長寿を願うモモの木 コメディ

地球に住むお父さん、お母さん、ジュン、ミサ、タク、リコの一家6人が宇宙ツアーに参加し、ホームステイしながらいろいろな星の生活を見て回ります。地球では考えられないような文化や習慣・自然環境があり、驚きの毎日を過ごしながら家族が成長していきます。宇宙を旅するが宇宙SF小説とは違う異色ホームドラマ。アニメならば約10分、1話完結の物語。
トナミKK 13 0 0 02/06
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第一稿

【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HGF=ホストグランドファーザー 60歳
HGM=ホストグ ...続きを読む
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【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HGF=ホストグランドファーザー 60歳
HGM=ホストグランドマザー 58歳
HM=ホストマザー
HF=ホストファーザー
HB=ホストブラザー(ホストハウスの息子) 12歳
HS=ホストシスター(ホストハウスの娘) 10歳


○ホストハウスへの道

地球家族6人が歩いている。
タク「ホストハウスはまだかな?」
父「この近くだと思うんだけど。もらった書類には、住所が書いてないんだ。でも、この辺りで一番大きな家だから、すぐわかると思うよ」
ミサ「あ、あの家じゃないかしら。とても大きいわ」
父「あ、あれだ、あれだ」

○ホストハウスの玄関

地球家族6人がホストハウスに到着。リコが玄関を開ける。
リコ「おじゃまします」

○ダイニング

地球家族6人が横並びに座っている。
向かい側に、HGF、HGM、HM、HF、HB、HSが座っている。
大きなケーキがテーブルの真ん中に置かれている。
HF「さあ、みなさん。今日はとてもおめでたい日にいらっしゃいました」
ミサ「どなたかのお誕生日なんですね」
HM「なんと、おじいちゃんと娘が、今日二人とも誕生日なんです」
HGFとHSが笑顔でうなずく。
HF「それだけではありません。HSは10歳の誕生日。10歳の誕生日というのは一人前の大人になったという意味を持つ特別の日です。しかも、おじいちゃんは60歳の誕生日。60歳の誕生日というのは、長寿を祝う特別の誕生日なんです」
ジュン「それはすごい! そんな二重におめでたい席に同席できるなんて、うれしいですよ」
ミサ「ほんと、旅行に来てよかった、という気分ですよ」
HB「旅行って何?」
HF「この前、教えたじゃないか。名所などを見て回るために、出かけることだよ」
HB「あ、そうか。不定期の移動のことだね」
HF「そうだ、不定期移動だ」
父「不定期移動って・・・? みなさん旅行はあまりしないのですか?」
HF「しませんよ。だから、旅行という言葉がありません」
ジュン「ふうん、それもなんだか、つまらない気がするな」
HM「さあ、ケーキを切りましょう」
HM、ケーキを切って取り分ける。
HF「ケーキを食べ終わったら、HSの10歳のお祝いの、モモの苗木を買いに行こう」
タク「モモの苗木?」
HS「10歳の誕生日にみんな、モモの苗木を庭に植えるんですよ。長寿を願う木に育っていくんです」
父「へえ、おもしろい儀式ですね」
HB「みんなじゃないよ」
HS「え?」
HB「(HSに)苗木は、別に植えても植えなくてもいいんだぞ。植えない人だっていっぱいいるぞ。君の自由だからな」
HF「(HBに)またそんなひねくれたことを言うんだから。モモの苗木はやっぱり植えるもんだよ」
HS「私、植えるわ。全国民に、私の長寿を願ってほしいから」
HM「じゃあ、決まりね。地球のみなさんも、一緒に商店街の園芸用品店に行きませんか?」
母「ええ、ぜひ」

○商店街の園芸用品店の店頭

HM、HF、HSと地球家族6人が立っている。
店先に、モモの苗木が置いてあり、その横に『全国民がモモで長寿を願う』と書かれている。
タク「(ミサに、小声で)そういえば、さっきHSさんも、『全国民に長寿を願ってほしい』って言ってたね。どういう意味かな?」
ミサ「さあ・・・」
そのとき、店員の男性が出てくる。
園芸用品店の店員男性「いらっしゃい。(HSに)誕生日おめでとう。モモの苗木を買いに来たんだね」
HS「はい」
店員男性、HSに苗木を手渡す。
園芸用品店の店員男性「はい、どうぞ。水もいりますか?」
HM「そろそろ無くなるころね。1本買おうかしら」
店員男性、HMに水の入ったボトルを手渡す。
園芸用品店の店員男性「(HSに)ちゃんと毎日、水をやるんだよ。1日でも水やりを忘れると、モモは枯れちゃうからね」
地球家族全員、驚きの表情。
タク「1日水をやらないと枯れちゃう?」
ミサ「それは、普通の水道水じゃないんですか?」
園芸用品店の店員男性「モモの木に必要な、特別な栄養分が含まれているんですよ」

○ホストハウスの庭の一角

HSがモモの苗木を植える。地球家族6人が見守る。
HS「大きくなあれ」
HS、ボトルに入った水を上から少しかける。
父「実がなるまで、3年くらいはかかるんじゃないんですか?」
HF「3年? とんでもない。このモモは、実がなるまで50年かかります」
地球家族全員、驚きの表情。
タク「50年?」
ジュン「そんなに?」
HM「そう、10歳の誕生日に植えて、実がなるのはちょうど60歳の誕生日なんです」
母「その頃には、結婚して家を出ているんじゃないですか?」
HF「その場合は、ちゃんと業者が植えかえに来てくれるんですよ」
HGF「さあ、みなさん、今度は、私の木を見てください」

○ホストハウスの庭の別の一角

モモの木に、いくつか実がなっている。地球家族6人が見守る。
HGF「私が10歳のときに植えた木です。みごとに実がなりましたよ」
父「感無量でしょうね」
HGF「そりゃもう。国民全員がこのモモで私の長寿を祝ってくれていると考えると、涙が出てきますよ。さあ、さっそく実を取って、みんなで食べましょう」

○ダイニング

地球家族6人が横並びに座り、モモを口にほおばっている。
向かい側に、HGF、HGM、HM、HF、HB、HSが座っている。
母「とってもおいしい!」
タク「こんなおいしいモモ、はじめて食べた」
父「貴重なモモをごちそうになり、ありがとうございます」
HM「そうそう、他のモモの木にも、今日の水やり忘れないでね。忘れると枯れちゃうから」
HF「おっと、そうだ。二つの誕生祝いに夢中になって、忘れるところだった」

○ホストハウスの庭の別の一角

庭に、大きなモモの木と、中くらいの大きさの2本のモモの木がある。
HSがじょうろで水をやっている。地球家族6人が見守る。

○その日の夜、ホストハウスの廊下

ジュンとミサが二人きり。
ジュン「おじいちゃんも、国民全員が長寿を祝ってくれていると言ってたな。おじいちゃんもHSさんも、言うことがちょっと大げさだよな」
ミサ「そうね。なんで国民全員が登場するんだろう。それより、ねえ、もう一つ気になってるんだけど」
ジュン「どうした?」
ミサ「モモの木が一本足りないのよ」
ジュン「うん、僕も気づいた。大きいのが、たぶんおばあちゃんが植えた木だ。そして、残りの2本が、HMさんとHFさんが植えた木なんだろうな」
ミサ「ということはHB君は・・・」
ジュン「植えなかったんだろうな。『植えるも植えないも個人の自由』とか言ってたし」
ミサ「でも、60歳になったとき、彼だけモモを食べて長寿のお祝いをすることができないのよ。植えなかったことを後悔してないかしら」
ジュン「どうだろう。明日、聞いてみるか」

○翌朝、ダイニング

地球家族6人が横並びに座っている。
向かい側に、HGF、HGM、HM、HF、HB、HSが座っている。
みんなで朝食を食べている。時計は6時。
父「みなさん、いつも朝食はこんなに早い時間なんですか?」
HM「いつもこの時間なんですよ」
ミサ「ねえ、HB君は、10歳の時にモモの木を植えなかったことを後悔していないの?」
HB「モモの木? 僕は植えたよ」
ミサ「植えた? どこに? 庭には見当たらなかったけど」
HB「ずっと向こうのほう」
HB、西の方角を指す。
ジュン「向こうって?」
HB「僕が10歳の誕生日には、ずっと向こうの家にいたから・・・」
ミサ「あ、そう」
HM「さあ、あわただしくてすみませんが、7時になったら、私たちの定期移動が始まります」
タク「定期移動?」
HF「まだみなさんにお話していませんでしたね。毎朝7時から7時半の間に、全員となりの家に引っ越すんです」
母「全員って?」
HF「この国の人間、全員です。毎日少しずつ移動していくんですよ」
父「本当ですか? じゃあみなさん、自宅というものがないんですね。それで書類に住所が書いてなかったのか・・・」
ジュン「でも、なぜ自宅を持たずに、移動するんですか?」
HF「旅行する必要をなくすためです。われわれは、50年かけて全国を一周し、各地に住むことができます。ですので、わざわざ旅行しなくていいのです」
ミサ「あー、それで旅行という言葉も無いんですね」
ジュン「でも、一周するのに50年もかかるなんて・・・」
HGF「そう、私は長生きできたおかげで、10歳の誕生日以来、50年ぶりにこの家に戻ってきたんですよ。昨日見ていただいた私のモモの木とも50年ぶりに再会しました」
父「じゃあ、なおさら感慨深かったでしょう」
母「ということは、それまでの間は、他人が水やりをしてくれていたということですか?」
HGF「そうです。50年間、国民みんなが毎日、私の木に水やりをしてくれていたんです」
HM「逆に、庭の向こうに植えてある3本のモモの木は、見ず知らずの人の木です。ちょうどこの家で10歳の誕生日を迎えた人が、過去に少なくとも3人いたんでしょう」
ジュン「そうだったのか・・・」
HF「もうすぐ7時です。移動の時間だ」
父「私たちは、この家に残ったほうがいいのでしょうか」
HF「こんなに広い家は、この家だけですからね。みなさんは、出発の時間までここに残ってください」
HM「もうすぐみなさんとはお別れです」
母「いろいろとありがとうございました」

○ホストハウスの前の道

時計の針が7時を少し過ぎた時刻を指している。
HGF、HGM、HM、HF、HB、HSが大きな荷物を持ち、地球家族に手を振りながら歩いて行く。
地球家族も手を振って見送る。
父「民族大移動だ。今、止まっているのはわれわれだけだな」
ミサ「妙な気分ね」
そのとき、園芸用品店の店員男性が地球家族に声をかける。大きな荷物を持っている。
園芸用品店の店員男性「おはようございます。今から、私がこの家の住民になります。どうぞよろしく」
父「あー、あなたが。こちらこそ、短い間ですが、よろしくお願いします」

○ダイニング

地球家族6人と園芸用品店の店員男性が座っている。
父「園芸用品店さんは、もう長くやっていらっしゃるんですか?」
園芸用品店の店員男性「いいえ、この近所に越してきてからですよ。それまでは別の仕事をしていました」
母「あら、そうですか」
園芸用品店の店員男性「この仕事を始めるまで、モモの木を触ったことも無かったんですよ。10歳の誕生日に、苗木も植えませんでした」
ジュン「植えないかたもいらっしゃるんですね」
園芸用品店の店員男性「いますよ。さて、今日も10時に店に行って、夜遅くまで働かなければいけないので、それまでひと眠りさせてください。みなさんは出発のお時間になったらどうぞお出かけください」
ミサ「あ、でも、この家の庭のモモの木に、水やりをしなければいけないんでしょう」
園芸用品店の店員男性「あ、私は実は、水やりをしたことがありません。あの水のボトルも、自分では持ってないんです」
ジュン「でも、毎日水をやらないと枯れるって・・・」
園芸用品店の店員男性「そんなことないです。1週間くらいは、水をやらなくても平気なんですよ」
ミサ「え、じゃあ、昨日店でおっしゃったことは、水を売る商売のためですか?」
園芸用品店の店員男性「いいえ、違いますよ。毎日水をやらないと枯れるって言っておかないと、どうせ誰かやるだろうと思ってみんな水をやらなくなって、それこそ本当に枯れてしまいますからね」
地球家族「・・・」
園芸用品店の店員男性「店に書いてあった『全国民がモモの木で長寿を願う』というのは、あくまでモモの木を買った人たちだけの内輪の話です。その人たちみんながみんなのために、水を買って毎日水をやり、長寿を願う。これで十分だと思いませんか?」
地球家族「・・・」
園芸用品店の店員男性「それでは、おやすみなさい。さようなら」
店員男性、部屋を出ていく。

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