにしながらも、ホールに出ていく恭子。
作業を止める准。
恭子の姿を見つめる准。
フッと小さく笑う准。
准「まさか、ね」
呟く准。
終わり

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