ふたつの住所 コメディ

地球に住むお父さん、お母さん、ジュン、ミサ、タク、リコの一家6人が宇宙ツアーに参加し、ホームステイしながらいろいろな星の生活を見て回ります。地球では考えられないような文化や習慣・自然環境があり、驚きの毎日を過ごしながら家族が成長していきます。宇宙を旅するが宇宙SF小説とは違う異色ホームドラマ。アニメならば約10分、1話完結の物語。
トナミKK 15 0 0 01/16
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第一稿

【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HF=ホストファーザー
HM=ホストマザー
HS=ホスト ...続きを読む
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【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HF=ホストファーザー
HM=ホストマザー
HS=ホストシスター(ホストハウスの娘) 10歳
HB=ホストブラザー(ホストハウスの息子) 8歳


○大通り

地球家族6人がバスを降りる。バスが去っていく。
父「さて、ホストハウスはどっちかな?」
父が紙を持ってキョロキョロしている。
ジュン「お父さん、地図はないの?」
父「ないんだよ。もらった書類には、住所が書いてあるだけなんだ」
母「地図の看板も見当たらないわね」
そのとき、高齢の男性が話しかけてくる。
男性「この辺には、地図というものはありませんよ」
タク「地図がない?」
男性「住所だけでわかるから、地図なんて必要ないんです。この街並みをよく見てください。東西南北に、格子状になっているでしょう。簡単なので、迷うことは絶対にありません」
地球家族、あたりを眺める。
ミサ「本当だ」
男性、指をさしながら説明を始める。
男性「このバス通りをはさんで、こっち側が北町で、こっち側が中町です。中町の向こう側には、南町があります」
父「なるほど、われわれが行きたいのは、中町だから、こっち側ですね」
男性「そうです。今立っているこの十字路が、中町の1の1です。そして、東方向に次の通りまで行くと、1の2になります。さらに通り一本ごとに、1の3、1の4となっていき、中町の一番端まで行くと、川につきあたります。川の向こうは、別の市になります」
父「なるほど」
男性「そして、南方向に歩いた場合には、次の通りが、中町の2の1です。さらに通り一本ごとに、3の1、4の1となっていき、南町に出るまで続きます」
母「中町から南町に変わる目印はあるんですか?」
男性「南町は、できたばかりのきれいな新しい町なので、雰囲気がまったくちがいます。すぐにわかりますよ」
母「わかりやすいですね。よくわかりました」
男性「では、失礼」
男性、去っていく。
ジュン「親切な人がいて、助かったね。お父さん、ホストハウスの住所は?」
父「中町の2の31と書いてあるよ。つまり、北から数えて2本目の道と、西から数えて31本目の道の交差する場所だ」
ミサ「ということは、まず、南向きに歩いて次の通りに出て、そのあと、東向きに通りを30本歩けばいいのね」
タク「通り30本も歩くのか・・・」
地球家族全員、うんざりした表情。

○道

地球家族6人が十字路の真ん中に立っている。
父「この十字路が、2の1だな。2の31に行くには、こっちへ向かって進めばいいんだ。それで間違いないね」
ジュン「間違いないよ」
父「じゃあ、途中でわからなくならないように、全員で数えながら行こう」

○道

地球家族6人が歩いている。
家2軒ごとに次の道に到達する。
ジュン「6」
ミサ「6」
父「もうすぐ7だな」
タク「7」
ミサ「7」
十字路に到着する。
タク「8!」
ジュン「ちがうよ、まだ7だよ」
タク「あ、そうか」
ジュン「これじゃ、間違えるよ」
父「すまない。お父さんが、まだ7に着いていないのに7と言ったから、混乱したな」
ジュン「じゃあ、今からルールを作ります。到着するまでは、その数字を言ってはいけません」
ミサ「はーい」
タク「はーい」
ジュン「それから、まぎらわしいから、会話の中でほかの数字を言うことも禁止します」
タク「えー」

○道

地球家族6人が歩いている。
ジュン「29」
ミサ「29」
十字路に到着する。
全員「30!」
前方に川が流れている。
父「おかしいな、30で終わりだ。川にぶつかったよ」
タク「数え間違えたのかな」
ジュン「そんなはずないよ。全員でこれだけ数えながら来たんだから。ここが2の30だよ」
そのとき、女性が通りかかる。
女性「どこかお探しですか」
父「あ、ここの住所は2の30ですよね」
女性「そうですよ」
父「2の31はどこでしょうか」
女性「31はありません。30までですよ」
父「でも、この書類に、住所は2の31と・・・」
女性「あー、なるほど。これを書いたのは、たぶん年配の方だわ。みなさんの目的地は、31の2です」
ミサ「えー?」
女性「31の2というのが正しい住所なんですけど、それを2の31と呼ぶ人たちもいるんですよ」
ジュン「本当ですか」
女性「31の2ならば、実在しますので、きっとそうですよ」

○道

地球家族6人が歩いている。
ジュン「ひえー、また歩くのか。対角線上に一番遠いところまで行かなきゃいけないんだな」
父「対角線といっても、ななめには進めないから、とりあえず、もとのバス停まで戻ろうか」
タク「1の1のふりだしに戻るんだね」

○道

地球家族6人が歩いている。
タク「30」
ミサ「30」
十字路に到着する。
ジュン「31!」
父「間違いなく、ここが2の31、いや、31の2だな」
ジュン「でも、どの家だろう。4軒あるけど」
十字路をつくる4つの家。
そのとき、一つの家の庭に立っている女性が声をかける。
HM「地球のみなさんですね。こっちですよ!」

○ホストハウスの居間

HF、HM、HS、HBと地球家族6人が座っている。
HM「場所はすぐにおわかりになりましたか?」
父「いいえ、実は、別の方向に歩いてしまいまして、時間がかかってしまいました」
HM「まあ、それは」
父、紙を取り出し、『中町の2の31』と書いてある部分を指さす。
父「ここには、2の31と書いてありますが、本当は31の2ではないですか?」
HS「いや、2の31ですよ」
HB「そうです、ここは2の31です」
HF「いや、実は違うんですよ。子供たちが知らないのも無理はないが。ここは本当は31の2なんです」
HS「えー、知らなかった」
ジュン「どういうことですか?」
HF「昔は2の31だったんですけど、今から10年ほど前、政府が31の2に変えたんですよ」
ミサ「なんで変えたんですか?」
HF「2の31と言えば、普通は西から2本目、北から31本目の道を意味するんですが、なぜかこの町は逆だったんです。だから、他の所と合わせるために政府が強引に変えたんです」
HM「でも、急に住所が変わっても混乱するからといって、誰もそれに従いませんでした。従ったのは、一部の若者だけ」
ジュン「えー、気持ちはわかりますけど、政府の指示には従ってくださいよ。二通りの住所があると、余計に混乱しますよ」
HF「私たちは、今まで一度も困ったことはなかったですけどね」
ジュン「まあ、2の31は存在しないようですから、間違うことはないようですけどね」
HF「さて、夕飯まであと1時間以上あります。私たちは買い出しに行ってきますが、みなさんはどうしますか?」
母「そうですね、1時間では遠出はできませんので、この近くを散策しています」

○ホストハウスの庭

ホストハウスの裏にある家の庭にキイチゴの木があり、実がなっている。ミサとタクが塀越しに見ている。
タク「裏の家の庭、すごいキイチゴだね。あれだけ立派なのは見たことないよ」
ミサ「リコはもう見たかしら」
タク「まだ見てないんじゃないか。呼んで来よう。イチゴの好きなリコだから、きっと喜ぶぞ」
そのとき、ジュンが来る。
ジュン「リコを見かけなかった?」
ミサ「あれ、いないの?」
母も庭に出てくる。
母「大変だわ。リコがどこにもいないのよ」
ジュン「なんだって?」
全員、家の中に入る。

○ホストハウスの玄関

リコをのぞいた地球家族5人が立っている。
父「リコは外に行ったんだろう。ちょっと探してくる」
そのとき、玄関の外で男性の声がする。
警官「すみませーん、警察ですが、どなたかいらっしゃいますか」
HSとHBが部屋から出てくる。
HS「はーい」
HS、玄関を開ける。
HS「両親は買い物に出ていますけど」
警官「たった今、警察に入った連絡によりますと、5歳くらいの女の子が、気を失って倒れているところを発見されました。発見した家で保護されています」
父「リコは7歳だけど、でもリコかもしれないな。女の子の特徴は?」
警官「胸に、めがねをかけたカメの絵がプリントされたシャツを着ているそうです」
母「リコだわ。その絵は、メガネガメといって、地球で人気のあるキャラクターだから、リコに間違いありません」
警官「やっぱりそうでしたか。メガネをかけたカメの絵というのは、見たことがありません。そこで、地球の旅行者の方たちがこの家に今晩宿泊するといううわさがあったのを思い出して、来てみたというわけです」
父「リコは今どこにいるんでしょうか?」
警官「今から住所を言いますので、メモしてください」
警官、手帳を取り出して、住所を読み上げる。
警官「『南町の30の2』です」
父と母、メモをとる。
警官「では、失礼します」
警官、一礼をして玄関を出ていく。
ミサ「南町。そんな遠くまで、リコは一人で?」
父「大丈夫かな、気を失っていると言っていたけど、病院には連れて行ってもらえたのかな」
ジュン「とりあえず、僕たちも急いでその住所に行くしかないよ」
ミサ「南町の30の2って、どの辺かしら」
HS「南町は、中町よりもさらに南に行った所です。新しい町なので、風景が全然違います」
ミサ「30の2というのは?」
HB「中町と同じです。北から数えて30本目、西から数えて2本目の通りです」
ジュン「でも、逆かもしれないよね。西から30本目、北から2本目という可能性もあるんじゃない?」
HS「そうですね・・・」
ミサ「そうか、31の2と言われれば一通りしかないけど、30の2は両方の可能性があるわね」
母「早く行かないと、リコが心配だわ。手分けして、両方行ってみるしかないわ」
父「よし、じゃあ、お父さんとミサで、2の30に行こう。お母さんとジュンは、30の2に行ってくれないか」
タク「僕は?」
父「タクは留守番を頼む。何かあったら連絡するから」
タク「わかった」

○道

きれいな街並み。
母とジュンが駆け足で歩いている。
ジュン「みんな言っていたとおり、南町は新しくて、中町とは雰囲気がまるで違うね」
母「リコは、きっとこの美しい街並みが見たくて、わざわざ南町まで一人で歩いて来たのね」
ジュン「それでこんなに遠くまで・・・」
母「ここが30の2ね」
ジュン「家が何軒かあるから、一軒ずつ聞いて回ろう」
そのとき、一つの家から父とミサが出てくる。
ジュン「あれ、お父さん! ミサ!」
父「二人とも、30の2に行ってくれと頼んだじゃないか。ここは2の30だぞ」
母「ここは30の2よ。政府の決めた正式な呼び方で言ってるんでしょ」
父「いや、私はホストファミリーが呼んでいる方法で言ったんだが・・・」
ジュン「あー、なんてことだ」
父「もう、こっちは全部の家を回ってみたけど、リコはいなかったよ。みんなでもう一方に行こう」

○道

父、母、ジュン、ミサが歩いている。
十字路に到着する。
父「ここで間違いないな」
見渡すと、空き地ばかりで、家は一軒の雑貨屋しかない。
ジュン「あれ、雑貨屋しかないな。リコはあそこにいるのかな」
4人、雑貨屋に入る。
店員の女性「いらっしゃいませ」
父「あの、うちの娘はここにおりますか?」
店員の女性「いいえ」
ジュン「ここの住所は、30の2、あるいは2の30ですよね」
店員の女性「そうですよ。新南町の2の30です」
ジュン「新南町? 南町ですよね?」
店員の女性「新南町です。南町というのは、向こう側の古い町です」
母「え? 向こうは中町では?」
店員の女性「中町? あー、そう呼ぶ人も多いですけど、正しくは向こうが南町で、こっちが新南町です」
父「正しくは、とは?」
店員の女性「昔は北町と南町しかなくて、この新南町は、5年ほど前にできたばかりなんです」
ジュン「確かに、新しい町ですよね」
店員の女性「その時、南町を中町に呼び変えて、新しい町を南町と呼んで、北町、中町、南町の順にきれいに並べようと住民は願ったのですが、政府はそうせずに、この新しい町を新南町と名付けたんです」
ミサ「きっと、名前を変えると混乱すると思ったんですね」
店員の女性「でも、多くの市民は政府の指示に従わず、南町のことを中町と呼ぶようになりました。そして彼らは、新南町ではなく南町と呼んでいます」
ジュン「かえって混乱するのに。政府の指示には従ってほしいな」
父「わかりました。ありがとうございます。(地球家族に向かって)さあ、もとの中町に戻ろう。リコはきっとそこにいる」

○道

父、母、ジュン、ミサが歩いている。
十字路に到着する。
父「ずいぶん歩いたな。ここが間違いなく南町の30の2だ」
そのとき、玄関前に立っている女性を発見する。
ミサ「あ、あの人じゃないかしら」
地球家族、立っている女性のもとに駆け寄る。
女性「あ、女の子の家族の方ですか。ずっとお待ちしていました。どうぞお入りください」
女性、玄関のドアを開けて、地球家族を招き入れる。

○部屋の中

女性に案内されて、父、母、ジュン、ミサが入る。
リコが寝ている。
父「リコ!」
女性「大丈夫です。眠っているだけですから。うちの庭に倒れていたんですよ」
ミサ「この家の庭で?」
女性「はい、ちょうどあそこのキイチゴの木の下で」
父、母、ジュン、ミサ、庭に出る。

○家の庭

父、母、ジュン、ミサがキイチゴの木の近くに立つ。
そのとき、キイチゴの木の反対側の塀の向こうから、タクが顔を出す。
タク「お父さん! お母さん!」
父「タク! 留守番しているように頼んだのに、なんでそこにいるんだ」
タク「お父さん、ここはホストハウスだよ」
ミサ「ほんとだ。ホストハウスの正しい住所は『南町の31の2』。私たちの探していた『南町の30の2』は結局、ホストハウスの裏の家だったのね」
ジュン「そうか、リコは、塀越しにキイチゴの木を見ていて、裏の家の庭に落ちたのか」
そのとき、目をさましたリコが庭に向けて顔を出す。
リコ「あれ、イチゴは?」
母「もう、リコ。心配したわよ」
ミサ「リコのおかげで、みんなで新南町まで行ってきたんだから」
ジュン「そうだ、罰として、今からリコも一人で、新南町までひとっ走り行って来るか」
父「ハハハ、それはいいな。新しい町だから、街並みがきれいだぞ」
タク「え、そんなにきれいな町なの?」
ジュン「あ、タクもリコと一緒に行ってきたら」
タク「えー、せっかく留守番してたのに、なんで罰ゲームと一緒にするんだよー」
みんなで笑う。

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