メモ帳のない世界 コメディ

地球に住むお父さん、お母さん、ジュン、ミサ、タク、リコの一家6人が宇宙ツアーに参加し、ホームステイしながらいろいろな星の生活を見て回ります。地球では考えられないような文化や習慣・自然環境があり、驚きの毎日を過ごしながら家族が成長していきます。宇宙を旅するが宇宙SF小説とは違う異色ホームドラマ。アニメならば約10分、1話完結の物語。
トナミKK 11 0 0 01/30
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第一稿

【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HF=ホストファーザー
HM=ホストマザー
HB=ホスト ...続きを読む
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【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HF=ホストファーザー
HM=ホストマザー
HB=ホストブラザー(ホストハウスの息子) 12歳
HS=ホストシスター(ホストハウスの娘) 10歳

※ 絵や映像のない状態で脚本を読んでくださる方が名前を覚える負担を減らすために、ホストファミリーの名前は記号で表記しています。実際にはそれぞれの名前は決めてあります。

○ホストハウスの玄関。

地球家族6人がホストハウスに到着。リコが玄関を開ける。
リコ「おじゃまします」
HF、HM、HB、HSの4人が玄関に出迎えに出てくる。
HF「いらっしゃい」

○ダイニング

地球家族6人とHF、HM、HB、HSが座っている。
母「明日の午前中までお世話になります。よろしくお願いします」
HF「1日しか泊まっていただけないのは、残念ですよ」
父「そうですね。そうそう、忘れないうちに言っておかないと。われわれの旅行の書類によると、どうやら、この国を出発するときに、出国許可証というものが必要らしくて、大使館に行って受け取る必要があるようなのです」
HF「大使館まで行っていたら、半日つぶれてしまいますね。明日の朝早く、私が取ってきてあげますよ。誰が行ってもかまわないはずですから」
父「それは助かります。ありがとうございます。書面の名前は出国許可証です。あ、今メモに書いてお渡ししますね。何かメモ用紙とペンはありませんか?」
HF「メモ帳はないですよ」
タク「あ、メモ帳なら僕持ってるよ」
HF「あ、必要ないです。覚えましたから。出国許可証ですね」
父「助かります」
HF「よかったら、大使館に売っているキーホルダーも一緒に買ってきますよ。我が国の名物で、おみやげにぴったりです」
父「あ、それはどうも。でも、どうぞお気づかいなく」
そのとき、酒屋の男性がドアから入って来る。
酒屋「こんにちは。何か注文はありますか?」
HM「そうね、じゃあ、今日は、赤ワインと、ビール2本、お酢と、ソース、お米、梨をお願いするわ」
酒屋「わかりました。明日お持ちします」
酒屋、メモをとらずに去って行く。
父「今さっき、メモ帳はないっておっしゃいましたね。この家だけじゃなくて、この星には、どこにもないのですか?」
HF「そうですよ。メモ帳はありません。必要ないからです。言ってみれば、われわれ一人一人の頭の中に紙と鉛筆があって、頭の中に書きこんでいるんです」
タク「それはすごい! 記憶力といえば、うちのリコもすごいけど、たぶんそれ以上だな」
タク、リコと見つめ合う。

○しばらくして、ダイニング

地球家族6人とHF、HM、HB、HSが夕食を食べている。
HM「明日の昼食は、何にしようかしら。ねえ、HB、来週の学校の給食のこんだてはもう知ってるの?」
HB「うん、今日発表されたよ。月曜日はシーフード炒め、火曜日はチキンソテー、水曜日はラーメン、木曜日はクリームシチュー、金曜日は海老フライ・・・」
HB、何も見ないでメニューを話し始める。地球家族が驚いて聞いている。
HM「ふうん、じゃあ、その次の週は?」
HB「月曜日は焼魚、火曜日は牛肉と野菜のグリル、水曜日はピザ、木曜日はローストポーク、金曜日はきのこスパゲティー・・・」
HM「カレーがないわね」
HB「そうだね。久しぶりにカレーが食べたいんだけどな」
HM「じゃあ、明日のお昼、カレーにしましょうか」
HB「やった!」
HS「やった! 約束だからね」
HM「カレーは一番の名物料理です。独特のスパイスを使いますから、おいしいですよ」
ジュン「わー、それは楽しみです」
地球家族6人、顔を見合わせて笑顔になる。
タク「それにしても、紙を見ないでよくメニューを2週間分も覚えているね」
HB「このくらい、すぐ頭に入りますよ」
HM「全員そうですよ。だから、こんだて表が学校で配られることもありません」
タク「へえ、さすがのリコもかなわないだろう」
リコ「どうかな」
タク「お、リコが強気だな」

○翌朝、ダイニング

HMとHSが話している。HSは買い物かごを持っている。
HS「じゃあ、お昼ごはんの買い物行ってくるね」
HM「カレー粉と、牛肉、にんじん、たまねぎ、グリーンピース、月桂樹の葉。以上6つをお願いね」
HS「わかった。行ってきます」
HSが出ていく。
ミサ「そうか、お昼はカレーだったわね。楽しみだな」
HMがキョロキョロしている。
HM「HBはどこへ行ったのかしら」
ジュン「そういえば、タクとリコも見かけないな」

○客間

ジュンとミサが入る。中にタクとリコとHBがいる。
ジュン「あ、ここにいた。何やってるんだ?」
タク「HB君とリコの記憶力勝負をやろうと思っているんだ」
ジュン「記憶力勝負? どうやるんだい?」
タク「今から僕が20個の言葉を言うから、二人とも、それを覚えて、後で紙に書いてよ。たくさん書けたほうの勝ちだよ」
ジュン「20個? そんなにたくさん?」
タク「二人とも、10個くらいなら楽勝で覚えられるというからね、20個用意したよ」
ジュンとミサがタクを呼びよせる。
ミサ「(小声で、タクに)やめたほうがいいよ。きっとリコが負けて落ち込むわ」
ジュン「(小声で、タクに)そうだよ。リコだって、学校ではメモくらいとってるだろう。ここの子供たちは、もともとメモ帳のない世界で生まれ育っているんだから、かなわないよ」
タク「でも、リコはやる気満々なんだ」
タク、リコとHBのほうを見る。
タク「さあ、始めるよ」
タク、メモ帳を1枚破りとり、そこに書かれている20個の言葉を読み上げる。
タク「『ミカン、めがね、時計、バス、アイスクリーム、スカート、日記帳、花束、スープ、海、カエル、・・・』」
リコとHB、無言でタクが読むのを聞いている。
タク、メモ帳を2枚破りとり、リコとHBに1枚ずつ渡す。さらに、筆箱から鉛筆を2本取り出し、リコとHBに1本ずつ渡す。タク「まだ書いちゃだめだよ」
時計の針がカチッと1分動く。
タク「はい、書いていいよ。20個思い出して、書いてみて」
リコとHB、紙に鉛筆ですばやく書いていく。
タク「リコはどう? 全部思い出せた?」
リコ「19個。1個だけ思い出せなかった」
タク「どれどれ? 見せて?」
リコ、タクに紙を渡す。
ミサ「リコは正直ね。私だったら、テストの時なんかに、わからないところは白紙にせずに何か書いちゃうけどね。それで当たることもあるし」
タク「でも、これだけ思い出せればすごいや」
リコ「あと1個は何だっけ?」
タク「うーん、何だろう。自分で何を出題したのかも忘れたから、見ていくしかないや」
タク、自分で持っていた紙とリコから渡された紙を2つ並べ、鉛筆で印をつけていく。
タク「あ、リコは『花束』を忘れているよ」
リコ「あ、そうか」
タク「さて、HB君はどうかな」
HB「僕は20個全部覚えてる」
HB、タクに20個の言葉を書いた紙を見せる。
タク「すごい!」
ジュン「HB君の勝ちか」
ミサ「リコもよくがんばったけど、20個全部覚えないとここの住民にはなれないわよ」
リコ、落ち込んだ表情。
リコ「別に、ならなくていいよ」
その時、父の声が聞こえる。
父「タク! どこだ」
タク「いけない、探してる。行こう」

○ダイニング

HMと地球家族6人がいる。
そこへ、酒屋の男性がドアを開ける。
酒屋「こんにちはー。昨日ご注文の品を届けに来ました」
HM「ごくろうさま」
酒屋「はい、シャンパン2本に、白ワイン、オリーブオイルに、ミネラルウォーター、そしてお米とリンゴですね」
HM「はい。いつもありがとう」
酒屋が出ていく。
リコ「違う・・・」
HM「違う? 何が?」
リコ「注文の品物、お米だけ合っているけど、ほかは全部違ってる・・・」
HM「あら、そんなことないと思うけど、ね」
HB「うん、酒屋が持ってきたんだし、間違いないよ」
リコ「(地球家族のほうを見て)違うよね」
ジュン「いや、僕は、よく覚えてなくて・・・」
ミサ「私も、覚えてないわ・・・」
HM「きっとリコちゃんの思い違いよ」
リコ、首をかしげる。
タク「(心の中で)ん、もしかして・・・」
タク、走って部屋を出る。

○客間

タク、記憶力勝負の時にHBが20個の言葉を書いた紙を、タク自身が書いた紙とよく見比べる。
タク「何だ、これは。ほとんど全部でたらめじゃないか・・・」

○ダイニング

HMと地球家族がいるところへ、HSが入って来る。
HS「ただいま。買い物、行ってきたよ」
HM「お疲れ様」
HS、買い物袋から、品物を1つずつテーブルの上に出していく。
HS「はい、ひき肉、卵、たまねぎ、キャベツ、トマト、固形チキンスープ」
地球家族全員、顔を見合わせる。
ミサ「これって、ロールキャベツの材料・・・」
ジュン「たまねぎ以外、全部違う。正解は1つだな」
HM「じゃあ、ロールキャベツを作るわね」
HS「わーい」
母「あれ、でも昨日の夜は、カレーを作るって話でしたよね」
HM「そうだったかしら」
ジュン「そうですよ。さっき、買い物を頼んでいた時も、カレーの材料を頼んでいたじゃないですか?」
HS「え、これで合ってるわよね、お母さん」
HM「全部合ってるわよ」
ミサ「あ・・・ 名物のカレーを食べるつもりが・・・」

そこへ、HFが入って来る。
HF「ただいま」
HF、テーブルの上をのぞきこむ。
HF「お! ロールキャベツを作るんだな。そういえば、昨日の夜、子供たちと約束してたんだっけ」
地球家族、渋い表情で顔を見合わせる。
HF「あ、今、大使館に行って、買ってきましたよ。まずはキーホルダー」
HF、父にキーホルダーを渡す。
父「わざわざありがとうございます」
HF「そして、こちらがお待ちかねのものです」
HF、父に封筒を手渡す。
父「ありがとうございます」
父、おそるおそる封筒の中身を取り出す。
父「大丈夫かな」
封筒の中に入っていたのは、絵ハガキのセット。
父「絵ハガキ・・・」
母「なんで、絵ハガキ・・・」
HF「大使館で売っている絵ハガキは、本当にきれいですよ。ほら、この国の名所がよく撮れています」
HF、ビニール袋をあけて、中身を並べて見せる。
HB「わ、本当だ!」
HS「きれい! 私もほしいな」
HF「すみません、子供たちのために、2~3枚もらってもいいですか」
父「(細い声で)全部さしあげますよ。絵ハガキがあっても、地球に帰れない・・・」
ジュン「よりによって、キーホルダーのほうだけ覚えていたか・・・」
父とジュン、ため息をつく。
HF「あれれ、ご不満ですか。せっかく頼まれたものを手に入れてきたんですけど・・・」
ジュン「いや、頼んであったのは、出国許可証ですよ。出国許可証」
HF「え、そんなはずは。絵ハガキだったよな、みんな」
HM「絵ハガキでしょ」
HS「お父さんが絵ハガキを買ってきたんだから、絵ハガキで間違いないんじゃないかしら」
ミサ「えーっ、そんな」
HM「あのー、さっきから、違う、違うとおっしゃいますけど、それならば証拠を見せてくださいな」
父「証拠? うーん、証拠なんて何も残ってないですよ」
全員「・・・」
父「だってみなさん、何ひとつメモをとっていらっしゃらないんですから・・・」
全員「・・・」

タク「あのー、すみません、証拠になるとすれば、この紙です」
タク、テーブルの上に3枚の紙を見せる。
タク「さっき、リコとHB君が記憶力勝負をしたときに、僕が問題を書いた紙と、二人の解答用紙です。リコは20問中19問正解。それに対して、HB君は、20問中正解は1問だけです」
HB「えー、うそでしょ!」
HB、目を丸くして紙をのぞきこむ。
ミサ「20問中1問だけ? また1問正解の法則?」
タク「みなさんも、やっぱりメモ帳が必要だと思いますよ」
タク、かばんからメモ帳を取り出して、HBに渡す。
タク「はい、僕のメモ帳、あげるから使ってよ」
HF、HM、HS、HBの4人、まさかという表情で3枚の紙を見続けている。

○空港のロビー

地球家族6人が歩いている。
ジュン「タクのおかげで、彼らはメモをとることの必要性にやっと気付いたね」
タク「そうだね。記憶力の天才でもなんでもなかったんだ」
ミサ「記憶力の天才はやっぱりリコだね」
リコ、ほほえむ。
父「さて、この国から出られるかどうかが問題だ。出国許可証が手に入らなかったからな」
母「なんとか頼んでみましょう」

○空港内のゲートの前

地球家族6人の前に係員の女性が立つ。
係員の女性「出国許可証を拝見します」
父「許可証を持ってないんですけど」
係員の女性「なければ、出国できません」
母「大使館に取りに行く時間はもうないんです。そこをなんとか」
係員の女性「無理です」
父「じゃあ、どうすれば・・・」
係員の女性「出国審査官を呼んできますので、お待ちください。お名前をひとりずつお願いします」
リコ「リコです」
タク「タクです」

○しばらくして、空港内のゲートの前

地球家族6人、ベンチに腰を下ろす。
ジュン「あー、まずいことになったね」
しばらくして、審査官の男性が現れる。
審査官の男性「ジュンさんは、どなたですか」
ジュン「はい、僕ですけど」
審査官の男性「ジュンさんは、出国許可証を持ってないそうですね」
ジュン「あ、は、はい」
審査官の男性「出国許可証がないと、今日は出国できません。さらに詳しく説明しますので、こちらに来てください」
ジュン、立ち上がる。
父「われわれは?」
審査官の男性「どうぞ、ゲートを進んでください」
父「(地球家族に向かって)われわれの名前をメモしていなかったから、ジュン以外は全員忘れられたんだな」
タク「ラッキー」
ジュン「僕、どうしよう」
父「飛行機の時間まで、まだ余裕があるから、がんばって時間稼ぎをするんだ。そのうち、きっとジュンのことも忘れてもらえるだろう」
ジュン「そうだね、そんな気がするよ」
父「成功を祈る」
ジュン「うん」
ジュン、笑顔で地球家族5人に手を振った後、審査官の後をついて行く。

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