かごめかごめ ミステリー

ある一室。新人小説家のユウヤの家に、マコト、ホノカ、マユが訪れていた。ユウヤは講談社に原稿をボツにされ、リベンジのために新たな原稿を書いていたのだが・・・
そよ風 11 0 0 08/04
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第一稿

かごめかごめ
舞台中央、薄暗い雨音の中、男1が座っている。
しばらくすると男2、女1、女2がやってきて男1を取り囲み、かごめかごめを歌い出す。

男2、女1、女2 かご ...続きを読む
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かごめかごめ
舞台中央、薄暗い雨音の中、男1が座っている。
しばらくすると男2、女1、女2がやってきて男1を取り囲み、かごめかごめを歌い出す。

男2、女1、女2 かごめかごめ 籠の中の鳥は いついつ出やる 夜明けの晩に 鶴と亀が滑った うしろの正面だあれ?
明転とともに雨音も消える

男1 マコト?
女1 残念でした〜。正解は私ホノカでした。
男2 これで3連敗だな。ユウヤ弱すぎ。
男1 うるさいな
女2 センスない
女1 確かに
男1 うるさいよ。そこまで言わなくてもいいだろ
男2 それにしても普通3連敗もするかね
男1 仕方ないだろ。分からないものは分からないんだよ
女2 負け犬の遠吠え
男1 うっ…
男2 よーし、じゃもう一回戦と行きますか。
女1 おー
男1 ちょっと待て。まだこれやるの?
女1 何よユウヤ。不満でもあるの?
男1 そりゃああるよ。大体なんでかごめかごめをやるのかまずはそこだろ。
男2 いつもテレビゲームだとつまんないからだよ。たまにはさ昔懐かしいゲームをするのもいいかなって思ったから。
女1 あとついでに補足すると、今現在ユウヤは家賃未払いで電気止められてテレビつかないからっていうのもあるね。
女2 貧乏人
男1 言い返せない…
男2 バイトは?
男1 先月辞めたよ。小説に集中したかったから。
男2 へえ。じゃあ今現在進行形で無職なんだ。
男1 失礼な。駆け出し小説家と呼べ。大体人の部屋に勝手に来て、仕事の邪魔しないでくれるかな。
女1 仕事って、この原稿白紙なんですけど。
男1 それは…
男2 まあまあ。そう言うなって。こいつ昨日講談社に原稿持って行ってボロクソに言われたんだってさ。
男1 おいやめろよ。俺結構傷ついてるんだぞ。

女2 机の上にある原稿を見つける。

女2 原稿ってこれ?
男1 あっちょっと!
女1 んー?『黒ヤギと白ヤギのドロドロ愛憎劇』なにこれ?
男1 白ヤギが愛憎に駆られて黒ヤギを殺す話だよ。
女2 変なの。
男1 えっ
男2 だろ〜。世界観がよくわからないよな。大体いまの時代に文通って…
男1 お前たち凡人には俺の小説の良さなんか分からないんだよ!
女2 そんなんじゃ一生売れない。
男1 うっ…
女1 うわ〜。はっきり言われた。
男1 だから今こうやって次の原稿書いて、リベンジしようとしてるんじゃないか。それなのにお前らときたらいきなりうちに押しかけて原稿の邪魔しやがって。
女1 だって休日家にいても暇なんだもん。でもさそう言いながらユウヤだって私たちと一緒に遊んでるじゃない。
男1 それは、あえて遊びに興じる事で、想像力を高めてるんだよ。そうやって作品のクオリティをあげようと…
女2 今のユウヤ今までで一番カッコ悪い。言い訳がましい。
男1 えっ
女1 来たー!毒舌のプロ、マユ先生の渾身の一撃!これはユウヤ選手もノックアウトでしょうか。
男1 しないから!心には刺さったけどさ。
女2 無職一直線
男1 そこまで言います? 
女1 おおっとダメージはかなり大きい模様です。いや〜どう思いますか解説のマコトさん。
男2 あと2、3発食らえばKOでしょう。ユウヤ選手のメンタルは豆腐並み。一方マユ選手の口の悪さは天下一品。これはもう勝負は見えてるでしょうね。
女1 なるほど。ユウヤ選手いつまでこの攻撃に耐えられるんでしょうか。我々非常に楽しみです
男1 しつこいな!別にKOなんてしないし。とにかく…
男2 ハイハイ。わかってるよ。
男1 分かってくれたならいいけど
男2 慰めて欲しいんだよな
男1 ん?いやいや違うから。俺は
男2 みなまで言うな。分かってる。俺たち一丸となってボロボロになってるお前を元気付けるからさ。
男1 分かってないから。俺は原稿の邪魔されたくないから、静かにしてくれと言ってるんだよ。
男2 分かってる分かってる。みなまで言うな。
男1 もうみなまで言ったわ。とにかく今から集中するからお前らは静かにしておいてくれよ。
女1 りょーかい

男1 机に向き直る

女1 それにしても、ユウヤってほんとマユに頭上がんないよね
男2 そりゃあ、口の悪さじゃマユちゃんに勝てるやつなんていないだろ。
女1 的確に相手の心をえぐりにくるよね
男2 それにしてもさ、ユウヤもなんか言い返せばいいのに
女1 あれですよ。彼生粋のドMだから、あえて言い返さないんだよ
男1 違うから
女2 書けよ早く
男1 はい
女1 ほらね。言われた後、ちょっと嬉しそうでしょ
男2 納得だわ
男1 違うって!
女2 口動かす暇があれば、手を動かせよ
男1 はい
  
男1、しばらく原稿に向き合うが、アイディアが全く浮かばず頭を抱える。やがて机に突っ伏す。

男2 なんだよ。結局書けないんじゃん
男1 何も浮かばん。なんでだ、何が原因なんだ。そうかお腹が空いてるからか。うんそうだ。そうに違いない。よし何か食べよう。でも俺には金がないんだった。ダメじゃん。
女1 一人で何勝手に自己完結してるのよ
女2 情けない
女1 マユの言う通りだわ。あんだけ原稿に集中するから静かにしてくれって言ったくせに結局書けないじゃない。
男1 浮かばないものは浮かばないんだよ。それもこれもあの担当者が悪いんだ。あんな言わなくてもいいじゃんかよ。おかげで俺はスランプ状態だ。
女2 やっぱり才能ない
男1 そんなはっきり言わなくても
男2 まあまあ。じゃあちょっと早いけど休憩にするか。
女1 ちょっとじゃなくてすごく早いんだけどね
女2 超正論。
男2 ほれ。せっかくケーキ買って来たんだから食べようよ。
男1 まじですか、マコトさん。
男2 この俺に感謝するがいい
男1 マコト様、いやマコト神。
男2 ひざまずけ人間たち。そして崇めよこの私を。
女1 わーいケーキだ

 女1、男2からケーキの箱を奪い取る

男2 あっ。おい。
女1 ケーキケーキ
女2 ケーキケーキ
男1 おい早く開けろよ
女1 分かってるわよ。
男1 来たー!ケーキご開帳〜

 女1、ケーキの箱を開ける。中には埃まみれのケーキが入っている

男1 ナニコレ?
男2 ナニガ?
男1 何がじゃねえよ!何だよこのケーキ、埃まみれじゃん。しかもパサパサ。こんなに期待させておいて結局嫌がらせか?
男2 あれおかしいな。買った時は普通のケーキだったのに。冷蔵庫に入れといた時に埃被ったのかな
女1 そのケーキいつ買ったの?
男2 昨日。
男1 お前ん家の冷蔵庫どんだけ汚いんだよ。
男2 あの冷蔵庫拾って来たやつだからなあ
男1 拾い物なんか使うなよ
女2 マコトも貧乏だから
男1 最悪。そうだった。結局何も食べられないのかよ。あーあテンション下がった〜。やる気なくなった〜。
女1 あらら。やる気削いじゃった。
男2 なんだよ。さっきまで俺を崇めてたくせに。いきなり手のひら返しか。
男1 埃まみれのケーキを渡されて、どうもありがとうございます。いただきまーすとはならないだろ。
男2 わざわざ買ったんだから買って来てくれてありがとうって言うのは当たり前だろ。
男1 だから食べられなかったら意味ないだろうが
男2 なんだとこのセンスの無い四流小説家!
男1 まだ駆け出しだって言ってんだろうが!
女1 ハイハイ。二人とも落ち着いて。
女2 子供の喧嘩。
女1 ほらマユからも馬鹿にされてるから。そこらへんでやめたら?
男1 はあ。せっかくの食料が…。お前絶対許さんからな。
女1 まあまあ。あとでコンビニでなんか買ってくるからさ。許してあげてよ。
男1 許す
女2 単純
男2 うん単純だな。て言うか原稿書かないのかよ。
男1 分かってるよ。今から再開しようと思ってたんだよ。
男2 ふーん

 男1 再び原稿に向き合う。しかしアイディアは出ず、再び頭を抱える。そして机に突っ伏す。と同時に舞台が少し暗くなる。そして雨音と雷。その後すぐに男1起き上がると同時に明転

男1 おおっ。
男2 どうした?
男1 今雨降ってなかったか。
男2 雨?ホノカ降ってたか?
女1 ううん。普通に晴れてるよ。ほら。

 女1、下手の方を指差す。男1 下手側へ向かう

男1 本当だ。さっきのは夢だったのかな。
男2 それよりお前原稿進んだのか?
男1 え?あっ全然進んでない。
女1 ダメじゃん。
男1 はあ。どうしよう。何も思い浮ばない。なあなんかアイディアない?
男2 俺らに聞くのかよ
男1 だって思いつかないんだもん。
女1 私達はうるさいから邪魔って言ってたもんね〜
男1 うっ。お願いします助けてください。
女2 プライド低い。
男2 あれだけ大口叩いたんだからな。さあ早く机に戻るがいい。
男1 俺たち友達だろ。邪魔するだけじゃなくて、たまには俺の原稿を書くの助けてくれてもいいじゃんか。
女1 あーあ。やだやだこんな時だけ助けてくださいコールですか。マユさん、一発お願いします。
女2 早く書け。まだ無能なんだから
男1 はい

男1、机に向き直り、原稿とにらめっこ

女1 また私たち暇になっちゃったね
男2 何しようか。
女2 何かないの?
女1 トランプとかは?
男2 こいつにトランプ買う金があると思うか?
女1・女2 納得
男1 なんで納得するんだよ
女2 原稿やれよ
男1 はい
 
男1、机に向き直る

女1 暇だなあ。ちょっとトイレ行ってくるね
男2 いってらっしゃい
女2 いってらっしゃい

女1 下手に行き、ドアを開ける仕草。そしてそのままはける。

女2 で、どうするの?
男2 うーん、ホノカのやつ何か持ってないのかな?

男2、バッグを漁る

男2 うーん、遊べそうなものはないな。
女2 マコトは何か持ってないの?
男2 俺ももってないな。ケーキで金ほとんど使っちゃったし。マユちゃんは何か持ってない?
女2 これしかない
男2 おおー。これ良さげ
女2 うん良いね。でもこれでどうするの
男2 投げ合うんだよ
男1 え?
女2 痛そうだよ
男2 水風船ならそんなに痛くないだろ
男1 ちょっと待て!
男2 なんだよ。原稿かけたのか
男1 そんなの今はどうでもいいわ。お前ら人の家で水風船投げあう気か
男2 いいじゃん。今日暑いし、ちょうどいいだろ。
男1 良くないでしょ。水浸しになるだろ。
男2 でもお前水遊び好きだろ?
男1 そりゃあまあ嫌いでは無いけど
男2 じゃあやろう
男1 時と場合を考えろよ!
男2 固いこと言うなよ。よしまずは試し投げしてみるか
男1 ちょっと待てって!
男2 マユちゃん、ブロック任せた
女2 ここは通さん
男1 やめろって!

男2 水風船を持って流し台に行く。男1止めようとするが女2がブロックする

男2 あれ?なあ水でないんだけど
男1 嘘?嘘嘘嘘。

 男1 流し台に行く

男1 まじか…ついに水道まで止められたのかよ。どうしよう。あれ…
確かホノカのやつトイレにいたような…やばい!

男1 下手に向かい、ドアを叩く。

男2 おいおいどうしたんだよ。
男1 トイレだよ。ホノカのやつさっきトイレに行っただろ。で今水道を止められている。つまりトイレが流せない。ということは、その先には地獄が待っている。

男2、女2お互いに顔を見合わせる

男1 おーい。ホノカ、大丈夫か?トイレの水流せなくなってると思ってるんだけどさ。

 しかし、物音ひとつない。

男1 怒ってる?ごめんって。確かに家賃払ってない俺が悪いんだけどさ…

そのあと少し暗くなり、同時に雨音

男1 あれ?なんで急に雨が…

すぐに明転

男1 おおっ。あれさっきのは。
男2 どうしたユウヤ?
男1 いや、さっきなんか部屋で雨が降って。
男2 何言ってんだよ。部屋に雨なんか降るわけないだろ。
女2 変なの
男1 俺もよく分かんねえよ。そうだホノカのこと忘れてた。
男2 ん?なあユウヤ。
男1 なんだよ
男2 ホノカって誰?
男1 は?何言ってるんだよ。さっきまでいた子だよ。お前ら三人が俺ん家に勝手に遊びにきてただろ。
男2 いやいや。お前こそ何言ってるんだよ。遊びに来たのは俺とマユちゃんの二人だけだよ。そうだよなマユちゃん。
女2 最初から2人だけ。
男2 ほらあ。お前幻覚でも見てんのかよ。
男1 そんなわけないだろ。いたじゃないか。さっきまでここに。ほらこのバッグ。これホノカのバッグだろ。
男2 いやいやそれマユちゃんのだよ。
女2 私の。
男1 嘘だ。そんなわけないって。お前らすげえ仲良さそうに俺の原稿の邪魔してたじゃないか。それなのに、何なんだよいきなりそんなやついないってあんなに楽しそうに一緒に悪巧みしてただろ。
男2 落ち着けって。とりあえず今言えるのは、おまえん家に遊びに来たのは俺とマユちゃんの二人だけっていうことだ。
男1 そんな…
男2 よくわかんないけどさ。気分変えて原稿書いたら?今だったら書けるんじゃないか?
男1 納得いかないんだけど。
女2 ここにはホノカっていう人はいない
男1 分かったよ。だからそんなに睨むなよ

 男1 渋々机に戻る。原稿を書こうとするが、何も思いつかない。

男1 やっぱり何も思いつかないんですけど。
女2 やっぱり無能
男2 お前…真剣に書く気ないだろ
男1 あるよ!でもさっきのことがあったから余計に思いつかないんだよ。
男2 わかったよ。確かお前腹減ってるんだろ?俺が何か買って来てやるから。
男1 う…うん。
男2 欲しいものは?
男1 なんでもいいよ。食べられるものだったら。
男2 了解。じゃあお金貨してくれマユちゃん。
男1 マユちゃんから借りるのか?
男2 仕方ないだろう。俺もお前もほぼ金なしなんだからさ。
男1 いや、にしても女の子からお金貨してって頼むのはどうなんだ
女2 土下座
男1・男2 えっ?
女2 土下座してくれたらお金貸す
男1 まじか。おいどうする…
男2 マユさんお願いします。
男1 お前にはプライドはないのか
男2 俺にプライドなんかないのだ!
男1 堂々と言うな!
女2 ユウヤも
男1 え?
女2 ユウヤも土下座
男1 なんで?
女2 マコトだけだと割りに合わない
男1 嘘やん
女2 本当
男2 おい早くしろよ。お前が土下座しないと、お金は手に入らないんだぞ。今無一文の俺たちにはこれしかないんだよ。
男1 悲しいこと言うなよ。
女2 早く土下座したまえ
男2 早く!
男1 分かったよ。するよ

 男1 土下座

女2 はい
男2 マユさんありがとうございます!よかったなユウヤ。
男1 あ、ああ。
男2 よしこの100円でなんか買ってくるからな!
男1 待て待て!
男2 どうした?
男1 100円
男2 100円
男1 少なくね?
男2 少ないよ
男1 納得いかないんだけど
男2 俺たちの土下座は100円の価値だってことだ。じゃあ行ってくる。楽しみにしてな。

 男2 上手へはける

男1 おい。お前はそれでいいのか。行っちゃったよ。なあマユちゃんさすがに酷すぎないか。100円だと蒲焼さん太郎10枚しか買えないんだけど
女2 妥当な値段だと思う
男1 うっ、マユちゃんって相変わらず毒舌だよね。
女2 正直に思ったことを言っただけ。
男1 まあ分かってはいたんだけどさ。じゃああいつが戻ってくるまで、原稿に集中しますかね。

男1 机に向かう

女2 なんでユウヤはそんなに小説を書きたがるの?
男1 え?
女2 バイト辞めてまで小説書きたがる気持ちがわからないから
男1 そりゃあ確かに今の暮らしは厳しいんだけどさ、バイト続けて、いつか就
職して普通に結婚して普通に人生を終えるのはつまらないじゃないか。
こうやって自分のしたいことをして生きていくのも悪くないかなって思
ったんだ。だからこうやって生活が厳しくても、俺は別に後悔してない。
女2 そんなの現実逃避だよ。目の前の世界に嫌気がさしたから逃げてるだけなんじゃないの?
男1 別に逃げても俺はそれを悪いとは思ってないよ
女2 馬鹿らしい
男1 今日のマユちゃんいつにも増して毒舌だね。
女2 思ったこと言っただけよ
男1 そう。でもまあアイディアはまだ思いつかないんだけどね
女2 かっこ悪い。
男1 うるさいよ
女2 でもやっぱりあなたは現実を見るべき。
男1 え?

一瞬の間、間髪入れず、舞台暗転同時に雨音。
そして明転。舞台上は部屋は廃墟と化している。

男1 これは
女2 これが現実です
男1 ここは、どこだ。俺の部屋は。
女2 ここはあなたの部屋です。
男1 何言ってんだよ。俺の部屋じゃない。明らかに廃墟じゃないか
女2 ここはあなたの部屋だった場所です。
男1 は?
女2 よく思い出してください。自分のことを。

女2 上手へはける

男1 何言ってるんだよ。思い出すって。

男1 おもむろに地面に落ちていた原稿を拾い読む。

男1 「ある日、それは突然起きた。大地震である。政府が予想していた時期よりもはるかに早くやってきた。すぐに地面は割れ、建物は崩れ去り、みんな死んだ。誰もいなかった。私は探した。しかしホノカもマコトもマユもいなかった。みんな死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ死んだ。死んでしまった何もかも。もう嫌だ。なぜみんな私だけを置いて、みんな逝ってしまったんだ。なぜ俺だけ助かってしまったんだ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ」
そうだ思い出した。そうだあの時俺は逃げ出したんだ。この世界から。みんなが死んだことを受け入れるのが嫌で、それを抱えたまま、生きて行くのが嫌でずっと目をそらして自分だけの世界を作ってそこでずっと引きこもってたんだ。なんで思い出してしまったんだ。ずっとあの世界に居たかったのに。忘れたままで居たかったのに。なんで!だめだだめだだめだもう一度作り直さないと、俺はずっと遊び続けるんだ、こんな世界から逃げ出して自分だけの現実で。

暗転

明転。部屋は薄暗いまま。男1は原稿を書き続けている。
すると舞台上手から男2、女1、女2がきて男1を取り囲んで、かごめかごめの状態。そして三人が歌い出す。

男2・女1・女2 かごめかごめ 籠の中の鳥は いついつ出やる 夜明けの晩に 鶴と亀が滑った うしろの正面だあれ?

男1 マコト?
女2 後ろには誰も居ませんよ

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