読書と人生経験 コメディ

地球に住むお父さん、お母さん、ジュン、ミサ、タク、リコの一家6人が宇宙ツアーに参加し、ホームステイしながらいろいろな星の生活を見て回ります。地球では考えられないような文化や習慣・自然環境があり、驚きの毎日を過ごしながら家族が成長していきます。宇宙を旅するが宇宙SF小説とは違う異色ホームドラマ。アニメならば約10分、1話完結の物語。
トナミKK 16 0 0 02/20
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第一稿

【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HF=ホストファーザー
HM=ホストマザー
HS=ホスト ...続きを読む
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【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HF=ホストファーザー
HM=ホストマザー
HS=ホストシスター(ホストハウスの娘)
HB=ホストブラザー(ホストハウスの息子)


○飛行機の中

地球家族6人が座っている。父と母が日記帳に字を書き続けている。
タク「お父さんもお母さんも、旅行中の出来事を日記に書いているね」
ミサ「この間、お父さんとお母さんの日記を読ませてもらったんだけど、中身が全然違うのよ」
ジュン「うん、僕も違いに気がついたよ」
ミサ「お父さんのは、普通の日記。出来事をそのまま書いただけのものね」
父「うん、そうだね」
ミサ「お母さんのは、日記とはいえないわ。小説ね。起きた出来事をもとに、空想を盛り込んで膨らませて面白くしてあるの」
母「その通り」
父「それは知らなかった。お母さんの日記帳は読んだことがなかったからな。どうして、小説風にしたのかな」
母「地球に戻ってから、これを小説として発表したいと思っているのよ」
タク「へえ、すごい。それが売れたら金持ちになれるね」
母「お金なんていいのよ。私は本が大好きで、本を何冊も読んで人生が豊かになった気がするの。今度は自分が本を書いて、世の中に恩返ししたいと思って」
父「お母さんは、いいこと言うねえ」
母「ちょうどいい機会だから、子供たちみんなにアドバイスするわ。もっともっと読書をしてちょうだい。外に出ていろいろな活動をすることが一番の人生経験になるけれど、それだけでは足りない。本を読むことによって、他人の人生経験を知識として吸収するのよ」
父「その通りだ。お父さんも、これからもっと読書しようかな」
ジュン「お父さんが?」
父「この年になると、新鮮な人生経験がどんどん少なくなって、1年前の自分と比べてあまり進歩していない気がするんだ。だから、最近は1年があっという間に過ぎるんだよ」

○ ホストハウスの玄関

地球家族が到着。リコがドアを開ける。
リコ「おじゃまします」

○ 居間

地球家族6人とHF、HM、HSが座っている。
HF「ようこそ、わが家へ」
HS「よろしくお願いします。私は社会人なんですけど、今、新しい仕事を探しているところです」
母「よろしくお願いします」
HF「それから、息子がいるんですけど、あそこの小部屋にほぼ一日中こもっています」
HF、小部屋の前に行き、ノックする。
HF「出てきなさい。地球のみなさんにごあいさつしよう」
HBがドアを開けて部屋から出てくる。
HB「こんにちは」
父「こんにちは」
ミサ、開いたドアから小部屋の中を覗き見る。真っ白い壁の部屋で、窓もなく、中には何も置かれていない。
ミサ「あ、中に何もない部屋なんですね」
HF「そうなんですよ」
HB、会釈をして部屋に戻り、ドアを閉める。
HM「不愛想な息子ですみません」
父「いいえ」
HS「みなさんは、これまでどんな旅行をしてこられたんですか?」
ジュン「それはもう、いろいろな星のいろいろな国で、いろいろなことがありましたよ」
HS「へえ、たとえば?」
ミサ「お母さん、あれがあるじゃない、貸して差し上げたら」
母「そうね、ちょっと恥ずかしいんですけど」
母、日記帳を出してHSに差し出す。
母「今までの旅行記を、小説風に書いてみたんです。よろしければ読んでみてください」
HS「ぜひ読ませていただきます」
HM「(HSに)ところで、明日の就職面接の準備は大丈夫?」
HS「大丈夫よ。でも、もう1回練習しておこう」
HS、姿勢を正す。
HS「『私、ウリマ・ウリカと申します。現在25です。大学では文学を学び、卒業後、3年ほど出版社で働いていました。さらに新しい人生経験をしたいと思い、新しい仕事に就くことを決意しました。趣味はアウトドア全般ですが、最近は、人生経験を豊かにするために、読書をする習慣をつけています。』」
母「へえ、あなたも読書か・・・」
HM「(地球家族6人に)それじゃ、みなさんの客間までご案内しますね」
父「お願いします」

○客間

地球家族6人がくつろいでいる。
HMが入ってくる。
HM「ここはいつも家族みんなで集まる部屋なので、いろいろと邪魔な物が置かれていてすみません。ごゆっくりお過ごしください」
母「どうもご親切に」
HM、部屋から出ていく。
次に、HSが部屋に入ってくる。
HS「(母に、母の日記帳を見せながら)これ、すごく面白いですね。どんどん読み進めて、もうすぐ読み終わりますよ」
母「気に入っていただけてよかった」
HS「読み終わったら、感想をお話しますね」
HS、部屋から出ていく。
HSの背中が突然、光を発するのが見える。
ミサ「気のせいかしら。今、HSさんが光った気がする」
タク「確かに、光って見えたよ」
ジュン「まさか。さすがに、気のせいだろ」
ミサ、壁に飾られた2枚の写真に気づく。
ミサ「ねえ、みんな。見て、この写真。びっくりよ」

他の5人も2枚の写真を見る。
1枚は、25と書かれたケーキの前でHSがピースサインをし、後ろにHF、HM、HB。ケーキにはろうそくが25本。
もう1枚は、35と書かれたケーキの前でHBがピースサインをし、後ろにHF、HM、HS。ケーキにはろうそくが35本。
ジュン「子供たちは大人になっても、誕生日をケーキでお祝いするんだね」
ミサ「私が驚いたのは、HBさんの齢よ」
タク「35歳・・・」
ミサ「HBさん、とても若く見えるから、HSさんのほうがお姉さんだとばかり思ってた。HBさんのほうが10歳も年上だったなんて」
ジュン「うん、僕も、HBさんはもっとずっと若いと思ってた」
父「見た目の年齢というのは個人差があるからね。ミサが15歳くらいに見られたり、リコが今でも5歳と間違われたり」
リコ、ふくれっつらをする。
父「そして、見た目の年齢は、生活習慣にも影響される」
全員「・・・」
父「HBさんは、一日中あの部屋にこもりっきりだ。ああやって部屋にこもっている人は、肌が日の光を浴びないから、実際の齢よりもずっと若く見えることがあるんだよ。もしもこのままだと・・・」
ミサ「お父さん、やめて、その話。なんか怖い」
その時、家の外でバイクの音がする。
ジュンとミサがカーテンを開けて窓の外を見る。
ジュン「玄関に何か配達物が届いたぞ」
ミサ「ケーキの絵が描いてある。ケーキ屋だわ」
その時、ドアがノックされ、HFが入ってくる。
HF「あ、みなさん。今から、娘が26になったお祝いをします。ケーキを一緒に食べませんか?」
父「ぜひ、ぜひ。おめでとうございます。それは知りませんでした」

○ダイニング

ケーキには大きく26と書かれている。
HFがデコレーションケーキにろうそくをたくさん立てている。
HF「26本立てるぞ」
HM「おめでとう」
HS「ありがとう」
HS、ろうそくの火をすべて吹き消す。
全員が拍手する。
HM「じゃあ、26になった感想と、これからの抱負を語ってくれる?」
HS「抱負? やっぱり今は仕事探しね・・・」
HS、姿勢を正して座りなおす。
HS「もう一度、面接の練習! 『私、ウリマ・ウリカと申します。現在26です。大学では文学を学び、・・・』」
ジュン「あれ?」
HM「ジュンさん、どうかしました?」
ジュン「あ、さっきの面接の練習では、現在25ですって言ってましたよね」
HS「あ、私、たった今26になったばかりですから」
全員「・・・」
ジュン「あ、なるほど、そういうことか。『26』というのは、『26歳』という意味ではないんですね。単位は何ですか?」
HS「レベル26です。EXPとか経験値と呼んでいます」
タク「経験値?」
HF「いろいろな人生経験を積むたびに、みんな、経験値が上がっていくんです」
HS「でも、今私が26になれたのは、これのおかげです」
HS、母の日記帳をテーブルの上に置く。
母「あ、私の書いた小説・・・」
HS「経験値は、自分で体を動かして経験するばかりでなく、読書によって上げることもできます。この小説はとても斬新で、人生経験が一気に増えた気がしました」
母「ほめていただいて光栄です。そして、お役に立てて何よりです」
ジュン「でも、25から26に上がったというのは、どこかに数字が表示されるんですか? それとも、自分でそんな気がすればそれでいいんですか?」
HS「それを言葉で説明するのはとても難しいんですけど、誰にでもわかるんです。何というか、天から光のようなものが自分に舞い降りてきた気がするんです。そして、周りの人たちも必ずそれを認めてくれます」
ミサとタクが見つめあう。
回想シーン:HSが光輝いているところ。
タク「(ミサに)さっき僕たちが見た、あの光がそうだったんだ・・・」
HS、母に日記帳を見せる。
HS「これ、もう少しお借りしていいですか? 家族にも読んでもらいたくて」
母「はい、もちろん、私たちが出発するまでどうぞ」
HF「しかし、息子のほうはもう3年間もレベル35のまま足踏み状態だ。ちょっと心配だな」
ジュン「(心の中で)3年・・・」
HS「私、もしかすると追いついちゃうかもね」
地球家族、真顔でHSを見ている。
HF「そうだ、ケーキの写真を撮るのを忘れるところだった」
HM、HBの部屋の前に行く。
HM「お祝いの写真を撮るから、ちょっと出てきて」
HB、ドアを開けて部屋から出てくる。
ジュン「カメラを貸してください。僕が撮りますよ」
ジュン、ケーキとHF、HM、HS、HBの写真を撮る。
HB「(HSに)26に上がったのか、おめでとう」
HS「地球のみなさんのおかげなの。ねえ、この小説、面白いから読んでごらんよ」
HS、母の日記帳をHBに手渡す。
HB「あー、僕はもう何年も文字を読んでないから、かったるいな」
HB、日記を開こうともせず、部屋に戻ってドアを閉める。
HS「あ、それ、お借りしている大事な日記帳なんだから、読まないなら返して」
HBの返事はない。
地球家族、顔を見合わせる。

○翌朝、客間

地球家族6人が身支度をしている。
父「飛行機の出発時間まで、どこを見て回ろうか」
母「ねえ、提案なんだけど、私たちの観光にHBさんを誘ってみない?」
地球家族5人、驚いて母を見る。
その時、HFが入ってくる。
HF「息子が、どうかしましたか?」
母「私たちがお誘いしたら、外に出たいと思ってくれるかなと思いまして。ずっと何もしないで、部屋にこもりきりですよね。少しでも外に出たら、何か刺激になることがあるのではないでしょうか」
HF「誘っていただけるのはとても有難いです」
母「いいえ」
HF「ただ、勘違いをしていらっしゃるようですので、ひととおりお話しておきましょう。息子は、年齢はまだ21歳です。18歳の時にレベル35に到達して、天才と騒がれました。大学もわずか1年で卒業し、就職しました。それまでに世界中を訪れて、世界中で出版されている本もすべて読みつくしたのです」
母「そうだったんですか・・・」
ジュン「その反動で、今はただボーッと真白い部屋にこもっているんですか」
HF「いえ、ボーッとしているのではなく、真白い部屋の中で、いろいろなことを考えて、アイデアを生み出そうとしているんです。それが今の彼の仕事で、それで給料をもらっているんです」
ミサ「じゃあ、ちゃんと働いていらっしゃるんですね」
HF「そのとおりです。これまでにすべての国を訪問して知り尽くし、新しい本が出版されてはいるものの、どれを読んでも昔の本の焼き直しのような内容ばかりで、新しい見識はほとんど得られません。こうなると、これ以上レベルアップするには、自分の頭の中で何かを生み出すしかないと彼は考えたのです」
地球家族全員「・・・」
HF「でも、そっち方面の才能はあまり無いのか、なかなかうまくいきません。それで、3年間もレベル35のままです」
地球家族全員「・・・」
HF「まあ、人生山あり谷あり。調子よくレベルが上がり続ける人などいません。彼も、スランプが続いていますが、毎日努力していますので、またいつかきっと・・・」
その時、HBが小走りで笑顔で入ってくる。
HF「どうした?」
HB「来た! 来ました! 今、36になりました!」
HF「おー、そうか、来たか。3年ぶりのレベルアップだ。おめでとう」
HB、母に日記帳を手渡す。
HB「これ、お返しします。全部読みました。とても面白かったです。こんなに興奮した読み物は初めてです!」
母「お役に立ててよかったわ」
地球家族全員、笑顔で見守る。

○玄関

ケーキ屋の男性がドアを開けて、ケーキを運ぶ。
HFが出迎える。母、ミサが後ろで見ている。
ケーキ屋の男性「お待ちどうさま。ケーキをお持ちしました」
HF「どうも」
ミサ「お母さんの日記帳のおかげね。今日もケーキが食べられるわ」
母、うなずく。
HF、ケーキを3箱受け取る。
ミサ「え、3個も? HBさんだけじゃないの?」
HMが奥から出てきて、HFの隣に立つ。
HM「(母に)実は、私たち夫婦も、先ほどあなたの日記帳を読んで、レベルが上がったんです」
母「あら、まあ」
HM「私たちくらいの年になるとみんな、新しい人生経験を積むことが少なくなるので、なかなかレベルが上がらなくなります。私なんか、5年ぶりですよ」
HF「私は実に6年ぶりです」
HFとHMがそろって笑う。

○飛行機の中

地球家族6人が座って話をしている。
ジュン「まさか、こうなるとは」
父「うん、まさかこの飛行機の旅が、7人になるとはね」
父の隣に、HBが座っている。
HB「すみません、突然ご一緒しちゃって。僕は自分の住む星のことは知り尽くしているんですけど、星の外のことは何も知りません。みなさんと一緒に、別の星に行ってみたいんです。いいですよね」
父「ええ、まあ・・・」
HB「大丈夫。この先ずっとついて行こうとは思っていません。次の星に着いたらお別れしましょう。いろいろお世話になりました」
母「こちらこそ」
地球家族6人、ほほえむ。

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