マーブルポップコーンep5 ~過去からの想い~
※マーブル・ポップコーン 他のエピソードが
ありますが、基本的に一話完結なのでこの
エピソードから読んでも特に問題ありませ
ん。
登場人物
はるか(26)女。主人公の位置。女優を目指している。
ニック(36)男。夢は小説家。フリーター。
シュミレット(35)男。普通のサラリーマン。
ウェス(33)男。ダンスレッスンの講師の仕事している。
シシ(26)女。はるかの親友。密かに歌手を目指している。
ウェス母(60代)
ウェス父(60代)外国人。どこの国かは不明。(インド系? 黒人?)
マスター(65)バーのマスター。
他数人……
~マーブル・ポップコーン ep5 過去からの想い~
〇シャアハウス ウェスの部屋 朝
ウェス、目を覚ましてベッドから起き
る。起きて最初にツタヤの袋を発見す
る。チラッとスマホを見て日付を確認
する。今日は7日(何月でもいい)。
何気なくツタヤの袋を手に取り、袋か
らレシートを取り出す。
レシートには返却予定日が書かれてい
て、予定日が5日と書かれている。ス
マホで今日の日付を確認(今日は7日)。
二日間の延滞料金が発生している。
ウェス「ああぁ~!!!」
ウェス、再びベッドから跳ね起きる。
さっきのは夢だった。
ウェス「はぁ……なんだよ……夢かよ」
ウェス、部屋にツタヤの袋があるのを
見る。次にスマホで日付を見る。今日
は夢と一緒で7日。
恐る恐る、返却予定日が書かれたレシー
トを見ると、予定日が2日になってい
る。五日間の延滞。
ウェス「うわあぁ~! 夢よりひでぇ!」
〇タイトル「マーブル・ポップコーン EP5」
ウェスが借りたDVDのパッケージに「
マーブル・ポップコーン」とタイトル
が書かれている。
〇シェアハウス リビング 朝
ウェス以外のみんな、朝食を食べてい
たり、くつろいでいたりしてる。
ウェス、起きてリビングにくる。
ウェス「シュミレット、ちょっと、スマホ見
せてくんない?」
シュミレット「あん? 何でだよ?」
ニック「浮気調査じゃねぇか?」
シュミレット「うるせい、ウェスとデキてる
のはお前だろ。変な所いじんなよ?(スマ
ホをウェスに渡す)」
ウェス、シュミレットのスマホの画面
をじっと見ている。
ウェス「……」
シュミレット「……どうした?」
ウェス「うわぁ~!」
シュミレット「ああぁ~!」(つられて叫ぶ)
シュミレット、コーヒーをこぼしてニ
ックのズボンにかかる。
ニック「ぅああああぁ~!」(熱くて叫ぶ)
はるか「きゃあああ~! 何!? ゴキブリ!」
シシ「いやぁ~!ゴキブリはダメぇ!!!」
シシ、自分の部屋に逃げる。
一同、しばらく叫んでいる。
〇ツタヤ 朝
ウェス、ツタヤのカウンターで返却し
ている。
次にツタヤの外に出て、溜め息。
〇スーパー 朝
ウェス、帰りにスーパーに寄っている。
カゴを持って店内をうろついていると、
サラダ油の大きいサイズ(1.5?)
が激安で売っているのを発見する。
ウェス「お!」
ウェス、サラダ油を手に取る。
〇シェアハウス リビング 朝
リビングにはシュミレットとニックが
くつろいでいる。
ウェス、帰ってくる。キッチンに向か
いながら二人に話しかける。
ウェス「サラダ油特売だったから買って来た
ぞ~」
シュミレットとニック。顔を合わせて
驚く。
〇同 キッチン 朝
ウェス、台所にサラダ油(1.5?)
を置く。すると、すぐ横にもサラダ油
の(1.5?)が二本並んでいる。そ
れを見て驚く。
ウェス「オーマイーガー……」
キッチンに入る前の所でニックとシュ
ミレットが話している。
シュミレット「初めてみたよ、サラダ油を一
か月で三本も買ってくるやつ」
ニック「こりゃ、四本目もあるぞ」
ウェス、ニックとシュミレットの所に
行く。
ウェス「最近、ボケ始めてる気がするんだ…
…」
ニック「そんな事ないだろう! まだ若いし
……って言いたい所だけど、証拠にデカい
サラダ油が隣に三本もあるもんな」
シュミレット「毎日天ぷらにしないとダメだ
な」
ニック「毎日天ぷらなんて食べたくないぞ。
胃がもたれそうだ」
はるか、帰ってくる。
はるかの声(玄関から)「ただいま~!」
〇同 リビング 朝
シュミレット、ニック、ウェス、リビ
ングに来る。
はるか、買い物袋を持っている。
はるか「見て見て! サラダ油が特売だった
の!」
はるか以外驚きの表情。
× × ×
シシ「なんでサラダ油が四本もあるのよ!?
サラダ油だらけじゃない!」
ウェス、はるか、反省してる様子でソ
ファに座っている。
はるか「ごめん……ウェスが二本も買って来
てる事忘れてて……」
ウェス「すまん……まさか三本も買ってきて
しまうなんて……」
シュミレット、ニック、その辺にくつ
ろいでいる。
シュミレット「ウェスは本当にボケてるよな。
先週もジャンプ二冊買ってくるし」
ニック「月曜に買って、水曜にも買って来た
もんな。同じ号」
シシ「とりあえず、もうサラダ油はしばらく
買わないでね」
ウェス「分かってるよ。けど俺の言い分も聞
いてくれ。最近ちょっと、悩んでいる事が
あってよぅ……」
ニック「なんだよ? ユウチューバーにでも
なろうってか?」
ウェス「違う。みんなには隠してたけど、俺、
モデルにスカウトされたんだ」
一同「えぇー!」
シシ「ウェスがモデル?」
ニック「何があったんだよ?」
ウェス「俺のSNSにモデルになってくれって
連絡があって、今日受け入れたんだ。俺の
写真を何かの雑誌に載せるんだって」
シュミレット「嘘だろ!? 俺でもされた事
ないのにウェスが……」
はるか「すごいじゃん!」
ニック「けどよぅ、何でウェスなんだ?」
ウェス「世間では俺の方が魅力的なのさ」
シュミレット「国内のモデルか? どこかの
部族のモデルじゃなくて?」
ウェス「それ、どういう意味だ?」
ピンポーン、とチャイムが鳴る。
はるか「誰かアマゾンでなんか頼んだ?」
ニック「俺が出るよ」
ニック、立ち上がり玄関へ。
〇同・玄関
ニック「は~い!」
ニック、ドアを開ける。
ドア開けると、見知らぬ50代くらい
の女の人と外国人(黒人?インド系?
ヒスパニック?)の男が居る。
見知らぬ女「は~い、西貴いる?」
○同・リビング
見知らぬ女「お邪魔しま~す」
リビングに見知らぬ女が来る。
ウェス「母さん!?」
シュミレット「え? 母さん?」
母ウェス「久しぶり~、元気にしてた?」
ウェス「どうしたんだよ? 急に?」
母ウェス「ちょっとアンタに会いたくなって
ね。(みんなに)どうも、西貴の母親です」
シシ「どうも……」
みんな、それぞれ挨拶する。
母ウェス「ほら、アナタも来なさいよ」
奥から外国人が登場。
ウェス「父さん!」
シシ「え!?」
シュミレット「と、父さん!?」
みんな、ウェスの父に驚く(どう見て
も外国人だから)。
父ウェス「へぃ!息子(片言)!」
抱き合うウェスと父。
ウェス「(離れて)なんで? どうしたんだよ?」
母ウェス「それより、はい、おみやげ。みな
さんうちの西貴がお世話になっております」
母ウェス、ギフトセットみたいな四角
い箱をはるかに渡す。
はるか「ありがとうございます!」
母ウェス「いえいえ、こちらこそ~」
ウェス「ホントに何しに来たんだよ?」
母ウェス「まぁまぁ、とにかく座って話そう
じゃないか」
ウェス「……」
× × ×
ウェス「父さんの国で大金を手に入れた?!」
はるか「すごい!」
シュミレット「どういう事!」
ウェス「って、プライベートないなこの家」
みんな、普通に座って親子の話を聞い
ている。
母ウェス「いいじゃない。みんな家族みたい
で」
父ウェス「はっはっは、オオィ、イネ、クッ
タァ!」(翻訳する。適当なギリシャ語)
T (みんな仲が良いね)
ニック「はっはっは! 何て言ってるの?(
ウェスに耳打ち)」
ウェス「分からん。子供の頃から何言ってる
か分からん」
ニック「え? 子供の頃から分からない?
お母さんしか分からないのかよ?」
ウェス「母さんもたぶん分かってない。誰一
人父さんの言葉を理解できてないんだよ。
昔から」
ニック「……父さんは日本語は?」
ウェス「全然話せない」
ニック「すげー家族だ。父親はチューバッカ
かよ」
母ウェス「父さんの国でなんか知らないけど、
遺産か何かでお金が入って来たみたいなの。
けど、そのお金他の国では換金出来ないみ
たいだから、私達があっちに行って、あっ
ちで暮らそうと思ってるの」
ウェス「遺産か何かって……」
母ウェス「分かんないのよ。父さんも何て言
ってるか分からないし」
シュミレット「(シシにヒソヒソ話)換金で
きない金って何?」
シシ「超マイナー通貨じゃないの?」
シュミレット「いかがわしいクラブでしか使
えないバニーちゃんマネーとか?」
シシ「そうよ。あんたが20万円くらい持っ
てるあれよ」
シュミレット「ATMと間違ったんだ! まさ
か金にウサギのプリントされてるなんて思
いもしなかった! ん?何で知ってるの?」
シシ「冗談で言ったのよ。本気で軽蔑したわ」
ウェス「いきなり来て、何言ってんだよ」
母ウェス「まぁ、すぐには帰らないから。ゆ
っくり決めてよ。あなたの判断に任せるわ。
けど、まずあなた今何してるの?」
ウェス「ダンスの講師だよ。それと、モデル
の仕事も入る」
母ウェス「いくら貰ってるの?」
ウェス「ダンスの方は厳しいよ。モデルの方
はまだ分からない」
母ウェス「ふ~ん……私達と帰れば、向こう
でリッチな暮らしが出来るわよ? ダンス
の講師だって教室開いて出来るしね」
ウェス「ま、まじで?」
母ウェス「物凄い入って来たんだから(お金)。
そんな事チョロイわよ」
父ウェス「エフィエ、ガテ、ガビ、ナ、ピィ
テ(何か飲み物はありますか?)」
父ウェス、ジェスチャーもしている。
ニック「何て?」
母ウェス「きっと、トイレはどこですか?
って言ってるのよ」
ウェス「え?、けどジェスチャーが違うくね?」
母ウェス「何年一緒にいると思ってんの?
お父さんが何を伝えようとしてるかぐらい
分かるわよ」
ウェス「何年も居て言葉はお互い分からない
の事の方が不思議だけどな」
ニック「こっちです。お父さん」
父ウェス「サス、フェリストT(ありがとう)」
父ウェス、ニックに連れられて行く。
母ウェス「そうだ。久しぶりにこっちに来た
から、こっちの動物園に行きたくなったわ。
ねぇ、西貴はどうせ暇でしょ? 一緒に行
こうよ」
ウェス「行かねぇよ」
母ウェス「久しぶりに家族団らんもいいじゃ
ない?」
ウェス「もう前の家族団らんがいつだったか
思い出せないよ」
〇同・トイレ前
ニック、父ウェスをトイレの前まで案
内している。
ニック「ここです」
父ウェス「サスフェリストT(ありがとう)」
父ウェス、トイレのドアを開ける。
〇同・トイレの中
父ウェス、トイレの水を見つめている。
父ウェス「オゥパ……」
〇同・リビング
母ウェス「アナタ達もどう?(ルームメイト
達に)」
ニック、戻って来る。
はるか「え? いいんですか?」
母ウェス「いいわよ。どうせこっちの金はも
う向こうでは使わなくなるし。なんならお
土産も食事も私が全部出すわよ」
はるか「ねぇ、シシも行こうよ」
シシ「今日は何も予定なかったしね。お言葉
に甘えようかしら?」
母ウェス「たまには動物園もいいもんよ?
大人になってからはまた別の見方ができる
しね。水族館もミュージアムも」
ウェス「俺は行かねぇぞ」
はるか「えぇ? 行こうよ動物園!」
ウェス「今度みんなで行こう。今日は行かな
い」
ニック「俺もやめとくよ。今日中に観て返さ
ないといけないDVDがあるし」
シュミレット「……残念ですが僕もやめとき
ます。ちょっと用事を思い出して」
母ウェス「そうなの? 残念。あら? お父
さんまだかしら?」
母ウェス、父ウェスが向かった方向へ
行く。
はるか「良いお母さんね。お土産だってくれ
たし」
ウェス「そうでもねぇよ。昔はあんなじゃな
かった……」
はるか「……?」
母ウェスの声「(トイレから)何やってんの!?
それは飲み水じゃないわよ!」
ウェス「何だ?」
母ウェス、父ウェスを連れてリビング
に登場。
母ウェス「もう、お父さんったら、トイレの
水を飲もうとするんだから。野蛮な人ね」
父ウェス「オーヒ、オーヒ!T(違う、違うん
だ!)」
母ウェス「もういいから。じゃあ、ちょっと
外に出てるね。用意できた連絡お願いね~。
西貴も早く用意しなよ!バァイ」
ウェス「俺、行かないって!」
母ウェス、父ウェスと共に家を出る。
ウェス「聞いてねぇし。すまんなみんな。騒
がしくしちまって」
シシ「そんな事ないわよ」
ニック「にしても、思ってた感じと全然違っ
たな。ウェスが話してた感じによるとスゲー
酷い感じだったのにな」
シシ「そうなの?」
ウェス「俺もびっくりしてるよ。あの人の変
わりように」
はるかの声がキッチンから聞こえてく
る。
はるかの声「ああ!」
ウェス「何だ?」
〇同・キッチン
一同、キッチンへ。
はるかが母ウェスから貰ったお土産を
開けている。
一同、お土産を見ると、そこにはサラ
ダ油とかオリーブオイルの詰め合わせ。
ウェス「オーマイガー……」
〇動物園 前 昼
はるか、スキップしながら動物園のゲー
トに向かう。
はるか「わーい! 動物園だ!」
シシ「はるか! あんまり先さき行かない!」
後ろから歩いて付いて来るシシ、母ウ
ェス、父ウェス。ふて腐れているよう
な雰囲気のウェス。
母ウェス「どうしたの? 子供みたいに不機
嫌になって?」
ウェス「仕方なく来たんだよ。はるかとシシ
のために」
母ウェス「あら、優しいのね」
ウェス「育ちがいいもんでね」
母ウェス「……さぁ、今日はいっぱい撮るわ
よ!」
母ウェス、高そうなカメラを持ってい
る。
ウェス「高そうなカメラだな」
母ウェス「まぁまぁ高いわよ。最低限、これ
ぐらいのを買わないとカメラマンとしても
ダメだわ」
ウェス「? いつカメラマンになったんだ?」
母ウェス「さぁ、5年前くらいかしら。けど
フリーのカメラマンよ。あ、カメラウーマ
ンよ」
ウェス「へぇ、知らなかったな」
母ウェス「はいはい、今日はアンタの写真を
いっぱい取るわよ。毎回キメてね」
ウェス「いいよ、そんなの」
母ウェス「だって、それじゃあ仕事にならな
いじゃない。依頼した通りにやってもらわ
なくちゃ。例え、親子の仲でもね」
ウェス「待って、依頼? それじゃあ、俺の
SNSにモデルの依頼してきたのって……」
母ウェス「私よ」
ウェス「マジかよ……」
ウェス、うな垂れる。
シシ「あぁ、そういう事だったのね」
母ウェス「大丈夫。出版社が良い値つけて買
ってくれたらアンタにも報酬は手に入るわ
よ」
ウェス「ちょっと周りに言ってしまった自分
が恥ずかしい……」
母ウェス「さぁ、行くわよ!」
〇街 ツタヤ前 昼
ニック、ツタヤ(タツヤ)から出てく
る。片手にツタヤの袋。
ニック「また借りちまったぜ。返しては借り
る。ツタヤの悪魔の永久ループだな」
ニック、歩いていると遠くにウェスを
発見する。
ウェス、タキシードを着て辺りをキョ
ロキョロしながら歩いている明らかに
不審者。
ニック「あれ? 何してんだあいつ?」
ニック、怪しく歩いているシュミレッ
トに声をかける。
ニック「何してんだお前?」
シュミレット「うわぁ!」
ニック「日頃から頭がおかしい所あったけど、
今日はカテゴリーが違うな。変なモノ食べ
たか?」
シュミレット「これは、その……見られたか
らには仕方ねぇな。これは、俺がモデルに
なるための一歩なんだ」
ニック「いや、意味が分からん。もっとかみ
砕いて言ってくれ」
シュミレット「だから! モデルにスカウト
されるようにアピールしてんだよ!」
ニック「その格好で?」
シュミレット「世間はこれでイチコロさ」
ニック「……どうやらお前が知ってる世間と
俺の知ってる世間とは相違があるようだな」
シュミレット「邪魔すんなよ。お前と一緒に
いるとイモ臭くなるだろ」
ニック「俺もお前と一緒にいるとこの辺を歩
けなくなるから大賛成だ。じゃあな!」
シュミレット「ああ、帰れ」
ニック、家に帰って行く。しばらく歩
いて止まる。
ニック「そうだ。面白いからSNSに上げるか
……」
ニック、笑いながら振り返りシュミレ
ットをスマホで撮ろうとする。
シュミレット、業界人っぽい人と会話
していて、名刺を受け取っている。
ニック、驚きの顔。
ニック「マジかよ……」
〇動物園 昼
はるか、シシ、色んな動物を見て楽し
んでいる。
ウェス、不満げな表情でいる。母と父
も後ろから付いて来ている。
はるか「あ、トラだよ!」
シシ「うわ、けっこうデカ」
はるか、シシ、トラの檻の前で止まっ
て見る。
はるか「こんなのに襲われたら一発だね」
シシ「実物で見ると迫力が違うわね」
はるか「けど、可愛い! 毛づくろい始めた
よ!」
シシ「可愛い!」
ウェス「へぇ、トラも毛づくろいするのか…
…」
ウェスが近付くとトラが威嚇して吠え
る。ライオンや虎は映像にしなくて吠
える声だけでいい。そこにいるかのよ
うに役者が演じる。
トラ「ぐぉお!」
ウェス「うわ!」
シシ「いきなり機嫌が悪くなった」
母「西貴のせいね。昔っからあんたネコに嫌
われるてたからね。血だらけでネコ拾って
きて、「母さん、こいつ俺になついてる」
って言った時は白目向いて驚いたわ」
ウェス「いつの話だよ……。そうだよ、俺は
ネコ科にだけは嫌われるんだ」
シシ「他に何に好かれるのよ?」
ウェス「人科? ヒューマン?」
シシ「人科に好かれている所見たことないけ
どね」
はるか「ゴリラとかチンパンジーに好かれる
んじゃない? 同じ霊長類だし」
〇同・サル山
サルがすごく騒いでいる。サルの怒号
の嵐。
シシ「見た事ないくらい怒り狂ってるわね」
はるか「これ、ウェスのせいなの?」
母ウェス「たぶんね。前世は動物ハンターだ
ったんじゃない」
ウェス「それだったら、かなり凄腕だったん
だな。アフリカのサバンナで猛威を振るっ
てたのかもな」
母ウェス「さぁ、まずはここで一枚撮るね。
キメるのよ!」
ウェス「サル山の前でキメるモデルって何だ
よ? 被写体が斬新すぎるだろ」
母ウェス「はいはい、文句言わない。まだい
っぱい撮るんだから」
ウェス「本当に売れるのかよ? 誰が買うん
だ? こんな写真」
母ウェス「アンタはそこまで気にしない。さ
さ、はい、ポーズ!」
母、ウェスの写真を撮る。カシャっと
フラッシュ。
フラッシュの光が消えた後に次のシー
ンに移る(早変わり)。
〇どこかの撮影スタジオ 昼
前のシーンでフラッシュした後にすぐ
にシュミレットに変わる。
シュミレット、モデル撮影している。
カメラマン「はい、いいね!とてもいいよ!」
カメラマン、言いながら撮る。
カメラマン「次、そこの箱持って笑顔でお願
いね!」
シュミレット、テーブルに置いてある
何もない白い箱(長方形)を手に取る。
シュミレット「これ、何なんですか?」
カメラマン「ああ、それは後でこっちで加工
するから気にしないで」
シュミレット「ふ~ん……」
カメラマン「はい、撮るよ~!」
シュミレット、箱を持って笑顔で撮影。
〇動物園 夕方
母、ウェスをまだ撮っている。
母ウェス「はい、ポーズ!」
母ウェス、ウェスをカメラで撮る。
ウェス、真顔になってずっとカメラを
見つめている。
母ウェス「ちょっと、全部表情がないわよ!
はい、笑って!」
ウェス「わ、分かったよ」
ウェス、ぎこちなさすぎる笑顔になる。
母ウェス「何? トイレ我慢してるの?」
ウェス「違げぇよ」
母ウェス「まぁ、いいわ。次、そっちで撮る
わ」
ウェス、しぶしぶ移動する。
母ウェス「あ、ちょっと待って! ねぇ、ア
ナタ達(はるか、シシ)も撮っていい?」
はるか「え、はい、いいですよ」
母ウェス「少ないかもしれないけど、報酬は
出すわ。そこに並んで」
母ウェス、はるか達を誘導している。
ウェスは待ちぼうけ。
ウェス「はぁ……」
ウェスの前に知らない親子が通り過ぎ
ていく。母と父と子供が手を繋いで楽
しそうに歩いていく。それを見るウェ
ス。
× × ×
〇(回想)街中 道路 昼
子供のウェス。同じく手を繋いで楽し
そうな親子を見ている。
× × ×
〇(戻って来る)同
ウェス「……」
ウェス、不機嫌な表情になっていく。
母ウェス「ありがとう。良い写真撮れたわ。
じゃあ西貴、そっちに立って」
ウェス「……もうやめようぜ」
母ウェス「何言ってんのよ? せめてもう少
し撮らせてよ」
ウェス「もう、本当にいいから……」
母ウェス「何がよ? あと少しだけでいいん
だから。はい、そこに立って笑顔で……」
ウェス「いいって言ってんだろ!」
ウェス、声を荒げる。
はるかとシシ、驚く。
父も息子の機嫌に表情を硬くする。
母ウェス「どうしちゃったのよ? 子供みた
いに不機嫌になって」
ウェス「アンタには関係ねぇ。俺、先帰るか
ら」
ウェス、その場を去る。
母ウェス「ちょっと!」
母ウェス、追いかける。
シシ「ウェスが本気で怒ってるところ初めて
見たわ」
はるか「どうしちゃったんだろ?」
シシ「う~ん、やっぱ色々思う所が出て来た
んじゃない? 分かんないけど」
はるか「……」
父ウェスも神妙な面持ち。
〇同 少し離れた所
母ウェス、ウェスを止める。
母ウェス「ちょっと! 何があったのよ急に?」
ウェス「何があった? 急に? それはこっ
ちのセリフだぜ。子供の頃は全然会わない
かったクセに、なんで今になってひょいひ
ょい現れて一緒に住もうなんて言うんだ?
母さんと一緒に住んで裏切られた事しかね
ぇんだよこっちは!」
母ウェス「……それは私も反省してる。けど
ね、私も頑張ったのよ? ギリギリまで。
もちろん、私も西貴と離れたくなかったわ
よ。けど、一緒にいるとアナタもダメにな
るって思ったから……」
ウェス「じゃあ、説明しろよ! いきなり施
設に預けられたらこっちからしたら捨てら
れたって思うだろ!」
母ウェス「アナタがまだ小さかったから……」
ウェス「いいわけだ! すぐ言い訳しやがっ
て!」
母ウェス「……そうね、言い訳だわ。……こ
れだけは分かって欲しい。私は、西貴とも
う一回やり直したいの。また一から、絆を
作っていきたいの」
ウェス「……もう、遅せぇよ」
ウェス、去る。
母ウェス、取り残される。首にかかっ
ているペンダントを開けている。
その中にはウェスの子供の頃の写真が
ある。
母ウェス、小さくため息を吐く。
〇シェアハウス リビング 夕方
ニック、リビングでテレビを観てくつ
ろいでる。
シュミレットが帰ってくる。
シュミレット「たっだいマンボ!」
ニック「おかえリンゴ。どうだった? モデ
ルの仕事」
シュミレット「ああ、やっぱ俺向いてるかも。
完璧にこなしてやったぜ」
ニック「へぇ、お前が完璧にこなせるもんな
んてこの世にあったんだな。それで? 何
の撮影だったんだ?」
シュミレット「さぁ、何の撮影だったんだろ?
何かの商品の広告だったけど」
ニック「お前、何も知らずに撮影したのか?」
シュミレット「ああ、別にどんな商品でも構
わないし。報酬も貰ったし、モデルデビュー
も出来たし、上々じゃね?」
ニック「まぁ、そっか……」
シュミレット「うん」
ニックの携帯に電話がかかってくる。
相手ははるか。
ニック「もしもし?」
はるかの声「あ、ニック? そっちにウェス
いる?」
ニック「いや、いねぇけど?」
はるかの声「そっか……ありがとう」
はるか、電話を切る。
〇街 夕方
喧騒の街並み。
はるか、シシ、母ウェスと父ウェスが
道で佇んでいる。
はるか「まだ帰ってないですね」
母ウェス「そっか……」
シシ「どこ行ったんだろ? 電話にも出ない
し」
父ウェス「……」
母ウェス「ありがとね。こんなにいっぱいし
てもらって。私達はもう大丈夫よ」
はるか「でも……」
母ウェス「あの子には悪い事ばっかしちゃう
わ。昔からね。どうしてなんだろ? 近づ
きたいのに、いつも近づくたびに磁石のよ
うに心が離れていくのよ。不思議ね。あの
子が私達を根に持ってるのは確かなのに…
…。溝が深すぎるわ……」
はるか「そんな……」
母ウェス「ごめんね。これだけあの子に伝え
といて。明日もうあっちに行くわ。初めか
らあの子が来ることなんてないって分かっ
てたのに。バカね、私って……最後の想い
出に、言い訳作ってあの子と想い出を作り
たかったの。子供の頃に作れなかった想い
出をね」
母ウェス、切ない表情ながらも微笑を
浮かべる。
母ウェス「それじゃあ、今日は本当にありが
とう。楽しかったわ。じゃあね」
母ウェス、父ウェス、帰る。
はるか、シシ、佇む。
〇カフェ「マーブル・ポップコーン」 夜
ウェス、カフェで一人で飲んでいる。
表情は憂鬱そう。
マスター「何かあったのかい?」
ウェス「……いや、何もねぇよ。いつもの事
さ」
マスター「そうかい……」
はるかとシシ、カフェに入ってくる。
はるか「ここにいた!」
シシ「もう! 電話くらい出なさいよ!」
ウェス「よぅ、あの人達はもう帰ったのか?」
はるか「うん、もう帰えちゃったよ」
ウェス「そうか。これで静かになってよかっ
たよ。悪いな。俺の変な親に振り回らせち
まって」
シシ「そんな事ないよ」
はるか「急にどうしたの? なんかあったの?」
ウェス「あぁ、あった。だいぶ昔からずっと
あった」
はるか「?」
ウェス「あれは七歳の時だ……」
〇(回想)施設の前 昼
子供のウェス、母親に連れられて施設
の建物の前に。
立ち止まる母親。
子供ウェス「どうしたのお母さん? ここ何?」
母ウェス「西貴、かくれんぼしよっか?」
子供ウェス「うん! やりたい!」
母ウェス「じゃあ、鬼はこれ持って」
母ウェス、子供ウェスに手紙を持たせ
る。
子供ウェス「何で?」
母ウェス「いいから。じゃあ、ここの建物に
入ってコレを見せてきて。その間にお母さ
んは隠れてるからね」
子供ウェス「うん、わかった!(笑顔)」
映像はここで一時停止。
ウェスの声(M)「この後、母親は行方をく
らまし、俺はワケも分からぬまま施設で
13年過ごした……」
〇(戻って来る)カフェ 夜
シシ「思ったより、ひどい話ね」
はるか「ちょっと一瞬、コメディな話に聞こ
えるのが恐いわ」
マスター「まるで悲惨な過去を持つお笑い芸
人の生い立ちみたいじゃのう」
はるか「そういえば昔流行ったよね? ホー
ムレス中学生」
シシ「懐かしいね。小池徹平主演で映画もや
ってたよね?」
マスター「あれで2億円稼いだそうじゃよ」
はるか「2億円!? すごい!」
ウェス「ごほんっ、ごほん!」
みんな、脱線した話で盛り上がってし
まい、ウェスに謝るように気を使う。
はるか「あ、ごめんごめん。変な所で盛り上
がっちゃった」
シシ「どうぞどうぞ、続きを聞かせて」
マスター「すまんのぅ」
ウェス「……それから俺が中学になった時に、
母さんが俺を引き取りに来たんだ。急に。
俺はまたワケも分からないまま母さんの元
に行ったら、そこに今の父さんがいた。俺
は生まれてこの方父さんを知らなかった。
母親に聞いてもしらばっくれてばっかだっ
たし。そこで初めて父さんに会ったんだ。
母さん、父さんを俺に見せてその時に最初
に何て言ったと思う?」
はるか「何て言ったの?」
ウェス「これがアナタの本当の父さんよ、だ。
……バレバレな嘘つきやがったんだ! 確
かに父さんの顔は知らなかったけど、そり
ゃないぜ! 明らかに俺の遺伝に外国的な
ものは一滴も入ってないだろう! 何も言
えなかったぜ!」
シシ「うん、何も言えないわ」
ウェス「そして、中学の卒業式にまた父さん
と失踪するし」
はるか「え?! また失踪したの!?」
マスター「家族とも卒業したのか……」
シシ「忘れられない卒業式ね」
ウェス「高校の卒業式にまた帰ってきやがっ
た」
はるか「卒業式ばっかじゃん!」
シシ「じゃあ、大学の卒業式に……」
ウェス「大学は行ってない。けど失踪した(
母親が)」
マスター「おぅ……」
ウェス「とにかく、あの人には昔っから俺は
振り回されてばっかなんだ。これを聞いた
ら分かるだろう? あの人は自分の事しか
考えていないんだ。俺の気も知らないで」
シシ「確かに、ちょっと悲惨ね」
ウェス「俺がどんな想いで子供の頃を過ごし
てたか。どんな想いで授業参観を迎えたと
思う? きっと何も知らずに、全くそんな
事なかったかのように近づいたんだ。流せ
ると思ったのかよ? どんなに良いトイレ
だって詰まっちまうぜ」
マスター「それはつまり、負の量が多いって
事かい?」
ウェス「そうだ。恥ずかしいから聞かないで
くれ」
はるか「明日、帰るって言ってたよ。伝えて
って」
ウェス「はっ、これでもう2度と会わなくて
すむかもな」
はるか「……本当にそれでいいの?」
ウェス「いいに決まってるさ。あの人に振り
回されるのはもう勘弁だ」
はるか「これが、本当に最後でいいの?」
ウェス「……ああ、いい。日本から出ていく
気も最初からねぇしな」
はるか「……よくないよ」
ウェス「え?」
はるか「全然よくないよ。何よその顔? せ
いせいした顔なら私もいいかなって思うけ
ど、全然よさそうじゃないじゃん! 後悔
するかもって不安な顔してるじゃん!」
ウェス「んな事ねぇよ」
はるか「私達に話した感じで、本当の気持ち
をぶつけに行きなよ。寂しかったんでしょ?
辛かったんでしょ? お母さんのせいで」
ウェス「……」
はるか「気持ちを言わずにこのままサヨナラ
したら、たぶん一生ウェスが昔に感じた気
持ちは何処にもいけないよ。言わずに今み
たいに逃げてたら何も伝わらないじゃない」
シシ「ウェス、行きなよ。あんた今、迷って
る顔してるよ?」
ウェス「……」
はるか「恋愛と一緒だよ。お互い、なんとな
く好き同士だと分かってても、最後にはど
っかで告白しなきゃ始まらないでしょ。今
回の件もそう。本当の気持ちを抑えずに、
ちゃんと相手にぶつけて、前に進まないと」
ウェス「もう、俺のガキの頃の想いだ。今さ
ら何を言ってもカッコ悪いだろ」
はるか「大人だとか、子供の頃の想いだとか
関係ないよ。今、過去に想ってきた想いを
真正面から言えばいいの。あとの事は考え
なくていいから。親子なんでしょ!?」
ウェス「……やっぱりダメだ。俺は会わなく
ていい。別に伝えなくても伝わらなくても
いい」
はるか「ウェス」
ウェス「もうほっといてくれ!」
ウェス、カフェから出ていく。
シシ「ウェス!」
一同、静まりかえる。
はるか「……」
○ホテル 夜
ウェスの母親と父親が止まっているホ
テル。明かりを落とした部屋(真っ暗
ではない)。
母ウェス、ペンダントの中身を見てい
る。子供の頃のウェスの写真が入って
いる。
母ウェス、懐かしむ表情をするが、悲
しい表情になっていく。
○翌日 空港 朝
ウェスの母、父、スーツケースを持っ
て空港にいる。
母ウェス「もうすぐ時間ね……忘れ物はない
わね?」
父ウェス「ネェ(うん)」
母ウェス「さて、しばらくは日本ともお別れ
ね。少し寂しいわ」
父ウェス「……ピギニィティ、プラギマティ
カ? (本当に、行くのかい?)」
母ウェス「何? またトイレ?」
父ウェス「オーヒィ(違うよ)」
母ウェス「冗談よ。分かってるわよ。けど仕
方ないわ。私のせいだもん。過去の報いよ
……残念だけど、現実を受け入れなきゃね
……」
父ウェス「……」
母ウェス「さ、もう行かなくちゃ」
母ウェス、父ウェスと搭乗ゲートに向
かおうとする。
そこに誰かが走ってくる。
母ウェス、父ウェス、気づいて近付い
てきた人を見る。
ウェス、息を切らして二人の前に現れ
る。
ウェス「はぁ、はぁ……」
母ウェス「西貴!」
ウェス「はぁ、はぁ、なんでいつもそう勝手
に現れてすぐいなくなるんだよ」
母ウェス「え?」
ウェス「俺の気持ちも知らないで……なんで
俺に何も言わずにいつも消えるんだよ!」
母ウェス「ごめんなさい……」
ウェス「いつもそうだ。子供の時も、何であ
んな風に消えた?」
母ウェス「……あの時は、ごめん。私あの時、
ひどいうつだったの。昔からそうなのよ。
持病みたいなもんなの。いつも何かの弾み
ですぐにボンってなっちゃうの。全てを拒
絶したくなっちゃうの。すぐに変になる母
親なんて、嫌でしょ?」
ウェス「ちゃんと言えよ! なんで今まで言
わなかった? 理由が分からないと、ずっ
と置いていかれたと思うだろうが!」
母ウェス「ごめんなさい」
ウェス「俺がどんな想いで子供の頃を過ごし
てたと思う? どんな想いで授業参観を迎
えたと思う? 分からないだろ?」
母ウェス「……」
ウェス「……母さんがひどい病気だと分かっ
てても、俺、一緒に居たかった。話し合っ
て、傍に居たかった。あんな形で置いてい
かれたくなかった……。もう大人なのに、
いつまでも痛みが消えないんだよ。あの時
の記憶からずっと解放されないんだ!」
母ウェス、ウェスを抱きしめる。
母ウェス「ごめんね、ごめんね……」
ウェス「寂しかった……俺、すごく寂しかっ
た……」
父ウェス、母ウェスとウェスを抱きし
める。
母ウェス「私はいつでもあなたを想ってるの
よ」
ウェス「俺もだよ。これからはもっと正直に
なるよ俺」
母ウェス「私も。変に気を使わないで、あな
たに話していくわ」
ウェス、母親のハグから離れる。
ウェス「俺、日本にいるよ。やりたい事も、
夢も、親友達だってここにいるから」
母ウェス「分かった。最初っからあなたが一
緒に来るとは思ってなかったの。またしば
らく会えなくなると思って、私の急な行動
だったの」
ウェス「いつも急な行動だろ?」
母ウェス「そうね(笑)」
ウェス「俺も母さんの顔を見れてよかったよ」
父ウェス「……」
ウェス「あ、父さんもだよ!」
父ウェス「トクセーロ(分かってる)」
母ウェス「……それじゃあ、そろそろ行かな
いと」
ウェス「そっか……」
父ウェス「エホカティナポ(言いたいことが
あるんだ)」
ウェス「ん?」
父ウェス「オギョウスムゥ(息子よ)。プラマ
グティカ(実は)、デンエイセイヨウズモウ
(お前は私の息子ではないんだ)」
ウェス「……」
父ウェス「リパメェ(すまない)」
ウェス「知ってたさ。最初っから」
父ウェス「オゥ……」
ウェス「アンタが本当の父親じゃなくても、
アンタは俺の父親だ。血が繋がってようが
なかろうが関係ねぇよ。そうだろ? 父さ
ん」
父ウェスとウェス、抱き合う。
離れてから母がウェスに訊く。
母ウェス「お父さん、なんて言ってたか分か
るの?」
ウェス「全然何言ってるか分かんないけど、
伝えようとしてる事は分かったよ」
母ウェス「あら? アナタも本当の家族にな
ったわね」
ウェス「ああ、そうかもな」
母ウェス「それじゃあね。何か困った事があ
れば連絡するのよ?」
ウェス「ああ、ありがとう。やっと親らしく
なったじゃねぇか」
母ウェス、笑って手を振って振り返り、
搭乗ゲートに父と向う。
ウェス、小さくため息。
〇空港 外
飛行機が大空へ飛び立っていく。
〇シェアハウス リビング 昼
みんなそれぞれ何かをしている。
ニック「ウェス、もう見送ったかな?」
シシ「送ったんじゃない」
シュミレット「急に慌てて出ていくからびっ
くりしたぜ」
はるか「うまくいってるといいな……」
シシ「そうね……」
ウェス、帰ってくる。
ウェスの声「ただいま~」
シシ「帰ってきた」
ウェス、リビングに登場。
ウェス「はいよ、お土産」
ウェス、適当なお土産を机に置く。
ニック「サラダ油じゃねぇだろな?」
ウェス「なわけねぇだろ」
ニック「なわけねぇ事をお前は三回もしたん
だぞ? お前が」
ウェス「空港で買ってきた」
シュミレット「空港だけ行ってお土産買って
きた奴初めて見た」
ウェス「うるせぇな。いらないならいいぞ」
ニック「いるに決まってんだろ!」
シュミレット「ああそうだ! いるに決まっ
てんだろ!」
ウェス「なんなんだよお前ら!」
はるか「ありがとうウェス」
ウェス「あぁ……あの、その、ありがとな」
はるか「何が?」
ウェス「お前が言ってくれなきゃ、俺、もし
かしたらずっと後悔してたかも」
はるか「勇気を出して行動したのはウェスじ
ゃない。決意したのはすごい事だよ」
ウェス「あぁ、ありがとな」
シュミレット「そういえばウェス、モデルの
仕事はどうなった?」
ウェス「あぁん、あれは母さんの仕業だった。
ちゃんとしたモデルの仕事じゃなかったよ」
シュミレット「そうか。うふん、うふふ……」
シュミレット、気持ち悪い笑い方。
ウェス「何だよ? いつも以上に気持ち悪い
笑い方だぞ」
シュミレット「俺、モデルの仕事をしたんだ」
はるか「え!? 嘘? シュミレットが?」
シュミレット「ああん」
ニック「ホントだぞ。スカウトされてる所み
たし。撮影もしたもんな」
シシ「へぇ~、シュミレットがモデル? 世
も末ね」
シュミレット「どういう意味だ!? まぁい
い。これで俺もモデルになったわけだし、
これからジャンジャン仕事が入って来て、
いつの間にかドラマに出たりして、俺は雲
の存在になっちまうかもしれねぇな。そう
なったらワリィな、お前ら」
暗転。
T「数日後……」
〇駅前 昼
駅前に集まっている一同。
シュミレット、不服そうな表情。
ニック、ある店の看板(看板の種類は
壁看板)を指さす。
ニック「見てみろよ、アレ」
一同、指さす方向を見る。
看板があり、そこにシュミレットがモ
デルとして写っている。
シュミレット、ニック以外の一同驚く。
はるか「すごい! シュミレットが写ってる!」
ニック「よく見てみろよ」
はるか「え?」
よく見ると、コンドームのCMの看板。
シシ「うわっ!」
ニック「あーははは!」
ニックだけ大笑い。
ウェス「シュミレット、お前は確かにある意
味で雲の上の存在になったよ」
シュミレット「騙されたんだ俺は! まさか
こんなモデルになるなんて知らなかった!」
シシ「お金は貰ったの?」
シュミレット「ああ! たんまり!」
シシ「じゃあ、いいんじゃないの?」
シュミレット「いいの!?」
ニック「書いてある文を読めよ! 『約束も、
ゴムも破るわけにはいかない』だって!
分けわかんねぇだろ! あははは!」
シュミレット「ちっくしょう!」
シシ「今度撮影する時は、ちゃんとなんの撮
影か聞くべきね」
ニック「あーっはっは!」
シュミレット「てめぇ! 笑い過ぎだ!」
シュミレット、ニックを掴もうとする
が、ニックが逃げる。
ニック「うわぁ! コンドームモデルが強襲
してきた!」
シュミレット「大きい声出すんじゃねぇ!
お前も恥ずかしいからな!」
一同、笑って終わり。
■~~~END~~~
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