Scars 学園

幼少期より父親から虐待を受けている治。中学生になった今も虐待は続いている。転校生の誠はなぜか治に近づく。虐待を誠に告白する治。憎い、不穏な様子でそのこと言葉を聞きたかったと語る誠。誠の正体は一体。
湊本 佳孝 30 0 0 03/09
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第一稿

人物
坂井治(7)(14)中学生
上条誠(14)坂井の同級生
担任教師 坂井の担任

○アパート 外観 (夕)

手摺と階段が錆びついている古いアパート。

蝉が ...続きを読む
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人物
坂井治(7)(14)中学生
上条誠(14)坂井の同級生
担任教師 坂井の担任

○アパート 外観 (夕)

手摺と階段が錆びついている古いアパート。

蝉が鳴いている。

西日が射しアパート全体が赤みを帯びている。

○同アパート 坂井家 中 (夕)

2Kのアパート。

乱雑な部屋。

壁の時計は4時45分を指す。

玄関から坂井治(7)が入ってくる。

治、リモコンを取りテレビをつける。

DVDデッキにDVDを入れる。

『ウルトラマン』が流れ出す。

食い入るようにテレビを見つめる治。

× × ×

『ウルトラマン』が流れるテレビ。

笑顔の治。

外から町内放送で『夕焼け小焼け』が聞こえる。

急に震えだす治。時計を見る。

5時を指す時計。玄関の開く音。

慌てて部屋の隅っこに行き、震えながら立ち尽くす治。

複数の小さな火傷の跡がある治の右手。

○河川敷 (朝)

T・「7年後」 

イヤホンをして携帯を見ながら歩く治(14)。

川には大きな橋が架かっている。

○同河川敷 (朝)

橋の下。

草が生えている地面。

少しずつ風が吹き始め、草が揺れる。

一本の黒い羽根が舞い降りてくる。

2本の足が地面に着地する。

大きく羽ばたく黒い羽根。

制服の黒いズボン、夏の開襟シャツ、ニヤリとする口元。上条誠(14)が現れる。

○西南中等学校 校門 (朝)

門柱に『西南中等学校』のプレート。

歩いて登校する生徒たち。

○同中学校 廊下 (朝)

2年C組のプレート。

○同中学校 2年C組の教室 中 (朝)

生徒たちが騒いでいる中、一人でイヤホンをして携帯を見ている治。

机には「キモイ」や「死ね」等の落書き。

ドアが開き男性の担任教師と誠が入ってくる。

担任教師「えー今日はね予告なしですが転校生が入ります、じゃあ自己紹介して」

誠「上条誠です。よろしくお願いします」

 × × ×

西日で赤みを帯びる教室。治だけ座っている。4時55分を指す教室の時計。

イヤホンをして携帯を見ている治。

誠の声「わっ」

突然背中を押される治。

携帯をお手玉のようにして机に落とす。

携帯の画面が上になって机の上に落ちる。

携帯には『ウルトラマン』の動画。

誠「よっ」

治「なに?突然」

ニコニコして立つ誠。

治「今日転校してきた子、だよねぇ」

誠は笑いながら、

誠「俺上条誠、よろしくね」

戸惑う治。

治「僕と話してると君までハブられるよ」

誠「そうなの?でも僕は君と話したい」

治「え?」

誠「だからぁ、僕は君と話したいの、ねっ、
シェイクハーンズ」

右手を差し出す誠。

治「う、うん、じゃあ分かった、坂井治」

渋々手を出す治。手を握る二人。

治の右手の火傷の跡。

火傷の跡を見る誠。

誠「どうしたのその傷、火傷?」

慌てて手を引く治。

治「ううん、なんでもない」

誠、机に置かれた携帯を見て、

誠「何観てたの?携帯で」

携帯を慌ててしまう治。

治「これもなんでもない」

外から町内放送で『夕焼け小焼け』が流れ出す。

誠「面白いね君、なんでもない星人か!」

震えている治。治に気づく誠。

誠「どうしたの?大丈夫?」

治「なんでもない、じゃあ先帰るね」

鞄を持って教室から出て行く治。

治の後ろ姿を微笑みで見つめる誠。

○田舎の地方都市 俯瞰 (夕) 

背の低いビルばかりの町。町の背景には山が連なる。夕方から夜、朝になる。

○西南中学校 屋上 朝

チャイムが鳴る。

柵に腕をのせ携帯を見ている治。

誠の声「こらー授業始まってるぞー」

ビクッとなり携帯を落とす治。

誠、笑う。

治「やめてよ」

治、携帯を拾いまた携帯を見る。

柵に背を向けもたれかかる誠。

火傷の跡にかさぶたがいくつもできている治の右手。

誠「俺も授業さぼっちゃった」

付き合い笑いの治。

誠「好きなんだ、ウルトラマン」

治「・・・」

誠「ねぇヒーローの条件って知ってる?」

治「え?・・・強くなきゃいけない?」

誠「ブッブー、弱くなきゃいけない」

治「え?なんで?」

誠「最初やられるじゃない最初から必殺技だせばいいのに、弱くなきゃ強くなれない」

治「・・・」

誠「だ・か・ら、弱い人こそヒーローになる資格がある」

治、笑顔になり、

治「ほんと!」

誠、笑いながら、

誠「あーちょー単純、でもほんとだよ」

笑顔の二人。その後沈黙。

治の火傷の跡を見つめる誠。

誠の目線に気づく治。

治「ああこれね。いつもさパチンコで負けて5時に帰ってきて僕を殴るんだボカーンって、お父さん。何回も、だから今はできるだけ時間をつぶして帰ってる、寝てれば殴られないから」

治を見つめる誠。

誠「お母さんは?助けてくれないの?」

治「もうずっと前に死んじゃった」

沈黙。

治「最後は吸ってたタバコでジューって親ってそんなもんだ、耐えなきゃって思ってた。
・・・いつもウルトラマン観てたんだ今みたいに、だから、その間も目に入るんだんだ戦ってるウルトラマンが、絶対に負けない。だから僕も負けない、僕もヒーローみたいになるんだって」

誠「・・・知ってたよ」

治「え?」

誠「僕を呼んだのは君だから、その気持ちが僕を呼んだ」

治「なんのこと?」

誠「憎い?お父さんのこと」

治「・・・あんなヤツ、いなくなればいい」

誠「・・・これも知ってる?死ななきゃ生き返らない魂もある」

誠、立ち去ろうとする。

誠「聞きたかったよ、その一言・・・お喋りしたいな、君のお父さんと」

治「え?」

立ち去る誠の背中。

○田舎の地方都市 俯瞰 (朝) 

朝から夕方、夜になる。そして朝。

○西南中学校 2年C組 中 (朝)

教壇に立ち出席を取る担任教師。

担任「上条・・・上条、いないかぁ、まったく転校そうそう、次佐藤」

空席の誠の席を見る治。

○同中学校 屋上 (夕)

柵に腕を置き携帯を見ている治。

柵と治の間から顔を出す誠。

誠「よっ」

無言の治。

誠「あれ?驚かない。俺休みだったし突然出てきたから驚かない?」

治「何したのお父さんに、お喋りするって」

誠「何もしてないよ、少しお喋りしただけ」

治「何をしたの、昨日帰ってこなかったよ」

『夕焼け小焼け』が聞こえてくる。5時を指す校庭の時計。

柵から離れ誠に背を向ける治。

誠「あんな親でも大切ってこと?」

治「あたりまえだよ」

誠「でも、体はそうは言ってない。むしろホッとしてる・・・止まってるよ、震え」

ハッとする治。

誠「お喋りしただけだけどさ、簡単に壊れるんだ人の心って」

治「何を言ってるの?」

誠の背中から黒い羽根が羽ばたく。

驚く治。

誠、羽ばたきながら宙に浮き治に手を差し出す。

誠「さぁ行こう君はヒーローになるんだろ」

火傷がある右手を差し出す治。

誠、治の手を握る。

宙に浮く二人。

山に沈む夕日。浮き出されるふたりのシルエット。

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