喫茶店クレバーでは毎朝正雄からマスターあてに長文のメールを読む地陳姿があった。
幸恵は弁当箱を片手にむすっとした。
幸恵「まあでもさ、肝心の私はまだ恋人いないからね」
パソコンメールを見ていたマスターは嫌味を聞いていない。まだ早いと言いながらミルクティーを入れる。
幸恵「パパはさ詩織ちゃんのパパといつから仲良かったっけ?」
ふと考え込むマスター。脳裏に浮かぶのは商工会議所で笑う二人の若い姿。
詩織がふらっとやってきた。幸恵はたまらずハグをする。
詩織「幸恵ちゃーん、待っちょってくれたん?」
幸恵「あったりまえじゃろうが。幼馴染として聞きたい話が山ほどあるわ」
途端に顔を真っ赤にする詩織。
詩織「ここではじめて会った時から私らは恋に落ちてたっぽい」
マスターはむせび泣いた。
幸恵「理人くんは?」
詩織「研究室の都合で自主学習。蔵書になんかヒント得てるみたい」
幸恵は本の虫と化しているのか、と思ったら面白くて笑っていた。
詩織「幸恵ちゃんこそ。最近ファンクラブできちゃあせん?」
マスターの地獄耳が動く。
幸恵「知らんよ、うちそんなこと」
詩織「春江おばさんがスーパーで男子大学生の話を聞いてしもうたらしい」
ちょうとパートの聖子がやってきた。
詩織「マスター。怒っとるなあ。」
サンドイッチが焼きあがった。
マスター「今日はわしからのおごりじゃ。あとで春江ちゃんに来るように伝えてくれ」
鬼気迫る表情に圧倒される詩織。幸恵は詩織に頼んでいた料理レシピ本の代金を支払う。
聖子「マスター、人を見かけで判断しちゃいけませんよ。痛い目を見ますから」
やけに説得力ある聖子の声色。マスターはブラックコーヒーを飲み思わず苦そうに涙を目に浮かべていた。
コメント
コメントを投稿するには会員登録・ログインが必要です。