『どうも、探偵部部長の大森です。』第4話「夢は叶わないし、努力は報われない」 学園

探偵部の助手・沢村諭吉(16)が突如「お暇を下さい」と願い出てきたため、雑務を一手に引き受ける事になった阿部紗香(17)。一方、大森宗政(18)は「野球部で部内暴力がある」という匿名の告発文に関する調査をしていた。
マヤマ 山本 34 0 0 01/19
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第一稿

<登場人物>
阿部 紗香(17)愛丘学園高校2年
大森 宗政(18)同3年、探偵部部長
沢村 諭吉(16)同1年、探偵部員
須賀 豊(18)同3年、パソコン部部長
鈴木 ...続きを読む
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<登場人物>
阿部 紗香(17)愛丘学園高校2年
大森 宗政(18)同3年、探偵部部長
沢村 諭吉(16)同1年、探偵部員
須賀 豊(18)同3年、パソコン部部長
鈴木 友美(17)同2年、紗香の友人
佐野 詩織(17)同2年、風紀委員
阿部 静香(42)紗香の母
阿部 公太(9)紗香の弟
保科 亜紀(30)養護教諭
岡本 久典(51)紗香の担任、探偵部顧問

内藤 祐輔(17)野球部員、沢村の中学時代の先輩
安西 球児(17)同
新山 塁(16)同、沢村の中学時代の同級生
梶 哲人(30)シンガーソングライター



<本編>
○阿部家・外観

○同・リビング
   ソファーに座る阿部紗香(17)と阿部公太(9)。紗香はテレビを観ており、公太は漫画を読んでいる。テレビにはギターを手にした梶哲人(30)が映っている。
梶「諦めなければ、夢は叶う。努力は必ず、報われる」
紗香「さすが、カジテツ(梶の愛称)。いい事言うわ~。ねぇ、公太?」
公太「別に、普通だろ」
紗香「可愛くないな~」
公太「けどさ、姉ちゃんに夢なんてあんの?」
紗香「え? 私の……夢……?」
紗香M「人は夢を見る」

○愛丘学園・野球場・グラウンド
   野球部専用のグラウンド。
   練習する野球部員達。活気がある。
紗香M「夢は時に、生きる希望となる」

○同・同・ロッカールーム
   野球部の練習の音や声が聞こえる。
紗香M「夢は時に、生きる原動力となる」
   制服姿で立つ内藤祐輔(17)。ロッカーに入っているグローブを見つめる。
紗香M「夢は時に、生きる目的となる」
   ロッカーを閉め、立ち去る内藤。
紗香M「そんな夢、貴方にはありますか?」

○メインタイトル『どうも、探偵部部長の大森です。』
   T「第4話 夢は叶わないし、努力は報われない」

○愛丘学園・外観
   T「火曜日」

○同・職員室・中
   書類を確認する岡本久典(51)の脇に立つ紗香。
岡本「う~ん、これじゃダメだな」
紗香「ダメ、ですか?」
岡本「誤字脱字が多いし、フォントもゴシックだし、数字が間違ってるのもあるし、部長印がないのもいくつかあったな。ちゃんと揃えて出してくれないと、困るんだよ」
紗香「……すみません」
岡本「沢村はその辺しっかりしてるんだけどな。あいつ、どうかしたのか?」
紗香「はぁ、まぁ……」
紗香M「沢村ちゃんに何があったか」

○(回想)同・探偵部部室・前
   T「月曜日(=前日)」
紗香M「話は、一日遡る」

○(回想)同・同・中
   大森宗政(18)と紗香に頭を下げる沢村諭吉(16)。
沢村「しばらく、お暇をいただけませんか?」
大森「(面白そうに)ほう……」
紗香「え、お暇って、何かあったの?」
沢村「いえ、その……。一週間程、別件の用で部活に出るのが難しいといいますか……」
紗香「なんだ、そういう事か。一週間くらい、全然問題ないよ。ですよね、大森先輩?」
大森「ダメだ。承りかねるね」
紗香「ほらね、ダメだって。……って、え、ダメなんですか?」
大森「当然だろう? 特に今週は事務作業が山のようにあるんだ。無理に決まっている」
沢村「……そうですよね」
紗香「(沢村に)何負けてんの。大森先輩、この部には休む自由もないんですか? 事務作業くらい、いいじゃないですか。何なら、私がやりますよ」
大森「(面白そうに)ほう……」
紗香「……何だか激しく嫌な予感」
大森「という訳だ。沢村ちゃんの作業は全て阿部ちゃんが引き継ぐ事になったから、沢村ちゃんは思う存分休んでくれたまえ」
沢村「阿部先輩、ありがとうございます!」
紗香「……へ?」

○同・同・前
   T「火曜日」

○同・同・中
   パソコンに向かう紗香(おぼつかないタイピング)。その脇には書類の山。
紗香「絶対ハメられたわ~。(書類の山を見て)それにしても、沢村ちゃん、いつもこんな仕事してたんだ……」
   部屋に入ってくる大森。手には封筒。
大森「やぁ、阿部ちゃん。岡ちゃんに書類を突き返されたんだって?」
紗香「もう知ってるんですか?」
大森「この僕を誰だと思っているんだい?」
紗香「探偵部部長の大森先輩です。ところで調査の方はどうですか? 何かわかったんですか?」
大森「あぁ、色々とね」
紗香「さすが」
   部長席に着く大森と、そこにくる紗香。何かを期待している目の紗香。
大森「? 何か用かい?」
紗香「いや、何がわかったか教えてくれるんじゃないんですか?」
大森「教える訳がないだろう?」
紗香「何でですか?」
大森「途中経過だけでは、誤解を与えかねないからね。すまないが、最終報告まで待ってくれたまえ。依頼人さん」
紗香「(悔しそうな表情)」
紗香M「何故、私が依頼人なのか」

○(回想)同・同・前
   T「再び月曜日(=さっきと同じ日)」
紗香M「話はやっぱり遡る」

○(回想)同・同・中
   応接用の席に向かい合って座る紗香と大森。
紗香「部内暴力、ですか?」
大森「あぁ、野球部でね。先輩から後輩へ。あるいはレギュラーから控え選手へ。常習的な部内暴力があるのでは、と」
紗香「野球部って、確か去年は県大会の決勝まで行きましたよね。今年は……」
大森「県のベスト4だ」
紗香「やっぱり、強い運動部はそういうものなんですかね……。依頼人は誰なんですか?」
大森「いないよ」
紗香「そうですか、いないんですか。……って、え、いないんですか?」
大森「あぁ。あるのは匿名の告発文だけだ」
   大森から紙を受け取る紗香。「野球部内で暴力事件」「先週末にも」「調べて欲しい」等と書いてある。
紗香「(読みながら)……で、この場合、どうするんですか?」
大森「残念ながら、探偵業というのは依頼人がいて初めて成立するものだ。それが無い以上、今回は調査を承りかねるね」
紗香「そんな、部内暴力ですよ? こうやって告発文がある以上、調べるべきです」
   大森からまた別の紙を受け取る紗香。それは依頼人用の書類。
紗香「? 何ですか、これ?」
大森「そこまで言うなら仕方ない。では『この告発文を読んだ阿部ちゃんからの依頼』という形で、承ろう。早速だが用紙に記入してもらえるかな?」
紗香「……へ?」

○同・同・前
   T「火曜日」

○同・同・中
   パソコンに向かう紗香。
紗香「絶対ハメられたわ~」
大森「(席を立ち)じゃあ、僕はまた出てくるから、あとは頼んだよ」
紗香「あ、大森先輩。部長印が必要で……」
大森「そこの机の引き出しに入っているから自由に使ってくれたまえ。それじゃあ」
   部屋から出て行く大森。
紗香「何て自由人な」
   部長席に座る紗香。
紗香「さて、印鑑印鑑……(封筒を見て)あれ、これは……」
   それは大森が先ほど持っていた封筒。
   誰もいない事を確認し、封筒の中身を取り出す紗香。内藤、新山塁(16)安西球児(17)の写真付きプロフィールと、手書きのメモが出てくる。
紗香「(メモを見ながら)なるほど、この三人が先週一週間、野球部の練習に出ていない、と。確かに、怪しいな~」
   一番後ろにあった紙を見る紗香。そこには「資料を盗み見している暇があるなら、自分の作業を進めてくれたまえ 大森」と書かれた紙。
紗香「げっ」

○同・外観
   T「水曜日」

○同・校門
   歩いてくる紗香。
紗香「事務作業は、肩が凝るな……ん?」
   野球部員数名と歩いている安西。

○(フラッシュ)同・探偵部部室・中
   安西の写真付きプロフィール。

○同・校門
   安西を見ている紗香。
紗香「野球部の……安西球児君」
   安西の左頬に殴られたような跡。
紗香「あれは……」

○同・探偵部部室・前

○同・同・中
   入ってくる大森。散らかった室内で新聞を読みあさっている紗香。
紗香「あ、大森先輩。お疲れさまです」
大森「何をしているんだい、阿部ちゃん?」
紗香「昨日見た資料に載ってた内藤祐輔、どこかで聞いた事あるなって思い出して、調べてたんです」
大森「なるほど。盗み見した事を隠そうともしないその潔さは、感銘すら覚えるね」
紗香「(無視して)内藤祐輔。去年、一年生ながらチームのエースとして、準決勝の引き分け再試合を含めて全試合投げぬいたピッチャー、ですね」
大森「まぁ、一般の生徒でもそのくらいの事は調べなくても知っているけどね。有名人だから。祐ちゃんは」
紗香「祐ちゃんって。ハンカチの国の王子様みたいに言わないで下さいよ」
大森「それで、他に何がわかったんだい?」
紗香「今日、安西君も偶然見かけて。そしたら、左頬に殴られたような跡があったんです」
大森「亜紀ちゃんに聞いたよ。本人は『ボールが当たった』と言っているそうだが、実際はそれも怪しいそうだ」
紗香「だとしたら、安西君のケガは部内暴力によるものの可能性が高い。でも安西君は控え選手とはいえ二年生です。しかも左頬を殴られたのなら、相手は左手で殴った事になります。新山君はベンチにも入っていない一年生で、右利き。一方の内藤君は二年生のエースピッチャーで……」
   新聞記事の内藤の写真を見せる紗香。左投手の内藤。
紗香「左利きです」
大森「なるほど。確かに、いい推理だ」
紗香「そう思いますか?」
大森「ただ、そもそも疑問なんだが、僕が調べている事件を、何故阿部ちゃんも調査する必要があるんだい?」
紗香「どっかのケチな探偵部部長が全然状況を教えてくれないからです」
大森「なるほど、わかりやすい答えだ。ただそこまでするからには、自分の仕事は終わっていると判断していいのかい?」
紗香「(自信満々に)それでしたら、ご心配には及びませんので」
大森「(面白そうに)ほう」

○同・パソコン室・前

○同・同・中
   プリントアウトされた経理の資料を手に取る紗香と、パソコンの前に座る須賀豊(18)。
紗香「凄い、完璧ですよ。さすが須賀先輩」
須賀「まぁ、こっちは本職みたいなもんだからね。それにしても、こんな仕事もさせられるなんて、阿部ちゃんも大変だね~」
紗香「本当ですよ。でも、須賀先輩のおかげで助かりました。何てお礼を言ったら……」
須賀「ハハハ、気にしなくていいよ。ちゃんと費用は請求しておいたから」
紗香「え?」
   経理の資料に目を落とす紗香。「作業代行手数料」「インク代」「紙代」という項目がある。
紗香「……本当だ」
須賀「そういえば、探偵部は今、あの内藤祐輔を追ってるの?」
紗香「やっぱり、大森先輩来ました?」
須賀「来た来た。大森と沢村君が入れ替わり立ち替わり」
紗香「え、沢村ちゃんが?」
須賀「あれ、知らないの?」
紗香「あ、はい。沢村ちゃんは今、部活休んでて……」
須賀「あ~、そうじゃなくて。沢村君と内藤祐輔の関係」
紗香「え?」

○同・廊下
   T「木曜日」
   歩いてくる沢村。顔を上げると、そこに立っている紗香。
紗香「久しぶり」
    ×     ×     ×
   並んで歩く紗香と沢村。
紗香「沢村ちゃんって、野球やってたんだ? それも、名門チームのエース」
沢村「正確には、エース候補です。大会前に肩を壊してしまいましたから」
紗香「で、そのチームの先輩が、内藤祐輔君」
沢村「当時から、憧れの先輩でした」
紗香「……何で今、部活を休んでまで、内藤君を追ってるの?」
沢村「この学校にもう一人、中学時代に同じチームだった新山っていう奴がいまして」
紗香「新山って……、新山塁君?」
沢村「はい。その新山から『最近、内藤先輩が部活に来ていないらしい』って聞いて」
紗香「そっか」
沢村「……大森先輩も、今内藤先輩の事を調べているんですか?」
紗香「須賀先輩から聞いたんだ?」
沢村「詳しい事は何も聞いていませんけど。何があったんですか?」
紗香「……実は、告発文が届いてさ」

○同・探偵部部室・前
   歩いている紗香。
沢村の声「内藤先輩がそんな事するはずありません」

○同・同・中
   入ってくる紗香。
沢村の声「明日の放課後、一緒に来てもらえれば、わかると思います」
紗香「明日か……。ん? 何これ?」
   置いてあるメモを手に取る紗香。メモには「追加分 明日までに頼んだよ 大森」と書かれている。
紗香「え?」
   書類の山。
紗香「え!?」

○同・パソコン室・前
   ドアに貼られた「臨時休部」の紙の前に立ち尽くす紗香。
紗香「えぇ~!?」

○同・廊下
   書類の山を抱えて歩く紗香。
紗香「どうしよう……明日は沢村ちゃんと……」
   曲がり角で鈴木友美(17)とぶつかる紗香。
紗香「わわっ」
友美「きゃっ」
   床に散らばる書類の山。
友美「ごめんなさい」
紗香「いや、こちらこそ……あっ」
   互いに気付く紗香と友美。

○同・探偵部部室・前

○同・同・中
   かなり散らかった室内。
   パソコンに向かう友美(スムーズな操作)と、その隣に座る紗香。
友美「こんな感じでいいの?」
紗香「うん……大丈夫」
   しばしの沈黙。
友美「探偵部って、こんな事もするんだね」
紗香「まぁ……私も最近知ったけど」
友美「そうなんだ」
   しばしの沈黙。
紗香「パソコン、得意だったっけ?」
友美「あぁ、うん。最近、週一でパソコン教室に通い始めてさ」
紗香「そっか」
友美「うん、そう」
   しばしの沈黙。
友美「それにしても、この部屋って前はもっと奇麗じゃなかったっけ?」
紗香「あぁ……いつも掃除してる子が、今は休んでるから」
友美「そっか。……紗香も、片付けるのは苦手だもんね」
紗香「……悪かったね」
友美「あ……ごめん」
紗香「別に、謝らなくても」
友美「……ごめん」
   沈黙。

○同・職員室・前
   T「金曜日」

○同・同・中
   書類を確認する岡本の脇に立つ紗香。
岡本「よし、オッケーだ。ご苦労さん」
紗香「ありがとうございます」
岡本「いやぁ、でもまさか阿部がこんなに仕事が早いとはな。驚いたよ」
紗香「あ~……まぁ、いっか」

○同・保健室・前
   歩いている紗香。
紗香「これで気兼ねなく沢村ちゃんと……」
   保健室から出てくる内藤。
内藤「失礼しました」
紗香「(小声で)内藤君!?」
   内藤の姿が遠くなっていくのを確認し、保健室に入る紗香。

○同・同・中
   向かい合って座る紗香と保科亜紀(30)。
紗香「あの……内藤君は、ここで何を?」
亜紀「彼、今ケガをしているのよ」
紗香「それってもしかして、誰かを殴ったような傷とか?」
亜紀「残念。痛めているのは肩よ。そのせいで秋の大会もメンバーから外れちゃったみたいだし」
紗香「エースじゃなかったんだ……」
亜紀「内藤君は(より妖艶な笑みを浮かべ)傷一つない、キレイな体してたわよ?」
紗香「(若干引きながら)……そうですか」
亜紀「でも、心は傷だらけね」
紗香「それはどういう……?」
亜紀「人はね、裏切られると傷つくものなのよ? それが信じていた相手なら、よりいっそう、許せなくなっちゃうの」
紗香「よりいっそう、許せなく……」

○(フラッシュ)同・教室・中
   仲良く雑談する紗香と友美。

○同・保健室・中
   向かい合って座る紗香と亜紀。
紗香「……それって、どうすれば許せるようになるんですか?」
亜紀「そうねぇ……。時間が解決してくれるのを、待つしかないんじゃないかしら?」
紗香「でも、高校生活はあと一年半くらいしか残ってないんですよ?」
亜紀「間に合わないかもしれないわね。でも『取り返しのつかない事もある』って事を勉強するのも、学生の大事な仕事よ?」
紗香「そんな……」
亜紀「……まぁ、これは全部、内藤君の場合だけどね」
紗香「え? ……あぁ、はい。もちろん、わかってますよ」
亜紀「阿部さんは何に悩んでいるのかしら?(誘うように)安心して、ここだけの秘密にしてあげるから」
紗香「(拒絶するように)け、結構です。これから用事あるんで。失礼します」
   部屋から出て行く紗香。

○神社・外観

○同・境内
   沢村に連れられてやってくる紗香。
沢村「ここです」
   ストレッチをしている内藤。
内藤「おう、沢村……と、誰?」
沢村「探偵部の阿部先輩です」
紗香「初めまして、阿部です。……あの、こんな神社で何を?」
沢村「ここは昔から、僕たち三人の練習場所だったんです」

○(回想)同・同
   三人でキャッチボールをする沢村、内藤、新山。皆同じ(愛丘学園野球部とは違う)野球のユニフォーム姿。
    ×     ×     ×
   壁に「行くぞ甲子園! 内藤祐輔」と書く内藤。その様子を脇で一緒に見ている沢村と新山。

○同・同
   壁に書かれた「行くぞ甲子園! 内藤祐輔 沢村諭吉 新山塁」の文字を見ている紗香と沢村。ストレッチをする内藤。
沢村「甲子園は、僕たちの夢でした」
内藤「まぁ、俺も沢村も、叶えられなかったけどな。その夢」
紗香「何言ってるんですか。肩が治れば、また投げられるんじゃないんですか? 『諦めなければ、夢は叶う』ですよ」
内藤「肩のケガ、ね……。探偵部さん、俺が何でケガしたか、わかってるんだよな?」
紗香「投げすぎ、ですよね? 去年の夏の大会、ほとんど一人で投げたって」
内藤「まぁ、その後秋も投げたからな。……『バカだな』って思う?」
紗香「いや私、野球はよくわからないから……」
内藤「俺は思ったよ」
紗香「思ってたら、何で?」
沢村「甲子園に行くため、チームが勝つためです。当時の野球部の力を考えると、内藤先輩が投げるしかありませんでした。それに、たとえどんなに苦しい時でもマウンドに立つ。それが……(と言いながら内藤を見る)」
内藤「それが、エースってもんだ」
紗香「エース……」
内藤「そんな事が重なって、春先に肩を痛めちまってね。沢村がそれに気付いて、俺を止めてくれたから、何とか最悪な状態になる一歩手前で済んだよ」
沢村「いえ、僕は大した事は何も……」
紗香「それより、最悪な状態じゃないなら、尚更諦める必要は……」
内藤「まぁ、見てなよ」
   グローブとボールを手に取る内藤。振りかぶり、壁に向かって投げる見事な速球。
紗香「え? 治ってるんですか?」
内藤「正確には、直りつつあるってところかね。あくまでも、肩は」
紗香「『肩は』って、じゃあ問題は……あ、心?」
沢村「そこまで調べてたんですか?」
紗香「あ~、うん、まぁ」
内藤「野球部は今年、ベスト4まで勝ち残った。これなら来年、俺が戻れば甲子園も夢じゃない。……そう信じてリハビリしてきた。なのに……」

○(回想)愛丘学園・野球場・裏
   歩いている内藤。
安西の声「それにしても、勝てるもんなんだな。内藤なんかいなくても」
   安西ら数人が談笑している姿を、物陰から見ている内藤。
安西「肩痛めたのだって、一年でエースになって調子に乗ってたからだろ? 自業自得なんだよ」
   拳を握りしめる内藤。
安西「内藤がそうやって優遇されてる間俺らがどんな目に遭ってたか、教えてやりたいもんだよな」
   笑う安西達。その場を立ち去る内藤。

○神社・境内
   壁に向かって投球を続ける内藤と、それを見ている紗香、沢村。
内藤「それ聞いたらさ、『俺は何のために頑張ってたんだろうな』って。『何で俺はあんな奴らのためにボロボロになってまで投げてたんだろうな』って。そう思ったらもう、あのチームに戻る気なんて……」
紗香「だから……殴った?」
   内藤の投げたボールが、高めにすっぽ抜ける。
内藤「……殴った? 何の話だ?」
紗香「それは……」
大森の声「それは僕から説明しよう」
   そこにやってくる大森。
内藤「誰だ?」
大森「どうも、探偵部部長の大森です」
沢村「お疲れさまです」
内藤「今度は部長さんですか」
紗香「大森先輩、何しに?」
大森「前にも確認したと思うが、野球部の件を調査しているのは僕だ。それ以上の説明が必要なら、また別途、時間を設けよう」
紗香「結構です。どうぞ」
大森「では単刀直入に聞こうか、祐ちゃん」
内藤「祐ちゃん?」
紗香「すみません、こういう人なんです」
大森「我が校の野球部に、常習的な部内暴力は存在するかい?」
内藤「さぁ……聞いた事ないですね」
大森「そうか、ありがとう。では僕はこれで失礼するよ」
紗香「え、もう帰るんですか? 早いというか何と言うか……。お疲れさまです」
大森「君も一緒に帰るんだよ、阿部ちゃん」
紗香「そうですか、私もですか……って、え、私もですか!?」
大森「できれば、沢村ちゃんも借りたいんだが、構わないかな?」
内藤「俺は構わないですけど……」
沢村「?」

○道(夕)
   並んで歩く紗香、大森、沢村。
沢村「……阿部先輩は、まだ内藤先輩の事を疑っているんですか?」
紗香「そりゃ……動機はあるように見えたし」
沢村「ですから、説明したじゃないですか。内藤先輩と新山は、僕の分まで夢を……」
大森「夢といえば、阿部ちゃんは面白い事を言っていたね。『諦めなければ、夢は叶う』だって?」
紗香「別に面白くはないと思いますけど。っていうか、それどこで聞いて……」
大森「(無視して)残念だが、夢は叶わないし、努力は報われないよ」
紗香「そんな事ありませんよ。歌手とかスポーツ選手とか、そういう夢を叶えた人達が実際にそう言ってるじゃないですか」
大森「確かに、そうだね。では聞くが『甲子園に行きたい』という夢を抱いている高校球児全員が、甲子園に行けると思うかい?」
紗香「それは……」
大森「現在、高校野球連盟に加盟する高校は全部で三九五七校。そのうち、その年の甲子園大会に出場できるのは四九校だ、約四千分の四九、わずか一%だ」
紗香「でも、ゼロじゃないです」
大森「確かに、そうだね。では、阿部ちゃん。朝の天気予報で『今日の降水確率は一%です』と言われて、君は傘を持って行くかい?」
紗香「……持たないです」
大森「だろうね。皆『一%』という確率は『降らないも同然』と思うだろう」
紗香「……」
大森「つまり『夢が叶う確率が一%』という状態は『夢は叶わないも同然』という解釈となる。異論はあるかな?」
紗香「でも、努力はきっと……」
大森「阿部ちゃんの言う努力というのは、例えば『毎晩家で千回素振りをする』というものも含まれるのかい?」
紗香「立派な努力です」
大森「なるほど。もし『毎晩家で千回素振りをしたら、必ずレギュラーになれる』と言われたら、誰だって素振りするだろう。『二千回素振りをしたら、必ずプロになれる』と言われたら、僕だってするかもしれない。だが現実は、毎晩家で五千回素振りをしても、ベンチにすら入れないかもしれない。違うかな?」
紗香「でも、実際に夢を叶えた人達は……」
大森「もちろん、確率は一%ほどあるんだ。叶える人もいるだろう。だが、それ故彼らは『夢は叶うものだ』と勘違いをしている。鵜吞みにするのは危険じゃないかな?」
紗香「……でも、内藤君はあんな凄い球投げられる訳じゃないですか。なのに諦めるなんて……。あ、今のチームが嫌なら転校して……」
沢村「高校野球では、特に理由が無い場合、転校後一年間は公式戦に出場できません」
紗香「え、何それ?」
大森「有望選手の引き抜き防止のためだ。まぁ、あくまでも高校野球連盟のルールだけどね」
沢村「ですから、二年生の内藤先輩が今転校しても、来年の夏の大会には出られないんです。当然、甲子園にも……」
紗香「そうだったんだ……。じゃあ、やっぱり内藤君には部内暴力をする理由があるように思えるけど……」
沢村「ですから、内藤先輩と新山は……」
大森「あぁ、そうだ。沢村ちゃん。一つ勘違いをしているようだから指摘しておこう」
沢村「勘違いですか?」
大森「阿部ちゃんは沢村ちゃんに、部内暴力の被害者が誰なのか、言ったのかい?」
紗香「個人名までは言ってないような……」
大森「じゃあ、沢村ちゃん。部内暴力の被害者は、誰だと思っているんだい?」
沢村「新山じゃないんですか?」
紗香「え?」

○阿部家・外観(夜)

○同・リビング(夜)
   入ってくる紗香。
紗香「ただいま……何?」
   テーブル越しに向かい合って座り、何かを見ている阿部静香(42)と公太。泣いている静香。
静香「(泣きながら)うぅ、紗香、お帰り」
紗香「公太、何したの?」
公太「俺じゃねぇよ。コレ」
   紗香に、紗香の中学生時代の卒業アルバムを見せる公太。
紗香「ちょっと、それ私の卒アルじゃん。何勝手に見てんの?」
公太「いいだろ。この間、姉ちゃんが『夢ない』みたいな事言ってたから、昔はどうだったのかな、って思っただけ」
紗香「夢……。私、卒アルに何て書いてたっけ?」
公太「ほい」
   該当ページを開く公太。そこには卒業生達が夢や自己紹介などを書いているが、紗香の欄は全て空白。
紗香「あ……。そっか、そうだよね」
静香「あの頃を思えば、今は幸せよね」
紗香「……泣かないでよ」
   卒業アルバムを見る紗香。他の生徒の夢の欄には「歌手」「プロ野球選手」等。
   何かに気付く紗香。
紗香「あ、そうだ……」
   スマホを手に取る紗香。
紗香「もしもし、沢村ちゃん?」

○愛丘学園・探偵部部室・前
   T「翌 月曜日」

○同・同・中
   応接用の席に向かい合って座る紗香と大森。
大森「では、調査結果を報告しよう。ただし世の中には、知らない方がいい事もある」

○神社・外観
大森の声「それでも、知りたいかい?」

○同・境内
   柔軟体操をしている内藤。そこにやってくる紗香。
内藤「……沢村は?」
紗香「これから来ますよ。でもその前に、内藤君に話しておきたい事があるんです」
内藤「部内暴力の話? そんな話、本当に聞いた事ないんだって」
紗香「わかってます。だからこそ、ちゃんと伝えておかないと、と思って」
内藤「伝えるって、何を?」
紗香「まず、大森先輩が部内暴力について調べるにあたって目をつけたのは、先々週の一週間、野球部の練習に参加しなかった部員。つまり内藤君と、安西君と、新山君の三人です」
内藤「え、ちょっと待って。新山と安西が、一週間も練習に出てなかったのか?」
紗香「はい。そして私が目撃した安西君は、左頬に殴られたような跡がありました」
内藤「じゃあ、安西が部内暴力の被害者?」
紗香「私もそう思っていました。そして、左頬を殴った相手は、おそらく左手で相手を殴った事になります。だから、安西君を殴ったのは左利きの……」
内藤「俺だって? そんな訳ない。だって……」
紗香「左利きだから、ですよね?」
大森の声「君は勘違いをしている」

○(回想)愛丘学園・探偵部部室・中
   応接用の席に向かい合って座る紗香と大森。
大森「阿部ちゃんはどうやら、野球選手というものがわかっていないようだしね」
紗香「どうせ私は野球部のエースの顔と名前も思い出せないような人間ですよ」
大森「何だ、引きずっていたのかい? 案外しつこいんだね」
紗香「いいから、続けて下さい」
大森「野球選手にとって手は命と言ってもいい。利き腕なら尚更ね。そんな手を喧嘩の道具になんて使うと思うかい? 万が一骨折でもしたら、話にならないだろう」
紗香「言われてみれば、確かに……」
大森「それでももし誰かを殴るとしたら、利き腕ではない手を使うだろうね」
紗香「それってつまり……」

○神社・境内
   向かい合って立つ紗香と内藤。
内藤「安西を殴ったのは新山? 新山が安西に部内暴力? それこそあり得ない。体育会系は縦社会だ。ベンチにも入っていない一年が、ベンチメンバーの二年生に暴力なんて……」
紗香「それも、私の勘違いだったんです」
内藤「え?」
沢村の声「お待たせしました」
   二人の元にやってくる沢村。
沢村「連れてきましたよ。新山」
   沢村の後ろからやってくる新山。左頬に殴られたような跡がある。
内藤「新山、そのケガ……」
紗香の声「部内暴力じゃない?」

○(回想)愛丘学園・探偵部部室・中
   応接用の席に向かい合って座る紗香と大森。
大森「あぁ。つまりアンちゃんがニイちゃんを殴り、ニイちゃんがアンちゃんを殴る」
紗香「……何か両方とも呼び方が年上の男兄弟みたいでややこしいんですけど」
大森「つまり告発文に書かれていた件は、ただのケンカ、という事だ」

○神社・境内
   向かい合う紗香、沢村、内藤、新山。
内藤「新山、何でそんな事……」
紗香「心当たり、ありませんか?」
内藤「俺が?」
沢村「内藤先輩が最後に野球部の練習に参加した日、何がありましたか?」
内藤「それは……」

○(回想)愛丘学園・野球場・裏
   安西ら数人が談笑している姿を、物陰から見ている内藤。
   同じく、別の物陰から安西らの様子を見ている新山。
安西「肩痛めたのだって、一年でエースになって調子に乗ってたからだろ? 自業自得なんだよ」
   拳を握りしめる新山。
安西「内藤がそうやって優遇されてる間俺らがどんな目に遭ってたか、教えてやりたいもんだよな」
   笑う安西ら。その場を立ち去る内藤。
   安西らの元に出て行く新山。
新山「この野郎!」
   安西を殴る新山。
新山「内藤先輩がどんな思いで、ケガするまで投げたのか、わかってんスか!?」
安西「……何すんだよ、新山!」
   新山を殴る安西。
安西「実際、アイツ抜きで勝ててんだ。問題ねぇだろ?」
新山「……んだと!」
   つかみ合う安西と新山。他の部員が慌てて二人を引き離そうとする。
新山の声「悔しかったんス」

○神社・境内
   向かい合う紗香、沢村、内藤、新山。
新山「自分は内藤先輩の苦しんでる姿、ずっと見てきたんで。あんなチャラチャラした人に内藤先輩がバカにされるのが、悔しくて、我慢できなくて、つい……」
内藤「新山……。気持ちは嬉しいけど、そんな事したら最悪、公式戦出場停止になるぞ?」
沢村「それでも内藤先輩のために黙っていられなかった、という事だと思います。わかってやって下さい」
新山「……すんません」
内藤「……まぁ、いっか。どうせ俺にはもう関係ない野球部だ」
新山「戻ってきてはくれないんスか?」
内藤「あぁ。もうあのチームのためには投げられない。『甲子園に行く』って夢は、もう諦めたよ」
新山「内藤先輩……」
内藤「あ~あ、夢って叶わねぇもんだな」
紗香「……内藤君の夢は、本当に『甲子園に行く』事だったんですか?」
内藤「何言ってんの? 今更」
紗香「コレを見て下さい」
   一冊の卒業アルバムを取り出す紗香。開くとそこには「将来の夢」と書かれたページで、「甲子園に行ってプロになる 内藤祐輔」と書いてある。
内藤「これは……」
紗香「内藤君の小学校時代の卒業アルバムです。沢村ちゃんに頼んで、見つけてもらいました」
沢村「シニア時代の先輩を当たっただけです」
紗香「内藤君の本当の夢は『甲子園』よりも『プロになる』事。ここにはそう書いてあるように思えます」
内藤「……だね。で、それがどうかした?」
紗香「つまり、もう甲子園は無理かもしれませんけど、プロになる夢なら終わってません。諦めるには早いです」 
内藤「このチームでもう投げられない俺が、プロになれると思う?」
紗香「なら、転校すれば……」
新山「転校したら、内藤先輩は高校野球引退まで公式戦に出られないっスよ」
紗香「そうとは限りませんよ」
内藤&新山「え?」
紗香「『一年間公式戦に出場できない』というのは、あくまでも高校野球連盟が決めたルールです。つまり、高校野球連盟に属していない高校なら、試合に出られるんですよ」
内藤「そんなチームあんのか?」
沢村「例えば、独立リーグの傘下にある野球部や、通信制の高校に通いながら社会人のクラブチームに所属するという手もあります」
内藤「そうか……」
紗香「ある人が言ってました。『夢は叶わないし、努力は報われない』って。確かにそうなのかもしれません。でも、私は思うんです。『諦めたら夢は叶わない』『努力しなきゃ報われない』って」
内藤「諦めたら夢は叶わない……」
沢村「内藤先輩。プロ、目指してください」
内藤「俺が、プロ……」
紗香「私は、内藤君に夢を叶えて欲しい」
新山「自分も、応援したいっス」
内藤「……」
沢村「内藤先輩!」
内藤「(フッと笑って)キッツいね~。俺は簡単に野球辞める事も出来ないのかよ」
沢村「内藤先輩。たとえどんなに苦しい時でもマウンドに立つ。それが……」
内藤「エースってもんだな」
   笑い合う沢村、内藤、新山。
   その様子を(特に新山を)見る紗香。

○愛丘学園・外観

○同・廊下
   歩いている佐野詩織(17)。その前方に姿を現す大森。
大森「やぁ、佐野ちゃん」
詩織「……何の用ですか?」
大森「是非、聞きたい事があってね」
詩織「手短にお願いします」
   並んで歩く大森と詩織。
大森「では、遠慮なく。何故、告発文を?」
詩織「……何の事ですか?」
大森「風紀委員なら権限もある。その手の事を調べるのは容易い。何故、探偵部に?」
詩織「会話になりませんね。失礼します」
大森「佐野ちゃんの狙いは、探偵部が事件を暴くことによって、野球部員八〇名が探偵部の敵に回る事。違うかい?」
   足を止める詩織。
詩織「それは、何か根拠のある話ですか?」
大森「いや、何も」
詩織「なら、答える義務はありませんね」
大森「あぁ、無いね」
詩織「ですが、一応聞いておきましょうか。野球部の部内暴力の事実は、掴めたんですか?」
大森「残念ながら」
詩織「そうですか」
大森「それにしても、よくわかったね? 僕は告発文の内容が『部内暴力』とまでは言っていなかったハズだよ?」
詩織「カマをかけているつもりですか? その手の噂くらい、風紀委員にいればいくらでも耳にしますよ」
   一礼し、立ち去って行く詩織。
   その背中を見つめている大森。
大森の声「報告は以上だが、何か質問は?」

○(回想)同・探偵部部室・中
   応接用の席に向かい合って座る紗香と大森。
紗香「これ、私の勝手な想像なんですけど」
大森「言ってみたまえ」
紗香「安西君と新山君は、二人とも感情的になって喧嘩騒ぎを起こしたんですよね?」
大森「そうなるね」
紗香「そんな状態で相手を殴ろうとして、咄嗟に利き腕じゃない方の手が出ますかね?」
大森「何が言いたいんだい?」
紗香「咄嗟に利き腕じゃない手が出る状態。これこそ、常習的な部内暴力が行われている可能性を示唆しませんか?」
   無言で大森をじっと見つめる紗香。
大森「なるほど、さすがは阿部ちゃんだ」
紗香「じゃあ、やっぱり……」
大森「ニイちゃん達の件は、ただの喧嘩で間違いないだろう。ただ、あくまでもあの告発文には『常習的な部内暴力』と書かれていた。一応、部員全員にも部内暴力の有無について聞いてみたが、どちらの確証も掴めなかったよ。まぁ、少なくとも祐ちゃんは本当に知らないみたいだったけどね」
紗香「確かに、そうでしたね」
大森「ただ、一方でアンちゃんは『内藤がそうやって優遇されてる間、俺らがどんな目に遭ってたか、教えてやりたいもんだ』と言っていた。これが部内暴力の事を指している、と考える事もできるだろう」
紗香「……でも、確証はない?」
大森「あぁ。何せ、内部にいる祐ちゃんですら実態を把握できていないんだ。外部にいる僕たちの調査では、太刀打ちできない。何せ、権限がないからね」

○同・廊下
   一人佇む大森。フッと笑い歩き出す。

○同・探偵部部室・中
   応接用の席に向かい合って座る紗香と沢村。
紗香「内藤君、退学届出したんだって?」
沢村「はい。新山も後を追おうとしてましたけど、内藤先輩に止められたそうです」
紗香「沢村ちゃんは、内藤君に何も言わなくて良かったの?」
沢村「……どういう意味ですか?」
紗香「だって、野球が出来なくなった沢村ちゃんが、それでも内藤君と同じ学校に来たのは、やっぱり……」
沢村「世の中には、知らない方がいい事もあるんです。僕の身勝手な思いで、内藤先輩の夢を邪魔したくありませんから」
紗香「沢村ちゃん……」
沢村「それにしても……この部屋はいつからこんなに汚くなったんですか?」
   かなり散らかった室内。
紗香「……ごめんなさい」
紗香M「人は夢を見る」

○同・野球場・グラウンド
   練習する安西ら野球部員。
紗香M「夢があれば、人は生きていける」

○神社・境内
   新山相手に投球練習をする内藤。
紗香M「夢に向かって、人は努力できる」

○同・探偵部部室・中
   掃除をしている紗香と沢村。
紗香M「『何か夢がある』という事は、それだけで素晴らしい事なのだ」
   大量の紙ゴミを両手に抱える紗香。
紗香M「たとえその夢が」
   そのゴミをゴミ箱に捨てる紗香。
紗香M「叶わないとしても」
               (第4話 完)

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