カーツ惑星調査団♯5『第2の影 in 惑星サヤスワ』 SF

怪獣をはじめ、エネルギー源がなにもない惑星に降りてしまったカーツ惑星調査団。 そんな中、矢浦(26)からエネルギーと引き換えにある取引を持ち掛けられる。
マヤマ 山本 30 0 0 08/12
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第一稿

<登場人物>
タノク・M・イリウス/影タノク(20)団員/影の巨人
ナサマチ・F・ダラ(17)同
テシ・Y・ケルナー(8)同
ナサマチ・F・ルギエバ(46)同団長、ダラの父 ...続きを読む
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<登場人物>
タノク・M・イリウス/影タノク(20)団員/影の巨人
ナサマチ・F・ダラ(17)同
テシ・Y・ケルナー(8)同
ナサマチ・F・ルギエバ(46)同団長、ダラの父
ラヤドケ・S・リオト(33)同副団長
 
矢浦/影矢浦(26)宇宙探偵/影の巨人
田尾(22)矢浦の世話係、女性型アンドロイド
クチヲ・X・ンタレス(29)死体
 
機械音    声のみ



<本編>
○ツエーツ号・ダラの部屋
   ベッドに横になるナサマチ・F・ダラ(17)。
矢浦の声「その犯罪組織の名は……カーツ惑星調査団」

○(回想)矢浦号・生活スペース
   向かい合う矢浦(26)とダラ。
ダラ「ウチらが犯罪組織やて? アホな事ぬかすな。しばくで?」
矢浦「では、百パーセント確実にただ一点の曇りもなく出来るのかい、断言を? 其方達の正義と全宇宙の正義、その等しさを」
ダラ「それは……」

○ツエーツ号・ダラの部屋
   ベッドに横になるダラ。枕に八つ当たりする。
ダラ「あ~、悔しい。めっちゃ腹立つ~。何で言い返せへんかったんやろ。……けど」

○(フラッシュ)同・安置室・中
   死体の並んだカプセル。
ダラの声「アレもあったしな~」

○同・ダラの部屋
   ベッドに横になるダラ。
ダラ「オトンは知っとるんやろか……聞いてみるか。……いやいや、何て聞くねん。『なぁ、オトン。ウチらって犯罪グループなん?』て? 無理やろ。あ~、もうどないしよ」
   ドアをノックする音。
ダラ「うおっ! ……ど、どうぞ」
   ドアを開けるタノク・M・イリウス(20)。
タノク「ノックくらいでビビリすぎじゃね?」
ダラ「うっさいわ。で、何の用や?」
タノク「あぁ、もうすぐ次の惑星着くから、一旦集まれって。ったく、何で俺がこんな使いっ走りみたいな事しなくちゃいけねぇんだか」
ダラ「すぐ行くわ」

○同・共同スペース
   入ってくるタノクとダラ。
   作戦机に座っているテシ・Y・ケルナー(8)と、コクピット前に位置するナサマチ・F・ルギエバ(46)、ラヤドケ・S・リオト(33)。
   テシの両サイドに座るタノクとダラ。
タノク「何、まだ手こずってんの?」
ダラ「手こずるって、何に?」
テシ「うん、何かずっと断られてるみたい」
ダラ「断られてる?」
   耳を澄ますダラ。
   フロントガラスに映る黄緑色の惑星ケボ。コクピット前で惑星ケボ側の人間と無線でやり取りするナサマチとラヤドケ。
機械音「入星を許可できません」
ナサマチ「エネルギーの補給だけでええんですよ。何とかなりまへんか?」
機械音「入星を許可できません」
ナサマチ「理由は?」
機械音「惑星間怪獣流通禁止法違反につき、入星を許可できません」
ダラ「惑星間怪獣流通禁止法?」
テシ「それって、怪獣さんを連れてっちゃいけませんっていう?」
タノク「でもこの船、怪獣なんて居ねぇじゃん」
テシ「だよね」
   小声で相談するナサマチとラヤドケ。
ラヤドケ「わかりました、失礼致します」
   方向転換するツエーツ号。
タノク「え、諦めんの?」
ナサマチ「仕方ないやろ、ダメの一点張りなんやから」
タノク「でも、言いがかりじゃねぇかよ。惑星間怪獣流通禁止法違反とか」
ナサマチ「それは……」
ラヤドケ「あの手の星には、そういう話は通じません。ダメなものはダメです。次の惑星を探した方が賢明でしょう」
ナサマチ「そういう訳や。一旦解散してええで」
タノク「何だよ、無駄な労力使わせやがって」
テシ「もう一回、気持ちから作らなきゃね」
タノク「どこで覚えんだよ、そういう台詞」
   出て行くタノクとテシ。
ダラ「なぁ、オトン」
ナサマチ「何や? お前も部屋戻って大丈夫やで?」
ダラ「そうやなくて。ウチら、違反してんのか? 惑星間怪獣流通禁止法」
   ピクッと反応するラヤドケ。
ナサマチ「アホな事いうな。部屋戻りぃ。ほら」
   追い払われるように出て行くダラ。

○同・廊下
   歩きながら後ろを振り返るダラ。
ダラ「怪しい……」
   歩いて行くダラ。その上、球体型カメラがある。

○矢浦号・生活スペース
   モニターに映し出された、ツエーツ号内(ダラの頭上にあった球体型カメラ視点)の映像。それを見ている矢浦(26)。
矢浦「早く進みたいものだ、第二段階」
   そこにやってくる田尾(22)。
田尾「矢浦様、間もなく完成致します」
矢浦「さすが田尾、早くて助かるよ、仕事が。……さて、どう出る、カーツ惑星調査団の諸君?」

○メインタイトル『カーツ惑星調査団』
   T「♯5 第2の影in惑星サヤスワ」

○惑星サヤスワ・外観
   紺色の惑星。
   T「惑星サヤスワ」

○同・広場
   停泊するツエーツ号。降りてくるタノク、ダラ、テシ、ナサマチ。
タノク「あ~、やっと着いた。で、ここどこ?」
ダラ「惑星サヤスワ、言うとったな」
ナサマチ「知的生命体の存在は確認されとらん。とりあえず、エネルギー源になりそうなものを探そか」
タノク「行ってらっしゃ~い」
テシ「え、イリウス君行かないの?」
タノク「だって(サーゼボックスを指し)コイツが出てんだから、俺は待機じゃねぇの?」
ナサマチ「安心しぃ。それは置いといただけ。イリウスも、ワイらと一緒に探索担当や」
タノク「え~」
ダラ「残念やったな。で、オトン。エネルギー反応はどの辺にあったんや?」
ナサマチ「……ないで」
タノク&ダラ&テシ「え?」
ナサマチ「エネルギー反応なんて何もあらへんかった、言うてんねん」
ダラ「は? ほな、何でこの星に降りたん?」
ナサマチ「しゃあないやろ? エネルギー切れそうやのに、さっきの星に入れへんかったんやから」
ダラ「うわ……あ、それで動かせるうちにサーゼボックス出しといたん?」
ナサマチ「せや」
テシ「じゃあ、何も見つからなかったら、僕達この星から出られないの?」
ナサマチ「せや」
タノク「けど、何も見つからねぇ可能性の方が高ぇんだろ?」
ナサマチ「せや。けど、とにかく、探せばきっと何かあるて。さぁ、行くで」
タノク「嘘だろ? あり得ねぇ……」

○同・各地
   タノク&ダラ、テシ&ナサマチの二手に分かれ、草原や森、洞窟などをくまなく探す。
ダラの声「ほんまに、何も見つからへんな」

○同・広場
   休んでいるタノクとダラ。
ダラ「ツエーツ号のエネルギー探知システムの優秀さがようわかるわ」
タノク「今回ばかりは、外れてほしいけどな」
   そこにやってくるテシとナサマチ。
ナサマチ「おう、二人とも居ったんか」
ダラ「そっちはどうやった?」
テシ「何もなかったよ」
ナサマチ「どうやら、そっちもみたいやな」
タノク「マジどうすんだよ」
テシ「ここが終の住処になっちゃうのかな?」
タノク「だからどこで覚えんだよ、そんな言葉」
ナサマチ「……ほな、今度は反対側を探してきてや。ダラとイリウスとケルナーの三人で」
タノク「え~、ちょっと休もうぜ」
ダラ「文句言うんやない。……で、オトンは何すんねん」
ナサマチ「ワイは、ちょっとラヤドケはんと話してくるわ」
ダラ「?」

○ツエーツ号・共同スペース
   コクピット前に座るラヤドケと向かい合うナサマチ。
ラヤドケ「ダメです」
ナサマチ「せやけど、他に手ぇないやろ?」
ラヤドケ「それは、この惑星をくまなく調べてからの話です」
ナサマチ「なかったら、どないすんねん」
ラヤドケ「渡り獣が来る可能性だってあります」
ナサマチ「来なかったら、どないすんねん。もう、あのエネルギー使うしかあらへんやろ」
ラヤドケ「アレを使うという事がどういう事かおわかりなんですか、ナサマチ隊長? アレを手に入れる為に犠牲になった百名近い調査団員の命が無駄になるという事なんですよ?」
ナサマチ「……どうしてもあかん言うのか?」
ラヤドケ「はい」
ナサマチ「なら、もうええ。ワイの判断で勝手にやる」
   その場を立ち去ろうとするナサマチ。
ラヤドケ「何をするおつもりですか?」
ナサマチ「安心しぃ。責任ならワイが取る」
   部屋から出て行くナサマチ。
   その様子を部屋の隅で見ている球体カメラ(二人はこのカメラの存在に気付いていない)。

○矢浦号・生活スペース
   ツエーツ号の球体カメラからの映像がモニターに映し出されている(音声はなし)。
   何かを言い、ナサマチを追いかけ、杖をつきながら部屋を出るラヤドケ。ラヤドケを追って部屋を出て行くカメラ。
   モニターを見て笑みを浮かべる矢浦。隣には球体カメラの操縦機を手にする田尾。

○ツエーツ号・安置室・前
   IDカードを翳し、部屋に入って行くナサマチ。扉を閉める。
   追ってやってくるラヤドケ。IDカードを翳し、部屋に入る。その時、同時に球体カメラも室内に潜入する。

○矢浦号・生活スペース
   引き続きツエーツ号の映像を見ている矢浦と田尾。
   モニターには死体のカプセルの前で口論するナサマチとラヤドケの姿。
矢浦「今の状態、一言で現すなら、順調。さて、移行するとしよう、第三段階」
   部屋から出て行く矢浦。

○惑星サヤスワ・山
   歩いているタノク、ダラ、テシ。
タノク「あーあ、何も見つからねぇし。もう疲れたんだけど」
ダラ「文句言わんと、ちゃんと歩き。ケルナーに示しがつかんやろ」
テシ「それにしても、団長と副団長は何話してるんだろうね?」
タノク「どうせサボって飯食ったり寝たりしてんだろ」
ダラ「イリウスと一緒にすなや」
タノク「俺そんなんじゃねぇよ」
テシ「(遠くを指差し)ねぇ、あの木の実って食べられる奴だよね?」
タノク「え、どれどれ?」
   駆け出して行くテシとタノク。
ダラ「ちょっ……ったく、探してるもんとちゃうやんか」
矢浦の声「果たして何の話をしているんだろうか、団長と副団長」
   驚き振り返るダラ。そこに立っている矢浦。
矢浦「案外あの話をしているのではないか? 犯罪計画」
ダラ「何や、いきなり。オトン達がそんな事しとる訳ないやないか」
矢浦「とはいえ、あるんだろう? 思い当たる節が」
ダラ「それは……」

○(フラッシュ)ツエーツ号・安置室・中
   並んだ死体入りカプセル。

○(フラッシュ)同・共同スペース
   コクピット前に立つナサマトとラヤドケ。
機械音「惑星間怪獣流通禁止法違反につき、入星を許可できません」

○惑星サヤスワ・山
   対峙するダラと矢浦。
矢浦「突き止めたくはないか、その謎を?」
ダラ「……」
   両手一杯に抱えた果実を食べながら戻ってくるタノクとテシ。
タノク「いや~、大量大量。……って、あれ、矢浦?」
   タノクに目をやるダラ。怖い顔。
タノク「何だよ、その顔。(果実を見て)あ、やらねぇかんな」
ダラ「いらんわ」
テシ「矢浦さん、またダラちゃんにプロポーズ?」
ダラ「アホな事ぬかすな」
矢浦「いや、今回は別件」
タノク「別件?」
矢浦「一度、じっくりと見てみたいと思ってね、あの影の巨人を」
タノク「は? 誰が見せっか。怪獣出てんならともかくよ」
テシ「そうそう。イリウス君はそんなに軽い男じゃないよ」
ダラ「どこで覚えんねん、そんな台詞」
矢浦「そうか、残念だった、その解答。せっかく謝礼として分けてもいいと思っていたのだがな、小生の船のエネルギーを」
タノク&ダラ&テシ「え?」

○ツエーツ号・安置室・中
   カプセルの前で対峙するナサマチとラヤドケ。コクピットの方から音がする。
ラヤドケ「通信が入ったようですね。戻りましょう」
ナサマチ「一人で戻ったらええやん」
ラヤドケ「もし『エネルギー発見』の報告や、ダラさんのピンチだったらどうされます?」
ナサマチ「……わかった、戻ったるわ」
   部屋から出て行くナサマチとラヤドケ。
   ゆっくりと動き出す球体カメラ。カプセルの前に行き一体一体映していく。

○矢浦号・生活スペース
   モニターに映る球体カメラの映像。操縦機を手にそれを見ている田尾。

○ツエーツ号・共同スペース
   コクピット前に立つナサマチとラヤドケ。
ナサマチ「矢浦はんが?」
ダラの声「(無線で)そう言うとんねんけど、どうする?」
ラヤドケ「正直、あの探偵の事は信用できません。今回も完全に、我々の足元を見てきています」
ナサマチ「けど、エネルギーのためやで?」
   苦虫を嚙み潰したような顔のラヤドケ。

○惑星サヤスワ・広場
   停泊しているツエーツ号とサーゼボックスの前に立つタノク、ダラ、テシ、矢浦。
タノク「で、サイズはどうすんだ? いつもは怪獣に合わせてっからさ。まぁ、見るだけだったら、一〇くれぇで……」
矢浦「五〇で」
タノク「は? まぁまぁ疲れんじゃん。嫌なんだけど」
矢浦「ならば無かった事になる、この話。さっさとこの惑星を離れるとしよう、小生は」
タノク「わかったわかった、やってやんよ」
   サーゼボックスに入っていくタノク。

○サーゼボックス・中
   中央に立つタノク。光に包まれる。

○惑星サヤスワ・広場
   停泊しているツエーツ号とサーゼボックスの脇に立つダラ、テシ、矢浦。
ダラ「サイズ五〇.サーゼシステム、起動」
   体長五〇メートルの影タノクが出現する。
影タノク「さて、と。……何すりゃいいんだ?」
矢浦「では、回ってもらおうか、その場で」
影タノク「はい?」
    ×     ×     ×
   矢浦に対して正面、横、背面を向けていく影タノク。
    ×     ×     ×
   腕立て伏せやスクワットなどの筋力トレーニングをする影タノク。
    ×     ×     ×
   ボディビルのようにポーズを決めていく影タノクと、それをカメラで撮影する矢浦。
   その様子を座って退屈そうに見ているダラとテシ。
ダラ「暇やな」
テシ「暇だね」
    ×     ×     ×
   影タノクの前に立つ矢浦。
影タノク「なぁ、そろそろ満足してくれたか?」
矢浦「そうだな、ではしよう、最後の頼みを」
影タノク「やっと最後か。何だ?」
矢浦「手合わせ願いたい、小生と」
影タノク「はい?」
   そこにやってくる矢浦号。
影タノク「え、何なに?」
田尾の声「サーゼボックス、降下します」
   矢浦号から降りてくる一回り小さなサーゼボックス(便宜上、矢浦サーゼボックスと呼ぶ)。サーゼボックスの隣に置かれる。
   その様子を座って見ているダラとテシ。思わず立ち上がる。
ダラ「あれは、サーゼボックス?」
テシ「凄~い、そっくりだね」

○ツエーツ号・共同スペース
   二つのサーゼボックスが隣同士に並ぶ様子をコクピット前から見ているナサマチとラヤドケ。
ナサマチ「これは一体……」
ラヤドケ「まさか……」

○惑星サヤスワ・広場
   ツエーツ号の隣に停泊する矢浦号。
   矢浦サーゼボックスの脇に立つ矢浦と田尾。
田尾「行ってらっしゃいませ」
矢浦「頼んだよ、田尾」
   矢浦サーゼボックスに入って行く矢浦。

○矢浦サーゼボックス・中
   内装はサーゼボックスと一緒。
   中央に立つ矢浦。光に包まれる。

○惑星サヤスワ・広場
   矢浦サーゼボックスから伸びていく矢浦の影。矢浦サーゼボックスの脇に立つ田尾。
田尾「サイズ五〇」
   ダイヤルを調節する田尾。矢浦の影が影タノクの影と同じ長さまで伸びていく。
田尾「サーゼシステム、起動します」
   ダイヤル脇のスイッチを押す田尾。起動音が流れ、矢浦の影に沿って走る電撃。

○矢浦サーゼボックス・中
   矢浦の体にも走る電撃。意に介さない表情の矢浦。
   一瞬強さが増し、それを最後に止む電流。同時に意識を失い倒れる矢浦。

○惑星サヤスワ・広場
   影タノク、ダラ、テシ、田尾らが見守る中、一瞬増した強さのまま矢浦の影を走る電流。すると影が実体化し、影矢浦となる。影でありながらハットをかぶり直すような仕草は可能な影矢浦。
ダラ「何で矢浦が、サーゼシステムを?」
田尾「矢浦様からお話を伺い、私が作りました」
ダラ「矢浦から話て……」

○(フラッシュ)惑星ラロキ・採掘場
   サーゼボックスから出てくる矢浦。
ダラの声「まさか、あのたった一回で」

○惑星サヤスワ・広場
   二つ並んだサーゼボックスの脇に立つダラ、テシ、田尾。
ダラ「サーゼシステムを再現したとでも言うんか?」
   対峙する影タノクと影矢浦を見上げるダラ。
ダラ「イリウス、負けるんやないで」
影タノク「おう。……けどよ、戦って勝ったとして、俺に何のメリットがあんだ?」
影矢浦「必要かな、メリットが? では出そう、アイデアを。もし其方が負けたら、白紙に戻す、今回の約束」
影タノク「は? ちょ、待てよ」
影矢浦「なってもらえたかな、本気に?」
影タノク「そう言われちまったら、そん時は、そん時だ」
影矢浦「では始めるとしよう、初陣を」
影タノク「そっちが売ってきた喧嘩だ。どっちが勝っても恨みっこなしだぜ?」
影矢浦「望む所」
   戦う影タノクと影矢浦。互角に見えるが、影矢浦は時折腕や足の動きを確認する余裕がある。
影タノク「この野郎、余裕ぶっこきやがって。コッチ見とけ!」
   飛びかかる影タノクを軽くあしらい、一気に攻勢に転じる影矢浦。吹っ飛ばされる影タノク。
影タノク「ぐあっ」
影矢浦「おっと、これは失礼」
影タノク「この野郎……おい、ダラ」
   ダラに目を向ける影タノク。

○(フラッシュ)惑星ペユワー・湖畔
   体長五〇メートル程の高さからの視点。眼下にタノクらと同じ制服、装備をしたカーツ惑星調査団の面々が数十人いる。全員から銃口を向けられている。

○惑星サヤスワ・広場
   影タノクの眼下にいるダラ、テシ、田尾。
ダラ「イリウス?」
   動きが止まっている影タノク。そこに攻撃を加える影矢浦。再び吹っ飛ばされる影タノク。
影矢浦「見ておいて欲しいものだね、小生を」
影タノク「この野郎……ダラ、寄越せ」
ダラ「イリウス、受け取り!」
   ダラがミニサーゼを使用し、出現した黒いハンマーを手に取る影タノク。
影タノク「しゃあ」
   ハンマーを振り回す影タノク。それを避けて行く影矢浦。
影矢浦「(田尾に)そういえば、小生にはあるのかい、武器は?」
田尾「いいえ、作っておりません」
影矢浦「承知。これだけでもやった甲斐があったというものだ、試運転」
影タノク「ナメやがって~!」
   影タノクの懐に入り攻撃を加える影矢浦。ハンマーを落とす影タノク。そのハンマーを手にする影矢浦。
影タノク「しまった」
影矢浦「なるほど、影とはいえ重さはあるのだな、武器も」
   ハンマーを逆に持ち、棒術のように攻撃する影矢浦。
影タノク「くっ」
   足を引っかけさせられ、倒れる影タノク。そこにハンマーを振り下ろす影矢浦。その瞬間、ハンマーが消えて行く。
影矢浦「む?」
   ダラを見る影タノクと影矢浦。
ダラ「こっちのスイッチ、切ったったわ」
影矢浦「なるほど」
影タノク「ナイス、ダラ」
   立ち上がり、再び対峙する影タノクと影矢浦。優勢な影矢浦。
   ふと田尾に目をやるダラ。タブレット端末を見ている田尾。田尾の元に行き、タブレット端末を覗き見るダラ。
ダラ「アンタも戦いに集中しいや……」
   タブレット端末に映る、安置室の映像。
ダラ「!? 何や、コレ?」
田尾「(慌ててタブレット端末を隠しながら)何でもありません」
ダラ「何でもない事ないやろ」
田尾「何でもありません」
   もみ合う二人。その最中、背中で矢浦サーゼボックスのスイッチをオフにしてしまう田尾。
   消えて行く影矢浦。
影矢浦「む……?」
   呆然と佇む影タノク。
影タノク「? 何だ?」
    ×     ×     ×
   ケーブルのようなものをつなぎ、エネルギーをツエーツ号に分けている矢浦号。
   矢浦に頭を下げる田尾。
田尾「申し訳ありませんでした」
矢浦「謝る事ではない、田尾。むしろ出た方が有意義だろう、反省点は」
   そこにやってくるタノクとダラ。
タノク「助かったぜ、エネルギー」
矢浦「礼を言うのは、小生の方」
タノク「え?」
矢浦「おかげで見えてきた、改善点」
タノク「次やる時は手加減しねぇかんな」
矢浦「望む所」

○ツエーツ号・安置室・前
   ドアの前に立つダラ。
ダラM「やっぱり、矢浦の目的はこの部屋の秘密。せやけど……どうやってこの部屋の映像を?」

○矢浦号・生活スペース
   モニターに映る安置室の映像。
ダラM「でも、何であの部屋の映像を……?」

○ツエーツ号・安置室・中
   カプセルに入ったクチヲ・X・ンタレス(29)の死体。目を開ける。
               (♯6へ続く)

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