◯緋冴子の家・前
   近藤、玄関のチャイムを鳴らす。
近藤「すみません。梶浦先生いらっしゃいますか?」
   誰も応答しない。
   もう一度チャイムを鳴らす近藤。
近藤「すみません。梶浦先生……」
   ドアが勢いよく開く。
   不機嫌そうな顔で近藤を睨む梶浦緋冴子(45)。着物を着ている。
   少し驚く近藤。
緋冴子「なんや。やかましい」
近藤「梶浦松炎先生ですか? 突然すみません。僕は近 藤蒼磨と申します。雑誌の記者をやっております」
   近藤、名刺を緋冴子に差し出す。
   緋冴子、機嫌悪く名刺を受け取る。
緋冴子「(名刺を見ながら)……で? うちに何のようや」
近藤「ぜひ、先生の新作日本画【火炎】の取材を、僕にさせて頂きたいのです」
   顔を上げて近藤を見る緋冴子。
   煙草を口から離し、近藤の顔に煙を吐く。
   苦しそうにむせる近藤。
近藤「ごほっ、げほっ」
緋冴子「はあ? 火炎の取材はどこの雑誌にも新聞にもさせんって決めとんねん。帰れやクソガキ」
   荒々しくドアを閉めようとする緋冴子。
   片手でドアを止め、身を乗り出す近藤。
近藤「松炎先生、待ってください!」
緋冴子「何やねん。しつこいな!」
   必死な顔で土下座する近藤。
   ドアを開けたまま真顔で近藤を見下ろす緋冴子。
近藤「僕は以前、会社で大きなミスをしでかしました。首寸前だった僕に舞い込んできた大きなチャンス。こんな大ネタ二度と書けない! 僕の妻は今身重です。今会社を首になったら家族が路頭に迷うことになる。先生、お願いです! あなたのことを書かせてください!!」
   ドアを開けたまま、近藤を真顔で見下ろす緋冴子。
   不適な笑みを浮かべる。
   緋冴子、素足で近藤の顎を上げる。
   唖然とした顔で緋冴子を見上げる近藤。
緋冴子「ええやろ。うちのこと書かしたる」
   目を見開き、笑顔になる近藤。
近藤「ありがとうございます!」
緋冴子「ただし、条件がある」
   はっとする近藤。
近藤「条件……?」
緋冴子「見返りは……あんた」
   茫然とする近藤。
緋冴子「あんたも知らないあんたを見せろ」
   動かない2人。
◯緋冴子の画室・中
   上半身裸で仰向けになり、絶望した顔をしている近藤。
   近藤の胸元を辿る緋冴子の素足。
   緋冴子の足の指が近藤の乳首を摘まむ。
近藤「あぁっ……!」
   着物を着たまま不適な笑みを浮かべ、近藤を見下ろす緋冴子。
緋冴子「奥さんにこんなんしてもらったことないやろ」
近藤「なっ……」
   前屈みになり、近藤に顔を近づける緋冴子。
   緋冴子の髪が近藤の顔に少し落ちる。
緋冴子「どこ触って欲しいか言うてみい」
近藤「そんなこと……」
   緋冴子、近藤の股間をぎゅっと掴む。
近藤「あぁっ!」
緋冴子「うちのこと書きたないんか」
   緋冴子から目を逸らし、諦めたように目を閉じる近藤。
   邪悪な笑みを浮かべ、近藤の顔を手で自分に向かせると、深く口づける緋冴子。
   ×   ×   ×
   荒い息をついて、うつ伏せに倒れている全裸の近藤。
   緋冴子、着物を羽織って前だけはだけ、近藤の腰に
跨がっている。
   手を伸ばし、近藤の首を横に撫でる。
近藤「松炎先生、もう……」
   緋冴子、近藤の首に置いた手に力を込める。
近藤「うっ」
   怒った顔の緋冴子。
緋冴子「松炎て呼ぶな。閨でまで画号で呼ばれたないねん。緋冴子て呼べ」
近藤「……緋冴子さん」
   不適な笑みを浮かべる緋冴子。 
緋冴子「ええ子やね」
   緋冴子、指先で近藤の背をなぞる。
   身を固くする近藤。
   緋冴子、身を屈め、近藤の耳元で囁く。
緋冴子「あんたの中には、あんたも知らない炎が眠ってる」
   目を薄く開く近藤。
緋冴子「会社で上司にへいこらしとる時のあんた」
   ×   ×   ×
   (フラッシュ)
   近藤の職場。
   近藤、上司に苦笑いで頭を下げている。
緋冴子「家で奥さんのお愛想伺いをしとるあんた」
   ×   ×   ×
   緋冴子、近藤の腰を持ち上げる。
緋冴子「その全てを燃やし尽くせ」
   虚ろな目でされるがままの近藤。
   近藤、四つん這いになる。
   緋冴子、近くにあった筆立てから筆を一本取ると、近藤の尻を叩く。
近藤「うっ……!」
   邪悪な笑顔を浮かべて近藤を見下ろす緋冴子。
緋冴子「緋冴子さん、いかせてくださいって言え」
   はっとした顔で後ろを振り返る近藤。
近藤「なっ……」
   緋冴子、更に強く近藤の尻を筆で叩く。
   折れる筆。
緋冴子「あんたもこのままやと辛いやろ。緋冴子さん、いかせてくださいって女のように泣きながら請え」
   項垂れ、震え出す近藤。
緋冴子「奥さんと子供、路頭にまよわせたいんか」
近藤「(小声)……かせてください」
緋冴子「聞こえへん」
   顔を上げ、涙目になって苦しそうな顔の近藤。
近藤「緋冴子さん! いかせてください! あなたの手で、僕を跡形も無く燃やし尽くしてください!!」
   口の端を上げ、にやりと不適な笑みを浮かべる緋冴子。
緋冴子「よう言うた。今楽にしたる」
   近藤の股間に伸ばされる緋冴子の白い手。
   緋冴子、近藤の股間をしごく。
近藤「あっ……、はぁっ……!!」
   邪悪な笑みを浮かべる緋冴子。
   近藤を片手で押し、仰向けにする。
   近藤の腰を両手で固定し、股間に顔を近づける。
   はっとした顔で緋冴子を見下ろす近藤。
近藤「嫌っ……!」
   緋冴子、笑みを浮かべ近藤を見上げる。
緋冴子「嫌、ではないやろ?」
   近藤の股間を舐める緋冴子。
   歯を食い縛り、涙目になり目を閉じる近藤。
   両腕を交差させ、目を隠す。
   ×   ×   ×
   緋冴子、近藤の股間に股がり、腰を振っている。
近藤「あ……あぁっ……!」
   汗をかきながら不適な笑みを浮かべ近藤を見下ろしている緋冴子。
緋冴子「うちの中に、あんたの白い絵の具ぶちまけえや」
近藤「くっ……!」
   近藤、上半身を少し上げ、緋冴子の中に射精する。
   緋冴子、身震いし、体を前に倒すと、近藤に激しく口づける。
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