登場人物
卯山みゆき(54) パート従業員
指原 陸 (22) 大学4年生
白松 恋歌(20) 大学2年生
渡辺 航 (26) アイドル
○卯山家・寝室(朝)
目覚ましが鳴る。
卯山みゆき(54)が腰を掻きながら起
きる。
○同・洗面所(朝)
みゆきが歯磨きをする。
えずくみゆき。
○同・キッチン(朝)
みゆきが料理をする。
○同・玄関(朝)
卯山弘(57)が靴を履く。
みゆきは鞄を弘に渡す。
弘「じゃあ」
みゆき「うん」
○卯山家・ベランダ(朝)
晴天の空。
スズメが柵の上に止まり、パンのカス
を突く。
みゆきの声「早く食べろ〜」
ダウンコートにリュックを背負ったみ
ゆきがスズメを見つめている。
スズメはゆっくりとパンを突く。
みゆき「ちょっと、ほら急いで!」
スズメが突くのを止め、周りを見渡す
と、鳩が数十匹、みゆきに向け飛んで
くる。
みゆき「うわあ!」
スズメは飛び立つ。
みゆきは鳩を手で払っている。
○同・前(朝)
通学途中の小学生2人がベランダのみ
ゆきを見上げ、
小学生A「またやってるよ」
小学生B「あぁ」
みゆきは鳩を手で追い払っている。
○坂道(朝)
みゆきが全速力で自転車を漕いでいる。
自転車は前と後ろに子供の座る椅子が、
錆びた状態でついている。
その表情は真剣。
○スーパー田中・前(朝)
綺麗な白い二階建ての建物で、壁面に
は吊り看板「新装開店大特価中!」が
設置されている。
看板には渡辺航(26)のポスターに
「新人男性アイドル 渡辺航が1日店
長に!」の文字。
急いで自転車で入って来るみゆき。
指原陸(22)がみゆきを追い越す。
指原「ウィーっす」
みゆきは負けじとスピードを上げる。
○同・女子更衣室(朝)
着替えているみゆき。
郁子がみゆきに寄ってくる。
郁子「今日、楽しみね」
みゆき「そう?」
郁子「だって、イケメンのアイドルよ。こ
んな田舎に一日店長だなんて、かわいそう
にね」
みゆき「あ、今日雑貨の入れ替えだわ」
郁子「あら、卯山さん興味ないの?」
みゆき「私なんかおばさん中のおばさんよ?
若い子なんか」
手を振るみゆき。
濃い化粧をした白松恋歌(20)が来る。
郁子「気合入ってるわねぇ、白松さん」
みゆき「若いってことよ」
恋歌「みなさん、おはようございますぅ」
みゆきは鼻を拭う。
恋歌「今日、一日店長で来るわったん。実は
私の推しなんですよぉ」
みゆき「わったん? 推し?」
恋歌「もうほんとのほんとのリアコなんで!」
呆然と立つ、みゆきと郁子。
恋歌「同担も無理です! なんで、皆さん好
きにならないでくださいね」
郁子と顔を見合すみゆき。
みゆき「なるわけないって」
○同・売り場(朝)
みゆきは頬を赤らめ、驚いた表情。
みゆきN「そう、思ってた、はずなのに」
渡辺航(26)が微笑んでいる。
みゆきN「こんなおばさんがに」
従業員たちが悲鳴を上げ騒いでいる。
みゆきと渡辺が握手している。
みゆきN「推しが」
渡辺がウィンクする。
みゆきN「出来ちゃうなんて」
みゆきは呆然とする。
恋歌「長いよ、卯山さん!」
恋歌はお尻でみゆきを飛ばす。
恋歌「わ、わ、わったん、ほんとにわったん
だ」
泣く恋歌。
渡辺「大丈夫ですか?」
恋歌「ほんとに、昔からずっと好きで……」
指原が横からCDを渡辺に差し出し、
指原「あの、サインください」
渡辺「はい! もちろん」
片手は恋歌と握手、片手で指原にサイ
ンする渡辺。
みゆきは恍惚の表情。
郁子がみゆきに近寄る。
郁子「いや〜かっこよかったわね」
みゆきは呆然としている。
郁子「卯山さん? 卯山さん」
みゆき「は、はい」
郁子「大丈夫?」
みゆき「全然!」
郁子「ふーん」
唇を噛み、手を握っているみゆき。
○同・入り口
エプロンをつけ笑顔で会釈する渡辺。
渡辺「ありがとうございました!」
渡辺の周りには主婦達が群がる。
主婦A「握手して〜!」
渡辺「はい!」
主婦Aと握手する渡辺。
主婦達の悲鳴。
○同・レジ
みゆきが淡々とレジをしている。
主婦達の悲鳴が聞こえて来る。
客の小林が来る。
小林「うわーすげーな、あれぇ」
みゆき「いらっしゃいませ」
小林「妖怪みたいに群がってるぞ」
みゆき「へえ」
小林「あれ、卯山さん興味ないの?」
みゆきは動揺を隠すようにして、
みゆき「な、無いですよ」
小林はレジ画面を見て、
小林「え、ちょっと、何? 俺パプリカなん
て買ってないよ?」
みゆき「え?」
レジの画面「パプリカ 1個」
みゆき「あぁ、すみません」
小林「こんなジジイがパプリカ買うわけねえ
だろうよ」
画面表示を取り消すみゆき。
小林「珍しいミスだな」
小林がニヤついた顔でみゆきを見る。
小林「もしかして、卯山さん」
みゆきは小林を睨む。
食パンの上に二リットルの水を置こう
とするみゆき。
小林「ちょ、ちょ、やめてよ!」
主婦達の悲鳴が聞こえる。
みゆきが入り口の方を見ると、
渡辺が主婦に壁ドンしている。
小林も振り返りながら、
小林「うえええ、見てらんねえなあ……って、
白松ちゃん、こわ!」
恋歌がレジをしながら、渡辺の方を睨
んでいる。
恋歌「……ウゥ、ババアめぇ」
小林「さすがは女の嫉妬」
みゆき「(小声)いいなぁ」
小林「え?」
みゆき「何でもありません」
動揺を隠せず、レジ操作をするみゆき。
小林はレジの画面を見て、
小林「オイオイオイ!」
レジの画面「パプリカ 1000個」
画面のパプリカの個数が増えていく。
小林「ちょ、ちょっと! 卯山さん!」
動揺しながらレジを打つみゆき。
○同・裏口(夕)
田中がお辞儀している。
車が走っていく。
○同・事務所(夕)
みゆきが帰り支度をしている。
恋歌が入って来る。
みゆき「お疲れ様」
恋歌「はあ、わったん尊すぎた。ほんとに」
みゆきは恋歌を一瞥する。
恋歌「ね、指原さん」
ソファに座る指原。
みゆき「わあ、指原くん、いたの」
指原「人を幽霊みたいに」
みゆき「ごめん」
恋歌「ちょっとぉ、私の話聞いてますぅ?」
指原「聞いてない」
恋歌「もう! ファンサしすぎなの。壁ド
ンとか、普通に無理なんですけど〜」
恋歌は椅子に座りこむ。
恋歌「あ、卯山さんは大丈夫ですよねぇ?」
みゆき「……何が?」
恋歌「もちろん、わったんのこと好きになっ
てないですよね?」
みゆき「あ、当たり前じゃないの! あ
んな風におばさんが群がってねえ、みっと
もないったら、ありゃしないわ!」
指原はみゆきを見る。
恋歌「卯山さんめっちゃ喋る〜」
みゆき「ま、まあ、そういうことよ」
動揺するみゆき。
○卯山家・ダイニング(夜)
テーブルの上に食事が並ぶ。
みゆきと弘が食事をしている。
弘「……どうしたんだ」
みゆき「何が?」
弘「さっきから野菜しか食ってないぞ」
みゆきの小鉢にはそれぞれ肉だけが残
っている。
みゆき「あら、ほんと」
弘「ほら、ハンバーグまで」
みゆきの玉ねぎだけ除かれたハンバー
グ。
みゆき「……はあ。食欲ないのよ」
弘「それってそういうことなのか」
みゆき「さあ? まあ、別に、大したことじ
ゃないから。ごちそうさま」
みゆきはキッチンに行く。
みゆき「先、お風呂いただきますね」
弘は不思議そうな表情。
○同・風呂場(夜)
みゆきは湯船に浸かり、ため息をつく。
○同・キッチン(夜)
冷蔵庫からビールを取り出し、飲むみ
ゆき。
みゆき「はあ〜、最高」
× × ×
渡辺航(26)が微笑んでいる。
× × ×
みゆき「はっ、また出てきた」
頭を振るみゆき。
みゆき「ちょっとだけ、見てみるだけ見てみ
るだけ」
みゆきは弘がいないか確認してから、
スマホで渡辺航と検索する。
サイトには渡辺の情報や、渡辺の写真
が並ぶ。
みゆきは老眼でスマホを遠ざけ、見る。
みゆき「あら、まあ」
スマホをフリックするみゆき。
動画が再生される。
渡辺が踊って歌う動画。
みゆき「(小声で)かっこいい」
弘の声「母さーん」
みゆきは慌てて再生を止める。
みゆき「は、はーい」
ビールを一気飲みするみゆき。
○スーパー田中・レジ(朝)
みゆきがカトラリーの整理をしている。
小林がかごを持ってやって来る。
みゆきは無愛想に、
みゆき「いらっしゃいませ」
みゆきは小林からカゴを受け取り、レ
ジにプチトマトを通す。
小林がニヤついている。
みゆき「なんですか、気持ちの悪い」
小林「ちょ、何その態度。せっかくこれ持っ
てきてあげたのに〜」
渡辺の載った新聞の切り抜きをみゆき
に見せる。
みゆき「は! わったん!」
持っていたプチトマトを盛大にぶちま
け、小林から切り抜きを奪い取る。
小林「あーあーあーあー!」
プチトマトを拾い上げる小林。
みゆき「は!」
みゆきは小林に切り抜きを突き返し、
みゆき「きょ、興味ありませんから! 返し
ます!」
○同・屋上
手のついていないお弁当。
イヤフォンをするみゆき。
みゆき「ちょっとだけ、見てみるだけだか
ら!」
渡辺が踊り歌う動画を再生する。
渡辺の声「キラキラの〜」
みゆきは声を抑え、悶える。
指原の声「あ、わったんの曲」
みゆき「へ?!」
みゆきが振り向くと、指原がドア前に
立っている。
みゆきは慌てて動画を止める。
みゆき「ななななななんで!」
指原「丸聞こえですよ」
イヤフォンの繋がっていないスマホ。
みゆき「は!」
指原「へえ、やっぱり、卯山さん好きだった
んですか」
みゆき「こ、これはたまたまよ!」
指原「でもそれ、結構コアな曲っすよ」
みゆき「そうなの?」
指原「いい曲っすよね」
みゆき「ど、どうかな?」
指原「じゃあ昨日やばかったじゃないですか」
みゆき「うーん」
指原「俺もアイドル好きなんで。昨日もサイ
ンもらっちゃいましたよ〜」
みゆき「指原くん、あのね」
指原「嬉しいな。オタ友だ。あ、でも白松さ
んにバレたらまずいっすね。あの子同担拒
否だから」
みゆき「ちょっと指原くん!」
指原「はい?」
みゆき「私、好きじゃないから!」
指原はしたり顔をして、
指原「冗談は顔だけにーー」
みゆき「指原くんて嫌〜な子だったのね」
× × ×
弁当を食べるみゆきと指原。
みゆき「好きっていうか、ちょっと気になっ
ただけで」
指原「それを好きっていうんですよ」
みゆき「ち、違うよ」
指原「大丈夫っすよ、白松さんには言わない
んで」
みゆき「そういうことじゃないわよ」
指原「何ですか、じゃあ」
みゆき「そもそも、ほら、おばさんがいい歳
こいて恥ずかしいじゃない、推しとか、ね」
指原「そんなこと気にしてんすか」
みゆき「だって、彼アイドルよ、26歳」
指原「あ、調べたんだ」
みゆき「私の息子と変わらないわ」
指原「そんなん、俺だって男なのに男性アイ
ドル好きですよ」
みゆき「それはほら、また違うじゃん」
指原は立ち上がり、
指原「……卯山さんって、寿司で何が好きで
す?」
みゆき「え?」
指原「ちなみに俺はハンバーグ寿司なんすよ」
みゆき「うわあ、お寿司じゃないやつ」
指原「そうそう、その反応。でも俺はジジイ
になってもハンバーグ寿司を堂々と取りま
すよ、みんなの前で」
みゆき「はい?」
指原「だってせっかく寿司屋に来て、お金払
って、好きなもの食べれないなんて! な
んの拷問だよって思います」
みゆきの戸惑いの表情。
指原「卯山さん。わったんを推すってなら、
俺が先輩になってあげます」
みゆき「いやいや」
指原「わったんはまだまだ新人だから応援し
甲斐ありますよ」
みゆき「ど、どうかな」
指原「楽しいっすよ、推し活ライフ」
指原はスマホを見て、
指原「あ、やば。最推しの生配信始まる」
イヤフォンをつける指原。
みゆきは呆れ笑いし、遠くを見る。
○駅前(夕)
みゆきが買い物バッグをカゴに入れ、
自転車に乗っている。
前からオレンジ色と青色メインの服装
をした女子高生が通る。
バッグからうちわの柄の部分が見えて
いる。
アイドルの写真が付いたキーホルダー
などがバッグにたくさん付いている。
女子高生A「まじ尊い」
女子高生B「今日、特にね」
女子高生A「まじ推ししか勝たん」
女子高生達が笑って通り過ぎる。
みゆきは女子高生達を見つめる。
○卯山家・リビング(夜)
弘がソファに座り、無表情でテレビを
見ている。
みゆきはパジャマ姿で後ろをこっそり
通り過ぎる。
○同・寝室(夜)
暗い室内。
みゆきはベッドに座り、顔が青白く照
らされ、スマホを凝視している。
スマホ画面、渡辺のホームページ。
みゆきは渡辺の動画を再生する。
渡辺の歌い踊る姿。
微笑むみゆき。
○同・キッチン(夜)
弘が冷蔵庫を開ける。
中にはビールが残っている。
弘は不安そうな顔。
○同・寝室(夜)
みゆきがベッドに座っている。
弘が中に入ってくる。
みゆき「う、うぅわあ! お父さん!」
弘「なんだなんだ、そんなに驚いて!」
みゆきは俯く。
弘「どうしたんだ、最近」
みゆきは真剣な表情で、
みゆき「分かった、分かったわよ、もう言う
わ」
弘は息を飲む。
弘「何を?」
みゆき「私」
弘の真剣な表情。
みゆき「推しができちゃったのよ!」
弘は不思議そうな顔。
弘「は?」
みゆき「推しよ、推し」
弘「推し?」
みゆき「ごめんなさい、お父さん」
弘「なんで、謝るんだ」
みゆき「生涯でお父さん以外の人を好きにな
るなんて」
みゆきは遠くを見る。
弘は電話をかける。
弘「もしもし、亮太か! 母さんの頭がおか
しくなったかも知れない」
みゆき「ちょっと!」
○同・リビング(朝)
朝日が差し込むカーテン。
スズメが隙間から覗いている。
リモコンを2つ持ち、テレビの録画に
戸惑っているみゆき。
みゆき「えぇ、この名前で登録? どういう
ことなの〜」
頭を抱えるみゆき。
○スーパー田中・屋上
スマホでSNSを登録するみゆき。
みゆき「これを? こう?」
指原が教えている。
指原「そうっす、そうっす」
みゆき「なるほど」
○同・レジ
レジ業務をこなすみゆきは渡辺の歌を
口ずさんでいる。
みゆき「キラキラの〜」
小林がやってくる。
みゆき「いらっしゃーせー!」
小林「居酒屋ですか、ここは」
みゆき「はい、老人入りまーす」
小林「おい!」
みゆき「失礼いたしましたぁ!」
小林「恐ろしくイキイキしてる……」
みゆきは笑顔。
○スーパー田中・女子更衣室(朝)
みゆきが前髪を整えている。
恋歌が勢いよく入ってくる。
みゆき「おは−−」
恋歌「ヤバイヤバイ! 今日わったんのライ
ブ当選発表なんですぅ」
恋歌「ヤバイよぉ、卯山さん!」
みゆきの手を握る恋歌。
恋歌「私ほんとに落ちたら死にます」
みゆき「そんな大袈裟な」
恋歌「そういうもんなんです!」
みゆき「そ、そうなの」
恋歌「祈っててくださいね! 当選しますよ
うにって!」
泣く恋歌。
みゆき「う、うん」
微笑むみゆき。
○同・屋上
みゆきが拝んでいる。
みゆき「お願いします。お願いします」
指原「……第一希望で当選です!」
スマホをみゆきに見せる指原。
みゆき「うそ! ほんと?」
指原「はい! いや〜良かったっすね」
みゆきは涙を目に溜める。
みゆき「すごいね、生きてて良かった」
指原「推しは神ですから」
みゆき「楽しみだわぁ」
指原「アイドルライブ初参戦ですよね?」
みゆき「もちろん!」
指原「ここからですよ」
指原のしたり顔。
みゆき「え?」
指原「恋愛も付き合う前が楽しいって言いま
すからね」
みゆき「指原くんて例えがなんか絶妙だよね」
指原「ん?」
みゆき「あ、いろいろよろしく。先輩」
指原は咳払いをして、
指原「ライブ参戦までには長ーく楽しい道の
りがあります」
みゆき「ウンウン」
指原「ファンサービスを受けるための、うち
わを作ったり」
みゆき「あー、よくSNSで見るやつね」
指原「作るの大変ですけど、出来た時の達成
感は格別です」
みゆき「んー……」
指原「後、参戦服考えたり」
みゆき「参戦服?」
指原「とびっきりおしゃれをするタイプと、
推しのカラーを入れて目立つ服装をするタ
イプとか、色んな人がいます」
みゆき「あー、なるほど……」
指原「後、メイクね」
みゆき「メイク?」
指原「好きな人には可愛く見られたいでしょ
うよ」
みゆき「でも、そんな」
指原「後、ペンライト爆持ち」
みゆき「それって必須なのかな?」
指原「はい」
みゆき「そうなの?」
指原「推し活の醍醐味っすよ」
みゆき「うーん……」
指原「会いに行くからには全力でしょ」
みゆきの気まずそうな表情。
指原「もしかして卯山さん」
みゆき「な、なに?」
指原「まだ気にしてんすか」
みゆき「何を」
指原「いい歳こいて恥ずかしい、ってやつ」
みゆき「ま、まあ年相応の楽しみ方するよ」
指原は立ち上がり、
指原「知らないっすよ」
みゆき「いや、だって」
指原「後悔、しないといいですね」
みゆき「大丈夫よ、行けるだけで満足だもの」
指原が去る。
残されるみゆき。
○卯山家・寝室(夕)
SNSでファンの投稿を見るみゆき。
ため息をつく。
鏡台の前に座るみゆき。
引き出しから口紅を取り出す手。
口紅を見つめるが、仕舞うみゆき。
○ショッピングモール・婦人服店・前
若者や中高年が行き交っている。
みゆきと弘が歩いて来る。
弘「本屋さん、行って来る」
弘が去る。
立ち止まるみゆき。
30〜50代女性向けの店で、店内は
流行の洋服のディスプレイがされ、派
手な色のニットが並ぶ。
みゆきが立ち止まり、ニットを見る。
ニットの宣伝ポップに「推しカラー」
の文字。
青色のニットを触るみゆき。
女店員Aがみゆきに笑顔で近づいてく
る。
女店員A「良かったら、合わせて見てくださ
い」
弘がやってきて、
弘「母さん、財布−−」
みゆき「け、結構です」
みゆきは足早に去る。
弘「いいのか?」
みゆき「ウンウン、あー財布だっけ?」
財布を探すみゆき。
○商店街(夕)
みゆきと弘がゆっくりと歩く。
すれ違うミニスカートの女子高生2人
組。
ピンヒールを履いた若い女性に抜かさ
れる。
俯くみゆき。
○卯山家・寝室(夕)
鏡台の前に座るみゆき。
みゆきは口紅を取り出し、捨てる。
○スーパー田中・レジ(朝)
みゆきがレジ業務をしている。
恋歌が渡辺の曲を歌いながら、商品を
整理している。
恋歌を見てみゆきの気まずそうな表情。
品出しをしている指原はみゆきを見る。
○同・キッチン(夕)
粗めに切られている野菜。
ボーッと包丁を動かすみゆき。
弘が後ろから近づく。
みゆき「お帰りなさい」
弘「ただいま」
みゆき「明日の夜、遅くなるから」
弘「ああ、推しだっけか」
みゆき「うん、渡辺くんのライブ」
弘「楽しんで」
みゆき「ありがと、ね」
みゆきは弘に肩を叩かれる。
みゆきは苦笑する。
○卯山家・ベランダ(朝)
曇天。
柵の上にパンカスが乗っている。
みゆきは空を見上げ、
みゆき「来ないのね」
慌てて、中に入るみゆき。
○同・寝室(朝)
鏡を見ているみゆき。
地味な服に鞄も小さめのポシェット。
ゴミ箱に入った口紅を見るが、部屋を
出て行くみゆき。
○電車
ほぼ満席の車内。
ドアが開き、客が乗ってくる。
みゆきは席に座り、ドアを見ている。
渡辺を模したキャラクターチャームを
ぶら下げ、派手な青色の服装をした、
若い女性がみゆきの横に座る。
みゆきは動揺し、肩を縮める。
○ホール・外
厚底ブーツ、ハイヒール、ローファー
などがゆっくりと歩いている。
足早に歩くスニーカー。
周りはゴスロリ衣装、青色メインの洋
服、学生服に、流行のファッションを
した若い女達が楽しそうに騒いでいる。
みゆきは肩を寄せ、足早に歩く。
○同・中
会場は満席。
× × ×
二階席のみゆき。
落ち着きのないみゆきは周りを見渡す。
みゆきの隣にファンAが座る。
ファンA「おいしょ〜」
青色メインの服を着た50代ぐらいの
ふくよかな女性。
ファンA「あっち〜」
みゆきが視線を逸らすと、
ファンA「お宅、もしかして初めて?」
みゆき「は、はい」
ファンA「ぜひ楽しんでくださいね!」
みゆきは気まずそうに会釈する。
× × ×
ステージ。
色とりどりの照明が輝く。
渡辺がキラキラの衣装で歌い踊る。
渡辺「キラキラの〜!」
× × ×
二階席。
みゆきが微笑む。
みゆき「か、かっこいい」
× × ×
客席。
ファン達「へい! へい!」
色とりどりの照明の中、青色ペンライ
トを掲げるファン達。
× × ×
二階席。
ファンAが青色ペンライトを両手に持
ち、振っている。
ファンA「へい! へい!」
みゆきは棒立ちで見ている。
ファンAに笑顔で頷かれ、片手を軽く
あげるみゆき。
みゆき「(小声で)へい、へい」
みゆきは顔を赤らめ、俯く。
○同・外(夜)
大量の女性ファンが出口から出てくる。
笑顔の人や、泣いている人の姿。
みゆきは疲れたような表情でり人並み
を縫い、歩いていく。
○商店街(夜)
みゆきはビールを片手に、歩く。
荒々しくビールを飲むみゆき。
○卯山家・寝室(夜)
ベッドで本を読む弘。
ドアが開き、パジャマ姿のみゆきが入
ってくる。
弘は横目で、
弘「どうだった?」
みゆきはベッドに入り、
みゆき「楽しかったよ」
弘はみゆきの顔を見る。
みゆきは布団に潜り込み、
みゆき「疲れたんで、もう寝ます」
布団を上まで被るみゆき。
弘はみゆきを不思議そうに見つめる。
みゆきはゆっくりと目を瞑る。
○スーパー田中・女子更衣室(朝)
みゆきは着替えている。
恋歌が入ってくる。
恋歌「おはよーでーす!」
みゆきは気まずそうな表情。
恋歌「聞いてください、卯山さん」
みゆき「なに?」
恋歌「昨日、わったんのライブだったんで
す! 私、特大ファンサもらっちゃいまし
た」
みゆき「へえ」
恋歌「やっぱキラキラアイドルわったん神で
すぅ」
みゆき「そっか」
恋歌「ま、他の女にも鬼ファンサしてたんで、
そこだけは嫉妬で無理でしたけど」
みゆき「ふーん」
恋歌「って、卯山さんは興味ないかあ、ごめ
んなさーい」
恋歌が去る。
みゆき「……よし」
ロッカーを閉めるみゆき。
○スーパー田中・屋上
手のついていない弁当。
遠くを見つめるみゆき。
指原の声「楽しかったですか? ライブ」
振り向くみゆき。
指原はみゆきの横に座る。
みゆき「……指原くんの、言う通りだった」
遠くを見る指原。
みゆき「楽しかったんだよ、もちろん。でも
なんか物足りなくて。みんな、全力で楽し
んでた」
遠くを見る指原。
みゆき「隣のおばさんなんか、ほんと面白い
ぐらいだったの。それ見てたらさ、逆に私、
恥ずかしくなっちゃって」
遠くを見る指原。
みゆき「心から楽しめなかった」
あくびをする指原。
みゆき「って、聞いてる? はあ。勿体無い
ことしちゃったわ」
指原は立ち上がり、みゆきに銃で打つ
ジャスチャー。
指原「そんな卯山さんに朗報でーす」
みゆき「……なに?」
指原はピースをして、
指原「ライブ、追加公演決定!」
みゆきは顔を上げ、
みゆき「うそ! ほんとに」
指原「イエッス」
ウィンクする指原。
みゆき「うわあ、本当。嬉しいわ」
指原「もちろん、行きますよね?」
みゆきは俯いて、深呼吸する。
みゆき「でもほんとはまだ恥ずかしいかもっ
て」
指原「じゃあ、俺の自分語りターイム」
みゆきは指原を見上げる。
指原「俺、男なのにアイドル好きじゃないで
すか? 実は、高校まで隠してたんです」
頷くみゆき。
指原「ある時、ライブに行ってたのがバレち
ゃったんすよ。しかも男子校だったから、
皆にゲイだっていじめられて」
みゆきの真剣な表情。
指原「それで俺は、あんなに楽しかったライ
ブだったのに、行ったこと後悔したんす。
行かなきゃいじめられなかった、そもそも
好きじゃなければって……」
みゆき「……それで?」
指原は手を広げ、
指原「考えるのやめました〜」
みゆき「え?」
指原「好きは素直に好きでいいんすよ。自分
の人生です」
みゆき「……かっこいいこと言うね」
指原「ハンバーグ寿司万歳!」
みゆきは笑う。
指原「次は卯山さんの番すね」
みゆき「え?」
指原「おばさんの吹っ切れ、見てみたいっす」
みゆき「……指原くん」
指原「ライブ楽しみましょう」
みゆき「先輩!」
ドアの陰で驚きの表情の恋歌。
○卯山家・リビング(朝)
みゆきは拝んでいる。
スズメが窓の外から覗いている。
弘がスマホをみゆきに見せ、
弘「第一希望で当選!」
みゆき「やったー!」
弘「おめでとう」
みゆきと弘がハイタッチする。
○スーパー田中・事務室(朝)
恋歌はスマホを持ち、座り込む。
スマホには落選の文字。
恋歌の憎悪にまみれた表情。
○卯山家・リビング
みゆきが「ファンサうちわ」を作成し
ている。
スマホ画面、うちわの作り方動画。
動画を見ながら頷くみゆき。
○百貨店・婦人服売り場
試着室。
青いニットを着たみゆきがカーテンを
開け出てくる。
弘が咳払いする。
弘「……似合ってる」
みゆきは顔を赤らめ、
みゆき「そ、そう?」
× × ×
レジ。
お会計をするみゆきと弘。
女店員Aがニットを畳みながら、
女店員A「ディナー用の洋服だったりです
か?」
弘「いや−−」
みゆき「参戦服です」
女店員A「え」
みゆきの笑顔。
○同・靴売り場
みゆきが厚底のブーツを履いている。
弘「そんな高いの大丈夫なのか」
みゆき「常識の範囲内ってやつ」
× × ×
レジ。
お会計をするみゆきと弘。
男店員が靴を梱包しながら、
男店員「記念日デート−−」
みゆき「違います」
気まずそうな男店員と弘。
笑顔のみゆき。
○同・鞄売り場
レジ。
トートバッグのタグに「推し活に最適」
の文字。
梱包する女店員。
女店員B「これでご旅行−−」
弘「違います、推し活です」
女店員B「へ?」
みゆきと弘は顔を見合わせて笑う。
○卯山家・寝室
ゴミ箱に口紅の外箱が入っている。
鏡台の前に座り、リップを塗るみゆき
は青いニットを着ている。
立ち上がり、一周回るみゆきは笑顔で
ある。
ドアが開き、弘が入ってくる。
弘は驚き、みゆきを見つめる。
みゆきは苦笑し、
みゆき「今日はありがとう」
弘「今度……それでディナーでもどうだ」
みゆきは驚く。
弘が振り返ると、
みゆきは笑顔で、
みゆき「そうね」
○スーパー田中・レジ(夜)
恋歌がスマホを触っている。
恋歌「もう、なんで」
スマホ画面、チケット売り切れの文字。
恋歌「なんでよ!」
客の声「ちょっと」
恋歌「いくらでも積むから!」
客の声「すいません! ちょっと!」
恋歌の必死な顔。
○スーパー田中・女子更衣室(朝)
みゆきと恋歌が着替えている。
恋歌「あっ、そうだぁ」
みゆき「ん?」
恋歌「卯山さんって、もしかして、指原くん
となんかあります?」
みゆき「は?」
恋歌「なんかこの前、屋上で仲良さそうに話
してたからぁ、仲良いのかなって」
みゆき「……た、たまたま休憩一緒になった
だけじゃない?」
恋歌「そっかぁ、たまたまね」
みゆき「うん、そうよ、多分ね」
恋歌「でも恋歌、聞きたくない話聞こえちゃ
ったんですぅ」
みゆき「……え?」
恋歌「卯山さん」
みゆき「な、何?」
恋歌「わったんのこと、好きなんですか?」
恋歌はみゆきを無表情で見る。
みゆき「え、あ、いや」
恋歌「そんなわけないですよねぇ? ここ来
た時も興味ないって言ってましたもんね」
みゆき「えっと」
恋歌はみゆきをしたから舐める様に見
て、
恋歌「おば様がアイドル好きになるわけない
ですもんねぇ」
みゆきは戸惑いの表情。
恋歌はみゆきに耳打ちする。
恋歌「チケット譲ってもらえません?」
みゆき「へ?」
恋歌「あんたより、私の方が好きだから」
みゆき「し、白松さん」
恋歌「お金ならいくらでも払うから」
みゆきは恋歌の肩を押し、離れる。
恋歌「きゃっ」
みゆき「白松さん、ごめんね、それは出来な
い」
恋歌は睨む。
みゆき「ごめんね」
みゆきが部屋を出る。
ドアを睨む恋歌。
○同・雑貨売り場
指原が品出しをしている。
みゆきが周りを見渡しながら指原に近
づく。
みゆき「どうしよう、指原くん」
指原「なんですか、万引き犯ごっこ?」
みゆき「違うわよ。白松さんにバレたの」
指原「あらま」
みゆき「明日のライブのチケット譲ってって」
指原「断りましたよね?」
みゆき「もちろん!」
指原「まあ、白松さんならお金積んでも行く
でしょう」
みゆき「ダフ屋ってこと?」
指原「古いなあ。まあそんな感じですね」
みゆき「ダメじゃない」
指原「まあ、でも、最近規制が強くなってま
すからね」
みゆき「それで買えてないのかしら」
指原「お金を積めば良い時代は終わりました」
みゆき「良いことね」
指原「ザッツ、ライト」
みゆき「白松さん行けないの可哀想ね、同担
として」
指原「自分の心配した方がいっすね」
みゆき「そうだ! まだ検品終わってないわ」
みゆきは去って行く。
指原は笑う。
○卯山家・リビング(朝)
カーテンの隙間から朝日が差し込む。
渡辺の曲が流れている。
みゆきは青のニットに、スカート姿、
化粧もしている。
みゆきが口ずさみながら、朝食の用意
をする。
○スーパー田中・女子更衣室(朝)
みゆきが中に入る。
恋歌が着替えている。
みゆきは気まずそうにロッカーに、大
きなトートバッグをしまう。
恋歌「おはようございます」
みゆき「(小声)おはよう」
恋歌「そういえば、卯山さん最近綺麗になっ
たなあって思ってたんです」
みゆき「そ、そうかな?」
恋歌「わったんのおかげだぁ」
みゆき「どうかな?」
恋歌「ライブ楽しんでくださいねぇ」
みゆき「ありがとう、ごめんね、白松さん」
恋歌「何で謝るんですかぁ」
みゆき「何で、って言うか……」
恋歌「今日、15時には出ないとやばいです
よね?」
みゆき「そうだね」
恋歌「忙しくないといいですねぇ?」
みゆき「う、うん」
恋歌は笑顔で、みゆきを見つめる。
○同・レジ
店内は混み合ってる様子。
各レジには長蛇の列。
みゆきが忙しそうにレジをしている。
小林の対応をしている。
小林「今日、忙しいねえ」
みゆき「なので話しかけないでください、オ
ジイ様」
小林「うわ! シンプル失礼!」
みゆき「ありがとうございましたー」
みゆきは時計を見る。
時計は15時を指す。
みゆきは焦りの表情。
恋歌がみゆきのレジに入ってくる。
みゆき「白松さん?」
恋歌「応援入りますよぉ」
みゆき「あ、ありがとう」
× × ×
レジ横商品棚の前。
指原が品出しをしている。
× × ×
レジ。
みゆきが客のカゴを持ち、台に乗せる。
恋歌の冷たい表情。
恋歌「きゃあ」
みゆき「え?」
恋歌が倒れる。
みゆき「どしたの白松さん!」
恋歌が泣いている。
恋歌「痛いー! なんで押すんですか、卯山
さんひどい」
みゆき「へ?」
恋歌「卯山さんがぶつけてきたぁ!」
客達がざわざわする。
みゆき「え、いや、ちょっと!」
恋歌「ひどいよぉ」
みゆき「当たったのかな! ごめんね」
みゆきが手を差し伸べる。
恋歌は首を振り、泣きじゃくる。
ざわざわする店内。
店長がやってくる。
恋歌の睨む目。
みゆきは客に頭を下げる。
みゆき「すみません、少々お待ちください」
○同・事務所
時計が15時20分を指す。
みゆきは焦りの表情。
恋歌は腕を抑えている。
店長が間に立つ。
みゆき「……ちょっと、私もう行かないと」
恋歌「はあ? ぶつけといて、そんな態度な
んですか」
店長の電話が鳴る。
店長「ちょっと、ごめん」
店長が出て行く。
みゆき「何度も謝ってるじゃない」
恋歌「警察呼びますよ」
みゆき「はあ?」
恋歌「腕も折れたかもしれない」
みゆき「ちょっと、いい加減に……って、も
しかして」
恋歌がみゆきの顔を見て、笑う。
恋歌「もう間に合わないかもですね? オー
プニング」
みゆきの驚愕の表情。
恋歌「ウケるんだけど! あーあ、残念です
ねぇ」
指原が入ってくる。
指原「まだやってんすか?」
恋歌が狂ったように笑い出す。
恋歌「ざまあなんだけどぉ」
指原がみゆきと恋歌を見る。
恋歌「私あれだけ言いましたよね! 同担拒
否だって」
みゆきは驚愕の表情。
恋歌「しかもなんであんたみたいなおばさん
新規が行けて、ずっとずっと応援してる私
が行けないの! おかしいじゃん。わった
んもあんたみたいなおばさんに行かれるよ
り私に来て欲しいに決まってるのに」
指原「こわやべえ」
みゆき「白松さん」
恋歌「うるせえよ! ババア」
みゆきは拳を握る。
みゆき「うるさい! 小娘! わったんが可
哀想だわ!」
恋歌「……は?」
みゆき「あなたみたいな子に推されて」
驚きの表情の恋歌と指原。
みゆき「痛いファン? あなたのことよ」
恋歌「はあ?! いい歳こいてアイドル推し
てる方がいてぇよ!」
みゆき「……あんたも私も痛いのよ!」
恋歌「っ!」
指原「(笑って)わ、すご」
みゆき「こんなおばさんでもね、推したいっ
て思わせた、あなたの推しは最高だよ!」
恋歌は睨む。
みゆき「こんなおばさんが派手な洋服着てみ
たり、化粧楽しんだり、パートだってなん
か分かんないけど妙に楽しくなっちゃって、
旦那といるのもなんだか楽しくなっちゃっ
て」
恋歌「……」
みゆき「年甲斐もなく、カリフォルニアロー
ル食べちゃうのよ」
指原「あ、俺のやつ」
恋歌「はあ?」
みゆき「と、とにかくね。私はわったんを推
すって決めたの!」
恋歌「だからそれが嫌なんじゃん!」
みゆき「あんたまだ分かんないの?! 貢ぐ
人間が増えたってことよ!」
恋歌の驚きの表情。
みゆき「貢ぐ人間が増えたってことは、もっ
と大きい会場でライブしたり、CDも出せる、
わったんが一番喜ぶことじゃない」
恋歌「嫌なんだよ、有名になんてならないで
欲しいの!」
みゆき「そんなのエゴじゃない! あーでも
そういう子もいるってことねぇ?! 推し
活って難しいわねえ?!」
恋歌「はあ?」
みゆき「でも、あんたのしたことは人間的に
アウトよ! おばさんが教えてあげるわ」
指原「あのさあ、ヒートアップしてるところ
悪いんだけど、卯山さん時間やばいよ?」
みゆき「え? あ! 本当!」
恋歌「ははは、ざまあ」
みゆき「うるさい! おばさん舐めんなよ!」
みゆきが出て行こうとする。
恋歌がみゆきの腕を引こうとするが、
恋歌の腕を掴む指原。
指原「卯山さん、ファイト〜」
みゆき「ごめん後はよろしく!」
みゆきは出て行く。
恋歌「離してよ!」
指原が思いっきり恋歌の手を離す。
恋歌「もう、なんなのよ……」
恋歌は泣きそうな表情。
指原「ざまあ」
恋歌は動揺し、俯く。
○坂道(夕)
みゆきが全速力で自転車を漕いでいる。
みゆき「うおおおおお!」
○ホール・外(夕)
女性客たちが小走りで会場の中に入っ
て行く。
○同・中(夕)
スクリーンに10秒前のカウントダ
ウンが始まる。
女性客たち「きゃあ! 10! 9……」
○同・外(夕)
みゆきが階段を駆け上がる。
○同・中(夕)
女性客達がペンライトを振る。
女性客達「3! 2! 1! きゃああ!」
みゆきが慌ててドアを開ける。
× × ×
ステージ。
火花が散る中、渡辺がポップアップで
登場する。
× × ×
客席。
照らされるみゆきの顔。
みゆき「わあ……」
恍惚の表情のみゆき。
× × ×
ステージ。
踊って歌う渡辺。
× × ×
客席。
みゆきの手に青のペンライトが全指の
隙間に挟まっている。
みゆき「オイ! オイ! オイ!」
みゆきは全力でペンライトを振る。
笑顔のみゆき。
みゆきN「推し活、最高!」
○スーパー田中・事務所(朝)
渡辺の歌を口ずさむみゆき。
従業員達がみゆきを見て、ザワザワす
る。
みゆきが何食わぬ顔で歩く。
指原がみゆきの後ろから、
指原「わー、卯山さん」
みゆき「あー、さっしー、おはよう」
指原「ちょっと、それ」
みゆき「なに?」
大量の渡辺のグッズがついており、缶
バッジが敷き詰められたバッグを持つ、
みゆき。
満面の笑みで、
みゆき「これいいでしょ〜!」
指原「おばさんって、恐ろしい」
みゆきの満面の笑み。
コメント
コメントを投稿するには会員登録・ログインが必要です。