秘伝のチキンスープ コメディ

地球に住むお父さん、お母さん、ジュン、ミサ、タク、リコの一家6人が宇宙ツアーに参加し、ホームステイしながらいろいろな星の生活を見て回ります。地球では考えられないような文化や習慣・自然環境があり、驚きの毎日を過ごしながら家族が成長していきます。宇宙を旅するが宇宙SF小説とは違う異色ホームドラマ。アニメならば約10分、1話完結の物語。
トナミKK 20 0 0 01/23
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第一稿

【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HM=ホストマザー
HMの姉
HMの妹


○商店 ...続きを読む
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【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HM=ホストマザー
HMの姉
HMの妹


○商店街

地球家族6人、商店街の入り口近くを歩いている。レストランがすらりと並ぶ。
父「ホストハウスに行く前に、昼食をここで食べて行こう。どの店がいいかな?」
ジュン「どの店もおいしそうだから、迷うなあ」
父「よし、リコ、好きな数字を言ってごらん」
リコ「え? じゃあ、9」
父「じゃあ、端から9軒目のレストランに入ろう」
ミサ「そ、そんな決め方って」
父「1、2、3、4、5、6、7、8、・・・」
タク「あ、あの店がちょうど9軒目だ」
店には、「チキンスープの店」と書かれている。
父「なかなか良さそうじゃないか。リコ、でかしたぞ。入ろう」
父、先頭をきって入って行く。

○レストラン

地球家族6人が着席。メニューを見る父。
父「チキンスープと、特製チキンスープの2種類があるぞ」
母「特製チキンスープは、秘伝の特製のだしを使っていますと書いてあるわ」
店員の女性が近づく。
父「よし、じゃあ特製チキンスープを6人前!」
店員「わかりました」
しばらくして、店員女性が、大きな鍋と取り皿6個を運んでくる。
店員「お待ちどうさま。特製チキンスープ6人前でーす」
ミサ「おいしいかしら。見かけじゃよくわからないわね」
父「じゃあ、私が一口、まず味見してみよう」
父、一口だけ皿にすくい、飲んでみる。
母「どう?」
父「うん、うまい。だが、それほど珍しい味とは思えないな。地球でも、ちょっといいレストランで食べたことがあるような味だ」
そのとき、店員女性がテーブルに来る。
店員「ごめんなさい、私、おっちょこちょいで。それ、普通のチキンスープです」
父「あ、そうだったんですか。だったら、作り直すのも大変でしょうから、これでいいですよ」
店員「あ、大丈夫、作り直すのは簡単です。特製のだしを入れるだけですから」
店員、ポットのふたを回し、スープの上からだしを注ぐ。
店員「はい、これで特製チキンスープになりました」
母「なんだ、たったそれだけなの?」
店員「失礼します」
店員、その場を去る。
父「じゃあ、あらためて、みんなでいただこう」
父、スープを皿に1杯ずつ盛り、自分・母・ジュン・ミサ・タク・リコに配っていく。
全員「いただきまーす」
全員、スープを飲み始める。
父「う?」
母「え!」
父「何だ、この味は?」
母「なんとも言えないわね」
父「さっきの普通のスープのほうが、はるかに良かった。君たちはどうだ」
ジュン「ちょっと、これは」
ミサ「私も無理」
タク「まずい」
父「リコは?」
リコ「おいしい!」
リコ、おいしそうにスープを飲んでいる。
ジュン「本当か?」
母「信じられないわ。リコにはおいしく感じられるなんて・・・」
ジュン「地球上ではありえなかった味だな」
父「いいかい。人間の味覚には4つある。甘味、塩味、酸味、苦味の4つだ」
ミサ「うま味も入れて5つあるって習ったけど」
父「まあ、それでもいい。ところが、このスープの味は、どれにもあてはまらないな」
母「強いていえば、苦味かしら」
父「いや、苦味とは違う。甘味と塩味は子供が好きな味だが、苦味と酸味は子供の苦手な味なんだ。このスープが苦味だとすれば、リコだけが好きになるとは考えられない」
母「確かにそうね」
父「この味は、地球にはなかった味なんだ。子供は食べられるけど、大人は苦手という、苦味とは正反対の味だよ」
リコ、おいしそうに最後まで平らげる。
ミサ「私はもういいわ」
ジュン「僕も、これ以上は勘弁だ」

○ホストハウスの玄関

地球家族6人。リコがドアを開ける。
リコ「おじゃまします」
HMが出て来る。
HM「いらっしゃい。あれ? 6名様だったかしら」
母「はい、そうです」

○居間

地球家族6人とHM。
HM「あらいやだ。ごめんなさい。てっきり1名様だと思っていまして。なんで私ってこんなにおっちょこちょいなのかしら」
ジュン「まさか、ベッドが1つしか無いとか・・・」
HM「いえ、ベッドはちゃんと6人分あります。ただ、夕食が・・・」
ミサ「夕食が1人分しかないですか?」
HM「いえ、一応、6人分はご用意できるんですけど・・・。我が家の特製チキンスープを召し上がっていただく予定だったんです。ところが、秘伝のだしが1人前しか用意できなくて。残りの5名様は、残念ですが、普通のチキンスープになってしまいます・・・」
父「もしかして・・・」
HM「何か・・・」
父「その秘伝の特製チキンスープは、ここでしか食べられないものでしょうか?」
HM「妹が商店街で店を出しています。ここと同じ味です。それから、山奥で姉が店を出しています」
母「つまり、三姉妹でこの味を提供しているんですね」
父「(小声で、母に)間違いないな。顔がよく似てるし・・・」
母「(小声で、父に)そうね」
父「じゃあ、特製チキンスープは、リコにあげよう。他のみんなは普通のスープでいいだろう」
母「そうね、それがいいわ」
父「地球では、一番おいしいものは、末っ子が食べることが多いんですよ」
HM「そうなんですか」

○客間

地球家族6人がくつろいでいる。
ミサ「あんなこと言っていいの? 地球ではおいしいものを末っ子が食べるなんて、聞いたことない」
父「そうかなあ。まあ、とにかく、お昼に食べたスープと同じ物が出るのは間違いないよ。あの秘伝のスープをおいしいと言って食べたのは、リコだけだ。おいしいと思った人が食べるのが、一番いい方法だろ、リコ?」
リコ「うん」
父「今日はリコがいてくれて、本当に助かったよ。誰も秘伝のスープを食べたがらないとしたら、がっかりしただろうからなあ。リコは我が家では一番小さいが、家族のピンチを救ってくれることが本当に多い」
母「本当ね。リコはとても頼もしいわ。お母さんは嬉しい」
リコ、父と母に向かって嬉しそうにほほえむ。

○ダイニング

地球家族6人が着席。HMがスープをよそう。
5人分よそったところで、ポットのだしをスープ鍋に注ぐ。
HM「さあ、じゃ、これがリコちゃんの分よ。特製チキンスープの出来上がり」
母「じゃ、私が皿に盛るわ」
HM「あ、ちょっと待って。よくかき混ぜないと。このだしは、混ざりにくいのよ」
HM、スプーンで大きく鍋をかき混ぜる。
ミサ「(心の中で)ん? かき混ぜる?」
HM「はい」
HM、リコに皿を渡す。
全員、食べ始める。
母「おいしい」
ミサ「おいしいわ」
HM「でも、あくまで普通のスープですから。特製スープがふるまえないのが残念だわ」
父「リコ、特製スープはおいしいか?」
リコ「うん、おいしい」
リコ、食べながらほほえむ。ミサ、横目で見ながら納得のいかない表情。
ミサ「(小声で、リコに)ねえリコ、お昼に食べたのと、違う味なんじゃない?」
リコ「(小声で、ミサに)うん、違う味」
ミサ「(心の中で)やっぱり」

○客間

リコはもう眠っている。他の地球家族5人がくつろいでいる。
母「疲れたのかな。もう眠っちゃったわ。大活躍したからね」
父「うん、あの味のスープをおいしく食べられるのはリコだけだからな。HMさんの気を悪くさせずに済んだのは、リコのおかげだ」
ミサ「リコがかわいそう・・・」
父「かわいそう?」
ミサ「まだ気づかない? 夜に食べたリコのスープは、リコにとってもおいしくなかったはずよ」
父「そんなことないだろう。昼に食べたとき、あんなにおいしいと言っていたんだから」
ミサ「昼のリコのスープはおいしかったのよ。だって、秘伝のだしがちゃんと混ざってなかったから」
父「え?」
ミサ「昼に食べたとき、最後によそったリコのお皿に入ったのは、秘伝のだしがまったく混ざっていない普通のスープだったのよ。いくらなんでも、私もタクも食べられないあのスープを、リコだけおいしく食べるなんてありえないわ」
ジュン「じゃあ、どうしてリコは、夜もおいしそうに食べたんだろう。夜のスープは、ちゃんとかき混ぜたわけだから、あのひどい味だってことだろう?」
ミサ「夜のリコは、おいしそうに食べる演技をしていたのよ」
タク「え、どうして?」
ミサ「お父さんとお母さんの期待を裏切りたくないから」
母「期待・・・」
ジュン「確かに、ミサの言うとおりだな。『リコはとても頼もしい』とか『ピンチを救ってくれる』とか、両親そろって、あんまりリコのことをほめるから、リコは『食べられない』とはとても言い出せなかったんだ」
ミサ「無理して、残さず全部食べていたわ」
父「そんなつもりじゃなかったんだがな・・・」
母「悪いことをしたわ」
ジュン「ほめすぎると、リコみたいな性格の子には重圧なんだろうな」
父「よし、もし明日またあのスープが出たら、HMさんに正直に言おう」
ミサ「まさか明日はもう出ないでしょ、スープは」

○翌日の昼、居間

地球家族とHM。
HM「昨日は、特製チキンスープをごちそうできなくて、本当にごめんなさい」
父「いいえ」
HM「おわびに、お昼はおすすめのレストランまで車でお送りするわ」

○車(小型バス)の中

HMが運転している。地球家族6人が乗っている。
HM「もう注文してあるから、着いたらすぐに召し上がれるわ」
車は山の中に進んでいく。
ジュン「あのー、おすすめのレストランって、もしかして・・・」
HM「昨日お話しした、姉がやっているチキンスープの店です。リコちゃん以外のみなさんに、どうしても特製スープを食べてもらいたくて」
地球家族6人、顔を見合わせる。
ミサ「(父に)ほら、早く言わないから・・・」
HM「え、何か」
父「あ、あの、実は、昨日のお昼に、私たち商店街でチキンスープを食べて来たんですよ。そこがたぶん、妹さんのお店だと思うんです」
母「商店街の、向こうの端から数えて9軒目の店です」
HM「よく覚えていますね。間違いないわ。妹の店です。同じく、我が家の秘伝のだしを使っています。そうですか、もうみなさん、特製スープを召し上がっていたんですね」
父「ええ、ですので、できれば、今日は他の店に・・・」
HM「そうね、この近くには、他に店はないし、もう準備しちゃってるし・・・。特製スープ、もう一度召し上がりませんか? おいしかったでしょう?」
父「え、ええ、それはもう・・・」
母・ジュン・ミサ「(父に対してあきれた表情)・・・」
ミサ「(父に、小声で)おいしくなかったことは、はっきり言ったほうがいいんじゃない?」
父「(心の中で)あんなに自信もって言われちゃな。それに、あの味はこの土地の独特の文化なんだろうから、おいしいまずいという問題じゃないだろう・・・」

○レストランの入口

HMがドアを開ける。
HMの姉が出てくる。
HMの姉「お待ちしてたわ。今ちょうど準備ができたところよ」

○レストランのテーブル

地球家族が着席している。
皿に入ったスープが6皿、運ばれている。
HM「リコちゃんだけは、昨日特製スープを食べたから、今日は普通のスープを注文しておいたの。あとの5人の方は、特製スープで」
HMの姉「え? 特製スープが5人前? 普通のスープが5人前で特製スープが1人前って言ってなかった?」
HM「言ってないわよ。特製スープを5つって言ったじゃない」
HMの姉「ごめんなさい。私、本当におっちょこちょいで。特製スープ、1つしかないから、あと4つ、すぐ用意するわ」
父「あ、あ、このままでいいです。このお皿が、特製スープですね」
父、すばやく特製スープの皿を抱え込む。みんな、あっけにとられて見ている。
父「(地球家族5人に向かって、小声で)これはお父さんが食べるから、それで文句ないだろ。いただきます」
父、突然、スープを食べ始める。全員、あっけにとられて見ている。
父「うまい!」
父、目を大きくあけて叫ぶ。
母・ジュン・ミサ「え?」
父「こんなおいしいスープは食べたことがない! まさに秘伝の味だ! みんなも食べてみなさい」
ミサ「ほんとに?」
ミサ、父から皿を受け取り、食べる。
ミサ「おいしい!」
他のみんなも、皿を受け取っては食べる。
リコ「うん、おいしい。昨日の夜と同じ味だ」
父・母・ジュン・タク「え?」
ミサ「そうなの? 昨日の夜、リコはおいしそうに食べてたけど、本当においしかったんだ・・・」
ジュン「じゃあ、昨日の昼のスープの味はいったい・・・」
そこへ、HMの妹(昨日の昼の店員)が入って来る。
HMの妹「あら、昨日のお客さん」
父「あ、どうしてここに」
HMの妹「今日は定休日なので、姉のところに遊びに来たんです。よかった、ちょうどみなさんにおわびしたいと思っていて。昨日の昼は、秘伝のだしと間違えて、とんでもないものを入れてしまって、本当にすみませんでした」
地球家族6人、それを聞いて驚く。
タク「とんでもないもの?」
ジュン「え、いったい何を入れたんですか?」
母「ちょっと待って。こわいから、聞くのはよしましょう」
HMの妹「私、本当におっちょこちょいで・・・」
三姉妹が並んで立っている。
父「(HMの妹に)おっちょこちょい三姉妹の勝負は、あなたの勝ちですね」
ジュン「(HMの姉に)そうとわかれば、秘伝のだし、全部のお皿にどんどん入れてくださいよ。さあ、今日は腹いっぱい食べるぞ!」 

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