<登場人物>
タノク・M・イリウス/影タノク(20)団員/影の巨人
ナサマチ・F・ダラ(17)同
テシ・Y・ケルナー(8)同
ナサマチ・F・ルギエバ(46)同団長、ダラの父
ラヤドケ・S・リオト(33)同副団長
矢浦(26)宇宙探偵
田尾(22)矢浦の世話係、女性型アンドロイド
テシ・Y・カムミ(33)テシの母、回想シーンのみ
クチヲ・X・ンタレス(29)
軍人 ♯7ゲスト
高跳獣・シャラ
<本編>
○各地
前回のあらすじ。
クチヲ・X・ンタレス(29)を追いかけるタノク・M・イリウス(20)とナサマチ・F・ダラ(17)。
ラヤドケの声「その男を、確保して下さい」
× × ×
後ろ手に手錠をはめられた矢浦(26)の腕を取って連れていくダラ。
矢浦の声「小生も欲しい、あの男の体を」
× × ×
出現する影タノク。
テシの声「サイズ五五、サーゼシステム起動!」
○メインタイトル『カーツ惑星調査団』
T「♯7 目覚めた男in惑星チョクガ(後編)」
○惑星チョクガ・街
対峙する影タノクとシャラ。
ここから映像が巻き戻る。
○同・タノクの部屋・中
レストランでの食べかけの料理を食べ ているタノク。それを見守るテシ・Y・ケルナー(8)。
テシ「何話してるんだろうね? 僕らの事締め出して」
タノク「さぁな」
○同・共同スペース
後ろ手に手錠をはめられたまま椅子に座る矢浦(26)と対峙するナサマチ・F・ルギエバ(46)、ラヤドケ・S・リオト(33)。
ナサマチ「あの男をかっ攫って、どういうつもりや?」
矢浦「スカウトしようと思ってね、小生の事務所に。素晴らしいだろう、あの身体能力」
ラヤドケ「とぼけないで下さい」
矢浦「では聞くが、其方達こそ何故求める、奴を?」
ナサマチ「それは……」
矢浦「そもそも、奴は一体どこから湧いて出たのか、一言で現すなら、疑問」
ラヤドケ「どこまでご存知なんですか?」
矢浦「その質問、突飛すぎて苦しむよ、理解に」
ラヤドケ「同じ事を二度言わせないで欲しいものですね」
矢浦に銃口を向けるラヤドケ。
ナサマチ「ラヤドケはん!?」
ラヤドケ「とぼけないで下さい」
○同・安置室・前
扉の前に立つダラ(17)。
銃声が響く。
ダラ「何や!?」
駆け出すダラ。
○同・共同スペース
後ろ手に手錠をはめられたまま椅子に座る矢浦と対峙するナサマチ、ラヤドケ。
ラヤドケの銃は部屋の隅に向いている。落下し、バラバラになる球体カメラ。
ナサマチ「何やアレ?」
ラヤドケ「人の船にカメラを忍ばせるとは、褒められた事ではありませんね」
タノク「やはり其方か、一番警戒すべき相手」
机の上に袋に入った別の球体カメラの破片を置くラヤドケ。
ラヤドケ「この船のとある部屋で、同じようにカメラの破片が見つかりました。誰の仕業だと思います?」
矢浦「小生だと言いたいのか、犯人が?」
ラヤドケ「少なくともこの船は、外部から潜入を簡単に許すほどセキュリティは甘くないですよ。それがたとえカメラ一台だとしても。ただ一つ、例外があったとすれば、貴方の船にダラさんが乗った後の……」
○(フラッシュ)惑星ハワ・丘
ナサマチに球体カメラを渡す矢浦。
ラヤドケの声「あの時」
○ツエーツ号・共同スペース
後ろ手に手錠をはめられたまま椅子に座る矢浦と対峙するナサマチ、ラヤドケ。
ナサマチ「アレやったんか?」
ラヤドケ「どこまでが貴方の計画ですか? そもそも貴方の目的は? 正体は?」
矢浦「なるほど、何も言わなかったようだね、彼女は」
ナサマチ「彼女……ダラの事か?」
矢浦「彼女を連れて行くと言えばするだろう、反対を? だからしたのだ、カメラ持ち込みの提案を」
ラヤドケ「何故そんな事を?」
矢浦「小生、職業は宇宙探偵。目的は其方達の悪事解明。そして手に入れた、証拠を。(ジャケット裏に隠した通信機に向け)田尾」
田尾の声「(通信機から)かしこまりました」
モニターの電源が入る。
ナサマチ「(驚き)付いた!?」
ラヤドケ「まさか、遠隔操作を……?」
やってくるダラ。隙間からのぞき見る。
モニターに映る映像。安置室で、クチヲがカプセルを突き破り出てくる。
それを見て驚くナサマチとラヤドケ。
矢浦「そして……」
映像が、矢浦号の中にいる田尾(22)とクチヲのものに切り替わる。
田尾「矢浦様、動きが出ました」
クチヲの体から粒子状の光が漏れだしている。
ラヤドケ「止めなさい。早くしないと大変な事に……」
粒子状の光が矢浦号の外に出て行く。
地響き。
驚いて窓を見やるダラ。
○惑星チョクガ・街
矢浦号から出た粒子状の光の先、体長五五メートル程の怪獣・シャラが出現する。
○ツエーツ号・共同スペース
後ろ手に手錠をはめられたまま椅子に座る矢浦と対峙するナサマチ、ラヤドケ。モニターで暴れるシャラの映像を見ている。
ナサマチ「何ちゅう事を……」
矢浦「怪獣となったあの男、元々は閉じ込められていた、この船に。是非説明してもらいたいものだね、経緯を」
ラヤドケ「関係ありません」
矢浦「同じようなカプセルがまだ数多く残っていたように思えるが、あの部屋に」
ラヤドケ「関係ありません」
矢浦「そのすべてが怪獣。異論は?」
矢浦に銃口を向けるラヤドケ。
そこに入ってくるダラ。
ダラ「リオトさん!?」
ダラを見て銃をしまい、代わりに電話をかけるラヤドケ。
ラヤドケ「おや、テシさんですか。タノクさんは今ソチラに? では、出撃だとお伝えください」
○惑星チョクガ・街
対峙する影タノクとシャラ。
○ツエーツ号・共同スペース
戦う影タノクとシャラの映像がモニターに映る。
もの凄いジャンプ力で空高くから落下してくるシャラ。
間一髪で避ける影タノク。
それを見ているダラ、ナサマチ、ラヤドケ、矢浦。
矢浦「(ダラを見て)あの怪獣の動き、見覚えがあるんじゃないかな、其方は」
ダラ「あの男と同じ……」
矢浦「つまり、この船から脱走した男とあの怪獣は、同一人物。いや、こう言い換えた方が正しいだろう、人間の姿をした怪獣」
ダラ「人間の姿をした怪獣……?」
矢浦「問題は、どうやって生み出すか、そんな怪獣を、そんな人間を」
ダラ「生み出せる訳あらへんやん」
矢浦「例えば……テシ・Y・ケルナー」
ナサマチ&ラヤドケ「!?」
○惑星チョクガ・街
サーゼボックスの脇に立つテシ。影タノクとシャラの戦いを見守っている。
矢浦の声「以前聞いた、彼の特殊能力。物質を閉じ込める、別の物質に」
○ツエーツ号・共同スペース
後ろ手に手錠をはめられたまま椅子に座る矢浦と対峙するダラ、ナサマチ、ラヤドケ。
矢浦「であれば、閉じ込める事は可能なのではないか、怪獣を人間、あるいは人間の死体に?」
ダラ「せやから、ケルナーにそんな力はあらへんて、前にも……」
矢浦「少数民族の出、というのが能力の所以と聞いた、あの少年の」
ダラ「(勘づいて)あっ……」
矢浦「何故、このような船に乗っているのか、幼い少年が。一つしかない、理由。乗っていたのではないか、彼の親」
ダラ「……」
○(フラッシュ)同・同
テシとスキンシップをはかる女性団員、テシ・Y・カムミ(33)。
テシ「行ってらっしゃい、ママ」
○同・同
後ろ手に手錠をはめられたまま椅子に座る矢浦と対峙するダラ、ナサマチ、ラヤドケ。
矢浦「彼の親が持っていたのではないか、より強い力?」
ナサマチ&ラヤドケ「……」
ダラ「……オトン、リオトさん、何か言いや?」
ラヤドケ「ダラさん。あなたはどちらの味方なんですか?」
ダラ「ウチかて信じたいわ。せやけど、今の二人見とったら、信じるもんも信じられへんわ」
ナサマチ「ダラ……」
ダラ「(矢浦に)確かに、この船にはケルナーの母親が乗っとった。せやけど、ウチは現場出てへんかったから、力の事まではわからん」
矢浦「なるほど、では変えようか、質問を。其方は知らない様子だった、小生が回収したあの男。一員ではなかったのか、調査団の」
ダラ「多分、ちゃう」
矢浦「つまり、あらかじめ持参していた死体ということか、惑星カーツから」
○惑星チョクガ・街
戦っている影タノクとシャラ。別方向から攻撃される影タノク。
影タノク「痛っ。何だ?」
振り返る影タノク。多数の戦車や戦闘機が影タノクやシャラに向いている。
影タノク「マジか~。テッシー。オフにして」
サーゼボックスの脇に立つテシ。
テシ「え? あ、りょーかい」
スイッチをオフにし、消えて行く影タノク。
サーゼボックスから出てくるタノク。そこに軍人がやってくる。
軍人「失礼ですが、あなた方は?」
タノク「あ~、昨日からこの星に入った、カーツ惑星調査団だけど?」
軍人「何故、あの怪獣と戦いを?」
テシ「さぁ? 上からの命令だよ」
タノク「そんな言葉、どこで覚えんだよ」
軍人「お察しします。ただ、何故惑星調査の方が怪獣と戦いを? 惑星調査を目的にこの星に来られたんじゃないんですか?」
タノク「あ~、いや、俺らの目的は……」
矢浦の声「惑星調査ではない、其方達の目的」
○ツエーツ号・共同スペース
後ろ手に手錠をはめられたまま椅子に座る矢浦と対峙するダラ、ナサマチ、ラヤドケ。
矢浦「各惑星で怪獣を人間の死体に隠し、連れて帰る、惑星カーツへ。この状況、一言で現すなら、密輸」
ダラ「……そういえば前に『惑星間怪獣流通禁止法に違反してる』言うて入れへん星あった」
ナサマチ「いや、ダラ。それはな……」
ラヤドケ「……団長。もういいでしょう」
ナサマチ「ラヤドケはん……」
ラヤドケ「我が惑星カーツは今、深刻なエネルギー不足に陥っています。自分たちの星を救う。それが私達の使命です」
矢浦「認めるのだな、犯罪集団と」
ラヤドケ「私達は『正義の集団』だと思っていますがね。ただ、一つ解せません。この事実を暴いて、貴方に一体何のメリットがあるのですか?」
矢浦「小生にもあるのだ、小生の正義が」
ダラ「正義の敵は、正義……」
ラヤドケ「そうですか。まぁ、何でもいいでしょう……」
矢浦に銃口を向けるラヤドケ。
ダラ「ちょっと待ちぃや」
矢浦を庇うように立つダラ。
ラヤドケ「ダラさん、どいて下さい」
ダラ「せやけど……」
ラヤドケ「私が、この場でこの男を殺すような人間だと思っているんですか?」
ダラ「ちゃうんか?」
ラヤドケ「(矢浦に)私達には、あの体を惑星カーツにいる家族に返す義務があります。貴方の船は、今どちらに?」
矢浦「近くにある、あの怪獣の」
ラヤドケ「ダラさん。行ってもらえますか?」
ダラ「(訝し気に)え、ウチが?」
ラヤドケ「タノクさんのアシスト役も必要でしょう?」
ダラ「……了解」
出ていくダラ。
矢浦「正義感が強いようだな、其方の娘は」
ナサマチ「ほんま、誰に似たんやろな」
ラヤドケ「しかし、私はそう甘くありません」
ナサマチ「え?」
矢浦「小生は評していた、其方が『この場で小生を殺すような人間』と」
ラヤドケ「話が早い方ですね。では」
○同・外観
銃声が響く。
○同・共同スペース
対峙するナサマチ、ラヤドケと矢浦。矢浦の手には銃と外された手錠、ラヤドケの足元に転がる銃。
ラヤドケ「一体、どうやって……?」
矢浦「答える義務はない、小生には。失敬」
そのまま出ていく矢浦。
ナサマチ「……追いかけまっか?」
ラヤドケ「……あの男の目的が『我々の正体をこの惑星の人々に密告する』事であれば、そうするでしょうね」
ナサマチ「多分やけど、そない小っこい考えやないやろな」
ラヤドケ「同感です。むしろ今、急を要するのは、蘇ってしまったあの怪獣」
ナサマチ「彼女が居らん以上、元には……?」
ラヤドケ「戻せませんね。しかしこのまま、証拠となる怪獣を残して出ていく訳にもいきません」
○惑星チョクガ・街
シャラと戦う戦車と戦闘機。
サーゼボックスの脇に立ち、その様子を見守るタノク、テシ、軍人。
軍人「ところで、あの怪獣がどこから湧いて出たのか、ご存知ですか?」
タノク「いや、全然」
テシ「僕も」
軍人「そうですか……」
タノク「この辺って、怪獣あんまり出ねぇの?」
軍人「生息は確認されていませんし、渡り獣の類も監視衛星で十分に警戒しています」
タノク「そっか……」
○同・某所
シャラと戦う戦車と戦闘機の様子が遠目に見える。
停泊する矢浦号の前に立つ田尾と、隣で倒れているクチヲの死体。
そこに、キャスター付きの棺桶を手にやってくるダラ。
ダラ「見つけたで」
田尾「これはこれは、ダラ様。ご用件は?」
ダラ「そん人、返してくれへん?」
田尾「なりません。コチラは矢浦様が必要としている方」
ダラ「怪獣は外出てもうたんや。もう要らんのとちゃう?」
田尾「重要な証拠に変わりはありません。ダラ様達こそ、用済みなのでは?」
ダラ「そん人にも、帰りを待ってる家族が居んねん。こればっかりは譲れへん。力づくでも、返してもらうで」
田尾「受けて立ちましょう」
拳を交えるダラと田尾。互角。
ダラ「この間も思うたけど、アンタ、やるやないか。アンドロイドにしとくん、もったいないわ」
田尾「おほめに預かり光栄です」
戦闘態勢は解かないまま、距離を取るダラと田尾。
田尾「このまま、諦めていただくと助かるのですが?」
ダラ「せやな」
戦闘態勢を解くダラ。
田尾「?」
ダラ「これ以上の争いは、不要や」
ダラの視線の先、やってくる矢浦。
矢浦「お楽しみの所申し訳ない、仲間に入れてくれるかな、小生も」
田尾「お帰りなさいませ、矢浦様」
ダラ「思うてたよりも早かったな」
矢浦「ひとまず返しておこう、預かり物を」
開いた手錠と鍵をダラに渡す矢浦。
○(フラッシュ)ツエーツ号・共同スペース
矢浦に銃を向けるラヤドケ。
ダラ「ちょっと待ちぃや」
矢浦を庇うように立つダラ。
ラヤドケ「ダラさん、どいて下さい」
ダラ「せやけど……」
こっそりと矢浦に鍵を手渡すダラ。
矢浦の声「其方のおかげで開けられたよ、その手錠」
○惑星チョクガ・某所
対峙するダラと田尾の間に立つ矢浦。傍らにはクチヲの死体。
矢浦「感謝しよう、無償での協力」
ダラ「んな訳ないやろ。(クチヲの死体を指し)交換条件や」
矢浦「残念だが、汚い大人だ、小生は。突っぱねよう、そのような条件」
ダラ「何やて?」
矢浦「そもそも、其方が勝手に手錠をかけたんだろう、小生に? 己で原因を作った事を、己で解決させた所で、不十分だと言えよう、交換条件に」
ダラ「……確かに、ウチが手錠をかけてウチが鍵を渡したわ。せやけど、ちょっと言い方ちゃうな」
矢浦「どこが違ったのかな、小生の説明」
ダラ「ウチが手錠をかけたから、ウチが鍵を渡したったんや。ウチが原因やから、ウチが責任持って解決させたんや」
矢浦「ほう……」
ダラ「(クチヲの死体を指し)こん人も一緒や。アンタの言う通り、原因はウチらにあんのかもしれへん。せやったら、いや、せやからこそ、ソレを解決するんも、ウチらの責任や。その為にも、返してもらわなあかんねん」
にらみ合うダラと矢浦。
矢浦「仕方ない、今回ばかりは立てるとしよう、其方の顔を」
ダラ「おおきに。……その代わり、いつかコレを交換条件、何て言わへんよな?」
矢浦「もし言ったとしたら、小生が?」
ダラ「ウチはせこい女や。そんなもん、突っぱねたるわ」
キャスター付きの棺桶にクチヲの死体を収納し、立ち去るダラ。
田尾「矢浦様、よろしかったのですか?」
矢浦「この状況、一言で現すなら、不本意」
田尾「でしたら……」
矢浦「だが、してみたくなったのだよ、期待を」
○同・道
キャスター付きの棺桶を引いて歩いているダラ。物音に気付き顔を上げると、戦車や戦闘機がシャラを攻撃している。
矢浦の声「彼女、ナサマチ・F・ダラに」
ダラ「あの怪獣……」
ナサマチの声「ダラ」
そこにやってくるナサマチ。
ダラ「オトン。どうしたんや?」
ナサマチ「心配して来たに決まっとるやろ。ほら、代わるで」
キャスター付きの棺桶を引く手を代わるナサマチ。
ナサマチ「せやから、ダラはイリウスの手伝いしてき」
ダラ「あの怪獣と戦うんか? イリウス」
ナサマチ「そうなるわな」
ラヤドケの声「(無線で)ツエーツ号より、タノクさん」
○同・街
シャラと戦う戦車と戦闘機。
サーゼボックスの脇に立ち、その様子を見守るタノク、テシ、軍人。
ラヤドケの声「サーゼシステムを起動し、あの怪獣を倒して下さい」
タノク「は? 何で? 燃料の補給なら、あの補給所で出来んでしょ?」
ラヤドケの声「事情が変わりました」
○ツエーツ号・共同スペース
コクピット前に座るラヤドケ。
ラヤドケ「……破損状況から考えて、あの補給所の機能が復旧するには時間がかかりそうです。しかし、私達には時間がありません。なので、その怪獣の生命エネルギーを戴き、早急にこの惑星を発ちたいと思います。なので、タノクさん。お願いします」
タノクの声「……了解」
○惑星チョクガ・街
サーゼボックスの脇に立つタノク、テシ、軍人。
タノク「あーあ、マジか。一日三回とかあり得ねぇだろ」
テシ「怪獣さん、かわいそう」
タノク「(軍人に)一旦、(戦闘機を)撤収させて欲しいんだけど」
軍人「待機、という形ならば」
タノク「じゃあ、それでよろしく」
サーゼボックスの中に入って行くタノク。
○サーゼボックス・中
中心に立つタノク、光に包まれる。
テシの声「サイズ五五。サーゼシステム……」
タノク「あ、ちょっと待った」
○惑星チョクガ・街
サーゼボックスから、タノクの影。
その脇に立つテシ。
タノクの声「テッシー、サイズは五〇にしといて」
テシ「え、何で?」
タノクの声「それは……」
ダラの声「その方が、ちょっとだけ強くなれるから、やろ?」
そこにやってくるダラ。
テシ「ダラちゃん」
タノクの声「さすがだな。話が早ぇ」
ダラ「代わるで、ケルナー。行くで。サイズ五〇」
伸びているタノクの影が少しだけ短くなる。
ダラ「サーゼシステム、起動!」
実体化する影タノク。シャラと対峙する。
影タノク「さて、と。おい、化けもん。どっちが勝っても恨みっこなしだぜ」
戦い始める影タノくとシャラ。互角。
影タノク「おい、ダラ。寄越せ」
ダラ「はいよ」
ミニサーゼをセットするダラ。剣の影が浮かぶ。
ダラ「ミニサーゼ、起動!」
黒い剣が出現し、それを手にする影タノク。
影タノク「そうそう、コッチコッチ」
剣でシャラを攻撃する影タノク。優勢に進める。
ジャンプするシャラ。空高くから落下してくる。
影タノク「来ると思ったぜ」
落下してくるシャラに剣を投げつける影タノク。見事に命中し、大ダメージを受けるシャラ。
ダラ「へぇ、考えたやないか」
影タノク「(振り返り)だろ?」
ダラやテシを見下ろすタノク。
○(フラッシュ)惑星ペユワー・湖畔
体長五〇メートル程の高さからの視点。眼下にタノクらと同じ制服、装備をしたカーツ惑星調査団の面々が数十人いる。全員から銃口を向けられている。以前よりも一人一人の顔がよく見える。
○惑星チョクガ・街
ダラやテシを見下ろしたまま動きが止まる影タノク。
ダラ「イリウス。早よ、とどめ刺さな!」
影タノク「(我に帰り)あ、あぁ」
振り返り、シャラと対峙するタノク。
怒り、無茶苦茶な暴れ方をするシャラ。その攻撃を上手い事かわしながら、シャラの懐に入り込む影タノク。シャラに刺さった黒い剣の柄の部分を握る。
影タノク「シャドーストライク!」
剣を引き抜きながら切り裂く影タノク。
爆発四散するシャラ。
その様子を複雑そうに見つめるダラ。
ダラ「悪かったな、こんな縁もゆかりもない星で死なせてもうて。恨むなら、ウチら恨み」
テシ「ダラちゃん、何か言った?」
ダラ「何でもあらへん。ほな、帰るで」
○航行するツエーツ号
○ツエーツ号・共同スペース
作戦机を囲むダラ、ナサマチ、ラヤドケ。重い空気。
ラヤドケ「……以上が、我が調査団の本当の目的です」
ナサマチ「まぁ、あの矢浦はんの言うてた事が正解や、ってだけやけどな」
ダラ「……何で黙ってたん?」
ナサマチ「お前達に、罪を感じさせないためや」
ダラ「みんな知っとったん?」
ナサマチ「ワイは団長になって初めて聞いたんやけど、正規の団員は全員知っとったみたいや。もちろん、記憶を失くす前のイリウスもな」
ラヤドケ「ではそろそろ、業務に戻りますね」
ダラ「その前にもう一つ。もうこれ以上、隠してる事、あらへんですよね?」
ラヤドケ「ありませんよ、何も」
疑いの目を隠さないダラ。複雑そうな表情を浮かべるナサマチ。
○同・タノクの部屋・中
鏡の前に立つタノク。
タノク「(鏡の中のタノクに話かけるように)なぁ。お前は、誰だ?」
○(フラッシュ)惑星ペユワー・湖畔
体長五〇メートル程の高さからの視点。眼下にタノクらと同じ制服、装備をしたカーツ惑星調査団の面々が数十人いる。全員から銃口を向けられている。その中に、タノクが居る。
○ツエーツ号・タノクの部屋・中
鏡の前に立つタノク。
タノク「俺は、誰だ?」
(♯8へ続く)
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