金庫の中のリコ コメディ

地球に住むお父さん、お母さん、ジュン、ミサ、タク、リコの一家6人が宇宙ツアーに参加し、ホームステイしながらいろいろな星の生活を見て回ります。地球では考えられないような文化や習慣・自然環境があり、驚きの毎日を過ごしながら家族が成長していきます。宇宙を旅するが宇宙SF小説とは違う異色ホームドラマ。アニメならば約10分、1話完結の物語。
トナミKK 4 0 0 12/26
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第一稿

【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HF=ホストファーザー
HM=ホストマザー
HGF=ホス ...続きを読む
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【登場人物】
お父さん 45歳
お母さん 41歳
ジュン 16歳
ミサ 13歳
タク 10歳
リコ 7歳
HF=ホストファーザー
HM=ホストマザー
HGF=ホストグランドファーザー


○空港

地球家族6人が歩く。
窓の外に大きな建物が見えている。
ミサ「あの建物はなんだろう?」
父「うーん、資料館と書いてあるようだが・・・」
そのとき、近くにいる係員男性が話しかけてくる。
男性「あれは歴史資料館ですよ。後世に残したいものがいろいろと保存されています。昔の新聞なんかも読むことができます」
ジュン「へえ、おもしろそうだな。今から行ってみようか?」
父「いや、後にしよう。われわれはこの星のことをまだ何も知らない。まず、現在のことを知ってから、過去について見ていくほうがきっと面白いと思うよ」
タク「なるほど、そうかもね」

○ホストハウスの玄関

地球家族6人がホストハウスに到着。リコが玄関を開ける。
リコ「おじゃまします」
奥から声がする。
HM「どうぞお上がりください。荷物が重そうですね。まず、荷物をおろしてください」
地球家族6人、みな荷物を置く。
HF「じゃあ、荷物は私が運んでおきますから、とりあえずダイニングのほうにおあがりください」
HF、地球家族全員の荷物を一気にかついで運んでいく。

○ダイニング

地球家族6人とHF、HM。
HF「これから、いっしょに山へ出かけましょう」
母「ええ、ぜひ」
HF「暑いので、帽子をお忘れなく」
タク「あ、帽子、リュックサックの中だ」
ミサ「私も」
リコ「リコも」
ミサ「私たちの荷物はどこでしょうか?」
HF「あ、みなさんの部屋の奥に金庫があったでしょう。その中に入れてありますから、取っていらっしゃい。カギはかかっていませんから、取っ手を引けば開きますよ」
タク「金庫?」
ミサ「(心の中で)私たち、何も貴重品を持っていないのに・・・」

○客間

ミサ、タク、リコの3人が部屋に入ると、奥に大きな金庫がある。
ミサ「本当だ、大きな金庫」
ミサ、取っ手を引っ張る。扉が開く。中には、地球家族全員の荷物がゴロゴロと入っている。
ミサ、タク、リコ、各自のバッグを取り出し、帽子をかぶる。
タク「そういえば、僕たち、この旅行に出かけてから初めて金庫を見た気がするな」
ミサ「そういえば、そうね。あ、わかったわ。今まで訪問した星には、泥棒がいなかったのよ。他人の物を盗む人がいなければ、金庫なんて必要ないわよね」
タク「そうだね。ここには金庫がある、ということは、この星には泥棒がいるのかな」
ミサ「わからないわ・・・」
タク「それにしても大きな金庫だ」
タク、金庫の大きさとリコを見比べる。
タク「リコ、金庫にちょうど入れるんじゃないか。ちょっと中に入ってみなよ」
タク、他の荷物も全部外に出す。
リコ「うん」
リコ、すぐに金庫の中に入る。
タク、扉を閉める。
ミサ「どう、リコ? 真っ暗でしょ。怖くないの?」
リコ「(金庫の中から)真っ暗じゃないよ。ほら」
金庫の屋根に親指大の丸い穴があいている。リコがその穴から指を突き出している。
ミサ「あら、こんな所に穴があいているのね」
タク「金庫なのに、穴があいているなんて、変だな。何のために・・・」
そこに、ジュンが入ってくる。
ジュン「遅いぞ、みんな、玄関で待ってるよ。あれ、リコは?」
ミサとタクがニヤニヤしている。
ジュン、金庫を見つける。
ジュン「おー、大きな金庫があるな」
金庫に4ケタの数字のダイヤルがついている。
ジュン「へえ、ダイヤル式のカギなんだ」
ジュン、ダイヤルを握ってグルッと回す。ミサとタクがあわてて止めようとするが間に合わない。
ミサ「回しちゃだめよ。もとに戻して」
ジュン「あ、しまった。何番だったのかわからないや」
タク「僕たち、番号を知らないんだから」
ミサ「HFさんに開けてもらわなきゃ」
ジュン「ごめん、ごめん」
ミサとタク、走って部屋を出ていく。
ジュン、金庫の穴に気づく。
ジュン「あれ、なんで穴が・・・」
ジュン、穴をのぞきこみ、リコと目があう。
ジュン「リコ!」

○玄関

父、母、HF、HMが待っている。ミサとタクがかけてくる。
ミサ「おじさん、おばさん。金庫を開けて! 私たち、カギをかけちゃったの」
HF「カギを? それは困ったな」
HM「私たち、番号を知らないのよ」
タク「番号を知らない?」
HM「あの金庫には、カギをかけたことがないの。普通の収納として使っていただけだったのよ」
HF「泥棒なんていないから、金庫のカギなど、必要ないんだよ」
ミサ「中にリコが入っているの」
父「何だって!」
全員、急いで客間に向かう。

○客間

金庫を取り囲み、心配そうな顔の地球家族5人とHF、HM。
父「力づくでなんとか開かないかな?」
父、取っ手をむりやり引っ張る。
HF「それはいくらなんでも無理でしょう」
母「そうね、頑丈そうな金庫だから」
HM「強力な刃物で切るか、バーナーの熱で焼き切るとかならば、できるかもしれませんが・・・」
父「やめてください。そんなことをして、中にいるリコにもしものことがあったら・・・」
HM「え、えー、もちろんです」
HF「おじいちゃんを起こすか?」
HM「そうね」
タク「おじいちゃん?」
HM「実は、2階におじいちゃんが寝ているんですが、もしかすると、番号を知っているかもしれません」
HF「この金庫は、そもそもおじいちゃんが大昔に誰かから譲り受けたものらしいんです」
HM「おじいちゃんはずっと寝ています。今は1日おきにしか目を覚ましません。今日は起きない日なのですが、非常事態なので、起こしてみましょう」
父「あ、ちょっと待ってください。まず何か別の方法を考えてみましょう」
ジュン、ミサ、タク、小声で話し合う。
ジュン「あのー、今回のことは、僕の失敗です。僕がなんとかします」
母「なんとかって?」
ジュン「ダイヤルは4ケタの数字だから、1番から順番に試していけば、いつか開きますよね」
HF「それはそうだけど、何時間かかることか・・・」
ミサ「私も協力します。観光はあきらめて、朝までかかってでもやってみます」
タク「僕も手伝います。みんなで交代でやれば、きっとできるよ」
父「じゃあ、そうしようか。幸い、金庫に穴があいているから、リコが窒息する心配はないだろう」
母「それにしても、なんで穴があいているのかしら・・・」

○しばらくして、客間

タクが数字のダイヤルを少し回し、取っ手を引っ張る。これを繰り返す。ミサが横で見ている。
タク「2941、2942、・・・。だめだ、全然開かない・・・」
ミサ「3000まで行ったら交代しよう」

○ダイニング

父、母、HF、HM。
母「あの金庫はかなり昔のものですよね」
HM「そうですね。今は、泥棒なんていませんから、金庫などというものは存在しないんです」
父「ということは、おじいさまが若い頃は、金庫があったということは、泥棒がいたということですか?」
HF「さあ、私たちにも昔のことはよくわかりません」

○夜、客間

タクとミサが寝ている。ジュンが金庫のダイヤルを回し、父と母が横で見ている。
ジュン「7431、7432、・・・」

○朝、客間

HFとHMが入ってくる。父がダイヤルを回している。
母「あ、おはようございます。もうすぐ全部の数字を試し終わるところです」
父「9997、9998、9999」
ジュン「あれ、おかしいな。最後まで終わっちゃったよ」
ミサとタクが起き上がってくる。
ジュン「どの数字でも開かなかったよ」
タク「そんなはずは・・・」
ミサ「きっと、途中で番号を抜かしちゃったんだわ・・・」
父「落ち着いて、最初からやり直そう」
全員、力が抜ける。
HM「あ、でも、もうすぐおじいちゃんが目を覚まします。何かわかるかもしれません」

○HGFの寝室

HGFが横になっている。そのそばに、地球家族5人とHF・HM。
HGF「金庫のカギは使ったことがありませんので、番号は私もわかりません」
全員、落ち込む。
タク「だめか・・・」
ミサ「でも、金庫があるということは、昔は泥棒がいたということですよね。昔もカギはかけていなかったんですか?」
HGF「昔から泥棒はいませんよ」
HF「え、じゃあ、なんでカギつきの金庫があるんですか? 僕も子供の頃から不思議に思っていたんですが・・・」
HM「私もずっと不思議に思っていました。金庫のある家なんて、うちくらいなものだから・・・」
HGF「あの金庫は、50年ほど前にある知り合いから譲り受けたものなんですよ。地球博覧会で展示されていたものらしいんです」
タク「地球博覧会?」
ミサ「地球って、その、私たちの故郷の地球のことですか?」
HGF「そう、みなさんの住んでいらっしゃる地球のことです」
HM「確かに、聞いた覚えがあるわ。50年くらい前に、地球に関する博覧会が開かれて、地球で使われている品物が展示されていたらしいと・・・」
HGF「金庫も、地球で作られて運ばれたものらしいです。その金庫が、今、うちにあるのです。だから、この星には金庫はこの1台しかありません」
ジュン「そうだったのか・・・。じゃあ、その時の地球博覧会の関係者に会えれば、カギの番号がわかるかもしれませんね?」
HGF「いや、関係者を探すのは無理でしょう。私も探したことがあります。金庫が重すぎて不便で、かといって捨てるのもどうかと思ったので、返そうと思って調べたのですが、わかりませんでした。もう20年以上も前の話ですが・・・」
父「ううむ、手がかり無しか・・・」

○客間

地球家族5人、金庫の前に座る。
ジュン「飛行機の時間まで、できるかぎりまた順番にカギの番号を試してみようか」
父「いや、もう時間がないよ。こうなったら、金庫ごと持ち帰るしかない」
ミサ「持ち帰るって・・・」
父「旅行は中止して、すぐ地球に戻るんだ。この星には金庫がないのだから、この金庫を開ける技術もない。でも、地球に戻れば、きっと開けることができる。それでいいだろ」
全員、うなずく。

○ホストハウスの前

地球家族5人とHF、HM。父とジュンが金庫をかかえている。
父「お世話になりました。金庫はいただいて帰ることになり、申し訳ありませんが・・・」
HM「いいえ、そんなことはかまいません。リコちゃんが無事助かることをお祈りしています」

○空港

地球家族5人、無言で歩く。父とジュンが金庫をかかえている。歴史資料館の建物が見える。
母「歴史資料館だわ。ちょっと、あそこへ寄って行きましょう」
ジュン「なんで、今さら」
母、資料館に向かう。みんな、あわてて後を追う。
母「50年前の新聞を探すのよ。地球博覧会のことがきっと出ているわ」
父「出ていても、関係者の連絡先はきっとわからないよ。おじいさんもずいぶん探したそうだから」

○資料室の中

地球家族5人、50年前の新聞の束をめくっている。
母「あった、この記事よ」
父「うん、でも、やっぱり、連絡先は書いてないね」
ジュン、記事をのぞきこむ。
ジュン「あ、金庫のことが書いてある。『わが星にはない金庫というものが展示されている。地球で作られたものを運んできたものであるが、地球で使われているものと異なり、上部に穴をあけてある。これは、展示中に誤って子供が中に入っても、窒息しないようにするためである。』」
父「そうか、それで穴が。もともと、展示用に作られた金庫だったのか・・・」
父、金庫の穴をあらためて見つめる。
ミサ、タク、記事をのぞきこむ。
ミサ「あ!」
タク「あ!」
視線の先には、記事の続き。
ミサ「『なお、この金庫にはダイヤル式の4ケタの数字のカギがついている。カギの番号は、0000である。』」
タク「信じられない。カギの番号が新聞に書いてあるなんて・・・」
ジュン「『0000』って、誰も試してなかったのかな・・・?」
父「急いで開けるんだ」
全員、金庫の前に立ち、0000を回す。カチッと音が反応する。
ミサ「開いた!」
母「いろいろと学ぶべきことがあったわね。今回の旅行では、地球での常識を捨てることが大切なのよ。まず、カギの番号が新聞記事に書かれているなんて、私たちには想像できないけど、ここにはカギなんて必要ないのだから何の不思議もない。それから、『0000』を試し忘れたのはなぜだかわからないけど、カギの番号が『0000』のはずがない、とみんな心のどこかで思いこんでいたんじゃないかしら?」
母、話し終えて周りを見渡すと、誰も母の話を聞いていない。ちょうどリコが金庫から救出され、みんな涙目で迎えている。
リコ、笑顔で立ち上がり、小躍りをする。
ジュン「リコ!」
父「無事だったか!」
母もその輪の中に加わる。
母「リコ、無事で本当によかったわ」

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