死体なんざ日干しにしとけ! アクション

突如始まった一方的な暴力。 奇跡的に生き残った二人の男女は、追っ手との戦いに挑む。
鈴木俊哉 9 0 0 09/07
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第一稿

登場人物

煤崎十一(すすざき じゅういち)(33)
雪舟ニニ(ゆきぶね にに)(24)
町口コルト(まちぐち こると)(21)
上下ミナリ(かみしも みなり)(38)
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登場人物

煤崎十一(すすざき じゅういち)(33)
雪舟ニニ(ゆきぶね にに)(24)
町口コルト(まちぐち こると)(21)
上下ミナリ(かみしも みなり)(38)

○ 荒野(早朝)
   だだっ広い荒野。強風が砂塵を巻き起
   こす。
   そこに、足を縛られ、手も縛られた人々
   が15人程、大きな輪になって立って
   いる。
   輪の中央には枯れ木や木片などが山積
   みになっている。
   そこを向くように立つ、拘束された人々。
   男が二人現れた。
   一人は上下ミナリ(38)。ヒョロっと
   背が高く、髪も長い。黒いロングコー
   トの下に、黒いスーツを着ている。
   もう一人は町口コルト(21)。背は上
   下より低く、短髪の髪。ライダースジ
   ャケットを着ている。
   二人は輪になった人々には一瞥もくれ
   ず、木片の山に近づく。
   二人は手にしたガソリン缶の中身を、
   ドバドバと木の山にかける。
   コルトが背負っていたリュックを下ろ
   す。
   中には大量の弾丸が入っている。
   その弾丸を、木の山にバラバラと落と
   す。その数、100発。
   そこから離れていく二人。
   コルトが何かヒモのようなものを垂ら
   していく。
   導火線だ。 

○ 荒野に大きな石がある
   その上に腰掛けるコルト。
   上下は立ち、双眼鏡で人々の様子を観
   察する。

○ 朝陽が雲に隠れる。
   スゥッと薄暗くなる荒野と輪になった
   人々。

○ 上下がパチンと指を鳴らす。
   その合図で、コルトが親指と人さし指
   を擦り始める。
   しばらくすると指から煙が出始める。
   パチン!指を弾くと、飛んでった火だ
   ねが導火線に着火する。
   導火線を走っていく火。
   徐々に、木の山へと近づいていく導火
   線の火。
   ガソリンに燃え移った。大きな炎とな
   る。炎に照らされて、辺りが明るくな
   る。

○ 上下が双眼鏡で見ている。
   明るくなった事により、怯えた人々の
   表情が良く見える。

○ 大きな炎の中
   熱せられた銃弾がじわじわと熱くなり、
   赤くなってくる。
   一発の銃弾が、パン!と弾けた。
   どこかへ向かって弾け飛んでいった銃
   弾は、拘束された男の脳天を直撃する。
   ドサッと地面に倒れる男。

○ 荒野、大きな石
   上下とコルトが、拳と拳をコンとぶつ
   ける。

○ 荒野、炎の近く
   どんどん弾け飛んでいく銃弾。
   弾ける音が荒野に響く。
   空を切る銃弾もあるが、多くは人々に
   当たり、死んでいく。
   生きてる人々が徐々に少なくなってい
   く。
   恐怖の限界に達した男の顔。
   煤崎十一(33)だ。
   口に巻かれた布の隙間から、荒い呼吸
   が漏れている。
   顔面は脂汗でビッショリと濡れ、小刻
   みな震えが止まらない。
   また銃弾が弾けた。
   だが、誰も倒れない。
   煤崎、ハッと気付く。
   ガクンと前のめりに倒れる煤崎。
   地面に突っ伏し、なるべく動かないよ
   う努めている。
   その間にも、弾けた銃弾によって人々
   が死んでいく。
   銃弾が弾ける音が止み始めた。そして
   終わった。
   輪になった人々は全て死に・・・
   いや一人生きてる。
   荒野をそよぐ風が生存者である女のス
   カートを揺らしている。
   涙、汗、鼻水でぐしゃぐしゃになった
   顔の、雪舟ニニ(24)だ。

○ 荒野、大きな石
   「生きてら」と双眼鏡で見てる上下。
   コルトが立ち上がり、今や大きなたき
   火と化した炎へと近づいていく。

○ たき火近く
   ニニは生きている。どこも被弾してい
   ない。
   コルト、思わず唸る。
コルト「なんって女だ!生き残るとはな・・
 ・。大したもんだ」
上下「さて・・・」
   上下が銃を抜く。銃口はニニに向けら
   れている。
コルト「待て!あっさり殺すのか?」
   上下、肩を上げるジェスチャー。
コルト「なんか・・・、面白い使い方ないか
   な」
   その時、地面では煤崎が息を潜めてい
   た。
   コルトが近くにいる。バレるのでは・
 ・・?
上下「上に相談するか?」
コルト「それ待ち!上の連中はつまんねえ事
 ばっか言うからな・・・」
   その時だった。
   煤崎の髪が、あまりの極限状態に耐え
   きれず、黒から白へと変わっていく。
   コルトがそれを見つける。フフッと笑
   う。
コルト「生存者、もう一名発見だ。いいゲー
 ムが出来るぞ・・・」

○ 荒野(朝)
   膝をつき、うな垂れる煤崎。
   後ろではコルトが銃口を煤崎に向けて
   いる。ニニが拘束され、立たされてい
   る。
コルト「なんて薄汚い人間なんだろうな、お
 前は。お前が勝手に死んだフリをしたせい
 で、死の流れみたいなもんが変わっちまっ
 たかもしれない。その変化で死ななくても
 良かった人が死んでるかもしれないんだぞ!」
   コルト、銃口で煤崎の後頭部を荒く小
   突く。
コルト「まったく・・・ヘドの出る人間だ。
 あいつら全員の死を、お前は背負っていけ
 よ」
   ニニに視線を移すコルト。
コルト「今から、ズルをして死んだフリして
 たコイツに、罰を与える」
   煤崎がビクッとする。
コルト「その罰を与えた後、女と共に、俺た
 ちから逃げられたら、お前らを許してやる」
ニニ「許す!?あ、あんた達が勝手にやって
 ることでしょ!」
   ニニに、上下の痛烈なビンタ。
   陽が差した。雲で隠れていた太陽が姿
   を現した。
コルト「さあ、始めよう」
   上下とコルト、協力して、煤崎の目の
   前に双眼鏡をセットする。
   目を閉じられないよう、上下がまぶた
   を掴む。
   また雲に隠れていた太陽が、じりじり
   と姿を現す。
ニニ「や、やめて・・・」
   太陽が出始める。
   全てを察したニニ、
ニニ「その前に私を見て!」
   ニニの大声。
   思わず煤崎は、顔を押さえる二人の手
   を振り払い、振り返る。
   そこには淡い太陽光を帯びたニニの姿
   が・・・。
   すぐに双眼鏡へと目を戻される煤崎。

○ 双眼鏡の世界
   太陽がゆっくりと昇り、強烈な光線を
   放ち始める。
煤崎の声「がああああ!!!」

○ 荒野
   太陽光によって、目が焼け爛れた煤崎。
   痛みから逃れようにも、二人が押さえ
   つけてる。
   光が宿らなくなった煤崎の目。
コルト「今から一時間だ」
   コルトが時計に何やらセットする。
   地面に突っ伏す煤崎を見て、 
ニニ「ああ・・・あああ・・・」
   取り乱すニニ。
   煤崎は手で目を覆い、痛みに耐えてい
   る。
ニニ「は、はやく、早く逃げなきゃ・・・!」
   ニニ、煤崎に駆け寄り、助け起こす。
   煤崎の耳元で、力強く囁く。
ニニ「生き延びるわよ・・・!」
   のろのろと走り出す二人。
   残された上下とコルト。見つめ合う。
町口「一時間、何する?」
上下「・・・」

○ 森(昼)
   煤崎の手を引いて、森の中を走るニニ。
   木の枝を杖代わりにした煤崎が、懸命
   についていく。
煤崎「ただ・・・、ただ逃げるだけじゃ駄目
 だ」
ニニ「え?」
   立ち止まるニニ。
煤崎「僕らが今走ってきた道は、土でできて
 いたね?」
ニニ「う、うん」
煤崎「足跡がついてしまったはずだ。ここに
 居る、と教えてるようなものだ」
ニニ「わ、分かった・・・!」
   ニニ、木から大き目の枝を折り、それ
   で地面を掃く。
   ザッザッザッ、とやっていくと自分た
   ちの足跡が消えた。
ニニ「これからどこに逃げれば・・・」
煤崎「僕たちは逃げるために一時間使おうと
 しているが、戦うために使うべきじゃない
 だろうか」
ニニ「戦う、って・・・。武器も何にも無い
 んだよ!?逃げればどこかで人に会うかも」
煤崎「僕たちには脳みそがある。考えるんだ」
   唖然とするニニ。
ニニ「あ、あなた、さっき失明させられて、
 これから殺されるかもしれないのに・・・
 どうしてそんなに冷静なの」
煤崎「僕は常に冷静だ。そしてよく考える。
 だから銃弾でも死ななかった」
ニニ「そ、それで・・・どうしたらいいの?」
煤崎「色々とやる事がある」
   ×    ×    ×    
   煤崎が手の平サイズの石を、苦労しな
   がら研いでいる。
   ニニはそばで大きな穴を、石を使って
   掘っている。
   煤崎、石を研いで出来たナイフの切れ
   味を試す。
   自分の親指の腹に刃をあて、スーっと
   切る。
   親指の腹がパクっと割れて、血が滲み
   だす。
   ニヤッと笑う煤崎。
煤崎「ナイフが出来たよ」
   穴掘りで疲れ果てたニニ、
ニニ「そりゃ・・・、良かったわね・・・」
煤崎「よし、次のステップに進もう」
   ×    ×    ×    
   煤崎、ニニ、二人で、太めの木の枝の
   先端を削いでいく。
   煤崎は恐る恐る、枝を削ぐ。
   ニニは手際よく削いでいく。
   削がれ、先の細くなった枝が10本ほ
   ど出来た。
煤崎「次に進もう」
    ×    ×    ×
   二人で木の枝を選んでいる。
   ニニに枝を曲げさせたりして強度を確
   かめている。
   木のつるも同じように、伸ばしたりし
   て使い勝手を確認。
   さっき削いで細くなった枝、その先を
   石のナイフで尖らせるニニ。
   弓矢の完成だ。
煤崎「ニニさん、時間は?」
ニニ「もう、一時間経ちそう・・・。ほ、本
 当に大丈夫なのかな」
煤崎「やるべき事はやりました。生死をかけ
 た一時間だった・・・。あとは結果を待つ
 のみ」

○ 荒野(昼)
   変な形の岩の上で待機するコルト。
   上下は岩で出来た木陰で、紙に何か書
   いている。
   腕時計を見るコルト。
コルト「時間だ」
   上下がペンをしまい、紙を折り畳む。
   コルト、拳銃を抜き、空に向かって撃
   つ。響きわたる銃声。

○ 森の中
   森の中にも、かすかに銃声が聞こえて
   くる。
煤崎「聞こえる・・・銃声だ」
ニニ「な、なにかあったのかな・・・。そう
 だ!警察がやってきて」
煤崎「・・・狩りの開始を告げてるだけだよ」
   伏せた煤崎、体の上に、落ち葉を大量
   にかけ、カモフラージュする。
   泣きそうなニニも同じことをする。

○ 荒野
   コルトが銃声が消えていくのを待って、
コルト「行くか」
上下「ああ」
   歩きだす二人。

○ 森の近く
コルト「こっちの方に向かってたよな?」
上下「ああ」
   森に近づいていく二人。

○ 森の中
   煤崎たちが足跡をつけた道がある。
   なかなか足を進めないコルトたち。
   地面をじっと監察している。
コルト「これ・・・足跡消してるな」
上下「ああ」
コルト「やるねぃ」
   コルト、少しずつ足を進める。上下も。
   少し歩くと、コルト、何かに気づく。
   それは地面に残った、煤崎の杖の跡。
   それが点々と、森の奥へと導く様につ
   いている。
   声を押し殺してクスクス笑うコルト。
コルト「杖の跡は忘れちゃったか(笑)」

○ 森の中
   落ち葉を被って隠れている二人。ひそ
   ひそ声で話している。
ニニ「えぇっ!杖の跡をわざと残してきた!
 ?」
煤崎「あちらはこちらが何か罠を仕掛けてる
 と、当然思ってる。その場所まで誘導する
 為に必要だったんです。足跡じゃ、警戒心
 を強めてしまう」
ニニ「はあ~・・・」
   ニニ、手にした弓矢を握る力が強くな
   る。
ニニ「でも・・・本当にうまくいくのかな・
 ・・弓なんて射ったこと・・・」
煤崎「大丈夫です。俺にはもう出来ませんが、
 標的をしっかり見るんです」
   その時、ガサガサと草葉を揺らして、
   コルトたちが現れる。
   煤崎たちとは20メートルほど離れて
   いる。
   そこは周りを大木や生い茂った草木で
   埋められた、森の一本道。
   そこをコルトたちが歩いてくる。
ニニ「(小声で)き、来た・・・!」
煤崎「(小声で)落ちついて。そろそろだ・・
 ・」

○ 道に突然大穴が出来る
   煤崎たちが仕掛けた落とし穴だ。
   落とし穴の底には、先の尖った木が突
   き立てられている。
   コルトは穴のヘリにしがみつき、落ち
   るのを免れた。
   上下が、コルトを助け出すべく、手を
   差し伸べる。

○ニニ「今だ!」
煤崎「落ちたか!?」
ニニ「相棒が落ちて、一人残ってる!そいつ、
 今、動き止めてるんだ!射てる!」
   ニニ、矢を射る体勢を取る。
煤崎「落ちついて・・・」
   ニニの視線の先、コルトを引っ張り上
   げる上下の姿が見える。
   動きはほぼ止まっている。
   矢を射るニニ。
   ヒュンと音を立てて飛んでいった矢は
、   上下の背中に刺さった。
   驚き、痛みをこらえながらも、コルト
   を助け出した上下。
ニニ「くそっ!心臓狙ったのに!」
煤崎「当たった事は当たったのか・・・」
   上下とコルトがこちらを睨んでる。
   こちらも睨みかえす。
   コルトが銃を構えた。
   煤崎が手製のナイフを構えた。
コルト「はっ(笑)ナイフで!」
   引き金を引きそうなコルトを制す上下。
   手にはナイフが握られている。
上下「やらせてくれ」
コルト「やらせてって・・・。そりゃお前が
 勝つだろ」
上下「あいつは何か持ってる」
   上下、背中に矢が刺さったまま歩いて
   いく。
   煤崎も歩いていく。
   二人が出会った。
煤崎「いるんだろ?」
上下「いる」
煤崎「アンタも俺も手負いだ。戦ったって醜
 い争いになるだけだろう」
上下「何か考えがあるのか?」
煤崎「目を閉じた状態で、上下左右、どこか
 ら攻撃するか、というのを事前に教え、そ
 の後切る。どうだ?」
上下「・・・いいだろう」

○ 森、広々とした場所(夕)
   煤崎と上下が立っている。近い距離だ。
   ニニとコルトは味方から距離をおいて
   立っている。
   戦いが始まる。
煤崎「先攻後攻はジャンケンで」
上下「ジャンケンっつったって・・・。俺が
 見て、勝敗を伝えればいいのか?」
煤崎「かまわない。・・・最初はグー、ジャ
 ンケン・・・ポン」
   煤崎はチョキ。上下はパー。
上下「俺がグーで、俺の勝ちだ」
煤崎「そうか・・・」
   ニニには聞こえてこなかった。コルト
   は何となく察してクスクス笑っている。
上下「始めるぞ。まずは右からいく」
   煤崎、無言で頷く。
   二人が体勢に入った。
   上下が右から切りつける。
   煤崎、反応し、ナイフでガードしよう
   とするも、二の腕を切られてしまった。
   にじみ出た血が服に広がる。
煤崎「次はこっちの番だ」
   ナイフを構える。
煤崎「右からだ」
   左腕を上げ、防御の姿勢に入る上下。
   煤崎、勢いをつけて、左から切る。
   ナイフは上下の喉をパックリと切り裂
   いた。
   ノドに溢れた血がゴボゴボいっている。
上下「(血でうまく喋れない)て・・・めぇ・
 ・・きた・・ねえ・ぞ・・」
煤崎「先に騙したのはお前の方だ」
   上下、どさっと地面に倒れる。広がる
   血だまり。
   座っていたコルトが、勢いよく立ち上
   がった。
コルト「てめええええ!!」
   全速力で煤崎に迫る。
   ニニが動いた。弓を構え、照準をコル
   トに合わせた。
ニニ「動かないで!」
コルト「ああ!!??」
   弓で狙われている事に気付いたコルト、
   拳銃を煤崎に向ける。
   静かな間。じっと耐える三者。
   煤崎がニニの方に向かって、コクリと
   頷いた。
   ニニが矢を放つ。
   凄い速度で飛んでいく矢。
   コルト、前転宙返りをし、矢を避ける。
   背中から地面に落ちたコルト、その姿
   勢で煤崎に銃を向ける。
   が、煤崎はそこにはいない。
   真後ろにいた。大き目の石を握りしめ
   て。
   その石を振り下ろす!
   が、コルト、地面を素早く転がり、避
   ける。
   体勢を立て直し、煤崎に向けて銃を向
   ける。
   石が飛んできた。煤崎が投げたのだ。
   石は銃に当たり、銃は飛んでった。
   煤崎がナイフを構えて突っ込んでくる。
   コルト、宙を飛ぶ銃を、握っていたの
   とは別の手で華麗にキャッチする。
   迫りつつあった煤崎の肩に、銃弾を撃
   ち込む。どう、と倒れる煤崎。
   コルト、すぐにニニに銃口を向ける。
    ×   ×   ×
   後ろ手にジップタイで拘束された煤崎
   とニニ。
   煤崎の肩のあたりは血で真っ赤だ。
   上下の死体の前に、コルトが立ってい
   る。じっと見下ろしている。
   足先で上下の死体をつつくコルト。
コルト「どうしたらいいんだよ・・・」
   その時、上下の胸元が光った。
   ペンダントだ。
コルト「・・・思いだした。死んだらペンダ
 ントの中の遺書を読んでくれって・・・」
   コルト、ペンダントをむしり取り、裏
   蓋を外してみる。小さく折り畳まれた
   遺書が出てくる。
   コルト、読む。
コルト「コルト、俺たちは悪党だったが、俺
 は根っからの悪党にはなれなかった。平気
 で人を殺すお前を冷めた目で見た事も何度
 かある」
上下の声「そんな俺からの最期の願いだ。も
 し今、目の前に殺す予定の人間が二人いた
 ら、一人は助けてやってくれ。頼む。・・
 ・お前はアウトローとして生きていけよ」
   読み終えたコルト。
コルト「一人助けろ、だと・・・!?聖人ぶ
 りやがってよ、反吐が出るぜ!」
   くるっと煤崎たちの方を見るコルト。
コルト「皆殺しだ。お前ら二人とも死ね。殺
 してやる」
煤崎「待て!仲間の最期の言葉も守れないの
 か。死者が泣いてるぞ」
コルト「はっ。あんなもんは日干しでいいん
 だ」
煤崎「お前たちが何年組んでいるかなんて知
 らない。でも絆があったはずだ。助け合っ
 た事もあるだろう。そんな仲間の、友人の
 最期の言葉・・・」
コルト「ごちゃごちゃうるせぇ。確かにな、
 上下とは仲良かったよ。奴は基本的に〝あ
 あ〟しか言わんが」
   コルト、フッと笑って、
コルト「よし、上下の願い聞いてやる。しか
 し、そこに俺らしさを加える」
煤崎「?」
ニニ「?」
コルト「助けられるかどうかは分からない。
 ・・・いいか、ここに」
   コルト、右腕の服の裾の中からワイヤ
ーをスーッと出してくる。
コルト「ピアノ線がある。これを耳から入れ
 て脳に突き刺し殺す。もう一つの死に方。
 ここに」
   拳銃を握った手を上げる。
コルト「拳銃がある。拳銃による一瞬の死を
 選んだ場合、二人とも死んでもらう」
   煤崎とニニ、動揺している。
コルト「まずどっちが犠牲になるか・・・」
煤崎「俺だ」
   間髪入れず答えた煤崎。
ニニ「ま、待って!そんな簡単に・・・」
煤崎「俺でいい。・・・俺の脳裏に焼き付い
 てる、最後に見た君は生きるに値する人だ
 った」
ニニ「・・・」
コルト「決まったか。も一つ決めて。ピアノ
 線か、拳銃・・・」
煤崎「ピアノ線だ」
コルト「本当にいいのか?多分、痛いぞ」
   この場に耐えきれないニニ。
ニニ「いやだ・・・いやだ・・・」
煤崎「ピアノ線でいい」
コルト「大した奴だ・・・」
   煤崎を座らせ、右耳にピアノ線を近づ
   けていくコルト。
   ニニは側で呆然と立ち尽くしている。
   なにかボソボソ言っている。
ニニ「やめて・・・やめて・・・やめて・・
 ・」
   ピアノ線が入って行くにつれ、煤崎の
   顔は苦痛に歪む。
煤崎「ぐっ・・・が!・・・ぎぃ・・・」
   コルトが思いっきりピアノ線を突っ込
   む。
   煤崎が恐怖の表情を浮かべた瞬間、動
   きが止まる。
   死んだのだ。
   スルスルとピアノ線を抜くコルト。
   全て抜くと、耳の穴から一滴の血が流
   れてくる。
   ポケットから出した綿棒で、それを拭
   うコルト。プロの手並みだった。
コルト「さてと・・・」
   チラとニニを見やるコルト。ニニは死
   んだようになっている。
コルト「殺すより残酷だぜ、上下・・・」
   歩き去ろうとするコルト。ニニに一声
   かけていく。
コルト「よく生き残る女だな」
   スタスタと歩いていくコルト。
   ニニの動きが止まった。その目は生き
   ていた。
   煤崎の亡骸から石のナイフを取るニニ。
   チラッとコルトが歩いていった方を見
   る。
   もの凄い速さで駆けだすニニ。
   その手にはしっかりとナイフが握られ
   ている。

○ 草原(昼)
   ブラブラ歩いているコルト。手には上
   下のペンダントが握られている。
   身を屈め、足音を殺しながら、後を追
   うニニ。
   コルトが大き目の石の近くを通り過ぎ
   た。
   ニニ、石に走り寄る。石を足場にし、
   バッと高く飛んだ。
   コルトが気付き、振り返る。
   拳銃を抜こうとしたが、握ってるペン
   ダントが邪魔で抜けなかった。
   落下しながら石のナイフでコルトの首
   を掻っ切るニニ。
   首から血を噴き出しながら、よろよろ
   と歩くコルト。
   バタッと倒れる。
   ニニがすぐ側に立っている。しっかり
   と石のナイフを握って。
ニニ「答えろ。お前らの〝上の連中〟という
 のは何だ?」
コルト「教えた・・ところで・・・お前にゃ
 ・・なにも・・・できな・・・」
ニニ「そのまま死ぬな!」
   コルト、血だらけの手で、上着のポケ
   ットからゆっくり名刺を取り出す。
コルト「く・・・苦しむ・・だけ・・だぜ・
 ・・」
   そう言ってコルトは死んだ。
   名刺を手に取るニニ。名刺には名前が
   書いてある。
ニニ「こいつが・・・!」
   ニニ、ある事に気づく。
   コルトの上着のポケットには、大量の
   名刺が入ってる事に。
   それら一つ一つを見ていくニニ。
   日本人だけじゃない。アメリカ人、中
   国人、ヨーロッパ人、世界中のありと
   あらゆる人々。
ニニ「こいつら全員・・・!」
   石のナイフを握る手に、力が入る。
ニニ「全員殺してやる」
   ニニの力強い目。 

               終わり

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