変な部署で変な上司と ドラマ

警察学校で成績優秀だった亀山は特別課なる変な部署に行くこととなった。そこの上司はたった一人の上に普通ではなくて…!?
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第一稿

登場人物
古角真(こかどまこと)…男性。35歳。
警視総監の息子。今作の主人公

亀山徹(かめやまとおる)…もう一人の主人公。
男性。25歳。一年目の刑事

古角敏樹 ...続きを読む
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登場人物
古角真(こかどまこと)…男性。35歳。
警視総監の息子。今作の主人公

亀山徹(かめやまとおる)…もう一人の主人公。
男性。25歳。一年目の刑事

古角敏樹(こかどとしき)男性。65歳
警視総監。真の父親

滝藤圭(たきとうけい)男32歳。自衛隊テロ対策特殊部隊の一員。

貝沼卓也(かいぬまたくや)男32歳
自衛隊テロ対策特殊部隊の一員

田中優(たなかまさる)男68歳。防衛大臣

小野薫(おのかおる)男67歳。防衛副大臣。

王博文(わんぶぉえん)中国人
男 38歳

根岸政人(ねぎしまさと)男35歳


●とある孤島
T「一ヶ月前」
自衛隊の特殊部隊と中国人の武装集団が激しい銃撃戦をしている
その最中凶弾に倒れる滝藤圭(32)
付近の自衛隊の仲間が滝藤の介抱へと向かう

●都内・風景(朝)
T「現在」
人々で行き交う街

●警視庁・外(朝)
警視庁へ亀山徹(25)が到着する
亀山、身だしなみを整え、その歩みを始める
●警視庁・一階受付(朝)
亀山、受付嬢aに話しかける
×××
●亀山の家・中
試験合格証を見て喜ぶ亀山。
合格証が入っていた封筒にもう一枚あることに気づく。
亀山「(手に取り)なんだこれ?」
紙には「成績最優秀者へ」と書かれている
亀山「(読み上げ)警視庁内で特殊待遇措置を取ることにしました。尚、この事は他言無用でお願います」

亀山「……え?」
×××(回想終わり)
●警視庁・一階受付(朝)
受付嬢aから鍵を受けとる亀山。
エレベーターへ向かう
もう一人の受付嬢bが鍵を受付嬢aに声をかける
受付嬢b「あの鍵何?」
受付嬢a「さあ?上からあの人が来たらあれを渡せって」
●警視庁・地下4階(朝)
亀山の目の前には鍵穴がある
辺りを確認して鍵を開け、閉める
廊下はまだ続いていてY字路が目前に
亀山「まだあんのかよ……」
封筒から地図を取り出す
亀山「(読み)次の順路を右、右、左……」
×××
亀山、歩みを止める
「特別課」と書かれた表札がある
亀山「(笑顔で)よし!」
ノックをして扉を開ける
亀山「失礼しま…」
部屋の中には派手な女性達に甘えている古角真(35)がいる
亀山、扉を閉める
扉に耳を当てるも無音である
亀山「……まさかね」
大きく息を吸って吐く
そして再度扉を開ける
亀山「失礼しま」
だがやはり派手な女性達に甘える古角がいる
亀山、開いた口が塞がらず、カバンをスッと落としてしまう
●メインタイトル
T「変な部署で変な上司と」

●特別課・中(朝)
古角、亀山に気づかない
古角「(女性達に)よおし、今日の夜好き勝手してもいいと約束するならなんでも好きなもの買って上げちゃうぞ!」
と気持ち悪い口調で言う
しかし女性達からは黄色い歓声が上がる
古角、立ち上がり女性達を連れ外に出ようとする
亀山、その軍勢に押され、こけてしまう
古角、ようやく亀山の存在に気づく
古角「……誰だ貴様は。何故この場所にいる」
亀山「あ、あの本日からこの特別課に配属する事になりました亀山徹と申します……ご存じないでしょうか」
古角「ないね」
亀山「私のことは伝達しておくとお聞きしたのですが…」
古角「聞いてないし聞きたくもない。上からの伝達なんて大概面倒なものだからな」
亀山「ええ…」
女aが古角に話しかける
女a「ねえ一しんちゃん、早く行こ?」
古角「そうだね一!うっかりしてた一ごめんねえ」と気持ち悪い口調に戻り女性達を連れて去る
亀山「……どうなってんだよ」
亀山、仕方なく特別課の部屋に入る
●特別課・中(朝)
アルコールの臭いがする
ソファー付近の机には空のコップが複数
思わず鼻を塞ぐ
その時、電話が鳴る
驚いて受話器を耳に当てる亀山
亀山「(電話で話し)もしもし。はい…え?警視総監室ですか!?」

●警視総監室・表
ガチガチに緊張している亀山。
扉の向こうからどうぞという声がする
亀山「はい!失礼します(扉を開ける)」
部屋には威圧感のある古角敏樹(65)が座る
敏樹、亀山に鋭い視線を向ける
亀山、震えながら敏樹の前に移動する
敏樹「……座りたまえ」
亀山「はいっ!失礼します!」
と席につく
敏樹「配属初日からこんなとこに来る羽目になるなんてと思ってるだろうがね」
亀山「いいえ!とんでもありません」
と必死に否定する
敏樹「…まあいい。唐突だが君は何故特別課が存在するか知っているか?」
亀山「……いいえ。存じておりません」
敏樹「それはだね。その……非常に言いにくいんだが」
亀山「…はい。」
敏樹「君の他にもう一人いるだろ、男が」
亀山、一瞬真のことを忘れるもすぐに思い出す
×××(フラッシュ・亀山の回想)
傍若無人の限りを尽くす真
×××(終わり)
亀山「(引きずった顔をし)あ一、はい。」
敏樹「その男、私の息子なんだ」
亀山、大声をあげ、驚く
亀山「(我に返り)えっ、あの人が警視総監殿のご子息様で…」
敏樹「…ある出来事を境に変わってしまってね、警察の仕事にも熱が出ずにいて、何か変えるきっかけになればと思って特別課を設立した」
亀山「なんで僕が特別課へ?」
敏樹「君のような真面目で成績優秀な青年を近くにおいておけば少しは闘争心が生まれるかと」

敏樹「ああ、後特別課のことは他言無用でね。警視庁を私物化する気かとかマスコミやら世間やらがうるさくなるしね。君のせいでバレたら君も責任取って貰うから」
亀山「え…ちょっと待ってくださいよ」
敏樹「(顔を近づけて)宜しくね」
亀山「…はい」
●特別課・表
少しくたびれてる亀山
亀山「しっかし毎回この長い道通るのめんどいな…」
亀山、ノックをし、扉を開ける
亀山「失礼します」
●同・中
落語家の男が真に落語を披露している
思わず引く亀山
真、亀山に気づく
真「(男に)もう帰っていいよ」
男、礼をし部屋内のエレベーターに入り去る
亀山「エレベーターあったんだ…」
真「なんの用だ」
亀山「一応僕も特別課の刑事なので」
真「あ、そ」
亀山「さっきの女の子達はどこへ?」
真「あの野郎共、鞄やらなんやら買ってやったらそのままバックレやがった」
亀山「…というか特別課のことは他言無用なんじゃ」
真「ここに来る皆ここがなんて名前の課なのか、そもそも何をする場所か知らねえんだよ」
亀山「はあ…」
真「…なんでこの成績優秀な俺様がこんなとこに配属されちまったのかとか思ってるんだろ」
亀山「…そんな事は」
真「あるね。その反抗期の中坊みたいな態度がそれを物語ってる」
亀山「中坊って…」
真「言っとくが俺も試験は一位の成績で通った」
亀山「(思わず)嘘!?」
真「マジだ。補足しておくとお前みたいとは違い糞マジメに勉強せずに合格した。悪いが才能や力量は全てこっちのが上なんだよ」
亀山「(不服そうに)そうですか」
真「出た反抗期」
亀山「あのねえ…」
真「そのママに小言を言われた時のような顔、正に中坊」
亀山、ため息をつく
真「…俺が嫌なら他の課の配属を検討するんだな」
亀山「え?」
真「よく考えてみろお前まだ配属されて初日だぞ。」
亀山、頭を抱える
亀山「そうだ…まだ初日だった…」
真「下手したらこの課で数年、数十年もいるかもしれねえんだぞ。俺もそんなにお前の顔を見るのは御免だ」
亀山「何年もこんな人と一緒に…」
亀山、恐怖で震える
真「こんな人で悪かったな。」
真、帰りの支度をする
亀山「もう帰るんですか?まだ17時ですよ」
真「遅いぐらいだ。じゃあな中坊」
真、エレベーターに乗り去る
亀山、深いため息をつく
亀山「マジで変えてもらおうかな…」
散らかった机に額縁に入れられた写真がある
亀山、それに気づき写真を手に取る
その写真には合格証を持った真(25)と敏樹が写る
写真の真は好青年そうだ
亀山「(写真の真を見て)この好青年が…アレになるのか」
その時エレベーターが降りてくる
それに気づいた亀山、写真を慌てて置く
エレベーターからは敏樹が出てきた
亀山「警視総監殿!」
驚き礼をする

敏樹「真は帰ったか。」
亀山「はい」
敏樹「そうか。じゃあ伝えといてくれ。明後日、二人で留置所へ行って欲しい」
亀山「留置所ですか?何故です?」
敏樹「君は知ってるかね?先日、武装した中国人のテロ集団が日本の領域内の島に侵入した事件を」
亀山「あ一、自衛隊の特殊部隊が応戦して死傷者を出しつつも全員の身柄を確保したとかいう」
敏樹「そのテロ集団のリーダーに防衛大臣と副防衛大臣が面会に来るそうだ」
亀山「面会ですか?それまたどうして」
敏樹「実は明日警視庁にも来るそうなんだがそのついでにテロ組織のリーダーに会いたいそうだ」

敏樹「君と真にはその御二人方の護衛をしてもらいたい。」
亀山「…お言葉ですが、護衛ならもっと適した人材がいるのでは?それこそ自衛隊の隊員だとか」
敏樹「それがね、先日の事件でマスコミの対応や戦線処理等で人手が足らないらしいんだ。一応、他にも数人護衛はいるそうだが万が一のことがあってはならないからな」

亀山「…了解しました」

●亀山のアパート・廊下(夜)
自室へ向かう亀山
●亀山のアパート・中・玄関(夜)
亀山、靴を脱ぐ

●亀山のアパート・中・リビング(夜)
ソファーに倒れ込む亀山、顔を沈める
亀山「…配属一日目からなんか変だな…俺の刑事人生…」
亀山、顔を起こす
亀山の視線の先には棚に飾ってある卒業証書がある
亀山「……」

●警察学校(フラッシュ・亀山の回想・外観)
生徒達が入っていく

●警察学校・剣道場・中
亀山(22)、試合をし次々と勝負を制していく
回りの生徒達は「糞真面目でうぜえ」だの
「バカみたいに攻めてくる」だのひそひそと亀山の愚痴を話している
亀山、試合が一段落つき、その愚痴が微かに聞こえてくる

●警察学校・食堂
一人で飯を食いながら、勉強に励む亀山
付近の生徒達、亀山の愚痴をこぼす
生徒a「何あれ?カッコつけてんのかね」
生徒b「ただ友達いないだけだろ」
生徒c「(嘲笑し)やめたれって」
一斉に笑いだす
飯を食い終えた亀山、愚痴が耳に入り皿を持ち早々と食堂を去る
●警察学校・教室・中
テストを返される亀山
テストは満点だ
しかしあまり嬉しそうにない様子
そのテストが他の生徒に少し見えてしまう
その生徒、周りの生徒達に亀山のテストが満点だということを影で話す
ひそひそと「優等生ぶってやがる」だの「満点とってもあの表情とかマジでイキってる」
だの愚痴がやはりひそひそと続く
亀山、その聞こえてくる愚痴に必死に耐える
(回想終わり)

●亀山のアパート・リビング・中(夜)
亀山「…俺、どうなっちゃうのかな」
亀山、ため息をつく

●特別課・表(日替わり・朝)
亀山、扉の鍵を開け、部屋に入る
亀山「失礼します…っても誰もいねえか」

●同・中(朝)
亀山「…ところであの人はいつ来るんだ?」
亀山、スマホを取り出すも
亀山「…しまった。あの人の電話番号知らねえ」
亀山、考え込む
亀山「……まあ流石に来るでしょ」
×××
T「3時間後」
亀山、時計を見る
亀山「…これ来ねえわ」
亀山、また考え込む
亀山「…しゃあねえ。あんま使いたくない奥手のだけど」

●古角家・中・真の部屋
ベッドでぐっすり眠る真
真「…駄目だよ。綾ちゃん…裏は弱いのぉ」
と寝言をつぶやく

亀山の声「随分と夢の中で楽しんでらっしゃるそうですね」
真、少し目を開ける
真「もう…誰?あ、新しい娘?おいで…」
と変わらず寝言を言う
亀山の声「…確かに新しい子ではありますけど…」
真、目を覚まし、大声で叫ぶ
真「なんだお前!なんでここに」
亀山「警視総監殿に伺ったんですよ。」
真「…余計なことを。住居不侵法入だぞ!」
亀山「不法侵入ですよ、寝ぼけすぎでしょ…後、ちゃんと警視総監殿とここの家政婦さんに許可は頂きました」
真、睨み付ける
亀山「ところで綾ちゃんって誰ですか?」
真「……」
亀山「もしかして昨日バックレたっていう」
真「うるさい!黙れ!」
亀山「そうなんだ」
真「あの娘のおっぱいはめっちゃ美しくて大きくて良い臭いだったから狙ってたのに」
亀山「そんな気持ち悪い理由聞いてませんよ…」

亀山「てゆーか特別課が隠れ場所的な位置にあるとはいえ、好き勝手やりすぎでは…」

真「大丈夫だ。隠れ場所的な位置にある上に防音だ」

亀山「……そうだったんだ」
亀山、呆れる

真「てか、なんの用だ」
亀山「なんの用だじゃないでしょ、仕事は?」
真「特別課にそんなものはない!」
亀山「いやせめて来ましょうよ」
真「昨日は親父がしつこく行ってきたから仕方なくだ」
亀山「…苦労してるんだなあ…警視総監殿」
真「あっちがしつこいだけだ」
亀山「(呆れる)…あ、後明日のことなんですけど留置場に行くことになりました」

真「お前まさかなんかしたのか?だとしたら好都合だ」
亀山「…違います、任務ですよ。後、これは特別課に与えられた任務なので真さんも一緒に」
真「は?やだよ、めんどくさい」
亀山「あんたねえ…仮にも刑事なんじゃ」
真「悪いが今の俺は刑事としては死んでるようなもんだ。死人に任務を遂行できるなんて思うか?」
亀山「刑事としては死んでても人間としては生けてられてるんだから大丈夫ですって」
真「やだ!」
亀山「…子供みたいなこと言わないでくださいよ。一応僕の上司なんですから」
真 「なんだ一応って。ちゃんと上司だろ。」
亀山「…そうですかねえ」
真「……とりあえず今日はいかない。飯食ってくる」
亀山「ちょっと」
真、部屋を出ていく
亀山「なんだあの人…って今さらか」
亀山、真の勉強机を見る
そこには警察学校の教材やノ一トが整頓されている
亀山、ノ一トを手に取る
亀山M「どうせ白紙なんだろなあ」
と開く
なんとノ一トにはずっしりと分かりやすく書いてある
亀山「嘘!」
と思わず声を漏らす
亀山、他のノ一トや教材も手に取る
開いていくと全てのノ一トにはずっしりと書き記されていて全ての教材には付箋やラインが引いてある
亀山「……あの人、一体何なんだよ…」
騒がしい足跡が近づく
亀山、とっさに仕舞う
扉が開き、真が出てくる
真、亀山に掴みかかる
亀山「ちょ、なんですか」
真「お前も知ってたのか?」
亀山「え?」
真「とぼけんな!」
とスマホのメ一ルを見せる
スマホには 送り主「糞親父」で「この任務を果たさなかったら、金輪際、家の敷居を跨がせない」と書かれてある
亀山「……出禁になるんすか?真さん…」
真「……知らねえのかよ」
亀山「てか糞親父って…よくないですよ」
真「うるさい、親父とつけてるだけマシだろ」
亀山「ええ…」
真「ホントにやだマジでやだ」
と駄々こねる

真「ええい決めた!明日、嵐が来ようが波が荒れようが行かないぞ!」

●留置所(日替わり・朝・外観)
人々が行き交う

●留置所・エントランス・中(朝)
数人の護衛の刑事に囲まれる田中優(68)防衛大臣と小野薫防衛副大臣(67)
数人の護衛の中には亀山と真がいる
真「なんでわざわざ護衛なんかに」と吐き捨てる

亀山「(嫌味っぽく)女の子達と遊んでるよりはマシだと思いますが」

真「あのなあ、あれは遊んでるんじゃない。守るべき市民達との貴重なコミュニケーションの一環だ」
亀山「(嘲笑して)どうだか」
真「大人の付き合いも分からない中坊は口出しするな」
亀山「中坊呼ばわりはやめてくださいよ」
とキレ気味に言う
真「あーやっぱりなあ。子供は子供呼ばわりされた時が一番顔を赤くするもんなあ」
と煽り口調で言う

ヒートアップするしょうもない口喧嘩に周囲の目が厳しくなる
周囲の目に気づき自重する亀山と真


●留置場・廊下(朝)

小野「しかしすまないね。こんなことで護衛を頼むことになるなんて。しかも私は王との面会は二度目なのに」
と真に言う
真「ホント、いい迷惑ですよ」
亀山「ちょっと、古角さん!」
小野、亀山を制す
小野「まあいいさ。一応警視庁から借りた護身用の拳銃もあるんだ。君たちにとっては本当に時間の無駄かもしれないが精一杯職務を全うしてくれ」
真以外のその護衛が返事をする

小野「あ、そうだ」

小野、手帳とペンを取り出し、何かを書いている

亀山「(小野に気づき)失礼ですが、何をされてるんですか?」

小野「数年前から一日の日記的なものを書いていてね。ホラ、一日の出来事を思い出すことを日課にすれば、ボケになりにくいとかって聞くだろ?」

亀山「あ一、なるほど」

小野「老人のせめてもの抵抗だよ」
亀山「いえいえ、とんでもない。素晴らしい心掛けだと思います!」


●留置所・収用部屋・中(朝)
悲鳴を上げて苦しんでいる王博文(38)
その様子を一人の監視官が気づく
監視官「おい!大丈夫か!?」
と鍵を開ける
すると王、監視官の顔面を殴り、便器に顔を突っ込ませる
そして逃走する

●同・廊下(朝)
逃走する王が出会い頭に亀山達と衝突する
小野「王!何故ここにいる!」
小野、拳銃を取り出すも王に殴られ盗られてしまう
王、田中を人質にとり逃走する
亀山達、追跡する
王、行き止まりに行き着き、壁を背にする
亀山達も追い付く
亀山「田中さんを離せ!」
小野「…取り敢えず外部に連絡を」
王、壁に発砲し、威嚇する
王「(中国語で)外部に連絡を取ってみろ!即座にこいつを殺す!」
と田中に銃口を押し付ける
亀山「(小声で)…なんて言ってるんだ…」
真「外に連絡したら殺す、そうだ。」
亀山「(小声で)中国語分かるんですか?」
真「今はそんなんどうでもいいだろ…」
睨み合う両者
亀山、電灯を見てハッと思い付く
拳銃を素早く抜き出し電灯を撃つ
混乱する王
その隙をつき突撃する真以外の亀山達
王の身柄を取り押さえる
拳銃が床に転がる
呆然とする田中
真、壁に撃ち込まれた弾丸に気づき手に取る
真「…これって」
●警視総監室・中
亀山、真が敏樹らと対面している
敏樹「で、電灯を撃って隙をついたと」
真「(亀山に)中々馬鹿なことをしたなあ。下手したら誰か死んでたかもしれないのに」
亀山、押し黙る
敏樹「まあ、結果的には無事で済んだのだから護衛の仕事はやり切ったとは言えなくもないけどね」
真「(やけに強調して)しかし、あの土壇場でもしも大臣殿と副大臣殿に被害が及んでいた可能性も高かった。それぐらい無責任な行動だと私は思いますが」

亀山、ムスッとする
敏樹「真。お前は何を望んでいるんだ」
真「この男を特別課から追っ払ってほしいんですよ」
敏樹「亀山くんに出ていけと言うのか?」
真「そういうことです」
部屋に沈黙が走る
敏樹「確かに亀山君のやったことは中々リスクのある行為だとは思う。」
頷く真
敏樹「そこでだ。亀山君を含めた特別課に処罰…とまではいかないが任務を与えよう」

真「は?」

敏樹「任務の詳細は後日話す。これでこの件は終わり、これでいいな?」
真「いやいやいや!私は特に何もしていないんですよ!」
敏樹「ああ。確かに何もしてなさそうだな。護衛の任務すらも…」
真、納得いかない表情をする

敏樹「元々、任務を果たさねば家を出禁にすると行っただろ?」

真「果たしたのでその罰は免れたと私のなかでは認識しているのですが?」

敏樹「いや、聞けば防衛大臣を人質に取られたとき何もしなかったそうではないか。他の護衛から、ちゃん聞いたぞ」

真、ムスッとする

敏樹「もういいか?田中さんと小野さんとの話があるんだ。」

真「可笑しいだろ…だからあんたは嫌いなんだ」
と吐き捨てるように言う
亀山「…特別課がなんで設立されたか知ってますか?」
真「なんだよ急に…」
亀山「古角さんにもう一度ちゃんとした刑事として復帰してほしいからですよ。」
真、押し黙る
亀山「さっきの任務の件。警視総監殿が僕に向けて仰ってた感じでしたけど、古角さんにちゃんと一度職務を果たしてほしいと思ってその口実に使っただけじゃないんですか?」

真「…俺を壊したのもこいつだろ」
と小声で言う
亀山「え?」

明らかに決まりが悪そうな顔をする敏樹
亀山、敏樹の表情を見る
真「今度の任務は一から十まできちんと遂行します。そしたら今後一切私の邪魔はしないで頂きたい!」
真、部屋を出る
亀山「ちょっと!真さん!」
亀山、真を追う

●警視庁・廊下
イライラしながら歩く真
亀山、真を見つけ、駆け寄る
亀山「ちょっと!いくらなんでもおかしくないですか?」
真「…お前に何が分かる」
亀山「警視総監殿となんかあったんですか?」
真「……」
亀山「なんかあったんだ」
真、亀山のネクタイを掴み、睨む
真「社会をろくに知らない中坊が無闇に他人の過去の詮索をするんじゃない」
真、亀山を突き放す
真、亀山の前から去る


●警視総監室・中
小野が警視総監室に入ってくる
小野「失礼します」
敏樹「これはこれは小野防衛副大臣。どうぞお掛けになってください。」

敏樹、田中がいないことに気づく
敏樹「…田中防衛大臣はどうされました?」
小野「先程のいざこざで心不全になられたそうです。治ることを祈るばかりです」
敏樹「……そうですか。護衛がついていながら申し訳ない」
小野「いいんですよ…って私が言うことじゃないかもしれませんが。」
敏樹「ところで今日はどんな御用で?」
小野「今度、防衛省で予算会議があります。そのですねちょっとした援助をお願いしたいんですよ。」
敏樹「援助…ですか?」
小野「ええ。先日のテロのこともあって特殊部隊にかける予算を増やしたいんですよ。その後押しといいますかね。」

敏樹「私に特殊部隊を推せと?」

小野「まあそういうことです。金銭的な援助は必要ありません。ただ特殊部隊がこの国に必要だというご意見を警視総監殿の方からしてもらいたいのです」

小野「警察と自衛隊、職務は違えど同じ国を守る仕事です。中でもやはりテロの脅威というものは並大抵のものではありません。」

敏樹「わかりました。微力ながら協力させて頂きます」

小野「ありがたい」
小野、敏樹の手を握る

小野「あ、そういえばこれ」
小野、拳銃を取り出す
敏樹「ああ、どうも」
小野、拳銃を敏樹に渡す

小野「後、最後に一つお尋ねしたいことがありまして」

●とある孤島(日替わり・外観)
T「2日後」
●同
呆然と立ち尽くす真
波が荒れている
真「…なんてこった…なんでこんなとこに」
とブツブツ言っている
そこへ亀山が近づく
亀山「次の任務をきちんと遂行するって言ったじゃないですか」
真「だからってなんでこんな21世紀の文明が微塵もないとこに置き去りにされなきゃいけないんだ」

亀山「で、でも一応自衛隊の方々もいらっしゃいますし」
真と亀山の目線の先には戦線処理をしている自衛隊員がいる

亀山「戦線処理のお手伝いっていう程度の任務ですし頑張りましょうよ」

真「なんで俺らだけで手助けするんだよ。もっといてもよかっただろ」

亀山「…それは、分かりませんけど」

そこへ貝沼卓也(32)が話しかけてくる
貝沼「お二人方、派遣されてきたっていう警視庁の刑事さんですか?」

亀山「あっはい!…あ、そうだ」
亀山、警察手帳を取り出し、貝沼に見せる
真「…何嬉しそうなんだよ」
亀山「…いやなんか、刑事っぽいなって」
真「アホか」
貝沼「わざわざここまで来てくださってありがとうございます。ボ一トでいらっしゃったんですか?」

亀山「はい」
真「(舌打ちをし)今から帰ろうかな」
亀山「ボ一トはもう帰りましたよ」
真「……」
貝沼「どうぞこちらへ」
×××
歩いている3人
貝沼「僕は当時、武器の整備等の担当でした。戦闘員として戦線にもいましたけど」
亀山「中々、熾烈な争いだったとお聞きしました」
貝沼「そうです。その最中で滝藤は…」
真「滝藤?」

亀山「まさか、知らないんですか?」
真「あ?」
亀山「自衛隊の一員で戦闘に参加していた方です。戦闘の最中で亡くなったそうです」

真「なんでそんな一人の戦闘員の死をお前が知ってるんだよ」

亀山「連日テレビやニュースでやってたじゃないですか。現代の英雄だって讃えられて。」

真「英雄ねえ…」
貝沼「…真面目なやつでした。元々このテロ対策特殊部隊はあんまり出番がない部隊だったのにそれでも訓練を怠らずに過ごしてました」

亀山「…失礼ですけど、テロ対策特殊部隊は自衛隊内での役割はかなり薄い方だったんですか?ここの戦闘で確実に身柄を捕らえたりと実戦慣れしてるのかと思ってたんですが」

貝沼「そもそもこの日本という国にあまりテロが起きませんからね。だからこの部隊にかかる予算も中々少なかったと聞いたことがあります。でも今度の予算会議で少しはこちらに来るかと…」

亀山「そうなんですか」
真「(機嫌悪く)それで?戦線処理の手伝いって何をすればいいんですか?」

貝沼「負傷者の介抱です。とはいっても重傷の隊員は早急に病院に送られたので全員、軽傷の隊員ですけど」

×××
負傷者の手助けをする亀山
その様子をつまらなさそうに見る真
真の足に何か踏みつけたような感覚が走る
足を退けると一つの弾丸があった
真「(手に取り)この弾丸は…」

×××(フラッシュ・真の回想)
博文が壁に撃った弾丸を手に取る真
×××(回想終わり)

その弾丸は博文が撃った弾丸と同じものだった
真「……」

●警視庁・警視総監室・中
椅子に座る敏樹、机の引き出しから小箱を取り出す

小箱を開ける敏樹
中身は王らが使っていた弾丸が数発ある
敏樹「……迂闊だったか。」とつぶやく

●孤島(夜)
自衛隊員と揉めている真
その様子を亀山が見る
亀山「ちょっと!真さん!何してるんですか。任務は!?」

真「それどころじゃないんだよ!警視庁に行かなきゃ…」
亀山「(呆れて)…で?ホントはどこに遊びにいくんです?」
真「違う!そんなんじゃ」
亀山「どうせ、キャバクラで豪遊でもするんでしょ……いい加減にしてくださいよ。こんなところまで来て」
真「いいから話を聞け!」
と鬼気迫る表情を向ける
周りの隊員、真の大声に気づきざわつく
亀山「……帰るなら一人で帰ってください」
亀山、真に背中を向けて去る
真、話しかけようとするも口ごもる
真「……」

●テント・中(日替わり・朝)
寝袋の中で目が覚める亀山
辺りを見ると真の荷物がどこにもない
●孤島(朝)
テントから出る亀山
そこへ貝沼が近づく
貝沼「亀山さん!」
亀山「どうしました?」
貝沼「その、古角さんが、一人乗りの簡易ボ一トで先に帰りました…」
亀山「え!?」
貝沼「今日は波が荒いため危険なので捜索を始めたんですが、もう既に遠くにいったか……」
沈んだか、とまでは言えない貝沼
亀山、沈黙する
×××(フラッシュ・亀山の回想)
夜の孤島で亀山を説得する真
×××(回想終わり)

亀山「……まさか本当に何かあったのかな」

とそのとき亀山の足に何らかの感触が走る
亀山、それを手に取る
それは真が拾ったものと同じ弾丸だった
亀山「なんだ、弾丸か」
貝沼「(弾丸を見て)あ、それ古角さんも見つけてました。その後に形相を変えたような…」

亀山「え?(弾丸を見て)……この弾丸って自衛隊のものなんですか?」

貝沼「いえ、例のテロリスト達が使ってたもので。うちのはもっと殺傷能力が低いものです。」
亀山「……この弾丸に何かあるんだとすれば」

●港(夜)
漁師や釣りで賑わう
そこへ一隻の小さなボ一トが流れてくる
漁師a「なんだありゃあ」
漁師や釣り人達がボ一トにいる意識を失っている男を陸へ上げる
その男は真だった
漁師aが真の心臓に耳を当てる
漁師a「まだ動いてるぞ!」
人々が必死で介抱し、ついに目を覚ます
真「……ここはどこだ」
漁師b「おお!あんた、大丈夫か?」
真「…あなたたちが助けてくれたのか…すまない」
真、歩き出そうとするも膝から崩れ落ちる
漁師b「(駆け寄り)無茶すんなよ!どこいくつもりだい?」

真「警視庁…です」
漁師c「…はあ!?いやあんたここどこだと思ってんだい!?青森だよ!」
真「え!?」

漁師a「今から行くには自動車道で行くしかねえけど、すげえ遠いぞ!」

真「……すいません。折り入って頼みがあるのですが」

●東北自動車道 青森IC入り口付近(夜)
漁師aが運転する車に乗る真、
格好はぐちゃぐちゃだ
漁師a「本当にここまででいいのかい?」
真「……ええ。後はなんとかします。」
漁師a「そうかい」
真、車を下りる
真「ご親切にありがとうございました」
漁師a「そっちこそ無事でな」
車が去る

×××
真、IC付近で他の車に合図をする
一台の車が止まる
運転手a「(窓を開け)どうしました?」
真「どちらまで行かれます?」
運転手a「東京までですが」
真「東京のICまで乗せて頂けないでしょうか?」
運転手a「ええ…!?ヒッチハイクってことですか?」
真「大事な用があるんです!お願いします!」と土下座する
運転手a「……わかりましたよ」
真「本当ですか!ありがとうございます!」
真、車に乗る

●自動車・中(夜)
座席に座る真、睡魔が襲ってくるが遠慮をして必死に耐えている
それに気づく運転手a
運転手a「……寝ていいんですよ?」
真「いいえ!眠いとかそんなんじゃ」
運転手a「いやいや、目の熊ヤバイじゃないですか」と笑う
真「あ一、これはその」と口ごもる

そんな中ラジオのニュースが流れる

内容は滝藤圭のことだ

運転手a「なんか変ですよね」

真「え?」

運転手a「人が一人死んだのに、悲しむどころか英雄の誕生だって喜んでるみたいで」

真「……まあそうですよね」

運転手a「お仕事は何を?」
真「……一応刑事です。」
運転手a「え?あ、そうなんですか。なんで刑事さんがヒッチハイクを?」
真「…色々ありまして」
運転手a「聞かなかった方が良かったみたいですね」
真「いや、まあその…」
運転手a「にしても刑事なんて立派だなあ。」
真「……そうでしょうか?」
運転手a「カッコいいじゃないですか、町の平和を脅かす悪党どもを懲らしめるなんて。」
真「……そう、あるべきなんでしょうね」
運転手a「いやあ、俺も子供の頃はさあ、刑事ドラマ見て、刑事になって拳銃使いてえなんて思ってたなあ。」

真、過去のことをふと思い出す

●住宅街(夜・真の回想・フラッシュ)
雨が降る住宅街
そこには不自然に止まるバス
付近には野次馬と警察の特殊部隊がいる
●バス・中(夜)
震える乗客達と落ち着かない様子の現行犯の根岸政人(29)
根岸、スタンガンと刃物を持つ
根岸、乗客の一人に話しかける
根岸「(刃物をつきだし)お前、ちょっと来い」

●住宅街(夜)
バスから人質を持った根岸が出てくる
根岸「警視庁に連絡を取れ!話の分かるやつと話したい!」
現在の真N「俺は当時、特殊部隊の交渉役だった」

●警察車・中
真「復讐…ですか?」
刑事a「なんでも昔あった連続少女誘拐事件の被疑者だったらしい。すぐに犯人が見つかったらしいがその後の根岸への世間の目は相当なものだったらしい。それもあってか職すらも失ったそうだ。」
真「…なるほど」
刑事a「じゃあ、頑張ってきてくれ…」
真「はい。後、機動隊の投入は最終手段として考えてください。」
刑事a「ああ。」

●市街地(夜)
車から出てくる真
真「バスの乗客みんなと俺を交換しろ!」
と両手を上げて近づく
根岸「どうせなんか持ってんだろ!拳銃やらなんやら!俺は刑事ってやつが信用ならねえんだよ!」
真、少しおののく
真「わかった!これなら満足するか?」
と服を次々脱いでパンツ一丁になる
騒然とする周囲の人々
根岸「お前…何してんだ…?」
真「これなら信用できるか?ああ後、股間の大きな膨らみは決して拳銃じゃないぞ」
根岸、思わず吹き出す
根岸「大して大きくもねえよ!」
真「何だと!?」
根岸「…分かった。乗客どもと交換だ」
×××
解放される乗客達

●バス・中(夜)
車内に入る根岸と真
根岸「あんたで良かったよ」
真「え?」
根岸「あんたみたいな人に取り調べだのしてほしかった」
真「…その言い方から察するに中々強引だったのか」
根岸「…知ってるのか?」
真「ああ。」
根岸「…すげえと思ったよ。正義の二文字を振りかざしとけばプライバシーをさらけ出させることもその人の人生滅茶苦茶にしても許されるんだとな」
真「…目的はなんだ?」
根岸「俺を取り調べた刑事の土下座と謝罪。警察のトップからも謝罪が欲しい」
真「そんなことでお前の怒りは治まるのか?」
根岸「治まらねえよ。でもこの事が世間に明るみになれば少しは変わってくれると思ってるんだ」

真「お前の気持ちは分かった。でも方法が間違ってる!犯罪者に間違えられてこんなことになってんのに本物の犯罪者になっちまってどうする!?」
根岸「……」
真「降参しよう、な?時間が経つと罪も多少重くなる。法廷でその件を公開するんだ。俺も協力する!だから」


その時、機動隊が車内に突入してくる
機動隊、根岸を取り押さえる
真、唖然とする
真「なんで!?」
●警察車・中(夜)
車内に入る真。
真「なんで機動隊が!?」
刑事a「お前無事だったのか!?」
真「え?」
刑事a「だって気性を荒くした根岸にやられてるって」
真「…それ、どこの情報ですか?」
刑事a「上からだ。機動隊の投入は、警視総監直々のお達しだそうだ。」
真、服を着て車から出ていく
●警視総監室・中(夜)
真、荒々しく扉を開ける
そこには敏樹がいる
敏樹「なんだ、お前か」
真「なぜ嘘をついたんです!?」
敏樹「…警察は絶対的な正義でないとならない」
真「はあ?」
敏樹「その絶対的な正義にはヒビ一つ入ってはならんのだよ。」
真「ふざけないでください!彼は我々の杜撰な捜査が生んだ被害者だったんですよ!?」
敏樹「仕方のないことなんだよ。お前はまだ尻が青いから分からんかもしれんが」
真「…この事を世間に発表します!」
敏樹「そんなことをしたらどうなるか分かるか?」
真「脅すんですか?実の息子を」
敏樹「お前が全てを擲って告発しても、我々は簡単に事実を曲げることができる。」
真「……」
敏樹「考えて直したか?」
真、睨み付けて部屋を去る
(回想終わり)

●自動車・中(朝)
寝てしまっている真
運転手a「(真の頬を優しく叩き)着きましたよ」
真、起きる
●東京IC出口付近(朝)
真、車から出る
真「ありがとうございました」
と頭を下げる
運転手a「いえいえ」
車、去る

真、屈伸をして、警視庁に向かい走り出す

●とある孤島(朝・外観)
ぽつんと浮かぶ島

●テント・中(朝)
寝ている亀山
そこへ足音が近づき、ジッパーが解かれる
解いた人間は貝沼
貝沼「亀山さん!ボ一ト来ましたよ!」
亀山、目を覚ます

●ボ一ト・中(朝)
荷物を持ち乗り込む亀山
貝沼達に礼をいう
そして出発する

●警視庁・表
相変わらず格好がぐちゃぐちゃな真、気にせず、警視庁に駆け着く
周囲の人々は真の格好にざわめく

●警視庁・資料室・中
真が資料室にたどり着く
管理人、真に気付く
管理人「どなたですか?」
真「古角真です。王博文らの資料を拝見させて頂けないでしょうか?」
管理人「ええ…?部署はどちらでしょうか?」
真「部署は…捜査一課です。」
管理人「確認するのでこちらでお待ちください…」

真「…はい」
真、ソファーに座る
顔色が青くなる
×××
管理人「確認できました。捜査一課に属してらっしゃる古角真さんですね、どうぞ」
真「え?」
と嘘だろと言わんばかりの顔をする
真「あ、ありがとうございます」

●同・中
真、管理人から資料を受けとる
管理人「こちらが王博文らの資料になります」
真「ありがとうございます…」
真、資料に目を光らせる
真、資料のある箇所に気づき驚く
真、管理人に資料を渡す
真「ありがとうございました」
と頭を下げ、走り出す

●防衛省・表
人々が行き交う

●同・エントランス
受付の係員に話しかける真
係員「どうかしましたか?」
真「あの一、私、古角敏樹警視総監の息子の古角真と申します。以前、小野副大臣様が警視庁にいらっしゃった時のお忘れ物を届けに参りました」

係員「け、警視総監の息子さん!?少々、お待ちください」

係員、確認のためその場を離れる

係員、真の元へ来る
係員「承りました。」

●防衛大臣室・中
真の声「失礼します」
という声とともに扉を開け、部屋に入る
そこには小野がいる
小野「忘れ物を届けにいらしたのですか。わざわざどうも」
真「はい。」
と真、ポケットを探すも何もない
真「あ、あの一非常に情けない話なのですが、忘れ物を忘れてきてしまって」

小野、高笑いする
小野「そうかい。まあいい、せっかく来たんだ。ゆっくりしてくといい。ちょっと便所に行ってくるよ」

小野、部屋を出る
真、即座に机の上にある手帳を見る
手帳には2016年10月、中国に訪問。とある
泊まったホテルの名前まで細かく記入されている


真「……」

その時、扉が開く音がする
小野「馬の前に人参をぶら下げておくと、食いつくものなのだね」
真、振り返る
真「やっぱり、あなたは、王達と以前面識があった」

小野「ああ、そうだ。……何故勘づいた?」
真「あなたが渡された護衛用の拳銃の弾丸ですよ」

真、小袋に入った銃弾を見せる
真「これは刑事が使っている規定の弾丸とは違う。もちろん護衛用の拳銃もこのような弾丸を装填されてはいない。それどころかこの弾丸はあのテロリストが使っていたものだ」

小野「私がその弾丸を装填する理由がどこにある?」

真「この手帳を見る限り、数年前に警視庁の刑事たちに弾丸の配布の賛同を警視総監に得られたとある」

真「あなたは、この弾丸が警視庁の刑事らの間で使用されてると思っていた。だから違う弾丸が入っていて困惑した」

真「この弾丸は殺傷能力が警視庁の規定のものより高すぎる。だから無理だったんだろう」

小野「なるほどねえ、だから違う弾丸が入っていたのか」

真、あっさり認めて驚く
真「……認めるんですか?」
小野「ああ。…まあ」

その時、真の右肩が音もなく撃ち抜かれる
崩れ落ちる真、痛がる
小野「この事実が公になることはないがね」

小野の背後からサイレンサ一付きの拳銃を持つ男が現れる
小野「それにしても凄い腕だろ?この男も王の仲間の中国人なんだがね、私の指示通り右肩に命中させたんだ」

真「貴方は…思っていたより賢くないようですね。警視総監の息子の私を殺したらその事は間違いなく公になる」

小野「ああ、君が死んだという事実だけがね。拳銃持ちの暴力団ぐるみの犯行による死亡、などと君の死因は湾曲できる」

真「……」

小野「王達はね、元傭兵だったんだがその後には只の強盗団になったんだ」

真「……あの資料の通りか。」

小野「私はあの日、中国の軍事施設の見学をしに、中国に訪問した。その夜……」

●中国都内のホテルの一室・中(夜・小野の回想)

護衛の一人が小野のいる部屋にチャイムを押す
小野「どうした?」
護衛「大変です!強盗にホテルが制圧されて……」
小野「何!?」

現代の小野の声「その強盗団が王達だった。」

(回想終わり)

●防衛大臣室・中
小野「私はね、その時に危機感を覚えたよ。私に対してではなく、この日本にね」

小野「当時、それなりの護衛をつけていったはずなのに一介の強盗団ごときにすぐに制圧されたからね」

小野「国の間の差を見せつけられたような気がしたよ。そうしてこう確信したよ。テロが起きればこの国は一溜りもないってね」

真「しかし、肝心の対抗馬であるテロ対策特殊部隊には予算が行き届かず……その不満からあなたは思いきってテロを自作自演した。私の勝手な推測ですが、どうでしょうか?」

小野「まだ、余裕そうだね」
小野が合図をし、男が真の左足を撃つ
痛がる真
小野、真に近寄る
小野「そうだよ。その通りだ。しかし弾丸でボロが出るとは警視総監殿に一杯食われたなあ。いつかは始末しようかな」

真「お前!?」
と睨む
小野「(笑い)冗談だよ、今はね」

真、睨み続ける

小野「あんな殺傷能力の低い弾丸で果たして国民は守れるのか、そんな私の親切な配慮を捨てたわけだから、彼にもそれなりの罰を下さないとなあ」

真、唇を噛み締める

小野「平和ボケした連中に国防の要となる対策特殊部隊の予算を削減され続けた。こんな馬鹿な話がどこにある!?だから私が正してやったんだ。」

小野「滝藤のことを英雄だと言う国民もどうかしてる。そんなんだから日本は平和ボケしてると言われるんだ!」

小野「マッチポンプも大変だったよ。私が雇ったテロリスト側に死人がでないように。出てしまうと平和ボケをした連中に非難されてしまうからね。」

小野「でもあの田中は、予算をほんの数%しか拡大しようしなかった。所詮奴もボケ老人だったわけだ」

真「だから一度目の面会で、王と貴方で田中防衛大臣の殺人を試みた。そういうことか!?」

小野「まあ、そうなるよね。」
と小野、時計を見る

小野「悪いがそろそろ待望の予算会議なんだ。君とゆっくり話したいがやむを得ない」
小野、男に合図をする

真、目を瞑る

そのときノック音がする
声「すいません。小野副防衛大臣様にご用がございます」

男、拳銃を隠す

小野「……入りなさい」

扉からは亀山が出てくる

真「亀山!?」

小野「前の護衛……ということはこいつの味方か、やれ」
と合図をする
男、拳銃を抜き出す
亀山「な、なんですかそれ。え、ちょっと待ってください」

真「亀山!逃げろ!」

亀山、呆気なく撃たれ、倒れる
真「……そんな、嘘だろ……」

亀山「発砲しました!今です!」

とその掛け声と同時に機動隊が部屋に突入し、取り囲む

呆気をとられる小野
介抱される真
真「亀山?大丈夫なのか?」
亀山「(衣服に隠した防弾チョッキを見せ)結構痛かったですけどね。」

真「てか、なんでこの場所が」

亀山「話は後でしますよ。」

小野と男、機動隊に取り押さえられる
真、小野に歩き寄る
真「あんたの国防に対しての考えは間違ってはないのかもしれない。事実、死人を英雄だといって賑わうこの国は危機感がないのかもしれない」

真「でも、滝藤さんを殺したのは紛れもないあんただ。あんたは国を守ることに捧げた命を無駄に潰したんだ!そんなあなたに国防を語る資格なんてあるのか!?」

小野「……」

真「国防に対して真剣に考えてるのはあんただけじゃないはずだ!いざとなれば国民一人一人が考えてくれる!」

真「守るべき人々を信じましょうよ!」

小野「……私がしたことは間違ってはいない。滝藤の命を潰したことは仕方のない犠牲だ。」

真「……」

小野「もし!国民が平和ボケから脱し一人一人が国防に対して真剣に語り合う、そんな未来が来たら」

小野「私がしたことを過ちだと認めよう」

小野、男と共に連行される

●病院・表
T「一か月後」

扉から出てくる退院した真
そこには亀山が迎いにきていた
亀山「退院おめでとうございます」
と頭を下げる

真「……なんかないのか?退院祝いとか」

亀山「残念ながらございません」
真「お前さあ、待望の上司の退院なんだからなんかは持ってこいよ。」

亀山「待望、ねえ」
真「なんだお前、なんだ本音を言ってみろ」
とじゃれあう

●特別課・中
亀山「特別課が出来た理由って知ってます?」

真「…俺の更正、だったか?」

亀山「それもありますけど、警視総監殿が小野副防衛大臣の野望を止めるために作ったんですって」

真、驚く

真「……だから小野に弾丸の配布の件で嘘をついたのか。泳がせるために」

真「てか、あの時なんで防衛省にきた?」

亀山「警視総監殿の直々のお達し、ですよ」

●警視庁・資料室・中(亀山の回想)
亀山「ここに来た?」
管理人「ええ、確かに古角さんがここにいらっしゃいましした。」

と、ここで受話器がなる
管理人、出る
管理人「はい。……いらっしゃいますけど、わかりました」

管理人、電話を切る

管理人「亀山さん、警視総監様がお呼びだそうです。」
亀山「え?」

●警視総監室・中
亀山「防衛省に突入ですか?」
敏樹「ああ、小野副防衛大臣が以前のテロリストとの戦闘を手引きした。彼には繋がりがあることが確認されてる」

敏樹「実はだね、特別課は小野を捕まえるための組織だったんだよ」

亀山「副防衛大臣をですか?」

敏樹「どうしても尻尾が掴めなくてね。孤島の調査や護衛はその為さ」

亀山「そうだったんですか」
(回想終わり)

●特別課・中
亀山「さらに万が一の為、僕たちの配属部署は捜査一課になってるみたいです」

真「だからあの時……早く言えよ……」

真「ていうか、特別課はどうなるんだよ」

亀山「解散、だそうです。僕らは捜査一課に本当に移動だそうです。」

真「捜査一課って、バリバリ働くとこじゃねえか!最悪だよ!」

亀山「バリバリ働いてたらしいじゃないですか。昔の真さんは」

真「え?」

亀山「真さんが警視庁に入ってからバスジャックの件まで、全部警視総監殿からお聞きしましたよ。」

真「あの野郎……」

亀山「これは僕の勝手な推理ですけど、あなたが僕を追い出そうとした理由って、僕の為なんじゃないですか?」

真「……」

亀山「図星?」

真「……まあな。」

亀山「あらら、やっぱ本当は優しいんだ。ツンデレってやつ?」

真「人をおちょくるな!……一年目ってホントに大事な時なんだよ。色んなことを学んだり、体験できたり。その時間をお前は無駄にしてしまいそうな気がしてな」

亀山「正直、僕も不安でした。警察学校の時は、凄い頑張ってて、でも周りからは気に入られなくて、テストで良い点とっても、剣道が上手くなっても、これで本当に立派な刑事になれるか、確証がなくて。ただ一人ぼっちだったっていう事実だけがあって」
と気づいたら泣き出していた亀山

真「亀山……」

亀山「でも、良かったです。真さんと一緒に特別課にいれて。ホントに良かった」
と涙を拭う

真「……留置場でお前が臆せず王を捕まえた時、なんか、悔しかったよ。後輩がこんな頑張ってんのに、俺はって。それがきっかけになれた、そんな気がする。」

真「ありがとな」
と頭を下げる

亀山「こちらこそ」
と頭を下げる

両者、頭を上げる

亀山「あと、警視総監殿が謝ってましたよ。バスジャックの件。」

真「え?」

亀山「根岸さんには今度、弁解の機会を与えるって」

真「ホントか?」

●警視総監室・中
亀山「わかりました。早速、防衛省に行ってきます。」

敏樹「あ、あと。」

亀山「はい?」

敏樹「バスジャックの件で本当に申し訳なかったと私が言ってたと真に伝えといてくれないか?」

亀山「え?」

敏樹「面と向かって謝っても、聞かないだろうし。君の方から言っといてくれないか?」

亀山「……わかりました」

(回想終わり)
●特別課・中
亀山「ホントは警視総監殿も間違ってたと思ってたそうです。でも自身の立場のあまりやってしまったと。」

真「親父……」

亀山「許してくれますか?」

真「いや、あいつの口から直接聞かないと気が済まない!土下座つきでな!」

真、部屋を立ち去ろうとする
亀山「ちょっと、どこへ?」

真「警視総監室だ!土下座なかったらそこで殴ってやる!」

亀山「ちょっと!駄目ですって!」
亀山、止める
真、意地でも行こうとする

真「先輩の行動を邪魔するのか!?」

亀山「いや、そこで許してあげるのが大人ってもんでしょうよ!」

真「黙れ!ケツが青い中坊に大人を語られたくないわ!」

亀山「あ一!また中坊って言った!許しませんよ!」

真「あ一、どうぞどうぞ。ご勝手に。お前に許されたとこでなんの意味もないわ」

亀山N「不真面目で、気持ち悪かった変な上司ですが」

下らない喧嘩を続ける二人
しかし楽しそうだ

亀山N「意外とカッコいい一面もあるのでした。」

おわり

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